紙の本
暗く重いテーマに反して、爽やかな読後感。
2021/08/13 18:18
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投稿者:ぷちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
LGBT・薬物・スキャンダルと、社会的なテーマばかりを扱っているので、暗く重い話なのかと思い、読み始めました。
ですが、一人称の文体のためか、読みやすく、あっという間に読み終わっていました。
LGBT・薬物・スキャンダルについて、キャラクターたちがそれぞれ考えを述べるシーンがあるのですが、押し付けや共感を求めてくる感じではなく、あくまでも自分たちの生き方の一つとして語られているので(色々な意見をお持ちの方がいらっしゃるとは思いますが)、自分は爽やかな読後感でした。
表紙と裏表紙には作中のワンシーンが描かれています。読む前は、社会的なテーマを扱った作品には合わない表紙なのではないかと思っていたのですが、今はとても気に入っています。挿し絵みたいで、素敵でした。もし、文庫化して、挿し絵を入れるようであれば、同じ方に描いて頂きたいです。
ただ、作中に男同士の性描写が何度かありました。自分は爽やかな文体なこともあって、性描写の表現も素敵に感じましたし、この作品には必要なシーンだと感じましたが、苦手な方はご注意ください。
紙の本
爽やかな気分になる不思議
2021/04/04 16:14
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投稿者:ぶっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
LGBT云々ではない。
純粋に愛する事への照れや嫉妬・欲から幸福感までを網羅した普通の恋愛話だが、古市さんの手にかかれば極上の爽快感を得られる。
やはり、言葉や文章構成が巧みだと再認識。
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BLライトノベル。
物事の表面をさらりと撫でただけのような小説。
作者はモデルはいないと言っていたけれど、港くんがどうしても成宮くんと重なる。そのわりに格好良さがまるでなくってガッカリ。
古市さんの文章のなかでは最も中身がない感じ。
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古市さんの最新作という事で、何の気なしに購入したのですが、読んでみると中身はBL小説でした。
あの古市さんがBL小説を書くとは驚きでした。
主人公は、オランダ・アムステルダムの日本食料理店で働くヤマト。元々、かつて恋人だったサクラに誘われて移住してきたが、サクラの浮気が原因で別れる事に。
その後、帰国することもなく、淡々と過ごしていた。ある日、Facebookからメッセージが。浪人時代の友人・コーヘイが旅行がてら、近くに来たという。彼とは10年ぶり。
しかし、ヤマトと再会するだけでなく、もう一つ用事があるとのこと。それは出会い系アプリを通じて、チャットを続けるうちに親しくなり、会う事になった。しかも相手は男で、コーヘイ自身、ゲイということに初めて驚いた。
そして、その相手が登場。その人は、かつて俳優として活躍していた港颯馬。薬物疑惑で引退になった経歴をもつ。
すぐに帰ろうとしたところ、ふいに港からキスされた。
そこから、ヤマトの心が揺れ動いていきます。
序盤を読んでみると、これはバッドエンドなの?と思わせるような文章でしたので、色んな想像をかき立てながら、読んでいました。結果的には、ラストから序盤に繋がっていて、なるほどこんな背景があるから、このような感じになる運だと思いました。ハッピーかバッドかはぜひ読んでみてください。
文章としては、今までの作品と似ていて、どこか無機質で論理的に描かれていました。(ちょっとディスっているところも面白かったです)なおかつ艶かしいところもありました。
具体的な固有名詞も使われていて現実的ですが、同性愛というよりはBLの雰囲気が漂っている印象でした。
ヤマトと港が会う回数を重ねるたびにヤマトの心が揺れ動きます。そこには「人」として恋する自分や港の周りの人に対する嫉妬する自分がいて、側から見たら、それは片思いにしか見えません。
ヤマトの心の動きを丁寧にドライに描かれてるので、BLが好きな方にはたまらないのではないかと思います。
恋愛だけでなく、ドラッグや元恋人の再会なども盛り込まれています。自分にしかわからない一面や関係者からみた自分には、決して一緒ではなく、それを第三者が入ってくるのはおこがましいなと思ってしまいました。そっとしてあげることが一番だなと思いました。
アムステルダムを舞台にヤマトと港は今後どうなっていくのか。古市さんがBLを書くとは驚きでしたが、恋をすることは異性も同性も関係なく、フィーリングなんだなと感じた作品でした。
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コロナでの自粛生活が始まった頃から、古市さんが執筆されていた作品。
Twitterで、ほぼ毎日アップされていたので、日々の楽しみでした。
それが加筆修正されて単行本に!
