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<ウィル・トレント>シリーズとしては9作目、レギュラーメンバー絡みではない大事件。
2020/07/08 01:51
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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
たとえ文庫であっても、厚い本は持ち歩きにかさばる。しかし読んでいる途中であれば持ち歩かねばならないのである。電車を待つホームなど、隙間時間を利用する。おかげで電車に乗っている間もあっという間に過ぎてしまう。
そう、なんだかんだと、読み始めたら結局読んでしまったよ・・・カリン・スローター最新作。
2019年7月、ショッピングモールの駐車場からCDC(疾病予防管理センター)の疫学者ミシェルが何者かに拉致された。
約一か月後、アトランタで爆弾テロ事件が。現場近くにいたGBI捜査官のウィルと医師で検死官のサラ・リントンは急行する途中で車の追突事故を見かけて思わず車から降りたら、彼らは逃走中の爆破犯たちとミシェルだった。犯人たちを一部仕留めて捕まえたが、サラを人質に取られて逃亡を許し、ウィルも痛手を負う。連鎖的に発生する凶悪事件の背後にいるのは何者なのか・・・という話。
冒頭は事件をめぐるサラ視点・ウィル視点・フェイス視点が語られ、そのたびに時間がちょっと戻るのが進みを遮られているようでイラっとするけれど、それぞれが知ること・感じることが重層的に語られるのでこの繰り返し描写は必要だったのだ。
5作目『血のペナルティ』以降前作の『贖いのリミット』まで、ウィルの身近な人々に起こる事件が続いてましたが、やっと関係ない事件が! でも、サラがさらわれるという・・・そういう部分はロマンス小説の流れを感じる。ロマンス部分はコージーミステリとも通じます。
しかし、今作はテロ事件ということで・・・ページ数最厚にして、事件の規模も、被害者の数も最大。
事件を起こす集団は、白人男性原理主義者たち。人為的に広めようとする伝染病も絡んでくるので・・・あぁ、COVID-19が蔓延する中、<BlackLivesMatter>の声が上がっている現状に見事にリンクしている。
今の現実はなるべくしてなったもの(回避・解消できたはずのことが先延ばしになってヘイトが現状の不満のはけ口となって渦を巻く)なんだというかなしさ・・・わかっているのに止められないむなしさ。
人種差別者たちの発言は非常に身勝手で自分に都合のいい話ばかりなのに、それでもそれに自分の慰めを見出してしまう人がいっぱいいる、というのがむなしい。
それにしても、作者は今回かなり取材したかものすごく調べたと思われる。
今回、ウィルはいつもよりさらにいいところがない(普段からフェイス、サラ、アマンダに押され気味のところがあるけど、今回はサラ恋しさのあまり冷静な判断が全然できてない)。その分、サラが自分の過去のトラウマ(ごめん、このこと忘れてました)に否応なく向き合わされることで、立ち向かう力を得るのが本作の読みどころ。
自分もかつては犯罪被害者だったから、世の中からのバッシングに「その立場になったこともないくせに、安全地帯から発言する、自分は無敵だと信じている人間のなんと多いことか」というサラの嘆きと怒りは、COVID-19の感染者を責める日本の同調圧力にもそのまま向けられるという・・・なんともタイムリーな作品となってしまいました。
サラとウィルの恋愛も、二人がサヴァイヴァーであることが深い意味を持っている。
いろいろお互い不器用だったり自分の枠を壊せなくてぐるぐるしていた二人が、お互いを思って一歩踏み出そうとするのは「回復」だ。ただそのためにこの事件があったのだとしたらせつなすぎる・・・。
リアルタイム設定で描かれるこういうシリーズって多いけど、今後COVID-19は作品の中でどう描かれるのだろう・・・楽しみに待ちたい。
紙の本
破滅のループ
2020/08/14 09:14
