LIFESPAN(ライフスパン) みんなのレビュー
- デビッド・A・シンクレア, マシュー・D・ラプラント, 梶山あゆみ
- 税込価格:2,640円(24pt)
- 出版社:東洋経済新報社
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2021/01/04 08:40
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【非老人】
虫歯を思い出しました。
昔、虫歯はしっかりと歯を磨かないことにより虫歯になるという認識で、ほとんどの人が虫歯になり虫歯がない人は朝、昼、晩としっかり歯を磨いている人だと思っていました。
しかし、虫歯は伝染病でした。親から子へ伝染させていたのです。親が持つ虫歯菌を親が使用したスプーンなどを介して子供へ伝染させていたのです。
わたしも妻も虫歯はありますが、娘には虫歯がありません。
親が使用したスプーン、箸で子供に直接食事を与えることはせず、鍋なども直箸をせず別にお箸を用意するなどして親の持つ菌に触れないようにしました。おかげで娘はたいして歯を磨いていないにも関わらず虫歯がありません。(歯そのものは損傷しなくても歯周病の心配はありますが・・・)
老化も病気の一つとされるでしょう。
では、永遠に健康で長生きするのでしょうか。分子レベルでみると食物により新しい分子が体に取り込まれて古い分子と入れ替わっているだけです。見た目は変わらず中身は新しくなっている状態です。こう考えると永遠に生きることができることになります。
よくわからなかったのが120歳という区切りです。なぜ、120歳までは健康でいられるのかということです。細胞が劣化しないのであれば、何によって人は死を迎えるのでしょうか。老衰がなくなると病気や事故しかないということになります。
老化という病気にかからないようになると他の病気にかかることも減るため病死も減りますが、長生きすればするほど、事故に遭遇する可能性は高くなります。事故死が増えるのでしょうか。まだ、よくわかりません。
2021/01/09 23:53
投稿元:
【本書の概要】
老化とは避けて通れぬ自然現象ではなく治すことのできる病だ。そして、老化はがんや脳卒中、心筋梗塞といった各種病気の発症確率を上げる「病の大本」である。
したがって、我々は老化を病気と見なし、これを克服するためのアプローチをしたほうがよい。各種病気への意識を少しでも老化に振り分け、身体を蝕む敵への根本的な治療を行えば、健康寿命が延びるだけでなく、老化を遅らせたり細胞のリセットを行うことができる。
【詳細】
1 何故生物は老いて死ぬのか
我々の遺伝子には、遺伝子Aと遺伝子Bから成る「サバイバル回路」なるものが備わっている。この回路は、細胞が自らの複製を、生き延びる確率の高い時だけに作れるようにする働きを持つ。言い換えれば、環境が厳しい時(DNAの損傷が見られるとき)に細胞の増殖を遅らせることで、損傷が治るまで自身の修復にエネルギーを振り向ける仕組みである。
今までの生命科学では、DNAの損傷、恒常性の消失、ミトコンドリアの機能の低下などの様々な要因により老化が起こると考えられてきた。それは間違いではないが、「そもそもどうしてそうした特徴が表れるのか」は解明できていなかった。
筆者は、これら諸要因に共通する「唯一の」原因を探し出した。それは「エピゲノム情報の喪失」である。
老化とは情報の喪失だ。
体内には2種類の情報がある。1つはデジタル情報であり、A、G、C、Tで表されるDNAがこれに該当する。もう1つはアナログ情報であり、これは「エピゲノム」と呼ばれる。
エピゲノムの役割は、分裂したばかりの細胞に対して、「どんな種類の細胞になればいいか」を教え続けることである。それぞれの細胞は原初から何百種類もの異なる細胞へと分化していくが、そのプロセス全体を調整しているのがエピゲノムだ。
エピゲノムは「クロマチン」という構造にしまわれ、いくつかに分割された上で「ヒストン」というごく小さな珠状のタンパク質に、ヨーヨーのように巻きついている。親から子へと受け継がれる特徴のうち、DNAの文字配列が関わっていない遺伝の仕組みを「エピジェネティクス」という。
この「DNAによらないアナログな仕組み」が、老化を止めるための重要な要素である。
何故ならば、老化は昔からDNAの変質によって引き起こされる不可逆的な現象だと捉えられてきたが、実は老化の原因となるDNAは見つかっていないからだ。
であるならば、エピゲノムという可逆的なアナログ情報に生じたエラーを取り除くことができれば、若いころのDNAを復活させることができるはずなのだ。
2 老化遺伝子は見つかっていない
老化の症状に影響する遺伝子はすでに見つかっているが、老化の原因となる単一の遺伝子は見つかっていない。それは何故かと言えば、私達の遺伝子が老化を引き起こすために進化したわけではないからである。
ゲノムをピアノだとすればエピゲノムはピアニストのような関係である。ピアノの大きさや形によってできることは限られる。芋虫は人間になれないが、その代わり、変態の過程でエピゲノムが変化することにより、ゲノムの配列自体は何も��わらないのに蝶へと変身すする。一卵性双生児は生まれ持ったゲノム配列は同一なのに、エピゲノムの力でまったく別の方向に成長していく場合がある。エピゲノムの力によって、DNA情報を保持し続けたまま身体が変化していく。
では、老化という身体の変化はどのように起こるのだろうか。
エピゲノムはDNAの損傷など、細胞が大きく傷つけられたとき、機能不全が生じる。ピアニストで言えば、「レ」の音を必ず間違えて演奏しつづけるようなものだ。たった一度のミスなら気にならないが、これがずっと続くと協奏曲全体が崩壊していく。この情報変換のミスが老化である。
3 老化の情報理論
老化の典型的特徴の1つ1つがなぜ起きるのかは、老化は情報ミスであるという「老化の情報理論」で説明できる。この理論は、一見ばらばらに思える老化の要因を、普遍的な生死のモデルへと統合させることができる。それは大まかに表すと次の通りだ。
若さ→DNAの損傷→ゲノムの不安定化→DNAの巻きつきとエピゲノムの混乱→細胞のアイデンティティの喪失→細胞の老化→病気→死
このモデルの「DNAの巻きつきとエピゲノムの混乱」「アイデンティティの喪失」は、「サーチュイン」という酵素がカギを握っている。
