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林芙美子の代表作「放浪記」。最初の出版の改造社版は後に著名となった後、本人により校訂されているという。時代背景など解説を加えた改造社版の魅力。
「放浪記」は何度か挑戦し挫折している。この度本書を手に取り、時系列や表現など生々しさの残る改造社版と森まゆみ氏の解説の助力でようやく読了。
創作や誇張の部分もあるようだが日記と詩作、故郷も居所も定まらぬ一人のバイタリティ溢れる女性の生き様が描かれている。カフェの女給や多くの男性遍歴など生々しい。後に成功した林が筆を入れる気持ちも分かる。隠したかった部分をこそ読みたくなる倒錯した心理がなんとも後ろめたい。
いきなり入手しやすい新潮社版「放浪記」を読むよりこちらのがオススメ。ようやく念願かない読了できました。
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「放浪記」は作者・林芙美子自身によって、何度も付け足され、手を入れられたりして、時系列がよく分からなくなってしまった。
また、手を入れる過程で、若々しい文章が洗練されたものに書き換えられたこともあって、当時のありのままの叫びを読んでもらいたい、ということで、改造社版「放浪記」を解説付きで出すことになった、と森まゆみ氏の談。
「放浪記」は今で言えばSNSの刹那的つぶやきのようなところもあって、え、どういうこと?何があったの?と聞き返したくなるような部分もある。
そこを想像しながら読むのも良いのだが、この本は一章ごとに解説が付いていて、実はこの時、誰それと別れて、そのあとどこに向かった、とか、新聞社に原稿を持ち込んでいる、元彼に手切れ金代わりに借金を申し込んだ、などという裏事情が説明されていて、とても分かりやすい。
ただ、後の版で付け足されたエピソードは入っていないので、あれ、ベニちゃんの話は?などと思った。
「放浪記」は単身上京した芙美子が、貧乏に耐えながら作家を目指した、19歳から23歳くらいの数年間を描いたもの。
結構盛られているところもあり、そこはやはり作家の書くもので、実体験をもとにした創作と考えても良い部分があるという。
現代も同じような身の上の若い人たちはいると思う。
今の言葉で置き換えれば、フリーターをしながら、ときに男のところに転がり込んだり、行くところがなくて駅前のネットカフェに泊まり込んだりしながら、ひたすら作家を目指して書き続ける若い女の子。
バイト仲間で部屋を借りてシェアハウスを始める。
私が稼ぐから、フミちゃんは勉強して、なんて言っていた年下のカフェの朋輩の、帰りがだんだん遅くなる。
ついに帰らなくなり、10代の彼女が42歳の男にいいようにされたことを知り、後輩思いの芙美子は、金に目が眩んで堕ちたか!と悔しがる。
芙美子自身は、何度も男を変えたりしても、自分はこの線は譲れないというものを持っていた。
何とも興味深い人。
私ももっと読みたいし、胸にいろんなものを抱えて、「家を出たいーーー!」と悩んでいる若い人たちにも読んでほしいと思う。
この本はとりわけ、解説がわかりやすい。
若い人に読んでもらうことを想定していると思われる。
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青空文庫で放浪記を読んだけれど、いまいち作者の人間関係が分からず楽しめなかった。そんな時に見つけたのが本書。解説がついているので、ああなるほどと納得して読めた。