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投稿者:J.J. - この投稿者のレビュー一覧を見る
疾病予防管理センターの疫学者が拉致された。その後、爆破事件が発生しウィルとサラが現場に向かう途中遭遇した交通事故で、救護処置を行ったがその相手(逃走中の爆破犯)にサラが連れさらてしまう。
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いつもの猟奇的な単独犯ではなく、犯罪組織が相手主人公ウィルの恋人サラが連れ去られてしまう。(組織への潜入捜査とかもあったけど、それよりも武装していて爆破テロを実行するタイプ)
犯罪者と行動を共にするサラパート
前半ほぼ落ち込みまくってるウィルパート
操作で協力することになったFBIにイライラしまくるフェイス(ウィルのバディ)パートに分かれて進行
松田青子さんの「女が死ぬ」という掌編にあった物語のために女が死ぬことについて「話の進行のためだけに登場人物が死ぬ軽さ」を気にしていたのだが、この作者は被害を受けた後についても描いているという話が解説にもあり、確かに容赦なく、重たい。
過去のシリーズ作品でも感じていたので納得。
200ページまでは数日かけ、残り400ページは一気読みしてしまった。
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「緊張と緊張の緩和」とは、桂枝雀が"笑い"について語ったことだが、これはすべての"面白さ"に通ずる。
カリン・スローターはまったくその名人だ。
そして、こんなむごい話を書きながら、彼女は思いやりのある、気遣いの行き届いた人なのだ。
だから、私は彼女の話を読んでいられる。
まずはプロローグである。
たった数ページで、子供を持つ母親、中でも娘を持つ母親の緊張と緊張の緩和が描かれる。
子供、特に娘のいる世の母親は共感して頷くところが多いのではないか。
なに、つまらなそうだ?
では試し読みをどうぞ。
あなたはきっと揺さぶられる。
https://viewer-trial.bookwalker.jp/03/8/viewer.html?cid=8dc33d70-f7fd-4c40-8791-7d2fc1a059a4&cty=0
舞台が変わって本編に入ると、サラが、母親キャシーと、叔母のベラとキッチンにいる。
結婚するとかしないとかで、家族の女性だけであれやこれや言い合うのは、女性向けの小説や、コージーなどで定番の場面だ。
うんうん、これねと、女性なら思うことだろう。
なに、つまらなそうだ?
残念。ここからはもう試し読みがない、本を手にとってもらうほかない。
あなたがうなずいていたとしても、ダレてしまっていたとしても、それはここで最後になる。
この緩和の後には、緊張の波しかない。
せいぜいここで呼吸をゆるめておくのがいい。
強い緊張と弱い緊張だけでは、しかし読者は疲れてしまう。事実私は疲弊した。
けれども、続けて読んでいられたのは、あのサツマイモや下痢腹があったからだ。
カリン・スローターはこれがうまい。
緊張が持続している時、呼吸が浅いままの時、突然、想定外のなにかを投げ込む。
異物、滑稽なもの、サツマイモ、下痢腹、緊張の緩和。
これで肩の力が抜けて、また呼吸ができるようになる、私は無事に読んでいける。
読者を窒息死させないよう、カリン・スローターも気遣ってくれているのだ。
そして彼女は、そんな死の危機の数々を長らく脱してきた読者に、さらにサービスを提供する。
『マギー・グラント副本部長が登場した。フェイスは、真面目な生徒のように見られたくて背筋をのばした。マギーはフェイスにとって励みとなる存在だった。タマが生えた女に変わることなく、アトランタ市警の食物連鎖の最下層である交通指導員から特殊作戦の指揮官までのぼりつめたのだから。』 (87頁)
退屈極まりない会議の席で、その人が登壇するからと、あのフェイスが姿勢を改めた人物は、マギー。
この名前には、覚えがある。
『警官の街』は、1973年のアトランタを舞台にした、カリン・スローター(2014)のノンシリーズ作品だ。
当時のアトランタは、男と女で社会的立場がまったく違った。
