紙の本
身近なひとの言動が腑に落ちた
2021/12/31 23:14
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:docuciaA - この投稿者のレビュー一覧を見る
新聞か何かで紹介されていたのを見たのがきっかけで読みました。
診断名はついていないものの、身近なひとの言動がこの本に書かれている内容と符号していて、疑問に思っていたことが解消されました。
一般書として出版されていたからこそ読む機会に恵まれましたが、論文にもなって欲しいなと思います!(もうなっているかもしれませんが…
紙の本
発見の種はどこにでもある
2021/05/22 21:31
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:第一楽章 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「あのさぁ、自閉症の子どもって津軽弁しゃべんねっきゃ(話さないよねぇ)」という、臨床発達心理士の妻の一言に、大学で特別支援教育を教え障害児心理を専門とする筆者は反発します。自閉スペクトラム症(ASD)の独特の音声的特徴ゆえに津軽弁に聞こえないだけではないか、安易なレッテル貼り・診断につながりかねないのではないか、と。ここは研究者らしく、調べて白黒つけようじゃないか、と。
そこから10年余り、夫婦喧嘩に端を発した研究は、津軽地方だけではなく全国的な調査へ、そして方言の持つ社会的役割を考察し、ASDとそうではない子どもの言葉の学習の仕方の違いといったところまで、拡大・飛躍し、ひとつの推論にたどり着きます。
子どもは、相手の意図を読み意図を理解すると言った社会・認知的スキルを通して、周囲で交わされている自然言語(方言が使われている地域ではその方言)からことばを学習していく。そのスキルに困難を抱えるASDの子どもは自然言語の学習が難しく、代わりにテレビやビデオといった繰り返される決まり文句やセリフなどを利用して言葉を学習しているのではないか。そして成長した後も、方言が持つ帰属意識や連帯意識の表明といった社会的機能を捉えることができず、方言と共通語の使い分けに困難があるのではないか。
結論も興味深いのですが、むしろそこに至る調査や考察を追体験できる内容で、学術的な研究の醍醐味を筆者と共有できるという点が、この本の魅力だと思います。
そう、結論を行ってしまえば、夫婦喧嘩は妻の勝ちでした。「この夫婦喧嘩は、私の完敗。妻は、ホタテを肴に勝利の美酒に酔っている。地酒の田酒だ。『したはんで、言ったべさ』」(P.274 おわりに)
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最近話題の本
2021/03/29 21:28
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投稿者:Kei - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近話題の本です。数々の新聞やメディアでも取り上げられています。
内容は、自閉症の子供がどうして津軽弁をしゃべらないか、実証的に
研究した成果です。
とはいえ一般読者にも分かりやすく書いてありますのでご安心を。
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松本敏治氏による長年の自閉症と方言の研究成果です!
2021/01/05 13:54
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、公認心理師、特別支援教育士スーパーバイザー、臨床発達心理士などの肩書をもたれ活躍されている松本敏治氏による作品です。同書では、「今日の健診でみた自閉症の子も、お母さんバリバリの津軽弁なのに、本人は津軽弁しゃべんないのさ」という不思議な一文で始まります。これは、津軽地域で乳幼児健診にかかわる妻が語った一言なのですが、著者をこれをきっかけにして、じゃあ、ちゃんと調べてやろうと、「自閉症と方言」の研究に10年以上も費やした成果の集大成です。同書における方言の社会的機能を「意図」というキーワードで整理するなかで見えてきた、自閉症児のコミュニケーションの特異性に迫った画期的な書です!