筆者は酵母の研究をしていく中で、サーチュインという寿命を調整する酵素を発見した。サーチュイン遺伝子の中で酵母の寿命を延ばすのはSIR2遺伝子だ。同様の寿命を延ばす遺伝子が哺乳類にも、SIRT1~SIRT7までの遺伝子として備わっている、サーチュイン遺伝子の働きは災害対応部隊の指揮官のようなものであり、DNAが損傷したとき、普段の仕事(遺伝子の制御を通して、細胞がアイデンティティを失わないようにすること)を手放し、損傷個所に修復にかけつける。
ここでサーチュインが酷使される(DNAの損傷が頻発する)と、普段の仕事――とりわけ生殖――に手が回らなくなり、生命に深刻なダメージが及ぶ。深刻なダメージの原因は、サーチュインや仲間が修復箇所から元いた場所に帰れなくなることだ。すると、自宅と出張先にあった遺伝子のスイッチが、オンになるべきなのにオフになったり、その逆が起こったりする。これが「ゲノムのアイデンティティが失われる」ということだ。このゲノムの混乱状態が「老化」である。老化は遺伝子変異ではく、DNAの損傷を引き金とするエピゲノムの変化によってもたらされているのだ。
しかしそれは、裏を返せば老化が不可逆的でないということに他ならない。エピゲノムの混乱を収束してやれば、若いころのDNAがまた動き出す。
例えば、寿命を延ばす酵素の量を増やす。細胞が作り出せるsir2酵素の量には限りがあるものの、sir2が増加して細胞内に十分な量ができれば、いつもの仕事とDNAの修復を並行して行える。
マウスの実験で、NADというサーチュインを活発化させる物質を混ぜた餌を与えたら、マウスが延々と走り続けるようになった。ある方面での若返りが不可能ではないことを間違いなく物語っている。
4 老化を病気だと認識し、死と寿命の概念を変えるべき
ここまで見てきて分かるとおり、老化は避けられないものではない。老化とは病気である。
人間はかつてから、年をとる=老化という認識のもと��避けられない自然現象として受け入れてきた。しかし、老化が病気であるとすれば、人間にとって老化する以上に危険なことなどない。にもかかわらず、私達はそれが猛威を振るうに任せて、もっと健康になろうと別の方向を見て闘っている。
別の方向とは、個々の病気を治療することだ。一つの病気を治したからといって、別の病気で死ぬ確率が低くなるわけではない。私達に必要なのは、病気の全てを取り払うこと、つまり身体の衰えをもたらし、病的異常を伴う「老化という病気」を撲滅することである。
生体のふるまいを調べても、死が避けがたいことを示すものは何一つ見つかっていない。老化はエントロピーの増大と言えなくもないが、エントロピーが増大するのは、外部の環境と切り離された「閉じた系」の場合だ。生物は閉じた系ではない。
5 長寿遺伝子をいますぐ働かせる方法
食べる量を減らすこと。カロリー制限が長寿につながることは周知の事実だ。1978年には、長寿県で知られている沖縄の成人の摂取する総カロリー量が、本土の成人より20%も低かったことが明らかになった。
とは言っても、現代において長期的にカロリー摂取を制限するのはとてもつらいものだ。そこで効果的なのは、「間欠的断食」である。朝食を抜いて遅い昼食をとったり、週に2日はカロリーを75%に減らしたりする方法だ。アミノ酸を少し制限するのもよい。
これらは、原初のサバイバル回路を始動させること――細胞の防御機能を高め、環境が厳しい時にも生命を維持できるよう病気や体の劣化を防ぐこと――である。
サバイバル回路を作動させることが有効ならば、それは食事以外の活動、例えば運動でも構わない。運動が遺伝子のスイッチを入れ、私達を細胞レベルで若返らせてくれる。
他にも、寒さに身を曝せばサバイバル回路が動作することが分かっている。(暑さに身をさらすのがプラスに働くかははっきりしていない。)
6 薬
食事、運動以上にエピゲノム系を変えるツールは「薬」である。以下が長寿に効果のあると言われている薬だ。(はっきりと科学的に証明されているわけではないので、注意すること)
ラパマイシン:ToRを阻害し、NADの生産を促して寿命を延ばす働きを持つ。
メトホルミン:糖尿病治療薬。ミトコンドリアの働きを活性化し、アンチエイジング効果を持つ。
レスベラストロース:sir2酵素を活性化して寿命を延ばす。赤ワインに含まれ、カロリー制限と同様の効果が得られると期待されている。
NMN:NAD増強分子のひとつ。これを摂取した女性や馬が、生殖能力が回復した事例が報告されている。
7 未来において、我々が老化を防ぐために取り得る選択肢
①老化細胞を除去する
老化細胞はサイトカインという小さなタンパク質を放出し続けて炎症を起こし、免疫細胞のマクロファージを引き寄せて組織を攻撃させる。サイトカインは周囲の細胞をゾンビ化させ、さらに多くの老化細胞を生み出す。
→セノリティクスと呼ばれる老化細胞除去薬が開発されている。これは老化細胞内で細胞死のプログラムを誘導するもの。
②細胞をリセットする
老いたDNAであっても、再び若くなるための情報を保持している。つまり、老化はリセットできる。
しかしながら、リセットの方法をDNAに伝えるための「訂正装置」が必要なのは言うまでもない。この「訂正装置」になり得るのが、2006年に発見された「ips細胞」だ。
ips細胞は未成熟な細胞であり、誘導すればどんな種類の細胞にも変身できる。このリセットスイッチは、人の細胞を培養皿で初期化できるだけでなく、全身のエピゲノムを「初期化」できるはずだと筆者は信じている。
人は将来、山中因子(数種類のips細胞の因子)を身体に注射し、老けてきたと思ったら山中因子を活性化させる錠剤を服用して、40歳の身体を「その都度」20歳まで若返らせることが可能になるかもしれない。
若返りのために活躍していると考えられるのは、「TET」と呼ばれる酵素である。DNAの損傷が頻発し、サーチェインがあちらこちらに移動して元の場所が分からなくなり、間違った場所に接続して更にDNAの損傷を誘発するのが老化のメカニズムであるが、TET酵素は、DNAについたメチル基という傷を取り除き、若々しいメチル基だけを残す働きを持つ。
細胞のリプログラミングは間違いなく次のフロンティアになるだろう。
8 一人ひとりに合った医療
