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怖い。何とも言えない薄ら怖さにのどが締め付けられるようだ。苦しい。息ができないほど、怖い。
毎日、毎時間、毎分、零れ落ち続ける「死にたい」という思い。
ネット上でその希死念慮を挟んで存在する、自殺対策のNPO法人代表の田宮と、VRゲームの中の王アルテミス。救い上げようとする田宮と、突き落とそうとする王。「死」という観念を挟んで分かれるそのボーダーはなにか。
仮想空間という楽園の怖さ。死へのハードルを少しずつ下げていく過程が、怖い。自分も誘われているような錯覚。読み終わって眠りに落ちる瞬間に浮かぶ銀色の国。
これは、作り物の社会を描いた作り物の世界だ、そう言い聞かせる。
でも、作り物?本当か?これは物語なのか?一晩経っても心のどこかで銀色の国が呼んでいる気がする。
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「自殺」をテーマにしたミステリーだが、逸木さんの作品らしく最新のテクノロジーを絡めた作品になっている。本書は人生に絶望した一人の「死にたい」少女に迫る闇を巡る物語で、数年後の未来(現在でもやろうと思えば実行できそう)に起こりそうなテクノロジーを悪用した犯罪を見事に描き切っている。作中、仮想空間と現実とで物語が交差するが、将来的にこのへんがシームレスになることの危険性も警鐘しているのかな。長編だが、展開が早くラストまで飽きさせない内容で、エピローグまで楽しめたし読後感もよい。
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10月-6。3.5点。
自殺防止NPOの主人公、ゲーム開発者の親友。協力しながら、自殺を誘うゲームの謎に挑む。
余り期待していなかったが(すいません)、一気読みした。スピード感あり、場面転換も上手くてのめり込んだ。結構面白い。
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自殺対策NPOとして、人々を救おうとする晃佑。ネット上の自助グループ「銀色の国」に招かれ、徐々にのめりこんでいくくるみ。謎の男に拉致され「仕事」をさせられる詩織。それぞれのパートが徐々に繋がり、やがて明らかになる恐ろしい計画。目的もさながら、その手段にも戦慄を禁じ得ないミステリ。
誰にだって悩みはないはずがないし、その悩みの大小だけで不幸かどうかが決まるわけじゃない。だからくるみのような「些細な」悩みの数々で自殺を考えてしまうのが甘ったれている、とは言えないと思うのですが。自身で悩みの大きさを測ってしまったがゆえに居場所がないと感じてしまう苦しさが痛烈でした。こういうのって、他人に理解してもらうのは難しいような気がします。そして、彼女がのめりこんでいった美しい「銀色の国」。これは心のよりどころになりそうだけれど……ダメだわ、これはあまりに怖い!
さほど切羽詰まった理由でもないのに希死念慮を持つ人に関しては、理解できないわけじゃありません。だけれどそれを後押しすることが救いになるとはどうしても思えませんでした。だけれど、そう思っちゃう人もいるのだろうな、と。それが一番恐ろしいのかも。
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暗い内容だけど最後まで読める。点と点が繋がって気持ちいい終わり。
絶望より希望があるほうがいい。
「自分を友達のように大切に扱えば、色々と上手くいく」
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詩織とくるみの境遇に重なるところがあり、銀色の国の世界観に引きこまれました。
ゲームやネットにのめりこんで人間関係が希薄になるという説もあるけれど、のめりこませ続けるには結局人間関係が必要なんだなと思いました。面白かったです。
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自殺を扱った作品だけど、救済度が高い。
自殺に導くvrゲーム。あったら本当怖い。
今の時代、あながち夢物語ともいいきれない。
西野トム。ここにも登場!いいキャラだ。
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誰かの「悩み」「苦しみ」「痛み」を、「理解出来る」や「救える」と思うのはひどく傲慢なことなのかもしれないなと思いました。「寄り添う」や「話を聞く」が、他人に出来ることの精一杯なのかも。
誰かの苦しみも、自分自身の苦しみも、本当に感じられるのは悩みや苦しみを持っている本人だけだし、誰かに「わかるよ〜」と言われた瞬間に、安心しつつも矮小化されてありふれたものになってしまう諦めも感じます。「わかるよ〜って、なんにもわかってないやん」、と。ゆくゆくは「あるあるかぁ」って悩みが小さくなっていくほうが良いのだろうけれど、一旦は、ただ聞いてほしいみたいな心理はわかります。わたしも、こう思いながらもわかるって言ってしまうので良くないなぁとつくづく思ったのを、読みながら思いました。
『銀色の国』でのマインドコントロールも、そもそもの建国の経緯も方法も、とても恐ろしい。
でも、「逃げ場」として救いには確かになっていた。何かに集中して、現実逃避しながら膨大な独り時間を過ごすのは、膨大な独り時間に自分を責め苛んでしまうよりはよい。『銀色の国』は、追い詰めるミッションさえなければ、穏やかな居場所みたいだから。問題は現実世界に上手く戻ってこられるかどうか、か。
人の話を聞くって大事だし、大変なことなんだな。。信じるというのも。
ここまでくると〈王様〉も関係者なんじゃ…と思ったけれどそうでなかったのが良かったです。王様は人の苦しみを聞くばかりで自分の苦しみを聞いてもらうことがなかったから、狂気を溜め込んでしまったのかな。逃げ続けた〈アンナ〉が、『銀色の国』で社会人としてコミュニケーション取れるようになるのもすごい転換でした。
事件は伝えられるときには一方の面だけなのが殆なので、「ありえん」と思ってしまう。けれど、〈アンナ〉や〈なっつ〉みたいな事もあるのかも。「俺はお前たちの物語にはならない」となったらそれまでだけど(流行語です)。
