紙の本
女性の自立
2022/11/12 19:11
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
女性の自立が現在とは比較にならないほど難しかった当時、女性というよりは一人の独立した人間として革命家として、もがいたノエの物語である。当時もそして今も、安穏な生活を望む多くの大衆に突きつけた言葉の数々が素晴らしい。
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史学を基に書いたフィクションとは知らず、単に恋愛小説だと思って手に取ったのが間違えてた。軽い気持ちで取り掛かっちゃいけないくらい、いろいろ重たい。好みじゃなかっただけです。
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伊藤野枝の人生と、大杉栄の人生をかけた実験、自由恋愛。
幼少の頃のノエは、負けん気だけで、何もかもをクリアして、どんな逆境にも負けず、まさに自分で未来を開いて行った。
青春時代の恩師との出会いが、親に持ってこられた縁談をダメにする。縁談の内容も、唯一の妥協点を見つめ、それが叶えられるなら、と受けるが、それは違った。
そこを飛び出し、また東京に戻り、恩師の元に。
そこで二人の子を産む。
でも、教え子を娶った辻は退職する。
平塚らいてうの「青鞜」に加わり、女権論者としての筋のとおった生き方もいいが、なによりこの本の野枝が、大杉を愛して「ともに死ぬ」それが今、目の前で行われているような気持ちになる。
大杉栄は、自由恋愛を実験的に行い、それは無謀なことで、結果はノエとの間に子どもを何人もつくり、産ませ、一緒にいたぶられ殺される。
こんなことがほんの100年前にあったとは思えない。
ところどころ、ノエの最前線で戦い主張しているのに、結局自分も他の女たちと同じ、日々の食事を作り子育てして、疲れ果てて夜眠る、それを幸せな事だと、感じてしまってもいいのだろうか、という葛藤が見え隠れする。
やっぱり生身のおんな、なんだなと思う。
一日で読み終えたが、とても疲労した。
書いた方は、どんなに疲れたことでしょう…
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いままでに村山由佳の作品はたくさん読んできた。
個人的に文体がすごく好み。自分にとってスッと入ってくるから。
それは、ダブルファンタジーあたりで作品の雰囲気がちょっと変化したときでもかわらない。
とにかく自分にとって村山由佳の文体が1番読みやすい。
そんな村山由佳が、伊藤野枝を書く。衝撃的であると同時にとにかく読みたいと思った。
伊藤野枝は日本史を勉強したときに興味が湧いて、少し調べたことがあった。なかなかに波瀾万丈な人生であり、また四角関係は凄まじいなと感じていた。
その人物を村山由佳が書く。どう描くのだろう。
そして、待ち望んだ作品をみたら600ページごえの大作……。
すぐには読めずまとまった時間が取れた今読むことができた。
読んで本当によかったと思えるものだった。
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自分が20歳だったころのことを思う。あるいは24歳の、26歳の、そして28歳の頃のことを思う。
時代が違う。立場が違う。思想が違う。
私も野枝も女であり妻であり母である。けれど、私のその8年間と、野枝の8年間の圧倒的な違いに足がすくむ。いや、比べる方がおかしいのだけど。
自分で人生を切り開いてきた一人の女。
女であるがゆえに狭められている生き方を、自分の力で広げ、自分の足で歩き続けた一人の女。
愛する男のために、その生き方を支えるための糧を自分の手で握り続けてきた一人の女。
教科書で習った伊藤野枝は、この小説の片隅にしかいなかった。
なぜ彼女が最初の夫、辻潤から離れ大杉栄の元へと走ったのか。次々と子どもを産みながら、なぜ最後まで子どもたちの母であることより大杉栄の同志であることを選んだのか。
いや、その相反するように見える生活が実は世間が思うよりもはるかに「家庭的」であったことに驚きを感じた。
もしも、大杉栄が普通の男だったら。野枝が家庭を守ることにだけその身を傾けていたら。そこには当たり前の幸せがあったのだろう。だけど、そんな二人だったら、決して出会わなかったし、出会っていてもお互いに惹かれ合うこともなかっただろう。アナキストであり自由恋愛の実験者である大杉栄と、自分の中に自然と社会主義の芽を育てていた野枝だったからこそ愛と友情と思想を共有できたのだろう。
明治から大正の時代。私が思うよりはるかに人々は生命力に満ちている。
お金がない、みんな同じように貧乏暮らしのはずなのに、なんだかんだで困っている知り合いに融通をきかせてやる。転がり込んできた同士を居候させ生活をみてやる。
いま、そんなことってあるだろうか。
何が違う。
その頃と、今と、何が違うのだろう。
あきらめることを知らない女の、愛する者へのいちずな思いと、ともに死ぬための闘い。
これを読んで胸の中に小さくて熱い思いが生まれた。それを育てられるかどうか、はこれからの自分の覚悟次第だ、と思う。
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風よあらしよ
著作者:村山由佳
発行者:集英社
タイムライン
http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698
生涯を疾走した圧倒的な存在感、女たちの情熱が今日の事のように胸に迫る。