世界中の数々の病院は、「ここに腫瘍があるならこういう病気だ」「こういう症状ならばこれだ」というようなアナログ式の、言い換えればだいたいの人にだいたい適用できる治療法を行っている。それが見当違いの治療ミスを呼ぶ。これからはDNA解析によって、実際にできたがんや病気をピンポイントで除去すると言った、患者一人ひとり違う精密医療を行うべきだ。
そもそも、人間は一人ひとり薬物への反応が違う。いずれはゲノム薬理学的な巨大なデータベースを前提として、患者のDNAをまず解析してからの治療になるだろう。
未来では、バイオマーカー、バイオトラッキング技術により、バイタルサインをリアルタイムでモニタリングし、身体の異常を常に感知して健康体へと導くことができるようになるだろう。
また、ゲノム解析の真価はそれだけでなく、ワクチン開発によるかかりうる病気の予防、パンデミックの阻止などにも役立つに違いない。
9 人々は寿命の延伸に恐怖を抱く
筆者は、DNAモニター、サバイバル回路の活性化、エピゲノムのリセットを通じて得られる寿命の延伸を「33年」と見積もっている。現在の寿命を80歳とすると、未来の寿命は113歳だ。老化の情報理論が正しく、このままのスピードでライフサイエンス研究が進めば、それは決して無茶な話ではないばかりか、エピゲノムを永遠にリセットし生き続けることも夢ではない。
しかし、この予測に対して人々は少なからず恐怖を覚える。それは次のような恐怖だ。
1 人口が増えすぎるせいで地球の資源が逼迫する
2 世代交代が無くなり、価値観が固定化される(社会動態が止まる)
3 社会保障の危機が起きる(その分長く働いてもらおうにも、過酷な労働環境にいる人にそれを強いるには道義的に無理がある)
4 かつてないほど格差が広がる(金が長生きを呼び、長生きが金を呼ぶため、長寿を謳歌し続けるのは富裕層だけになる)
とは言っても、地球の環境収容能力などを推測するモデルは、���間の発明とテクノロジーの影響を勘案していない。これら4つの不安要素が障害にならないことも往々にしてありうる。人口増加のペースは確実に落ち、人々は自分達に与えられた土地でうまく暮らせるよう環境を作り変えている。世界全体は豊かで幸福になり、高齢者の経験とスキルは向上し、老化を遅らせることによる経済効果は計り知れないのだから。
10 未来に対してわれわれがなすべきこと
「老化を病気と位置づけ、研究資金と人材を確保すること」。これが我々が今すぐするべきことだ。老化は人間のうち100%が感染する病気であり、これを改善できれば市民全体の幸福につながる。また、個々の病気を治療するコストよりも老化を治療するコストのほうが、トータルで見ると圧倒的に安い。
そのためには誰もが等しく医療を受けられるようにし、死に方をしっかりと考える(尊厳死をみとめる)ことも必要になってくる。
われわれは創意工夫で困難を乗り越えられる。寿命が長くなり続ければ未来は他人事でなくなり、先送りにしている問題と否応なく向き合わざるを得なくなる。今現在だけでなく、100年後、200年後の人類と地球の生態系と気候を心配するのだ。健康寿命が伸びることは世界を変える責任を持つことに他ならない。友よ、私たちはもっと人間らしくならねばならないのだ。
【感想】
生命科学の最先端に携わる筆者が、「老化は治せる」と論じる書。500ページにわたって酵素や細胞の働きから見た老化現象とその解決策を網羅的に論じており、それに付随するデータも相当に膨大である。余りに濃い内容であるため専門的な要素をかなり省いて要約したが、それでも5,500字ものボリュームになってしまった。
この本が面白いのは、不老を科学的説明だけで終わらせず、それに対する社会的・倫理的観点での反発を取り上げているところである。筆者自身が、不老にまつわる倫理的問題をメディアで恣意的に報道され、あらぬ被害を受けたこともあり、我々素人が考えるような懸念を大きくページを割いて考察している。
筆者はこの書で我々の目を覚まさせようとしている。老化なんてただの病であり、それは骨折した人がギブスを巻いたり、インフルエンザを心配する人がワクチンを打ったり、目が悪くなった人が眼鏡をかけたりするぐらい当然のことである。それにもかかわらず、老化に対する認識のアップデートがなされないのは、「老化は避けられないものだ」とする我々の思い込みのせいであり、「人間性」「自然主義」という、不確かであやふやな観念に囚われているからである。
読者に目を覚まさせるための語り方は実にバリエーションに富んでおり、実験を通して得られたデータだけでなく、実際に筆者の家族が体験したこともありありと記載されている。これが何とも巧みで、自分も「老い」に対する認識を見事に改めさせられてしまった。
本書の中で紹介され、筆者と筆者の家族も服用しているNMN、レスベラトロールのサプリメントを買って、自分の身体で若返りの実験をしてみようかと思う。商品によって純度はまちまちだが、安いものならいずれもネットで3,000円ぐらいだ。
――騙されている?いいや、騙されてもいいと思わせてくれるぐらい、この本には魅力があるのだ。
2021/01/11 09:54
投稿元:
老化は病気。
避けて通れないものではない。
対策をすることで避けることができる。
すぐできる老化対策は↓
・腹八分
・適度な運動(毎日の15分から20分の運動)
晩年にどのように生きたいか
今すべきことは何かを考え
行動できる一冊。
全部をちゃんと読もうとすると挫折するので
途中の難しいとこはすっ飛ばすのもあり。
2021/01/11 22:17
投稿元:
生物の「老化」が、実は避けられない運命ではなく、治療可能な「病気」であるとの認識に立ち、第一線で活躍する研究者が老化のメカニズムや具体的な対処方法等を解説する一冊。
人が老化する仕組みは遺伝子レベルで概ね明らかになっており、老化(とその抑止)に直接関係する複数の「長寿遺伝子」や、それらの遺伝子を活性化する物質の存在も明らかになっている。人は長寿遺伝子を活性化するような生活習慣や活性化物質の摂取により、老化を遅らせられる可能性がある。著者はまた、最新の研究成果から、老化細胞を体内から除去したり、細胞自体を「リプログラミング」することによって若返りを促進するような「未来の老化対処策」も紹介する一方、「老化は自然現象であって抗うべきではない」という先入観が、更なる老化研究の推進を妨げるバリアになっていると指摘する。
