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わたしたちの家族
2021/04/04 20:00
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投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
女子高生3人が妻、夫、そして子ども(王子)の「わたしたちの家族」と呼ばれる。目撃者である「わたしたち」が語る「家族」たちの出会いから、それが離ればなれになるまで。百合などと言えばそれまでだが、相変わらずこの言葉の切れ味は健在。形容しづらい居心地悪い揺さぶられた気分になる。お見事。
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【女子高生三人の手探りの関係。 心をかきたてられる名作】〈パパ〉日夏、〈ママ〉真汐、〈王子〉空穂、同級の女子高生三人が演じる疑似家族の行方は。時代を切り開く作家が到達しえた傑作。
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制覇はしていないものの、読んできた松浦理英子作品では一番好きだった。私もこの学園で過ごしたかった。あらゆるタグに囚われることなく友達を愛したかった。真汐と日夏には『ナチュラル・ウーマン』の容子と花世の面影があったけれど、彼女たちへの眼差しは温かく柔らかかった。
それなりに物事の分別もつき、且つ社会に出る直前、教室の中で世界が完結する微妙な未分化を表すのに女子高生を主人公に据えること、真汐、日夏、空穂の関係性を見守るクラスメイトたちの距離感と「わたしたち」という主語、単語と関係性の再定義、全てが、上手いな〜とうっとりしてしまったのだった。
とにかく真汐がいとおしくてしかたがない。
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「どれだけ美しければ世間にだいじにされるのだろう。どれだけ性格がよければ今のわたしが全く愛せない人たちを愛せるのだろう。」
とても純度の高いものを読んだ気分だ。でもそう言葉にしたら、やや違和感も覚えた。
「疑似家族」と「三人をアイドル視する周囲」という女の子同士の甘さ、十代のきれいさ、というとちょっと違って、でも違わなくて、上手く言えない。
若手作家じゃないからこそ書ける女子高生、という印象を受けた。
ちょっと風変わりだけれど奇をてらっているとは思わない、地に足の着いた無二さ。
みんな微熱を帯びていて、それでいて過度に浮かされすぎない冷静さを感じる。
筆致の所為もあるだろうか?
濃くて、あっさりしていて、凝縮されていて、さらりとしていた。
なんとなく落ち着いた距離があって、箱庭を見つめている気分になって、やたらと安心する安定感があった。
購入時、帯の文が端から端まで惹かれるもので構成されていて、がっちり掴まれてしまった。
中身の内容そのまま+引用でしかなくて、情報に装飾がなくて、改めて信頼度100%。
(↑の引用では抜いた部分こそ中身に直通で沿っている)
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男女別学の私立高校の女子クラス。
クラスメイトたちに〈わたしたちのファミリー〉と名付けられた3人と、彼らを囲む「わたしたち」の日常は、敵意や悪意のない(男子に対してはあるが)慕わしさに満ちた人間関係に彩られているが、その期限を意識しながら少しずつ関係性は変化していく。
自分が共学育ちだからか、どこかファンタジックであり刹那的に感じた。
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『コンビニ人間』の村田紗耶香さんが解説で
「家族」の中での肉体というものについて考えた、と書き、
「大切な、信頼できる相手の前で、心地よく筋肉が弛緩すること。・・誰かの体温の中を安堵しながら漂うこと・・・
身体が相手を家族だと認識し、そうした反応をするなら、現実での関係性の名前がどうであるかなど関係なく、肉体にとってその人は『家族』なのではないかと思う。」
と書いている。
夫の日夏、妻の真汐、王子様=最愛の子どもに空穂という三人の女子高生を中心に、家族関係を妄想する周りの友だちたち。
どう定義できるのか分からなかった「家族」が、
三人の肉体の反応を通して、村田氏が指摘するように
とても鮮やかに浮かび上がったのには、本当に驚いた。
しかも、とても清々しい。
とても新鮮。
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こんな友達たちがいたら面白かったんだろうなと思う。学生時代って一つ一つが大ごとで友達同士とごちゃごちゃと言い合うのが楽しかったんだよなあ〜。
表現がいい意味で生々しく、秀逸で、世の中に疑問を持ちつつもまだちょっと未熟で、でもとても賢い女子高生たちの学生時代を覗いてる気分になった。
200ページちょっとだけど中身はとっても濃い作品でした。
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書評を読んで面白そうと思い購入した本。思春期の女の子たちの家族ごっこ…言葉にすると何とも幼稚っぽい行動のだけど、その「家族」に付随する当事者たちや「目撃者」たちの感情や欲望が淡々と描かれ、それがこの小説に不思議な魅力を与えている。