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(No.12-84) YAだと思います。
私は雨月物語を原文と直訳で読んだことがあります。現代の小説にもかなり影響を与えたと聞いていましたので、読んだ時はなるほどと思いました。
この本は金原さんの工夫が面白くて新鮮な感じで読みました。
普通に現代文に訳したのではなくて、一応別の小説になってます。
ある学校の文芸部の活動の成果なの。
9編の雨月物語を部員が1編ずつ分担して、最後に顧問の先生が総評。
部員が現代語訳と原文を読んで、それを元に創作した、という設定です。顧問の先生のところでは、学校の現状も明かされました。
生徒の個性も出ていて、雨月物語以外にも文学の話が広がって(ここには金原さんがちょっと透けて見えてた)、そこが良かったです。
このやり方のおかげで、かなり奔放な解釈や感想も自然な感じで受け止めることができました。
ただ、個性的過ぎる解釈もあるので、今まで直訳や原文に触れたことがなく今後もなかったら、ちょっと心配かな。これをきっかけに一応訳文くらいは読んで欲しい気がしました。
ものすごく残念に思ったことは、作者の上田秋成について、全く解説がないこと。きちんとした作者名さえどこにもなくて、一人だけ一度「秋成さん」と書いていましたがそれっきり。誰も秋成について調べていませんでした。
雨月物語には前書き(のようなもの)が付いているのにそれに全然触れていないし。この前書きは気迫がこもっていてなかなか良いんです。
生徒たちはそれぞれ一編ずつ担当し、顧問の先生が全体として上田秋成を担当して説明したり、前書きについて語ったりするという構成にしたら良かったんじゃないのかな。というか、作者上田秋成をスルーするなんて信じられないわ。
ということで面白かったけれど評価は3にしておきます。
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若い子が古典に親しむ為に、マンガじゃなく。というのは良いが、BLという表記が何度も出て来て気になった。こういう事を差別的に面白がったりする子がいるのではないだろうか?また、他の古典で書いておられるものも代表的なのは、浄瑠璃なのに、浄瑠璃が金原さん自身が好きじゃないと話していたそうで、好きじゃないのに書くなんて!という話を聞いて、売れれば何でも書くのかな?とも思った。たしかに、今風にとっつきやすく書いてはいるが、ちょっとお薦めしたくないかも。そして、もし、読んでも他の雨月物語も読んで欲しいです。
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とある高校の文芸部員たちが一話ずつ選び、他の部員たちの前で自分なりの解釈を発表する形式をとった、『雨月物語』の新解釈。
金原瑞人氏がなぜ雨月物語をと思ったが、随所に類似の海外文学紹介が盛り込まれていたので、なるほどと思った。
雨月物語の筋の面白さは、今時のギャグを盛り込んでみても伝わるとは思えない。新しさを狙った書き方が一年で古びて思えて逆効果と感じた。
古典は必ず原文にあたるべきと思っているが、なかなかその奥深さを中高生に知ってもらうのは難しいのは確かである。
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読友さんの紹介で。「雨月物語9つの短編を高校の文芸部員がそれぞれ一つ担当して自分なりに(語り口調で)紹介する」という形式なので、小中学生にもわかりやすく興味を抱きやすく書いてあります。ただ、これだけだと物足りないのと、個人的にタメぐちが気に掛かります。雨月物語の現代語訳本文と付き合わせて読みたい。
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高校生に解説されていると思うと情けなくもなるが(笑)「テラワロス」とか気にならない人は大丈夫です(多分)そもそも古典のBLってなんだ?のノリで読んだのでそこは補えました。
坊主ラブの先駆け「青頭巾」は知ってたんだけど、「菊花の約」(きくかのちぎり)が美味しかった!タイトルだけでもアレなんですが、兄弟盃的な?義兄弟で、監禁された義兄が約束のために自害して魂だけ弟に会いにくるという…。
これまた挟んでくる歌もいちいち艶っぽいんだよ~正統派訳も読んでみようかな。