近い将来には、我々一人一人の遺伝子情報に基づいてカスタマイズされた予防医療や、バイオトラッキングによるリアルタイムな健康状態の監視なども実用化の視野に入るが、そのような未来像に対しては、人口の爆発的な増加、大量消費・廃棄による資源の枯渇や環境汚染、社会保障制度の破綻や経済的格差の拡大などへの懸念から反対論も根強い。著者はこれらの論点に対しても、老化の抑止によって「健康寿命」が延びれば、高齢者がもっと活躍でき、社会的なイノベーションが起きる可能性が高まる一方、老化に伴う各種の病気に対処するための膨大な医療費が削減できることから、老化研究を否定する根拠にはなり得ないと一蹴する。各論では賛否あるのかもしれないが、「人生100年時代」がより現実的かつよりポジティブに捉えられるようになる良書。
2021/01/11 20:54
投稿元:
デビッド・シンクレア「LIFE SPAN」読了。本書は、老化を病気の1つと捉えておりとても斬新な考えだと思ったが、確かに現在高齢者の体の状態には改善の余地があるようだし、歳を取っても体が不自由では長生きもどうかと思うと筆者の主張も同意できる。研究が進み豊かな老後を過ごせる社会が到来する事を望む。
2021/01/20 09:31
投稿元:
老化とはエビゲノム情報の喪失である。エビゲノムはソフトウエア。細胞にどんな細胞になるべきかを教える。
ホルミシス=毒にはならない程度の刺激。プラスの作用を及ぼす。疑似的にホルミシスを与える薬。
老化を死とは認めない社会。かつては老衰や高齢による衰弱が死因だった。個々の病気を治療するだけでは健康寿命は伸ばせない。平均寿命は伸ばせても健康寿命は伸ばせない。老化は一個の病気、治療できる。
食べる量を減らす。ヒポクラテスも気づいていた。コルナロ『無病法』。沖縄は摂取カロリーが少ないため、長寿で健康寿命が長かった。
間欠的断食でも効果は同じか高い。月に5日カロリーを制限する。
中国南部のババヤオ族は朝食を取らない。一日16時間何も食べない。16:8ダイエット。
週に2~3日食べない。毎月1週間食べない、など。
mTORを働かせないようにするとオートファジーを促進する。たんぱく質の再利用は健康寿命を延ばす。カロリー制限はこの作用による。肉や乳製品の摂取量を減らしても同じ効果がある。
メチオニン摂取を制限すると体脂肪が減る。
筋肉がつくのはロイシンがmTORを活性化するから。
ベジタリアンが長寿である理由も同じ。
運動するほどテロメアが長い。運動は体にストレスをかける。高強度インターバルトレーニングが活性化効果が高い。
断食と運動を組み合わせる必要がある。
3食の食事を減らす、体を動かす、食物中心のたべものを摂る。
寒さで褐色脂肪を活性化する。「クライオセラピー」
抗老化薬の可能性があるメトホルミン。糖尿病の薬。
800㎎1錠で10時間後には効果が表れた。
サプリメントのNMN。
高齢者が若者の職を圧迫する、は誤った考え。人類はいつでも人が多すぎて仕事が足りなくなる、資源が足りなくなる、を心配していたが、予言は実現しなかった。女性の就労率が増加したときも同じ。
寿命を長くすることと健康寿命を長くすることは同じではない。健康なら経済効果を発揮できる。
長い人生が持たらす人間らしさ=急いでいると、他人を助けなくなる=修道士に行った実験から。寿命が延びれば、急がない人生になる効果が期待できる。
医療費全体を抑制するには老化を解決することが一番安上がり。老化を遅らせれば健康寿命を延ばす。
オーストラリアは健康寿命が世界平均より10年長い。
結局、命を失うことではなく人間性を失うことが怖い。
食事のカロリーを減らす、くよくよしない、運動する、以外の方法。
NMN1グラム、レスベラトール1グラム、メトホルミン1グラム。ビタミンÐ、k2摂取。アスピリン8.3㎎服用。
砂糖、パン、パスタの摂取を控える。
一日一食を抜く、または少量に押さえる。たいていは昼食。
歩く、階段を使う。ジムで筋トレ、ジョギング、サウナと水風呂。
NMNの代わりに安価なNR(ニコチンアミドリポシド)でもよい。体内でNMNに変換され、NAD濃度を上げる。
2021/02/23 03:10
投稿元:
【はじめに】
ハーバード大学医学部の遺伝学の教授であり老化研究の権威であるデビッド・シンクレアの手による「老化克服」を説いた本。老化は病気であり、治療することができ、治療するべきであると主張する。今後の健康寿命を延ばすための鍵になる理論を展開している。
副題は"Why We Age - and Why We Don't Have To"。本書の内容はまさしくその通りで、老化のメカニズムの解説の後、老化を運命として受け入れるのではなく、今できることも含めて対策を提案するものである。
『LIFE SHIFT』でリンダ・グラットンは、日本で今日生まれた子供の半数は107歳以上生きると推計されると言った。その根拠のいくばくかがこの本にあると言っていい。著者がハーバード大学教授であると言われないと本当かいなと思うところもあるが、懇切丁寧に説明されると、いやここまで来たのだというのが正しいのだろうなと思えるのだ。
「老化は1個の病気である。私はそう確信している。その病気は治療可能であり、私たちが生きているあいだに治せるようになると信じている。そうなれば、人間の健康に対する私たちの見方は根底からくつがえるだろう」
「地球上で最も致死性が高く、最もコストのかかる病気が目の前にあるのに、それについて研究している者はわずかしかいない。まるで、この惑星全体が思考停止に陥っているかのようだ」
というのが著者の思いである。それでは、どういうことが書かれているのか、まずは「老化」とは何なのか、そして老化を防止するためにはどうすればよいのかを見ていきたい。
【老化とは】
著者は、「老化は病気である」という。つまり、老化には原因(病因)があり、その原因は取り除く(治療する)ことができるということを意味する。しかも、この「老化」という病気は、非常に高い罹患率(ほぼ100%)を誇り、他の多くの疾病を引き起こす万病のもとともなる病気なのである。
老化の原因は、細胞分裂で繰り返される遺伝子のコピーの劣化が原因ではないかと長らく思われていた。テロメアの数が減っていくことが明らかになり、細胞分裂の回数(当然歳を取ると累積回数は増える)が深く関連していることからコピーの劣化という推測は腹落ちしやすいものであった。また、進化の過程で老化による個体の新陳代謝が有利となるために、老化を進める遺伝子があるのではないかとも想定されてきた。また、フリーラジカルが細胞を傷つけることによって老化するという説も根強くサポートされてきた。