紙の本
論文ではなく出版という発表の意味
2020/10/12 06:58
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:本村房 - この投稿者のレビュー一覧を見る
こんなにおもしろくて大掛かりな研究をしたのだから、なぜ論文化しなかったのだろうと思って読み始めました。読み進めるうちに、出版という形で発表することで、私のような素人にも目に留まり、また著者の自閉症の方に対する暖かいまなざしを感じました。これは論文の行間では感じられないものだろうと思いました。
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面白いです。学問的分析と、経験的憶測が織り交ぜてあって、読みやすさと深い考察が共存している。(それによる読みにくさもあるが)。こんだけキャッチ―なタイトルが、謎解きされるまでの流れが丁寧に書かれてて、ガツンとした読み応え。
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「自閉症の子は津軽弁を話さない」という妻の言葉から始まった、自閉スペクトラムと方言についての全国調査と、その結果から確かめられた自閉スペクトラムの子供は定型発達の子に比べて明確に方言を話さない傾向があるという事実に対する考察をまとめたもの。そのような話があるとはまったく知らなかったので驚くとともにとても興味深い話であった。この本にあるようにASDの子の言語獲得にテレビやラジオといった(主に共通語が使用される)メディアの影響があるとするならば、そのようなメディアが存在しない過去においてASDの言葉がどのようなものだったのか気になる。
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ネットで流れてきた記事を見て興味を惹かれて読んでみた。
いや、面白かった。
なかなか一般の人が知ることのない自閉症の人の言葉に関する研究で専門的な内容なのにとても分かりやすく書かれていて読みやすい。
乳幼児健診にかかわる臨床発達心理士である妻の「自閉症の子どもって津軽弁しゃべんねっきゃ」という言葉に反論するために調査研究し続けた特別支援教育士スーパーバイザーであり同じ臨床発達心理士である夫の10年の結果報告。
自閉症児の発達過程、生じる問題を言語を中心に解きほぐしていく。だがしかし、ここに結論はない。あくまで仮定であり、多分今後さまざまな調査比較検討が行われていくのだろう。
いろんな意味で好奇心を刺激される。ここから言語学とか心理学とかどんどん手を伸ばしていきたくなる。
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結論部分はよくわからなかったが、言語の習得過程が異なるということか。
方言を話さないということや言語の習得過程など新たな知識が得られて面白い。
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刺激的なタイトルにひかれて読み始めたが、「自閉スペクトラム症のことばの謎を読み解く」は入り口のようだ。言語的コミュニケーションが、如何に言葉の持つ意味そのものだけでなく、共同注意を促す意図やそれに対する反応や認識を内包していることによってその成立を助けられているかが丁寧に分析・解説されており、興味深い。半端な理解で放置しているチョムスキーに、また挑戦してみようかなって気になった。
精神疾患の診断基準とされるDSM マニュアルの直近の改訂(2013年)で、発達障害関連の項目に大きな変更があったとのことで、「自閉スペクトラム症」という名称はそれに基づくらしい。
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「自閉症の子どもって津軽弁しゃべんねっきゃ」と、妻がなにげなく一言。筆者は弘前大学の教授で、奥さんは臨床心理士。そして、10年にわたる自閉症と方言の研究が始まった。
学者の調査研究の方法がよくわかる。そして「学者魂」というべきもの垣間見られる。ことばと心の関係が平易に書かれており、非常に読みやすかった。
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弟が自閉症なので、結構納得でした。確かに弟も家族とはコミュニケーションを取ろうとせず、テレビコマーシャルなどは丸覚えしていました。
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題名を見て「たしかにそうかもしれない」と思って、どうしてそうなんだろうと思って読みました。
読み終わった今、分かったような分からないような。
学習言語には方言が少ない。日常会話から言語を学ぶのは難しいというのは、例えば私自身の英語学習とかが、同じ感じなのかな。
多分私の話す英語にはスラングや慣用句的な言い回しはほとんどないし、地方独特のイントネーションや発音はないと思う(ジャパニーズイングリッシュではあるでしょうけど)。
そして、リスニングも、教材として作られているものは聞き取れるけど、日常会話はなかなか難しく感じる。
それと同じような困難があるのかなあというのが私の印象でした。
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途中までワクワクしながら読んだのだが、最終的には隔靴掻痒の感強し。
非常に面白かったのは、とりわけ前半の緻密な調査の部分。
自閉スペクトラム症(ASD)の人達が幼い頃から方言を使わない、という気づきからその現象が全国的に見られるのか、どのような原因が背景にあると考えられるのかを炙り出すため、質問内容やその対象の選び方などがさまざまな角度から考えられており、周到な調査の手法には興味をひかれた。また、ASDの人たちの思考様式を考えることで、自分達の認識方法がより整理される点は面白かった。
しかし、結局ASDの人たちの実態がよく描かれておらず、しりすぼみな感じが否めなかった。この分析はASDの専門家向けゆえ、ASDに関する記述はこの程度で済むのかもしれないが、一般の素人としては、この現象を切り口に、ASDがどんな症状なのか、その分析はどのような切り口でなされ、療育はどのようになされているのかについて読みたかった。
個人的な記憶の話。幼い頃I君というASDの人が身近におり、不思議な、そして奇妙な存在として深く記憶に刻まれている。全く個人的な欲望として、あの奇妙さ不思議さがどこからくるのかを私は理解したいのかもしれない。
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図書館で借りた単行本とは書影が違った。
論文を一般人にも分かりやすいように書き下してのかもしれないが、結論に辿り着くための検証の説明が逆に分かりづらく感じた。
また、例えが自閉症の性質を表すものではなく、単なる性格のように思える箇所も多々あった。
研究に着手するまでが1番面白かった