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【解説:又吉直樹】
われを待つひとが未来にいることを願ってともすひとりの部屋を 「歌という鳥」
たとえば、その「われを待つ人」は私でもある。萩原さんが短歌で作った滑走路は彼だけのものではない。萩原さんが「ぼくたち」と言ってくれる限り、それは万人に開かれている。萩原さんは苦しい夜を何度も何度もくぐり抜けた。この歌集はその格闘のしるしでもある。私はどうしようもない夜にこの歌集をひらくだろう。その夜を乗り越える方法を萩原さんの短歌が教えてくれる。
(p.167)
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心が躍ったり、落ち込んだり、忙しい歌集でした。
恋の歌が好きだなー。おばちゃん、ときめいちゃったもの。
萩原さんの短歌は優しいだけじゃないと思う。(良い意味で)プライドが高く、向上心に溢れていて、創作への情熱が痛いほど伝わる。
こんなにストレートに心に入る短歌ははじめてかもしれない。今まで読んできた短歌はくすぐってきたり、引っ掛かりがあったりするものが多かった。(そんなに読んでいませんが)
文庫化に供なって追加された又吉さんの解説がすこぶる良くて、なんだか勝手に救われた気分になった。
この本は一時期ネット書店で軒並み売り切れで買えなかった。リアル書店に「あそこなら、あるかも」と期待と願をかけて赴き、平置きで一冊だけ置いてあったもの。
見つけたときキラキラ光って見えた。
そんな思い出とともに特別な本になった。
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映画から入る。
それはそれ。
仕事の辛さ、先の見えない生活、届かない想い、、、辛い歌たち。一方で色んなものに向ける優しいまなざしも感じられる歌たち。
短歌で飛び立ちたかった彼が、飛び立つことが決まった直後に命を絶つほど辛いことがあったのかと思うと胸が締め付けられる。
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遅ればせながら読みました。
読んで感じたことを最初全く言語化できなかったけれど、解説を読んでようやく少し言語化できるようになった気がします。
特に又吉さんの読み解きの深さに救われました。
ようやく、自分が感じていたものの正体や、それでいて自分の読み解きの浅さが浮き彫りになったから。
詠み手の優しさ、彼の目を通して見た世界を今こうして追体験出来る奇跡。
口語の短歌なので、すぐそばで語り掛けてくれているようであり、励ましの歌にこんな情勢だからこそより救われている。
自らの翼で滑走路から飛び立った彼の心が今も自由で優しく美しくあれと願ってやみません。
この境地に自分は到底たどり着けませんが、少しでも近づけるよう何度も読み込もうと思う一冊です。
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詩集というものをほとんど買ったことがなく、たしかNHKニュース9でも取り上げられていて、買って読みたいと思っていた。
写真を撮影するときにピントが合うような言葉の選び方が上手で、とても感動した。
著者には生きて言葉を紡いで欲しかった...
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NHKで特集された際ゲストの又吉直樹さんが、歌集から垣間見える作者の人間性について、【生きづらかったんだろうなと思うが】【大好きです】というような発言をしていて、思わず大きく頷いた。だって、この歌集、あまりに優しいから。
作者は、子どもの頃周囲に馴染めずつまずき、大人になってからは非正規雇用から抜け出せず自分の望んだ生活を送れていなかったようだ。それでも短歌からは、人間へのあたたかい眼差しが感じられて切なくなる。
短歌が生きる糧だった作者。こうしたい、こうなりたい、じゃあどうしたらいいんだ、と常に足掻いて模索していただろうことが読み取れる。多くの人と同じ、不条理な世間に呑み込まれながらも、必死に生きる努力をしていたのだと思う。
この本は私にとって、自分を鼓舞するとき、傷ついたときに読み返す大切な本。作者はもういないけれど、あなたが残した歌は今日も誰かを救っていると思う。
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小説を先に読んでしまっいて
その時に感じた「なぜいじめ? なぜ自殺?」という違和感
それが分かった
あとがきを読んで。
歌集はすばらしかった!