しかし、著者が主張する理論はデジタル情報であるDNAの劣化ではなく、細胞の分化に関わり、アナログ情報でもあるエピジェネティックの劣化が原因だと指摘する。エピジェネティックは、DNAメチル化やヒストンの化学的修飾などによって各細胞の中でどのゲノムがどの程度発現するのかを調整するための仕組みだが、繰り返すが遺伝子のようにデジタルではなく、アナログな情報である。このアナログであるがゆえに時間の経過にともなって劣化し、細胞の分化が緩み、その場で働くべき機能を徐々に果たさなくなるというのである。
そのエピジェネティクスを維持するための機構がサーチュインと呼��れるものである。古代の生物の頃より、DNAのエピジェネティックの修復をできるようになった遺伝子群があり、それを今もなおサーチュイン遺伝子として人間を含む多くの生物が保持しているという。また、この仕組みはDNAの傷を修復するためにも活用されている。著者はこの仕組みを原初のサバイバル回路と呼ぶが、この仕組みが皮肉にも細胞の劣化を起こす老化の原因となっていると指摘する。さらに、これが生物が老化する唯一の原因だとするのだ。
およそ、細胞老化の仕組みがわかってきた、として著者は次のように宣言する。
「今現在の老化研究は、1960年代のがん研究と似たような段階にある。老化がどのようなもので、私たちにどんな影響を及ぼすものなのかについては、すでに十分な理解がある。しかも、老化の原因は何か、どうすればそれを食い止められるのかについても、研究者のあいだで意見の一致を見つつある。この様子で行くと、老化を治療するのはそれほど難しくなさそうだ。少なくとも、がんを治療させるよりはるかに簡単なはずである」
「若さ→DNAの損傷→ゲノムの不安定化→エピゲノムの混乱→細胞のアイデンティティの喪失→細胞の老化→病気→死」
というステップが老化を説明するものであり、このステップのどこかに介入することが老化を抑えることにつながるのだ。幹細胞が分化して特定の体細胞になるイメージを理解するには著者が紹介する「ウォディントンの地形」が分かりやすい。この地形の中でビー玉の安定性が失われるのが老化だという。したがって、この安定性を維持することが老化に抗う秘訣なのである。
著者は、この細胞劣化による老化の統合理論を「老化の情報理論(Information Theory of Aging)」と呼んでいる。つまり「老化とは情報(=エピジェネティック)の喪失にほかならない」というのである。それにしても「エントロピー」は、様々な分野において”統合理論”を作ろうとする学者の中ではすこぶる評判がよい。意識についてもジュリオ・トノーニが統合情報理論(Integrated information theory of consciousness, 略: IIT)を確立し、エーデルマンがTNGS理論(神経細胞群選択説(Theory of Neuronal Group Selection))を提唱しているが、ここでもエントロピー含む情報理論が原理として採用されている。もちろん生命自体についても、スチュアート・カウフマンがまとめる自己組織の理論・複雑系の理論が柱となっており、ここでもベースはエントロピー・情報理論なのである。話はそれるが、エントロピーを含む情報理論こそがより根源的なものなのかもしれない。
【老化を防止する方法】
生体にストレスがかかると活性化するということから、著者は今すぐにできる対策として、カロリー制限(断食など)、動物性タンパク摂取量低減、特に加工肉を避ける、適度な運動、サウナや冷水につかるなどの健康法の説明が列挙される。カロリー制限などは最近かなり知れ渡っている印象がある。また、タバコは絶対にやめることだ。
これらを聞くと、結局当たり前の話に毛が生えた程度かと思うかもしれないが、ここからがおそらくはポイントとなる話だ。つまり、「老化治療薬」の可能性だ。
まず効果があるのではと見つかったのが、まず、糖尿病治療薬のメトホルミンである。日本では糖尿病の診断がないと処方されないが、国によっては入手可能な薬である。
ワインにも含まれるレスベラトロールも老化を抑える働きがあるとして注目されている。ブドウにストレスを与えたときに抽出し凝縮されたこの物質がSir2酵素を活性化する形で働くという。この効果はもしかしたらワイン好きのフランス人のパラドクスを説明してくれるかもしれない。何より重要なのはサーチュインが化学物質で活性化できるという事実である。この事実から科学者の目標が、より効率よくサーチュインを活性化する物質を探すという具体的な目標に翻訳することができるのである。
そして見つけられたのがNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)である。この物質がサーチュインの働きに必須な物質であることを発見したのは日本人研究者の今井眞一郎である。今井氏は今もその道の第一人者としてワシントン大学で研究を続けており、かつてサーチュイン遺伝子のSIRT1遺伝子やSIRT6遺伝子のコピーを増やすと健康状態が伸びるということも著者のシンクレア氏との共同研究で発見している。
このNADを増やすための前駆体が、知っている人は知っている比較的高価なサプリとしても販売されもしているNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)である。マウスへのNMNの注射の実験では、ミトコンドリアの働きが回復したり、糖尿病が治癒したり、持久力を向上させることが分かっている。ちなみに人間でもNMNを摂取したことによって閉経後の女性が生理が復活したという例も報告されている。加齢とともに細胞内のNAD濃度が下がることがわかっているだけに、この濃度を人為的に上げることでエピゲノムの雑音を除去して細胞の活性化を促すことが可能となるかもしれないと大いに期待されている。
老化のメカニズムに狙いを付けられたおかげで、NAD以外にもAMPK活性化分子、TOR阻害分子も期待されている。今もなお多くの分子が抗老化薬のターゲットとして検討されていて、初期臨床試験でも高い効果を発揮しているものもあるという。
