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宮部みゆきのあやかし草紙を読みました。
三島屋変調百物語伍之続ということで、三島屋の黒白の間で店主の姪のおちかが来客の怪異の話を聞くというシリーズの最新刊でした。
1話目が陰惨な救いのない物語だったので、どう展開するんだろうと読み進めたところ、2話目がちょっとコミカルな話、3話目からはおちかの今後に関わってくる明るい話だったのでほっとしました。
特に2話目の化け物を呼び出してしまう「もんも声」を持った女性の物語が気に入りました。
今巻でおちかは百物語を卒業してしまいますが、三島屋の店主の次男が百物語をつづけるとのことなので、続きが楽しみです。
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自分が観ていた海外の警察ドラマの影響か、シリーズもののキャストの交代は苦手です。(大抵殉職するか、現場での苦い経験から、退職していく……)
でもこの三島屋シリーズの、メインの交代は素直に歓迎できる。シリーズを通して積み上げられたものと、著者の宮部みゆきさんの暖かい眼差し。
ここまで三島屋シリーズを読み、おちかの変化を読んできた読者に対して、物語を通して贈られた一つのプレゼントのようにも思います。
今回の収録作品は5編。宮部さんの真骨頂だと感じたのは、妖怪や死霊を呼び寄せる「もんも声」を持った女性の奇妙な半生が語られる2話の「だんまり姫」
その声のためなるべく人と話さず、身振りや独自の手話を通じて周りとコミュニケーションをとってきたおせい。そんな彼女の元に舞い込んだのは、言葉を発しない城の姫のお世話役。
しかし、その城でも奇妙な出来事が起こり、やがておせいの耳に、男の子の声が聞こえてくるようになり…
三島屋シリーズで特に好きな語りは、怪異を語る上でその現象や出来事だけでなく、語り手の人生が見えてくる話なのですが、この「だんまり姫」も語り手の人生が見えてくるよう。
もんも声のため、身内にも遠慮しながら過ごした幼少期。転機となった宿屋への奉公。城での生活、姫や霊とのやりとり。
三島屋の百物語が単なる怪談もので終わらないのは、怖さであるとか、人の業や哀しみを描いていること以外にも、基本的に1話にしか登場しない語り手にも、人格を与え、そして人生を浮かび上がらせるからだと思います。
そして、この話の結末もとても良かった。お家騒動によって幼くして命を落とし、一種の地縛霊のように城にとらわれた一国様。彼の魂を城から解き放つため、おせいが取った行動。そして一国様の選んだ道。
物語の持つ温かさが伝わってくる、傑作だったと思います。
一家に取り憑いた行き逢い神と、その一家の末路を描く「開けずの間」は怖かった……。嘆き、嫉み、妬み、そして生まれた心の隙間に、スッと忍びよる魔。そして、翻弄され壊れていく人々。
女性の姿をした行き逢い神の笑い声が、自分の脳内で不気味にこだまするような薄気味悪さ。ラスト一行のどこか引きずる感じが、また怪談らしくて不気味だけど忘れがたいです。
世間に不幸をもたらすお面を描いた「面の家」も、ついつい状況を想像してしまう怖さがあります。封印されながらも、常に隙を伺い箱をカタカタ鳴らしながら、人に怪しく囁きかけるたくさんの面。こういう話好きだけど、やっぱり怖いわあ……。
おちかの決断が描かれる表題作の「あやかし草紙」
写本をする元侍の元に舞い込んだ奇妙な依頼と、老女の奇妙な結婚遍歴の話。
三島屋シリーズだからこその、おちかの決意の描き方だったんだろうな、と思います。この描き方がカッコいいし、女性としての覚悟や度胸がこれ以上無いくらい現われていました。
そしておちかから百物語の聞き手を継いだ富次郞の初陣となる「金目の猫」
富次郞の兄、伊一郎が語るのは、単なる怪異の話ではなく、三島屋の���としての話でもあり、そして兄弟の語らいでもあり、思い出話でもあった気がします。
シリーズの転換点にきて、三島屋のルーツの一端が見える。新たなスタートらしい一編でした。
