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紙の本
透き通る存在
2007/08/28 22:42
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:sanctusjanuaris - この投稿者のレビュー一覧を見る
初めにブルーがいて、次にホワイトがいて、そしてブラックがいる。探偵ブルーはホワイトから依頼を受ける。ブラックをずっと見張り続けるように、と。書き物と散歩しかしないブラックの毎日を、ブルーはアパートの窓越しに眺め続ける。さしずめこの小説は、ブラックを描写するブルーの描写だ。だが、ブルーに、描写という役割を与えたのは、ホワイトであり、そしてブラックだった。ところが、ブルーの作成した無味乾燥な事実の羅列に、ブラックは自分の存在意義があると思う。
ブラックとホワイト、そしてブルーの存在と役割は、彼らの相互依存のみによって存立している。しかもその依存関係が、堂々巡りの幻のようなものであることが、物語が進むうちに、分かってくる。読者がそれに感づく頃に、彼らの存在は、透明で抽象的な、ゴーストになっていく。
作者は、ホイットマンとソローにも言及する。都会の外部即ち自然で暮らした偉人たちだ。ソローやホイットマンは、ブルー達のような都会のパーソナリティと対極にある象徴だろう。後半で作者は、最後にブルーはブラックをぶちのめして旅に出てしまうとしておこうと書き、描写を留保する。一見解釈余地を多分に与えてくれるようだが、この作品の目論見は、解釈余地の深さを示すことではなく、存在の抽象性が引き起こす不安を表現することにあるだろう。だからソローやホイットマンの登場や、ブルーの最後の行為の仄めかしで、読者を救われた気分にさせようなどと作者は思っていない。『幽霊たち』の登場人物は、抽象的なペルソナだろう。色で指し示されているが、代名詞や代数で彼らを呼んでも変わりない。ブルーとブラックはxとyでもよかった。
都会的パーソナリティの持ち主たちは、己の存在に意義を追い求めた。だが追い求めるほどに、存在は透明になり抽象化していった。郊外に解決を求めようとしても、出口は、ない。存在なるものの根っこには、そもそも拭いがたい透明さがある。己の存在を追う不気味な登場人物たち以外にも、この存在の根源的な透明さという幽霊たちも、当作品に出没しているのだ。彼らが取り付かれたように己の存在を追う過程で、鬼火のように立ち現れる幽霊が微妙に発見されることだろう。
紙の本
さまざまな色たち
2000/10/24 21:51
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:katokt - この投稿者のレビュー一覧を見る
登場人物の名前が色なのは、ビジュアル的にいい。映画化すると、その色のジャケットとか着てるんだろうなぁ、バットマンだっけ? みたい。それにもまして、最初にカードをさらして、そこから組み立てで展開していく流れがいい。簡潔にさらされたカードがどう展開していくのか、楽しんでみてください。詳しくは
紙の本
初めて読んだオースター氏の本
2024/05/01 14:48
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kisuke - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本でポール・オースター氏を知りました。
少し異質な探偵小説で、独特の世界が広がり、不思議なユーモアも感じられ、何度か読み返しています。
小説もノンフィクションもエッセイも、この人にしか書けないものがある。ものの見方を少し変えてくれる。そこが好きでした。
先程訃報に触れ、とてもショックを受けています。
ご冥福をお祈りいたします。
紙の本
読む前から名作と決定されていた
2021/12/04 22:11
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
翻訳家、柴田元幸氏が評するところの「エレガントな前衛」作家ポール・オースターとその翻訳家・柴田氏による本だから名作であると、読む前からこちらとしては決め打ちしている。「ガラスの街」「鍵のかかった部屋」そしてこの作品、あわせてニューヨーク三部作というのだそうだ(この中でガラスの街は未読)、鍵のかかった部屋も失踪した友人を探すというの話だったが、今回もホワイトという謎に包まれた男から依頼を受けてこれも謎の男ブラックを探るという人探しがテーマ。「ソローは何が面白くて、ひとりで森なんかへ行くんだ」とブルーはブラックが読んでいるらしいソローのことを不思議に思っているのだが、そう思っていたブルー自身が森へと知らないうちに迷い込んでいるような状況になっていく、どんどんと話に引き込まれていく