感慨深いものがあります。
古市さんの小説は、これまで「死」をテーマにしたものばかりでしたが、この作品は「生」を感じる。
暗い日常だからこそ、明るい前向きなストーリーを。
古市さんの優しさが伝わってきます。
日本にいたら出会うことがなかったであろう一般人と芸能人。
男性同士の恋愛。
大きなカテゴリーでくくるのがナンセンスに思える。
好きならそれでいいじゃない。
二人がこの先もずっと幸せでいてほしい。
そう願いたくなる作品でした。
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ドラッグやセクシャリティに対してキャパシティの広いというアムステルダムが舞台。
恋人に裏切られ日本料理店でうつうつと働くヤマト、親友のリークによるドラッグスキャンダルで芸能界から去ったゲイの港。
まずは二人の出会いの場面の衝撃度。そこから始まるっ!?今後の展開はネガティブな方向に向いていくよね?絶対ハッピーエンドはないわぁ…憂鬱なラストを覚悟しながら読み進める。
一般人と元芸能人。「孤独」という共通点はあってもしょせん住む世界は違うし、性的指向も違う。どうやっても続く関係とは思えない。けれど、二人の間のハードルはあっという間に低くなり、そして消え去っていく。
「友情」と「恋愛感情」、その違いを考える。
誰かの特別になること、誰かのために何かをしてあげること、誰かのそばにいたいと思うこと、には違いがないのに。ただ、「恋愛関係」にない相手を言葉の力だけで支えることの困難さ。いや、それを困難と思うこと。
それにしても若い時から芸能界にいて世間知らずに思われる港くんはしなやかで打たれ強くてクレバーで優しくて、そして名言が多い。いやぁ、「港君名言集」を作りたいね、ほんと。
「過去はね、変えられるはずなんだよ。もしかしたら、未来よりもずっと簡単に」と
「夢を叶えることと同じくらい、願った夢を忘れないことも大事だと思うんだよ」は、心のノートに刻み込む。
これ、港くんがパーフェクトすぎて嘘っぽい、という意見も出るかもしれないけど、ナイーブさも含めてこれくらい完璧であってこそ、の物語とも。一種のファンタジでもあり。
今まで、男同士の恋愛小説にはあまり心を動かされることがなかった。否定はしないし理解もする、でもそこに必要以上の付加価値を見つけることができずにいた。
けれど、今回この小説を読んで、この世界観をみんなが求める意味が分かった気がする。
繊細で深い「友情」と「恋愛」が混在する関係。純粋で湿度の低い二人の「愛情」がずっとずっと続きますように、とそう願わずにはいられなかった。
それから、ヤマト君の作る料理がおいしそうで、夜中に読むとつらいね、これ。
そしてもし実写化するなら、と妄想。港役は、アタクシとしては綾野剛一択。あとはヤマトくん。誰がいいかな、とにやにや。
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心温まる良い話だった。
愛し、信頼関係にあるならば、それで十分。
異性でも同性でも。
古市さんの本にはブランド名や注目スポットが実名で出て来るので、それをググったりしながら読むのも楽しみ。知らないのばかりで新鮮です。
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港くんと出会って変わっていく世界。
港くんに対する気持ちが愛なのか友情なのか分からない。
悩みながらも、やがてそんなこともうどうでもいいくらいになっていく2人の関係
物語の中で、港くんが言った、過去は変えられるはず。未来よりもずっと簡単に。
事実は変わらなくても解釈次第で乗り越えられることもあるんだなぁと共感した。
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古市さんのイメージと違った。
純粋に気持ちが寄り添っていく様が、キラキラしたアムステルダムの風景をバックに、より魅力的に感じた。素敵✨
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永遠なんてないと分かっていても、この人との時間と関係がどうか永遠に続きますように…
そう願ってしまう気持ちが後半部分に詰まっていて胸が久しぶりにキュッとなった(笑)
元芸能人のみなと君と元恋人に流されるようにアムステルダムまで着いてきてしまった主人公のヤマト。
冴えない主人公のヤマトが元芸能人なだけにキラキラとしているみなと君に惹かれて行く過程で、自分はゲイじゃないのにと言う気持ちと、
どうしようもなくみなと君に惹かれてしまう自分に戸惑いを隠せないあの恋している時のぐちゃぐちゃした感情が、甘酢っぺぇ!!