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とある高校の文芸部。廃校の決まった学校の最後の卒業生、最後の文芸部員9人が『雨月物語』を自分なりに解釈して語ってみた。という設定で書かれた『雨月物語』の新たな現代語訳。こういうアプローチの方法があるのかと驚き、興味を持って手にしました。「翻訳家」である金原瑞人の手によって書かれたことも興味深いです。これもまた「翻訳」ということでしょう。
『雨月物語』は石川淳のものに手を出して挫折した思い出があるのですが、これは最後まで楽しむことができました。この後で石川淳を読み、原典へと流れていくのもひとつの楽しみ方でしょうね。
1章ずつひとりひとりが語ります。語る部員それぞれの個性により、アプローチの仕方も変わってきます。元の話を面白く思い語るのと、疑問を持って語るのでも変わってきます。そして自分はその物語に対してどう思ったか。自分の経験から来る感想。この作品から創作に刺激を受ける部員も出てきます。
『雨月物語』の現代語訳だけならば、文芸部が語るという部分は不要です。しかしそのワンクッションがあることで、物語はより身近なものになります。物語に対する他者の意見があることで、自分の意見が形を為すこともあります。
何よりも『雨月物語』の物語の面白さのみを抽出し味わうことで、興味を引き出してくれます。人は他者の語りを聞くのが好きなのでしょう。だからこそ語りの文学というジャンルが遥か昔からあるのでしょう。
さて、これを元に『雨月物語』を読み、自分の言葉で語ってみましょうか。
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雨月物語、どのような作品かというと、ウィキペディアには次のように書かれています。
『雨月物語』(うげつものがたり)は、上田秋成によって江戸時代後期に著わされた読本(よみほん)作品。
5巻5冊。明和5年(1768年)序、安永5年(1776年)刊。日本・中国の古典から脱化した怪異小説9篇から成る。近世日本文学の代表作で、現代でも引用されることが多い。
・『白峰(しらみね)』
・『菊花(きっか)の約(ちぎり)』
・『浅茅(あさじ)が宿(やど)』
・『夢応(むおう)の鯉魚(りぎょ)』
・『仏法僧(ぶっぽうそう)』
・『吉備津(きびつ)の釜(かま)』
・『蛇性(じゃせい)の婬(いん)』
・『青頭巾(あおずきん)』
・『貧福論(ひんぷくろん)』
以上、9話からできている。
「白峰」では、崇徳院が怨霊となって登場したりします。
「浅茅が宿」、「蛇性の婬」の2話は、1953年に映画化されたりしたようです。
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文芸部に所属する高校生の輪読会の体をとっているので、ちょっと分かりづらい部分もあるけど、私は面白いと思った。
一緒に紹介されてる海外作品も気になったし、もともと古典が苦手な私にとっては、この形式ありだと思う。
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入門として読みたかったから、もう少し雨月物語の余韻が残るようにして欲しかったな。必ず最後に似た海外作品や落語の語りが入るので、それを紹介したいがための雨月物語なの?とまで感じてしまった。
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金原瑞人と佐竹美保の名前だけ見て借りた。金原瑞人よ?!そんで表紙の夢応の鯉魚のイラストすごない?!?!てなって。
これまでいろいろな雨月を読んできたけど、これは群を抜いて分かりやすいと思う。
特に白峰は、高校生が崇徳院の生い立ちから調べて解説している体でたくさん背景を入れ込んでくれてるので、ものすごく分かりやすいよ。
それで言うたら仏法僧もかな。
吉備津の釜はコテコテの岡山弁やし、吉備津神社の温羅の話もしてたよ。
正直、文芸部なだけの高校生がここまで分かりやすく語り直せるわけがねえだろ、と思うし、話の本筋に入ると急に書き手が変わったみたいになる話もあるし、そこと高校生の人格(おじさんが作った無理のある若者口調)とのギャップが意味わからなさすぎてそこまで高評価になってないのですが、ストーリーを楽しむには十分やし、ものすごく分かりやすくて読みやすいから、雨月を初めて読む人にはおすすめできると思います。
いろいろな文学に触れて、読んでほしいんだなという金原さんの思いもよく伝わってきたよ。