そんな男社会の中で、警察組織が、さらに極まった男社会であることは間違いない。
その社会の中で、警官として働く女性たちの物語である。
ヒロインの名は、マギー。
これは、あの彼女ではないか。
『警官の街』の後、彼女らはどうなっていくのか��つづきはないのかと気を揉んでいたのだが、ついに再会することができた。
当然、もう一人のヒロインにも会える。
『品のいいブロンドが立ち上がり、手を差し出しながら近づいてきた。年齢はアマンダと同じくらいだが、もっと背が高くほっそりとしていて、美しくない女に気まずい思いをさせる美しさの持ち主だった。
「情報部のケイト・マーフィ次官補です」』 (202頁)
フェイスが気後れする美人は、もちろんあのケイトである。
二人とも無事だったのだ。
あのアトランタの街で、頭をふっとばされもせず、四肢を失うこともなく、その上、素晴らしい昇進を果たしている。
マギーはなんと姓が変わっているし、ケイトの部署には、間違えようのない姓の人物がいる。
彼女らが、ここまで登って来た道筋が垣間見える。
女性たちのハードボイルド作品『警官の街』は、カリン・スローターが、当時の女性警官たちに話を聞き、入念なリサーチをして書き上げた作品である。
手元にある方は幸運だ。『破滅のループ』読了後には、ぜひ読み返してほしい。
新しく読みたい人は、難儀である。絶版の上に、古本が高騰している。
本来、税別1000円なのだが、今やなかなかの価格だ。
しかし、この高騰ぶりには覚えがある。
同じくカリン・スローターの『開かれた瞳孔』が、こんな様ではなかったか。
その後、ハーパーブックスから出版されたのではなかったか。
再版を待つか、古本を探すか、どんな方法かはともかく、『警官の街』は読むべき作品だ。
そして、それゆかりの人物たちが、これからもウィル・トレント・シリーズに出てく
れると嬉しい。
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疾病予防管理センター(CDC)の疫学者が誘拐され1ヶ月が経過。爆発事件があり、犯人グループにウィルの恋人、検死官のサラが拉致された。大規模なテロを計画している、極端な白人至上主義者たちのグループの仕業だった。テロを止められるのか、サラの行方は、どんなテロなのか・・・
途中、長いなーと思いながら、スローター作品だから我慢してれば報われると思っていたら、やはり報われた。
ラストに近づいて、テロの詳細が分かる辺りから急速に加速していった。
リーダーのダッシュが言う。
「わたしのレディたち、よく聞きなさい。いまからいちばん大事なことを教えるぞ。人種はピラミッドのように積み上がっている。いちばん上にいるのはいつだって白人男性だ。その次は白人女性で、彼女たちはひとりの主人に仕えるだけでいい。その下はほかのさまざまな人種だ。地球上に住む人々がみんな平等なわけはない」
こんな風に考える人間が一定数いるというのが、人間というプログラムのバグだと考えればよいのだろうか。
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カリン・スローターの作品はぐつぐつと煮詰めたシチューのようだ。濃縮された様々な食材が、混在し、溶けて、一体となった混合物。作品中でいう食材は、主に人間である。様々な毛色の人間たちが、煮え滾るスープの中で、煮詰まって、ぶつかり合う鍋の底のような世界だ。
ウィル・トレント・シリーズ。そのコアなヒーロー&ヒロイン=ウィルとサラとが主役を務める、実に王道の作品。本シリーズの未だ初心者のぼくにとって、ウィル・シリーズなのに、毎度、他のキャラクターが主役を務める感の強いのがこの作家の特徴。つまり、キャラの立った人物像が、予め考え抜かれ、設計された凝ったシリーズなのだと言える。
本書はシリーズ中、最もシンプルな作品と言っていい。通常の殺人事件に始まるミステリーとは言えない。最初にとある人物の誘拐シーンで幕を開ける。そのほぼ一か月後、いきなり病院で爆弾テロ勃発。逃走現場での撃ち合いの中にウィルとサラの姿、そして誘拐された女性の姿。そんな、ど派手な幕開けである。