三島屋シリーズの好きなところは、各編で語られる一編一編の完成度もさることながら、聞き手や三島屋の移り変わりも平行して描がれるところです。おちかが徐々に聞き手として成長し、頼もしくなっていき、様々な出会いがあり別れもあり。
今回でその聞き手は、おちかから富次郞に引き継がれたわけですが、この富次郞もきっと作中の時間を通していく中で、所帯を持つか、あるいは目標としている自分の店を持つ時がくるかもしれない。そして役目がだれかに引き継がれるかもしれない。
それでなくても、あたりは柔らかいけど、どこか頼りなくも見える彼が、おちかのように肝の据わった頼もしく見える時期が来るかもしれない。
そんなふうに、聞き手の変化も楽しみにしつつ、自分はこれからも三島屋シリーズを読んでいくのかなあ、と思います。各編で語られる怪異だけでなく、富次郞が、そして三島屋という店自体もどう移り変わっていくのか。
たまにしか会わない親戚一家の近況報告を聞くような、そんな楽しみも徐々に生まれてきているように感じました。
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第一期終了とはそういうことか。おちかの嫁入りにより、聞き手の交代。
今回は中々読み応えがあるページ数で、時間がかかった。
初期の頃のようなゾクゾク感が薄れているような気もしたが、おちかが成長している証か。「開けずの間」の行き逢い神が恐ろしい。
おちかが選んだ旦那さん。幸せになって欲しい。
そしてこの後も続く百物語。
楽しみにしています。
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おちかが黒白の間の聞き手を「卒業」するということが評判になっていたので、どういう成り行きなのだろうと楽しみに読み始めましたが、1話目がいきなり怖かった(><)
2話目は一転、心があたたかくなるお話でした。話せなくなったお姫様の声が戻った瞬間の一言に嬉しくなりました。でもそれよりさらに胸がすく思いがしたのが、お家騒動のために幼くして悲しい死を遂げた若君が去り際に残した「一国の城主よりも、はるかに偉いものになってやろうぞ」という一言。気高く美しいことばに胸が熱くなりました。この巻の中でいちばん好きなお話です。
4話目はおちかが大きな決心をします。覚悟を決めたんだなぁ。
最終話の『金目の猫』はせつないお話でした。運に味方してもらえなかったおきんさんが、その分幸せになっているといいのだけど。
聞き手が変わってからのお話も楽しみです。おちかの今後もときどき織り交ぜてもらえるだろうと楽しみにしつつ、次の文庫化を待ちます。
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三島屋黒白の間で、おちかが聞き手となる第一期完結。
区切りも、物語での展開もおめでとうございます。
第二期を前に、顔を出した伊一郎兄さん登場になんだか盛り上がった。富次郎さん頑張ってね。
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久しぶりに三島屋シリーズ読んだ☆毎回楽しみにしているシリーズ☆だんまり姫と金目の猫のお話が気に入った
今回は、おちかちゃんがお嫁に行ってしまうお話でもあり、これから頻繁におちかちゃんが出てこないのかなぁと思うと淋しい。だけど、幸せになって欲しい。
第1弾完結編。第2弾早く読みたい
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カバーの綿帽子をかぶった花嫁御寮と「白猫」。買った時からもしやと思っていたが、おちかの幸せを読めて良かった。「開けずの間」では、人間の弱みに付け込むあやかしの、語り終えた後に本当の怖さが伝わる。本書の中でも最もページ数を割いた「だんまり姫」は遠州弁とおぼしき語りに癒やされる感じだった。さて、彼岸と此岸を行き来できる謎の男に認められた小旦那・富次郎の今後が楽しみだ。
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なぜか今回は一気に読めず、ちょっと途中で飽きがきた感じになったのですが、面白かったですよ。開けずの間が怖かった~。