また、これらの化学物質の他にも、老化を踏み止まらせるためのいくつかの研究が進んでいる。まずは老化細胞の除去が挙げられる。テロメアの短縮が老化を引き起こすのは、ヒストンの巻きつきが緩んで、そこからエピジェネティックの情報が失われるからだとされている。このとき、DNAが損傷したときと同じ反応が生じ、エピゲノム調節酵素が本来の持ち場から駆り出されてしまう。また、老化細胞(ゾンビ細胞)は、サイトカインを放出し続けて、炎症を起こし免疫細胞のマクロファージを引き寄せて組織を攻撃させることになる。そして、ゾンビ細胞はまわりの細胞もゾンビ化させる。こういった機構も、老化が始まり、放置するとどんどん進んでいってしまう原因のひとつでもある。この厄介もののゾンビ細胞を除去する薬として期待されているのが2018年から臨床試験が始まったセノリティックスである。こちらの薬に関しても数多くの研究が進んでいる。同じように、がん細胞を死滅させるために開発された免疫チェックポイント阻害剤を同じように老化細胞に対して選択的に免疫が効くようにすることができないかというのも新しい研究の方向になっている。
最後に挙げられるのが「細胞のリプログラミング」だ。細胞において、ウォディントンの地形を再読み込みさせる方法があれば、老化をもとに戻すことができる。著者はこれをDVDの表面に付いた傷を修復することに譬える。古い体細胞でも遺伝子情報が保持されていることは、体細胞からクローン生物を作ることができることから示されている。リプログラミングの鍵となるものとして著者が挙げるのが、山中教授が発見したiPS細胞と山中因子である。著者の研究室ではマウスでエピゲノムを若返らせる研究を日々行っており、多くの成果が上がっているという。その事例としてマウスの視神経を、ウイルスを使って山中因子を導入することで回復させた事例が報告されている。著者は老化の情報理論に基づくエピゲノムの劣化に直接働きかけるこの細胞のリプログラミングを老化治療の本命と見ているようでもある。もし細胞のリプログラミングが実現すれば、今世紀末までに150歳が手の届く年齢になっている可能性があるという。
【所感】
非常に分厚い本だが(kindleなので実際に厚くはないのだが)、その長さがあまり苦にならない本であった。老化という遅かれ早かれ世のほとんどの人が自分事化せざるを得ない内容であるからだ。
『ホモ・デウス』でユヴァル・ノア・ハラリが預言をしたように飢餓、疫病、戦争を克服した人類の欲望は、いまや人類が手にした科学技術の力で不老不死を目指すのは必然の帰結である。技術が加速度的に進歩する時代、方向性さえ一度示されればおそらくは想像よりも早くそこに達することができるのではないか。
リチャード・ファインマンは次のように語ったという。
「生体のふるまいを調べても、死が避けがたいことを示すものはまだ何一つ見つかっていない。だとすれば死とは少しも必然ではなく、この厄介事の原因を生物学者が発見するのも時間の問題と思われる」
そして今、死が避けがたいことを示すものを見つける代わりに、人類は老化のメカニズムとそこにブレーキを掛ける方法を手に入れつつある。そして、そのメカニズムに対応を行うことが期待されているのである。すでに研究者の間の国際会議では、人間の寿命が10年長くなるとどうなるのかが議論され、そういう未来が来るかどうかはもはや議論には上がらない。そうなったときに何をすべきなのかが話合われているという。
現実にそうなると、多くのことが変わる。例えば、健康寿命が大幅に増えたことがわかると、より死にたくない気持ちが高まることでバイオデータをリアルタイムで測定するセンサーを身につけることがより一般的になるかもしれない。取得されるデータでより多くのことができることがわかるとすれば、喜んでセンサーを身につけて情報を提供してくれることだろう。また、社会的システムへの影響もおそらく甚大だ。90歳で人が働くことは、今の世の中では想定外だが、いずれは当たり前の光景になるだろう。現在もうすでに中年となってしまったわれわれはそれに慣れないといけない。
著者の研究室では、経済学者とも手を組んで、長寿の未来の社会の予測モデルづくりを進めているという。変数は非常に多く、その予測は難しい。老化防止を受けることができるかどうかにも格差も題が広がり、さらに大きな問題になり続けるかもしれない。労働や教育にも影響���与える話である。未来学者はリアルに企業戦略上も必要な職種にさえなるかもしれない。
なお、ここで気を付けるべきは平均寿命が伸びるのと、健康寿命が伸びることは本質的に異なることだということだ。健康寿命を延ばすことは、社会の投資は何倍にもなって戻ってくる。寿命を長くするのと、健康寿命を長くするのとでは社会や経済に与える影響では全く異なるものとなるのだ。
タバコはがんになるリスクを5倍に引き上げるという。もちろんだからこそタバコは健康に害をなしていると言えるのだが、一方で人間は50歳になるだけでがんのリスクは100倍になり、70歳になると1000倍になるという。老化はこれだけ忌み嫌われているタバコと比べても相当に分が悪い。これは運命として受け入れるのではなく、抗うことができるし、また抗うべきなのだということが書かれた本。その運命に人類はもはや従わなくてもよい時代がやってくるのだ。
扱っているスケールが非常に大きな本。また射程が広いものの、足元の事実にはしっかりと軸を置いている。長くて読めそうにないという人は中田敦彦のYouTube大学をぜひ見られたし。現代人必須の情報。
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『自己組織化と進化の論理―宇宙を貫く複雑系の法則』(スチュアート・カウフマン)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4480091246
『脳は空より広いか―「私」という現象を考える』(ジェラルド・M・エーデルマン)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4794215452
『意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論』(ジュリオ・トノーニ)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4750514500
