紙の本
考えさせられました他
2020/06/25 22:22
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
新たなる高校国語の学習指導要領や、大学入試共通テストの国語についての問題点を、現役の東大教授の方々が指摘した、2019年10月19日に東大で開かれたシンポジウムでの発言を、文章にして新書で刊行した1冊です。
無論、参考になりましたが、計5名もの現役東大教授の価値あるお話を当書で目にできたのが、貴重な体験となりました。実際にシンポジウムに参加した感覚を味わえたのがとても嬉しかったです。
第二章にご登場した先生が、自ら著した文章が大学入試センター試験で出題されたのを取り上げて、ご自身でセンター試験の問題に挑戦されたシーンが、なかなかないシチュエーションで、読んでいて楽しく感じられました。
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大学入試改革について(本書からは特に国語について)知りたくて手にとった。まあ、ちょっと思っていたのとは違ったけれど、学べるところはあった。阿部公彦さんが読解力について話されているが、そもそも私は読解力が弱い、と思う。「内容が難解である。読み手にとってレベルが高すぎる。」だいたいこのケースが多い。しかしそれは自分のレベルが低いということでもあるので、本の内容が理解できないことを著者のせいにしてはいけない。また一方で、大西克也さんは次のように話されている。「固有名詞や聞きなれない言葉を裸の形で振り回す人には注意した方が良い。」最近は、「そんなことは自分でググれよ」ということかもしれないが。聴衆であったり、想定されるその本の読者をどのレベルにおくかによって話し方・書き方はずいぶんと違ってくるのだろう。ときに、この本の読者に、このレベルの説明は不要だろう、と思えるようなことをくどくどと書かれていることがある。にもかかわらず、こんな専門用語を何の説明もなしに使うとは不親切だ、と思うこともある。同じ本の中での話だ。おそらく、ここで問題になるのは、原稿ができた段階で最初にその文章にふれる読者(ふつうは編集者だろうか)からのコメントだろう。それが、その本の内容が受け入れやすいものになるかどうかの決め手になるのだろう。という観点からすると、新書でも版元による差はずいぶんあるような気がしている。おっと、本書の内容から離れてしまいました。まあ、国語科改革について議論するにあたってのたたき台にはなるでしょうか。でも「論理国語」のことをだれも論理学とつなげて考えてはいないように思いますが。
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昨秋行われた東大でのシンポジウムの採録。英語の阿部公彦、スラヴ文学の沼野充義、哲学の納富信留、中国文学の大西克也、それぞれの話+ディスカッションで、どの人の話もなるほどと思うところ(あたらしい共通テストや学習指導要領への疑念や危機感)と、そうかなと思ってしまうところ(とくに新井紀子氏の「RST」への見解がきびしく、そこまで敵視することがあるのかと疑問に思った)がある。
「ことばの危機」というタイトルが象徴するように、「国語」や「英語」といった学校の教科教育をはじめ、言語能力(読解力)や言語教育のありかた、文学や古典などの教養教育への危機感や志はみなそう違わないはずなのに、一枚岩になれずいろんなところで断絶が感じられるのがなんとももどかしい。
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経済優先の世の中では数値化できないものが切り捨てられていく。そんな恐ろしさを新・大学入試共通テストのプレテストから感じてしまう。
恐ろしさを感じると同時に、ここで語っている東大の5名の教授の言葉には胸を打たれるものがあり一筋の希望が見えてくるようだった。
ことばの危機はことばだけの問題ではないことを改めて気付かされる一冊。
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英語も国語も実用重視という気持ちは分かるが、
若者たちの何ができていなくて、
今後何を期待したいのか政府も企業側も明確に分かっていないから迷走するのではなかろうか。
若者たちだからこそ持つ力やリテラシーには
簡単に甘えて労働力にするけど
昔ながらの仕事のこなし方に順応しなかったり
政府や企業が期待する方向性にハンドリング
ができないから
実用的な力がないんじゃないの、
というのは違う気が...
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大学入試改革で「論理国語」と「文学国語」を分けていることから、文学は論理的ではないと国や経済界は思っているのではないかと感じる。
しかし、文学(小説)を解するためには徹底的に論理的に読む必要があり、文学に論理性がないとは到底いえない。また論理国語とされる試験問題からは、文章の意味は一義的に定まるという考えが読み取れるが、そもそも人間の用いる「ことば」というものは複雑で、文脈や時代の情勢を織り込まないことには意味が正確に取れず、また受け手側のスタンスによっても意味の取り方が変化しうる。
そのため、文学を取り出して囲い込むことは幾重にも間違った政策判断であるように思える。
以上が本書を読んだ感想である。
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2021/4/24
ことばはもとより、文学の在り方に何度もハッとさせられた。文学を読むことは訳の分からない作品の世界に入り、その世界のコンテクストを想像し、理解すること。文学はそういう力を陶冶するんだ、と。これがひいては他者理解の助け、そして世界理解に繋がるのではないか。
ことばは誤解に満ち、表現したいことを表現できない不器用さを備えているが、その前提を理解しなきゃいけないんだと思う。昨今、すぐに役立つとか、すぐに稼げるとか目先のものを追求する態度が人気を博しているが、そのために何かをツール化することは自分が何かのツールと化すことになってしまう。そこには納富先生の言う魂はありえない。
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だいぶ前から気になっていた、読解力と注意力の関係。自分が教えながら感じていたことが、やっぱりそうだったんだと再認識できた。