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2年7月18日読了。
三島屋黒白の間で語られる 変わり百物語。この回で26話となる。
中でも、だんまり姫が良かったな。産まれる順番で人生の行き先が決まってしまう、そんな時代。幼いながらも、自身の身に起こりつつある暗雲を、理解し受け入れるしか無い、そんな時代。
涙、涙。
せめて、描かれた絵のような そんな行く末であってほしいと、願ってしまう。
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三島屋百物語 第五弾 第一期完結
「開けずの間」「だんまり姫」「面の家」
「あやかし草紙」「金目の猫」の5編
中でも、「だんまり姫」が良かった。
「あやかし草紙」で、おちか自身も大きな決断をする。
「金目の猫」で第二期へつなぐ。
さて、百物語の聞き手が替わって、どんな話が語られるのか。楽しみです。
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表紙を見て、まさかと思ってましたがおちかがお嫁に行って感涙。。本当によかった。。
相変わらず安定した宮部さんの時代小説であり、今までの4作もそうですが読みやすいです。
次作からは富次郎さんが聞き手になるのかぁと思うとそれも楽しみです。
でもおちかにもたまに登場してほしい。。
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三島屋変調百物語の第1部完。物語の聞き手がおちかから富次郎へとバトンタッチ。
第1話:開けずの間
行き逢い神を招き入れた三好屋から、ひとが亡くなっていく。嫉妬や妬みの底がないことの怖さの様なものを感じました。
第2話:だんまり姫
お城を守る若様の幽霊と、唯一若様とお話ができる女、そして言葉を話せない姫様。幼く亡くなった若様ですが、ようやく自分にあった拠り所を見つけることが出来て良かったです。
第3話:面の家
面がひとや街に災いをもたらすお話。開けずの間と同様に、ひとって、欲に弱い生き物だなと思います。自分も含めてですが。
第4話:あやかし草紙
今回のメインの物語。瓢箪古堂の若旦那が語り手となる。ある内容を書き写すことで100両という法外な賃金が貰える仕事を斡旋された浪人の話。世にも奇妙な物語に出てきそうなお話だと感じましたが、その後の若旦那の人生にも影響を与えることに。それが、おちかの今後を大きく変えることに繋がっていく。
第5話:金目の猫
富次郎が聞き手としての最初の物語。三島屋の長男の伊一郎が、不思議な猫の話をする。兄弟って、なかなか本心を話せないものかと自分は思っているけど、歳をとって、しみじみと話せる二人が良かったです。
三島屋の面々って、厳しいけど優しいひとたちばかり。そんな人たちに囲まれてきたこそ、おちかも傷を癒して、優しい気持ちになることが出来たのかなと。
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「三島屋変調百物語」は、語って語り捨て、聞いて聞き捨てが決め事でございます。でもホントの語り手は、実は宮部みゆき女史であろうことは、読者の皆様には暗黙の了解ごとだ、と推察致します。
そのご本人が公の場で言っていましたから、語らせて頂いてもお構いなしとさせてください。実は今回で聞き手は、三島屋の姪のおちかから次男坊の富次郎に交代致します。えっ、ご存知でしたか?それならば、
‥‥全体で4人聞き手が立つことになっている。
えっ?そこまではご存知ありませんでしたか?現在27話ということになっておりますし、百物語だというと、やはりそうなるのでございましょう。絶対ではないでしょうが。
かつて某ラジオ番組で女史が話していたんです。
「百もの怪談って、こんなにもさまざまな物語、どうやって思いつくんですか?」
とMCが聞きました。実際は女史の時代モノは怪談かかっている事多いので百より多いとは思いますが、