『LIFE SHIFT』(リンダ・グラットン)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4492533877
中田敦彦のYouTube大学
https://www.youtube.com/watch?v=Nw1r2G5HgEA
https://www.youtube.com/watch?v=N6ZBIbrJ5Qg
2021/05/07 13:10
投稿元:
老化は病気。治療することができる。
ほんと近い将来、世界は変わってるんやろなってことがよくわかる。
とりあえずオートファジー推進と加工肉は控えて、元気な90歳を目指すことにしよう。
2021/02/21 16:16
投稿元:
夢のような話だけれど、研究結果に基づいており説得力があります。
影響されて、早速カロリー制限や運動の習慣化をし、サプリを飲み始めました。
こんな本を学生の時に読みたかったです。筆者の研究への熱意が感じられて、読んでいる方もやる気が出ます。
また、やりたくても諦めていることが長寿化でできるようになるかもしれない、と将来への希望も持てます。
個人的には自分の最期を決められるようになる社会、筆者に完全同意でした。
ぜひ読んでみてほしいです。
2021/03/15 00:37
投稿元:
著者のD.シンクレアはちゃんとした研究者で、ちゃんとした雑誌に論文も多数掲載されているというのが「スマホ脳」とはちょっと違うところ。
前半は随分前のNHKのドキュメンタリー番組で見た内容とほぼ一緒
すなわち、老化は病気で治療可能なものであり、現在考えられているヒトの寿命である120歳を越え、しかも健康的に生きることが可能だという。たとえば、喫煙はがんのリスクを5倍高めると言われるが、。50歳になるだけで100倍。70歳になると1000倍になる。心臓病や糖尿病など、老化に伴う疾患は数多い。老化を治療することで、これらの病気も治療できる。
後半は本格的に長寿社会を迎えた場合の問題点(社会保障制度とか移植用臓器を3Dプリンタで作成するとか)についても語られるがこちらは今ひとつ。前半部分だけで十分かも。
老化は複合的な要因によって起きる
・DNAの損傷によってゲノムが不安定になる
・染色体の末端を保護するテロメア(特徴的な反復配列をもつDNAとタンパク質からなる複合体)が短くなる
・遺伝子スイッチのオンオフを調節するエピゲノムが変化する
・タンパク質の正常な働き(これを恒常性という)が失われる
・代謝の変化によって、栄養状態の感知メカニズムがうまく調節できなくなる
・ミトコンドリアの機能が衰える
・ゾンビのような老化細胞が蓄積して健康な細胞に炎症を起こす
・幹細胞が使い尽くされる
・細胞間情報伝達が異常をきたして炎症性分子がつくられる
特に重要なのがエピゲノムの乱れで、通常、エピゲノムは細胞の分化など初期に作用するだけだと思われているが、老化に伴い乱れてくる。そのため、皮膚細胞が皮膚細胞として機能しなくなるなどの問題が起こってきて機能しなくなる。
エピゲノム化に重要なのがサーチュインであるが、これはNADを使う。NADが細胞質内のSIRT2酵素の活性を高める。NADは加齢とともに減少するのでその前駆物質を補充してやらないといけない。体内ではNRがNMNに変換され、NADはに変わる。NRがをサプリとして飲んでいるヒトも多いがNMNのほうが安定しており効果が高いのではないかと著者は推測している。(研究としてはNRを用いたものが多い)
他にも古い蛋白の分解やDNAの修復、老化細胞によって引き起こされた炎症を軽減するmTOR、代謝をコントロールして絵ネギーレベルの低下に対処するAMPKなどの遺伝子も重要。これらは生体にストレスがかかると始動するので、低タンパク食やカロリー制限を行う。具体的には野菜や豆類や全粒の穀物を多く摂り、肉や乳製品や砂糖を控える。カロリー制限は20%ほど続けると長寿をもたらすという事例はたくさん知られているが、ずっとやる必要はなく、間欠的断食でよい。
・現時点で人気のある方法には、朝食を抜いて遅い昼食をとるもの(「16:8ダイエット」)や、週に2日はカロリーを75%に減らすもの(「5:2ダイエット」)がある。もう少し挑戦したいなら、週に2~3日は食物をいっさい摂らない(「イート・ストップ・イート法」)のもいい。あるいは、健康問題の権威であるピーター・アッティア医師が実践しているように、毎月丸々1週間を空腹で過ごしても���い。
・年齢集団において異なる種類の運動の効果を調べた。すると、プラスの健康効果をもつ運動形態はいくつもあったが、健康を増進する遺伝子を一番多く活性化したのは「高強度インターバルトレーニング(HIIT)」だった。これを行なうと、心拍数や呼吸数が著しく上昇する。高齢の被験者ほど、HIITによる活性化効果が大きかった
・ラパマイシンと同様、メトホルミンを摂取した場合もカロリー制限に似た効果が現われる。ただし、ラパマイシンのようにTORを阻害するのではなく、ミトコンドリアの代謝反応を制限する方向に働く。ミトコンドリアは「細胞の発電所」ともいわれ、ブドウ糖などをエネルギーに変換する仕事をしているが、メトホルミンにはこのプロセスを遅らせる作用があるのだ★20。すると、AMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)が活性化する。AMPKは酵素の一種で、エネルギー量が低下したときにミトコンドリアの機能を回復させる機能をもつ。メトホルミンはSIRT1(私たちの研究室のお気に入りの酵素)の活性も高める。ほかにも、がん細胞の代謝を抑えたり、ミトコンドリアの数を増やしたり(ミトコンドリアの機能低下を補うために細胞がミトコンドリアをより多く生成しようとするため)、折りたたみ不全のタンパク質を除去したりする効果が明らかになっている
・レスベラトロールに関する著者らの研究は一時期話題となった(Nature,425, 191-196, 2003)が、これはマウスでの結果。ヒトで同じ量を摂取しようとすると毎日赤ワインを1,000杯のむ必要がある。
・有名な老化説としてフリーラジカル説がある。これは現在では完全に誤りとされている。たしかにフリーラジカルはDNAを傷つけるが、実験的にフリーラジカルを増加させたマウスでも老化の昇降あ認められなかった。抗酸化剤の投与も寿命を延ばす効果はなかった。
