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最近ふとしたことからドイツ語に興味を持ち、特に「名詞に性がある」というドイツ語の特徴になんとなく気になるものを感じていました。とりわけ「ややこしそうな文法ルール」として。
そんな中、個人的に惹きつけられた本書の一場面が、ドイツ語文法に怒りを込めて文句を言うアメリカ人と思われる女性に対し、主人公の「わたし」が
『「性を失った英語の方がよっぽどステューピッドでしょ」と言い返してやりたくなった。』
と心の中で反発する場面でした。
真実がどうかはさておき、「言葉というものには元々性があって、英語はその性を失ってしまった言語なのだ」というものの見方は、自分の中に新しい視点を与えてくれたように思います。
もっと言えば「ややこしそう」というネガティブな印象をも反転させられたと言えるかもしれません。
言葉の中にある引っ掛かりや違和感みたいなものを、独自の視点で掬い上げる感覚はやはり多和田さんならではだなと唸ってしまいます。