となりながらニヤついた。
男同士だからとか女同士だからとか、偏見は沢山あるとは思うけど、でもこの時間が永遠に続きますように。
ずっと傍に居られますように。
と言う大切な人を大事にしたいという気持ちは男女同士でなくても変わらないのだと思う。
ダーク落ちとかあるかなと心配もしたけど、どこまでも相手を大切にしたいという気持ちが溢れたまま終わってて、ホッとした。
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古市憲寿さんの新刊はなんとBL小説。オランダのアムステルダムに住む日本人のヤマトは、友人からの紹介で元俳優の港颯真に出会う、港は写真週刊誌スキャンダルで芸能界から姿を消して世界を転々としている中で、アムステルダムに住み始めたのだが、彼にはいろいろな秘密があり… ネトフリ、インスタ、Uberなどなど最新のツールが続々登場するいつもの古市節は健在で、オランダが舞台とあってドラッグ描写も目立つ。オランダが脱出ゲームの聖地ということを初めて知った(調べたら現地まで行ってプレイする方もいるようだ)。
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好きなところあり過ぎて困るけど、中でもお気に入りをひとつだけメモ。
昔は、いくらキスやセックスをしても、本当に二人が誤解なくつながり合っているかなんてわからないと冷めた見方をしていた。いくら言葉を尽くしても、互いの気持ちを伝え合うのは無理なのだから、誤解は広がっていく一方なのではないか、と。だけど港くんと出会って、僕は考え方を少し変えた。
誤解とは大前提なのだ。あらゆる関係には、誤解や思い違いやすれ違いが含まれている。その中で、誤解を解こうとする過程にこそ意味があるのではないか。完壁に理解し合うことが無理だとわかりながら、その状態に近付こうとする試行錯誤こそが、誰かを思い合うことなのだと思う。
だからきっと、愛の言葉と言い訳は似ている。わざわざ「好きだよ」と口に出すのは、好きじゃない可能性を否定するため。「ずっと一緒にいたい」と伝えるのは、やがて別れる日が来るのを予感しているから。いつか港くんに長いラブレターを書くことが
あったら、きっと言い訳の言葉ばかりが溢れてしまうのだろう。
世界には無数の可能性が潜んでいて、そのどれを選んでも、おおよそ日々はつつがなく続いていく。僕たちが付き合い続けても別れても、明日は間違いなく訪れる。だからきちんと伝えないといけない。世界に二人だけしかいなければ、伝える必要のない言葉。 世界に愛という感情しか存在しないならば、わざわざロに出すまもない言世界が永遠に続くのならば、確認するまでもない言葉。
「僕、港くんのことが好きです」
「ヤマトも酔ってるの?」
「約束したじゃないですか。ちゃんと思ってることはロに出そうって」
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穏やかな恋愛小説の中に人の本質を垣間見るような文がところどころにあって面白かった。映画化されたらいいなぁと思った小説でした。
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作家さんに対してあまり良い印象がなかったものの、内容が気になって読んでみた1冊。
読み終える頃には白旗を上げて突っ伏す羽目になりました……。
全く綺麗なことなんて無い日常の中、恋人の裏切りという呪いを抱えて燻るヤマトと、芸能界の荒波に沈み、薬物に堕ちて溺れつつも危うい魅力を失わない港くんが、どちらもフィクションらしいキャラクター造形でありつつも、リアルと地続きの人間くささがあって魅力的でした。
時には旧知の友人のようで、時には恋人の一歩手前のようで。
互いにひとりの人間と人間として、距離を縮めていく様には作中何度もドキドキさせられました。
ヤマトの抱くそれは紛れもなく「恋」だろう!とどれだけ背中を押したくなったことか……。
読了後、作品タイトルでもある曲の和訳を調べて、港くんも等しくヤマトのことを想っているのだな、と改めて感じることが出来て、本当に素晴らしいエンディングで良かったです。
男性同士の恋愛、というよりも、本当に人間としてお互いに惹かれた。
そういう雰囲気が作品全体にあり、恋愛を性別ありきで語るのはナンセンスだよな、と日頃思っている身として、その点でも個人的に評価が高いなーとも思います。
今年イチ、読んで良かったと胸を張って言える作品でした。
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古市憲寿作品はすべて読んだくらい最初の作品『平成くんさようなら』から好きだが、今作が今までで1番良かった。古市さんがBL作品!?と驚いたが、もうきゅんきゅんが止まらなくて一気に読んでしまった。もうヤマトが港くんのことをずーっと好きで、「もう港くんのこと大好きじゃん!」と何度思ったか知れない。もうずっと幸せでいてほしい。