・では私は何をしているのか。
・NMN1グラム(1000ミリグラム)、レスベラトロール1グラム(自家製ヨーグルト★7 に振り入れて混ぜる)、およびメトホルミン1グラムを毎朝摂取する。
・ビタミンDおよびK2の1日推奨量を摂取し、83ミリグラムのアスピリンを服用する。
・砂糖、パン、パスタの摂取量をできるだけ少なくする。デザートを食べるのは40歳でやめたが、こっそり味見することはある。
・1日のどれか1食を抜くか、少なくともごく少量に抑えるようにする。スケジュールが詰まっているおかげで、たいてい昼食を食べ損なっている。
・数か月に一度、専門家が自宅にやって来て私の血液を採取し、それを私は数十個のバイオマーカーについて分析してきた。どれかのマーカーが最適値を外れていたら、食物や運動を通じて修正する。
・毎日できるだけ歩くことを心掛け、上の階に行く際には階段を使うようにしている。週末はほとんど毎週、下の息子ベンと一緒にジムに行く。ジムではバーベルを挙げ、少しジョギングをし、サウナでしばらく過ごしてから、氷のように冷たい水風呂に漬かっている。
・植物をたくさん摂取し、ほかの哺乳類を口にするのはなるべく避けるようにしている(おいしいのはわかっているのだが)。運動したときには肉を食べる。
・タバコは吸わない。電子レンジにかけたプラスチックや、過度な紫外線や、レントゲンやCTス���ャンを避けるようにしている。
・日中と就寝時は、涼しい場所にいるようにする。
・健康寿命を延ばすうえで最適の範囲内にBMI(体重[キログラム]を身長[メートル]の2乗で割った数値)を保つ保つことを目指している。私の場合はそれが23~25である。
日に50回くらいはサプリメントについて訊かれる。答える前に断っておくが、私は特定のサプリメントを推薦することはないし、商品の試験や研究にも携わっていない。もちろん効能を保証することもない。私の推薦であるかのように謳った商品があれば、間違いなく詐欺だ。サプリメントは医薬品に比べて規制がはるかに緩い。だから、私が実際にサプリメントを摂取するときには、評判のいい大手のメーカーを探し、できるだけ純度の高い分子(目安は98%超)で、ラベルに「GMP」の文字が記載されているものを選ぶ。これは、アメリカ食品医薬品局(FDA)の定める「優良製造規則」に則った商品という意味だ。NR(ニコチンアミドリボシド)は体内でNMNに変換されるので、NMNではなく安価なNRを摂取する人もいる。ナイアシンやニコチンアミドはさらに低価格だが、NMNやNRほどNAD濃度を上昇させる効果はないようだ。
2021/02/28 18:40
投稿元:
・平均寿命は伸びたが、最大寿命はそうなっていない。
・健康寿命が伸びないと意味がない
・健康なまま120歳まで生きられる時代が近づいてきている。
・生物は持てるエネルギーを生殖と長寿のどちらかにだけ振り向けるように進化してきた
・生体に適度なストレスがかかると、長寿遺伝子が始動する。例えば運動、絶食、低タンパク質の食事、高温や低温にさらすなど。
・ゲノムはピアノで、エピゲノムはピアニスト
・一卵性双生児、生まれもったゲノム配列は同一でも、エピゲノムによって全く別の方向に進んでいく場合がある
・タバコを吸う、吸わない、一卵性双生児を並べるとDNAはほぼ同じだけど、喫煙者はたるみやしわが多く、明らかに早く老化している。
・老化に関連するDNA等の変位全てに対処できれば?老化は止まるだろうか?
・老化は避けて通れないものではなく「幅広い病理学的帰結を伴う疾患のプロセス」である。
老化そのものが、1個の疾患である。
・カロリーを抑えた生活は寿命を伸ばす
・ホットドッグやハム、ベーコン、ソーセージは発がん性が高い。
・植物性タンパク質をとり、アミノ酸をとることは良い
2021/03/11 02:29
投稿元:
ライフスパンとか言う本。某YouTube大学に載ってて胡散臭いと思いながら読んだ(余談だがその人は多分真面目に読んでいたはず。若干サウナを持ち上げ過ぎとは感じたし、一日一食はやりすぎだろうけど)。しかし中身は意外とというよりめちゃくちゃ真面目。書いていて科学的に怪しい側面はあるがそこは原著論文を読むか。科学論文ではなく、あくまでも本なので、自分の経験談など、n=1のデータを並べてきたのは頂けないが、科学論文ではないのでこの本の評価には影響を与えないだろう。
老化医学は最近かなりの進歩を見せていて、例えばCAR-Tで老化細胞をぶち殺す奴とかある。そういう事前知識があったので、若干懐疑的ながら読むのは楽しい。「抗酸化物質」とかいう原始的なものには否定的で信頼度が増す。死は暴力的なものという主張も大いに同意だ。死が暴力的なら生はどうなんやろ? しかし、著者は孫の孫の顔を楽しみにしているが、老化を克服できたとしても死を克服することができない以上、社会システムが大いに変わる可能性がある。人口爆発したあとに残るものとは? この件に関してはこの本には載っていないだろうから各自のSF脳で楽しむしかないか?
さすが一般向けの本だけあって、具体例がうまく説明がわかりやすい。ゲノムがピアノならエピゲノムはピアニストとか。
長生きのためのコツは、この本の真骨頂だとは思うが、残念なことに人間に絶食を強いて実験するわけにはいかないので、ヒトレベルでは科学的なものではなく経験的なものになる点に気をつけて読まなければならない。マウスレベルでは証明されているらしいけどな。原初のサバイバル遺伝子の件も論理的とはいえ仮設に過ぎないのは要注意。
例えば週2日の断食とか、朝食を抜くとか、そういうのをまとめるのは良いが、それを他人に強要するとなると最悪だと思う。ヴィーガンの母親父親が子どもに一切の肉食を禁じて虐待扱いされるとかね。ただ、本の中にはちゃんと『(ただし、身体がストレスを受けているときや怪我からの回復期を避けて行なうのが得策だ)』とか、『要するに、多少のロイシンは当然ながら必要だが、少しあれば十分なのである。』とか書いているのは良い。しかし往々にして虐待問題になるときは親が文字を読んでも理解できない場合があるからなぁ。でもそんな人はこんな本読まないか。
大人とした生まれ子供として死ぬ。
視神経再生のところ
「何が見えます?」
「未来だ」
かっこよすぎ。