俵万智の歌を見て、これなら書けると勘違いして
短歌を始めた、と書いてあったけれど
その気持ちが分かる気がする。
というか、俵万智さんは恋の歌ばかりなので
「滑走路」の方がずっとずっと心に沁みる、私には
手元に置いておくね
また遭いにいくね
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おそらく、製作年が早いものから順に収録しているのだろう。
項が進むにつれ、焦燥感というか踠きたいけれど踠けない無力感のようなものが大きくなっているような気がする。
解説で働くことの苦しさについて、啄木との比較があるが成る程なと思った。萩原氏の歌からは達成感の無い労働への失望のような悲しみを感じた。
ただ、彼の人生には歌を詠むことによる喜びと救い。そして恋もあったことに安堵した。
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パルスのように響く歌がある。すべてではなく、普通の穏やかな優しく過ぎる歌、その間間に、強く響く歌がある。何度も読み返したい歌集だと思う。
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萩原慎一郎(1984~2017年)氏は、早大人間科学部卒の歌人。私立武蔵中・高校時代に苛烈ないじめにあう中、17歳のときに偶々イベントに来ていた俵万智に刺激を受けて短歌を詠み始め、現代歌人協会の全国短歌大会や全日本短歌大会等で各賞を受賞。短歌結社「塔」(永田和宏主宰)、未来短歌会(岡井隆主宰)、りとむ短歌会(三枝昂之主宰)などに参加。高校卒業後もいじめの後遺症が続いたが、早大人間科学部の通信制を卒業し、その後は非正規による仕事を続けながら短歌の創作を続け、角川全国短歌大会準賞、NHK全国短歌大会近藤芳美賞(選者賞)、朝日歌壇賞、全日本短歌大会毎日新聞社賞、NHK全国短歌大会特選等を受賞した。
本歌集は、第1歌集として2017年12月に出版(2020年文庫化)されたが、長期間に亘るいじめに起因する精神的な不調から、出版準備中の同年6月に自死(享年32歳)。歌集は、多くの受賞歴などで既に短歌界では知名度が高かったことや、弟でギタリストの萩原健也がSNS等で広報活動を行ったことなどから、発売当初から話題となり、NHKのニュースウォッチ9ほか、主要なテレビ、新聞、雑誌などで取り上げられ、短歌集としては異例のヒットなった。また、2020年11月には本歌集を原作とした映画(主演:浅香航大、水川あさみ)が公開され、各賞を受賞している。
私は50代の会社員で、最近短歌に興味を持ち始め、俵万智、穂村弘、東直子、若手の木下龍也等の歌集・短歌入門書などを読み(『サラダ記念日』だけは1987年の発表時に読んでいたが)、その流れで本書を手に取った。
ページを繰り終えてみると、萩原氏が極めて繊細な感性の持ち主だったことがわかる(歌人になる人はいずれもそうなのだろうが)。それは生来のものもあるだろうし、不幸にして過去にいじめを受けたことによる精神状態の変化や、そのために非正規労働者に甘んじざるを得なかった境遇などが、それを一層鋭利なものにしていったのかも知れない。本歌集の中に「アイデアがひとつふたつと雲のごと浮びて それを歌にしている」という歌があるのだが、まさに自身の心の底から湧き出てくる叫びのようなものを、シンプルな言葉で次々に歌にしていったということなのだろう。そうした意味では、とても私小説的、近代短歌的な作品が多く、同じ1980年代生まれの歌人でも、岡野大嗣や木下龍也とは対照的(岡野や木下が前衛的というべきなのかも知れないが)で、また、一般的に共感を抱きやすいと言えるように思う。
若干32歳にして命を絶った歌人の、第1歌集にして遺作となった珠玉の作品集である。
(2021年12月了)
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一首目、ニ首目から力強さを感じる。
「〜なのだ」と言い切っているもの、同じ言葉を繰り返し使っているものがお気に入り。
他の作品も読んでみたいと思ったが、本書が唯一の歌集らしいので、本書を思う存分堪能したいと思う。
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なんとなくまた読みたくなったので、文庫版が出たこともあり、買ってみました…社畜死ね!!
ヽ(・ω・)/ズコー
僕も非正規雇用で働いているためか、著者の心情がよく分かるような気が…それと年齢が僕と近いということもあって、より一層親近感を持って読み進めることができたのでした…社畜死ね!!
ヽ(・ω・)/ズコー
映画も観ましたがアレはこの歌集の内容を表現できているとは思えませんでしたね…終始、暗いだけの映画でした。ってか、もう内容ほとんど思い出せませんが…社畜死ね!!