女史は
「定番のパターンがあるので、話ネタ自体には困りません。ただ、構成は工夫します。ABCをCABにしようとか、小道具に何を使うか、というのを考えるのが楽しい」
とかおっしゃっていました。根っからのストーリーテラーですね。
今回個人的に1番怖かったのは冒頭の「開けずの間」でした。忌(いみ)がどんどん拡大、伝染していくさまが、女史は意識していなかったでしょうが、目に見えないウィルスだけでなくて、目に見えない悪意さえも伝染していく(自殺者さえ出たようですね)昨今のコロナ禍と重なり、たいへん恐ろしゅうございました。
実はここだけの話なんですが、わたし気がついてしまいました。「伍之続」の何処かで言及あるかな、と思いきやなかったので、これはどう処理するのか、わたし、おそらく20年後にドキドキしていると思うのです。何かと申しますと、今回女史は珍しく「文庫版あとがき」にこう書いています。
‥‥百物語という趣向は、昔から、百話完結させてしまうと怪事が起こるので、99話で止めなければならないと戒められています。一方、99話まで到達せずに途中でやめると、足りない数話分の怪事が起きるという戒めもまた存在するのです。(640p)
書いて仕舞えば「言霊」が宿ります。女史は「とんでもないこと」を約束してしまったわけです。99話でピタリと止めなくてはなりません。女史の心配するように、「健康に留意」するのはもちろんのことですが、実はこの文庫本の巻末に「正式に」『現在までに語られた話』は「第二十七話」と書いています。これが問題です。実は26話目に付け足すように「同じ顔をした6人の男と結婚した老女の話」の「一話」があるのです。これが「数え」の中に入るか入らないか、ものすごく重要です。数えずに、百物語までいって怪事が起こるのか?それとも、数えて1話足りずに終了して怪事が起きるのか?そういうことに関係すると思うのです。20-25年後に悩むのではないでしょうか?
いや、杞憂なら良いのですが‥‥。
ついつい気になったので長々と書いてしまいました。どちらにせよ、おちかの嫁ぎ先の話はこのままで終わらないので、もう一波乱あるのは必須で���。
あと、おまけとしてトリビアな話を。(←話が長いぞ!)
袋物を売る三島屋は、神田三島町にある店です。「東京時代MAP大江戸編」(新創社)を広げて調べました。現在の神田東松下町辺りでした。おちかの嫁ぎ先は神田多町二丁目だそうですが、それはそのまま地名としてあります。神田駅から秋葉原駅に中央線に沿って歩いてゆくと、神田川手前の右手に三島町、左手に多町があります。おちかはホントに歩いて300メートルちょっとの処に嫁いだわけです。この辺りは、大江戸の一大商業地帯です。果たして庶民は密に密に寄せ合って住んでいたことでしょう。また、「面の家」冒頭で起きた火事は、秋葉原駅の東北出口の辺りです。神田川挟んで500メートルなかったので、三島屋さんも焦ったことでしょう。
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江戸の袋物屋三島屋で続けられる、怪談語りの百物語の伍之続。
おちかさんに従兄弟の富次郎が加わって、五話の怪談が語られる。
語って語り捨て、聞いて聞き捨て。
おちかが結婚を決意する表題作「あやかし草紙」、こんな草紙、今もどこかで守られていそう。
怖い話は、魅力的。
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おちかが嫁に、、(嗚咽)
よかったよ、本当によかった。
おちかの心が少しは晴れたようで。
語り手が交代すると広告で知ってからずっとそわそわしていたシリーズ。
もう完全に宮部みゆきさんの大ファンです。
文庫で揃えていたけど、
単行本のひとつひとつの装丁がとても素敵で、
どちらも本棚に置いておきたいなあ、、。
あと最新作が読みたい。笑
今回は「開けずの間」がとても怖いはなしで、
背中がぞくりとしました。
いつの時代も弱い心につけいるものってあるんだな。
富次郎さんがおちかとは違うけど、
とても好ましい聞き手で、とてもたのしみ。