700ページ弱の長大なページをほぼ全編緊張の状況が埋める。凶器のテロ集団。感染症に苦しむ子供たちでいっぱいのキャンプ。渦中のサラ。ウィルの潜入。ジョージア州警察のバックアップ。男性作家にさえ書けないほどの度はずれた暴力描写や、緊張感の緩まない心理描写。ウィル、サラ、ウィルの相棒である女性刑事フェイスの三つのシーンで構成される複数多面描写による、時空間的厚みと、それを支えるストーリーテリング。
この物語の題材は、差別とヘイトが人種間に産みつける憎悪、その発火点、そして際限のないほどのテロリストたちの冷血性と、悪魔性である。この種の徹底した悪と闘うのが我らがヒーロー&ヒロインたちなのだが、彼らの世界のディテールが読者の枯渇しようとするヒューマニズムを救いあげる。
その断面は、男女の恋愛、家族の愛情などをもって細密画のように丁寧に描かれる。悪に対する善なるものとして。今回、テロ組織が用意する悪魔の兵器とその準備段階でかなり疲弊してしまう神経を、善なる側の愛情や友情が救ってくれる。無論救われない魂の数と平衡を取っているとは言えないまでも。全体が残虐さに満ちたという意味ではシリーズ屈指の一作であるにしても。
個人的には、面白さはあってもどうも好きになり切れない作家である。パトリシア・コーンウェルを継ぐ、時代の売れっ子女流作家であるが、同じ感じで面白さだけが読む原動力であるけれど、内容の残酷さ、容赦なさは二人とも同じような側面を感じる。でも、コーンウェルを結局は全作読んでしまっているように、このままキャラクターたちに引きずられてしまいそうな自分を、ぼくは自分でよく知っている。不思議なことに。
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勢いのあるストーリーにまたまた2日で読んでしまうことに。700ページもあるのに、止められませんでした。全く、すごいお話。とんでもない企みだけど、ありそうな気もするくらい、今のアメリカが抱える闇を見せてくれたようです。医学の専門知識が怒涛のように押し寄せ快感でした。
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図書館の本 読了
ショッピングモールの駐車場で、疾病予防管理センターの疫学者が拉致された。
行方不明のまま一カ月が過ぎたとき、アトランタ中心で爆破事件が発生。
現場へ急行した捜査官ウィルと検死官サラは混乱の中、車の追突事故の救命にあたる。
だがその車に乗っていたのは、逃走中の爆破犯たちとさらわれた疫学者だった。
銃撃戦の末にサラも連れ去られ――。
連鎖する凶悪事件、真の目的とは!?
誘拐されたサラの決心が痛々しくて、それをわかるウィルも心情も想像に難くなくて。
それでも冷静に、それでもサラの家族には優しく、それでも早くサラを助けたい。
ウィルはほんとうにいい男だと思うのよね。
カルトの生活って見ていてぞっとする。
子どもを性の対象にするってどんな男よ。
アメリカではそれがどれだけ多いかってことなんだろうけれどもやるせなさすぎる。
やっとウィルとサラが結婚するのがわかったラストシーン。次回の作品も楽しみ。
The last widow by Karin Slaughter
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今まででいちばん面白かったかも。(って何度も思ってるんだけど)
これまでは連続猟奇殺人ばかりだったが今回はテロ。ダッシュはなんとなく俳優のラミ・マレックさんを想像してた。後半はところどころ雑なところがあるものの前半はなかなかスリリングだった。サラが犯人のDNAを集めようとするのは自らの死をリアルに覚悟しているからだと知ったとき、サラが死ぬわけないと思いながらも心配でたまらなくなった。ふと読むのを中断したとき、いまじぶんがどこにいて昼なのか夜なのか何時なのかわからなくなったほど熱中して読んでた。ウィルに関する極秘資料とても好き。
は〜、グウェンはもちろんだけどミシェルも好きになれなかった。やっぱり女性の登場人物に好きなひとが少なすぎる〜。でもウィルとサラが好きなのでまた続きも読みたい。もうレナやアンジーは出てこなくていい!