こう考えると、松永太ってもの凄いです。
わたしあと10年もしないうちに半世紀生きてきた事になるけど、この間に起きた凶悪事件でも指折り。。「治安悪くなってきたな…」と思うことは増えても、「……え!?」みたいなのはそうそう無いし、無いのが一番なので。ほんとに。
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自殺したい人、止めたい人、バーチャル世界と現実世界、それぞれの感情がとてもリアルに感じられた。自殺をテーマにしたものだと、こちらまで気持ちが引きずられたりするのではと、不安もあったが、そういったことはなくて安心した。
自殺をしたい人の気持ちがよく分かる。現実の世界から逃げたくて、バーチャル世界では幸せに穏やかに過ごせるなら、そちらの世界にずっといたいのも分かる。すごく共感した。逃げ癖がつくと、このまま現実に戻れない恐怖、どこまでだったらまだ間に合うのか、そういった危うい感じもよくわかる。
それでも、自殺を止めたい人は一生懸命話を聞こうとする。人の話を聞くのってとてもとても大切なことなんだなって改めて思う。
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深く共感できる物語だった。
設定や事の経緯に無理がある部分も多く、こちらの想いがあまりにも都合良く相手に伝わる甘さはあるものの、起承転結を踏まえた小説としての構成はとてもうまいと思うし、自殺という暗い主題に救いを提示するテーマの有り様には素直に敬意を表したい。噛み砕いて言ってしまえば「銀の国」とはハイスペックな「動物の森」であり、捉え方は人それぞれなのだろうが、そこが日常に居場所の無い人たちの逃げ場所として機能する側面があるのは実感として理解できる。僕が体験しているのは昔々の文字チャットレベルだけれど、それでも確かにそこは自由な別世界であったから。「銀の国」は自殺ゲームとして規定、設定されているが、それはそのまま反自殺ゲームにもなるのではないかな?毎日美しい月が上る世界をそのまま続けることはできなかったのだろうか?過度な没入は物理的に間違いなく危険だけれど、バーチャルリアリティの大きな可能性のひとつを示したという意味でもこれはかなりの秀作だと思いました。
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日々閉塞感を感じている人に読んでほしい。
自殺を扱っていることもあり前半は暗く沈んだ気持ちになった、しばらく引きずるかと思ったが後半にかけて希望が生まれてきた。
本当の意味の救済とはなにか。人のためにここまで行動できる人たちがいる。
日本の自殺者数は目を背けたくなるほど多い、コロナの影響継続か などとぬかしているがもっと原因は他にあるのではないか。この問題から逃げてはいけないと思う。
パズルのようにぴったりと嵌った 良い表現だなあ
くるみちゃんはとにかく良い子だし(お父さんも良い人、まさかあの人だとは思わなかった)、宙みたいな才人には出会ってみたいし、詩織ちゃんも逃亡欲がちょっと強いだけで、自分のその特性にぴったりと当てはまるものを見つけていた。
田宮くんみたいな傾聴力を大事にしたいと思ったし、井口さんのように辛い過去を乗り越えて人のために働ける姿は素晴らしい。今井さんや西野くんのような細やかな気遣いができるようになりたい。
どの登場人物も輝いていた。
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<今>読んで良かった本。
にしても、病んでるのが若い女の子ばっかりで「はいはい・・・」て思ってしまった。いや、そういう意図がないのはわかっているんだけどなあ。
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人には、それぞれの地獄があります。
なっつさんがつらいのだったら、それはつらいんです。
苦しみを肯定してあげてください。
人間、自分相手にはいくらでも辛辣な言葉をぶつけられる。
でも、友人に罵詈雑言をぶつけたら、相手は追い詰められるだけだし、こっちは友情を失うだけだ。
友達にかけるような言葉を自分にかけてごらん。
自分を友達のように扱えば、色々と上手くいく。
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自殺対策のNPOがネット団体を相手に奮闘する物語。いや、物語じゃなく実際にもありそうで‥そう感じる今の社会って怖いと思いました。
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集団自殺の教唆を図る殺人犯と殺人犯に洗脳される女性。またそれと相反するように自殺対策のnpo 法人の代表である主人公が事件の時系列と共に話を解決するために奔走するお話。話の主点がコロコロと入れ替わり、主要人物がどのように考え物語が進んでいくのか面白く読み進めれた。ただストーリーは所々ご都合主義で、なぜそう思いそう行動したのか疑問なる時があった。なにより主観が今回の殺人犯となる猿顔の男にクローズされなかったのが残念。あえてそこは書かず殺人者側のアンナの価値観を主張することが物語の主軸となる、生きづらさを抱える人々がそれでも前向きに生きていくという根幹につながっているという捉え方をするのが正解なのか。とはいえ生きていて様々な辛い思いがあるのは事実で、時には逃げて良い、なりゆきに任せることも悪くない。そんな優しいテーマを語った物語だったのかとも感じた。
私は今まで本当に死のうと思ったことはない。思春期の時に少し感じた事はあるが、すぐ楽しいことがあって忘れてこれたタイプだ。けどそれは自分の中である意味で逃げて成り行き任せに出来たところがあったからだろう。そう出来たことや、実際それで何とかなったのはラッキーで自殺志願者ともきっと紙一重だ。辛い現実があっても彼女や彼らがそれでも物語の終わりに前向きに生きようとしているのは、きっと何処かに生きる意味があり、人生を終わらせる選択が惜しく感じれたからなのだろう。井口さんが言う自殺者への諦念はずっと物語に見え隠れしているが、諦めだけではない地道な自殺対策支援の行動が主人公、ひいては物語の希望となっているように感じた。