ヽ(・ω・)/ズコー
なんというか…恋? している? 部分は正直アレですね…こちらがこっぱずかしくなってくるというか…そんな感じでしたけれどもまあ、著者の純真さがよく表れている部分かと存じます…。
解説は又吉さんでしたね…特にこれについてはコメント無しでお願いします…(笑) ただまあ、又吉さんみたく自分も何か事あるごとにこの歌集を取り出し、酒を飲みながら読んでみようとは思いましたよ!!
さようなら…。
ヽ(・ω・)/ズコー
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言葉というのはとても素晴らしいものです。本を沢山読んでこれだけ色々な感情を揺さぶられるのは、作り手も読み手も「言葉」というもので繋がっているから。
しっかりと構築された文章を読む事を好むので、詩歌についてはあまり知らないのですが、生け花のように美しく置かれた言葉にもまた感動する事もまた気分がいいです。
作家としても名を成しておらず、これから名を成すぞと自分を鼓舞して歌作を続ける青年。色々な不安と戦いながらも前を向いている事が見て取れる言葉。とても眩しくみずみずしいです。
上梓する前にお亡くなりになってしまったという事で非常に残念です。唯一の作品集世の中に刺さっています。
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歌集とかほぼ読まないんだけど、家に転がっていたサラダ記念日を『ながら読み返し』したのからの芋づる式で突き当たり、図書館で文庫化前の単行本を借りて読了。
第一印象は、痛い。若いとは素晴らしいことではあるが、痛いことがたくさんある。年を取ってくると痛かったのをだんだん忘れてくるおかげで、若かったのって素敵だったような気ばっかりしてくるが、そんなことなかったのを生傷のように思い出させる恐ろしさである。別に経験がかぶるわけでも近いわけでもないのだが、老成した(笑)おかげで普段は忘れたふりをしていられる心の柔いところに爪を立てられるほどの所業である。痛い。
次の印象は、星野源を思い出す、である。まあたまたまプチ星野源祭りをした後だったせいもあるだろうし、こういう世代のサンプルをあまり多く知らないので、ちょっと似ているとめちゃくちゃ似て見えるのかもしれない。ミレニアル世代とかいうマーケティング的な括りはそぐわないし、同じ時代(1980年代前半生まれ)に、同じような場所(関東)で育ち、ちょっと似たような経験(中高一貫校でいじめに遭う)がある、という程度の相似では何を語ることもできない。しかしとりあえず私の中では同じ箱に入れた。決まりだ。
星野源に「お笑い」があってよかったと思う。しかも自分を下げるタイプのお笑いがあったおかげで、ずいぶん生きやすかったのではないだろうか。萩原君にも、そういうガス抜きがうまく見つかればよかったのに、と心から思う。歌が残った、という人もいるけど、彼を直接知る人からすれば、歌なんか残らなくたって、生きていて欲しかったはずだ。生きていればこそ、できたこともきっとあるから。
いろいろ痛かった。たくさんの人に読んでもらうのがよいとは思うけど、痛さを知らない人にうまく刺さるのかどうか、それは心もとない。
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書店でふいに手に取ったのは、死んだ友達に名前が似ていたから。
で、ネットの評判など何も調べることなく読んで、不思議な気持ちになった。
もとから幻想耽美人工的な短歌のほうが好きなので本来の好みとはいえないが、それでも読み続けてしまった。
「ベランダで沈む太陽観ていたら急に切なくなってしまった」
とか、自分も体験したことがある、と思ったのだが、よく考えてみたら、そんな経験ないかもしれない。
なのにこの歌を読んだことで、記憶が上書きされたかのような気がする。
彼は僕に似ている。
いや、僕が勝手に彼に似ているような気がしているだけなのだ。
同じ国で似た年齢だから似た経験をしていてもおかしくはない。
しかし当たり前だが彼は僕と別の町で、「集中を持続した」人だ。
実際この人だって
「ひとの数だけ歌がある不思議かな たった三十一文字なのに」
と歌っているくらいだし。
だからいまこんなに響いても、一か月後には忘れている。
というか自分の生活にいまの気持ちは埋没していってしまう。
それも判っている。
穂村弘が「近代短歌の、私の生の一回性」みたいなこと、あるいは「現代短歌の棒立ちの歌」のようなことを言っていたし、それがおそらく歌人に読み手が仮託して読むことの不思議さ、交換可能性を思ってしまうことと、つながっているんじゃないか。
……よくわからないことを書いてしまった。
その後ネットで、凄いブームになった作品集だということを知りそうになって、慌てて調べるのをやめた。