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本作は、20世紀初頭に活躍した婦人解放運動家である伊藤野枝の一生を描いた作品。伊藤野枝という人物については全く知らず、先入観なく読むことが出来たのだが、このような激動の人生を歩んだ女性が大正の時代にいたのかと思うと非常に驚いた。
実在の人物を描いた小説ではあるものの、伝記的な内容ではなく、作者は女性の活躍がまだまだ抑圧されていた明治・大正の時代に自分の意志のままに躍動する野枝の姿を生き生きと描いている。作者の綿密な調査に裏付けされたであろう野枝や野枝を取り巻く人々の赤裸々な感情も描かれていて、小説として読み応えのある内容になっている。
無政府主義という考え方自体に共感は出来ないのだが、一人の自立した女性として、同志でもある夫大杉栄と共に短い人生を走り抜けた彼女の生涯について、読後に深く考えさせられた。
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伊藤野枝を描いた空前絶後の大傑作・大長編小説。伊藤野枝の体温が伝わってくる質感のある文体と、彼女を取り巻く人々の詳細な背景描写とも相俟って、600頁超の巨編にも関わらず夢中になって読んでしまった。その生きた時代と精神世界の乖離の残酷さがひしひしと伝わってくる。今年の必読本。
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大杉栄と伊藤野枝の波乱に富んだ人生、二人の人間的な魅力を充分に味わえました。
幼い子を残して、惨殺された二人に、やり場のない憤りを感じました。
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辻潤と大杉栄の初対面のシーンは震えますね。たった一行なんですが、素晴らしい一文でした。
これを読むために小説があると言っても過言じゃないんじゃないかな。
伯父に宛てた手紙、平塚らいてうに宛てた手紙、そして後藤新平に宛てた果たし状。いずれも読んでみたいなぁ。手紙で言うと婚家を出たことを知った西原先生の手紙も良かった。
登場人物が少ない分大杉栄に出会うまでの方が伊藤野枝を色濃く描けていて面白い。と言いつつも章毎に語り手を変える手法は面白いし、増える登場人物を引き立たせる工夫として申し分なし!
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ぶあっつ!!今年2番目の分厚さ。何度かリタイアしかけたけどなんとか読了。明治時代の作家であり無政府主義者である伊藤野枝の一代記。伊藤野枝を知らなかったので予備知識なしで読んでみたが、確かに明治時代の女性と考えたら異質。向学心と反骨精神が凄い。ただ本作を読んだ感想としては「周囲に世話になりながらも(主に金銭面)自分のやりたいことをやった人」という印象。疑問に思う行動も多々あったが、己を貫き太く短く生きた彼女を天晴れとは思う。夫である大杉栄との関係も、妻であり友であり同士であると理想的。村山さんの力作だ。
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教科書か資料集で大杉栄と伊藤野枝の写真を見たことがあったのでリアルさが増し、一気読みした。
文章から伝わる熱量がハンパなく、暫く当時の時代背景、人物像が脳内から消えなかった。
作家の中でも群を抜いて読者をストーリーに引き込んでゆく妙手であると改めて実感した。
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大作。
村山由佳さんには少女小説家のイメージを持っていたけれど、放蕩記、それから本作のような、力強い作品を書く力がある人だと知れて良かった。他の本も読まなければならない。
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あまりの厚みに挫けそうになったけど
読み飽きることなく一週間かけて読了。
伊藤野枝のことは詳しく知らず
ただその昔観た映画で演じていた石田えりの印象が強かったが
改めてその生き様を知り、彼女ほどの適役はいないように思う。
[図書館·初読·11月14日読了]
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伊藤野枝という、実際に存在した婦人開放活動運動家の半生を基にしたフィクション小説。
平塚らいてうや原敬、雑誌「青踏」など、当時実在した関係者たちとのリアルなやりとりが描写されており、途中、「あれ、これってフィクションだったよね?」と何度も確認しないといけないくらいに信用性のある小説だった。
ハリーポッター以上にボリュームはあったが、構わず流れるように没頭して読めた。
登場する主人公:伊藤野枝は、幼少期より周りから「わがままだ」「恥知らずだ」「非情だ」と言われながらも、歳を重ねてもなお自分を貫き、妨害するものには牙をむくその荒々しくけたたましい一面と、一方で女性らしい一面を感じさせられるような、人間らしく面白い人だった。
この伊藤野枝という人間が出してくる、「むき出しの自分」というのが、多くの人を魅了し、羨ましさから妬みや批判を生んでいた。
しかし、その本人が提唱していることの内容というのは、現代に生きる私たちにも共感できるものがあった。また今の時代よりも、当時の女性はもっと自我を持たずまた求められず、男性の所持品の一部であったのだと思うと、そんな時代背景の中、これだけの活動を行い続けた伊藤野枝の持つ生命力というのは計り知れないものだったのだと思った。
それとともに、当時は弊害が多かった分、反発やそれに伴う反社会的活動も相当多かったものだと思うが、現代の私たちはそうした風に異論を唱える国民や組織というのは滅多に無く、国民の殆どが流れるままに流されてしまっているのではないかと思うと、現代のこの国民の無気力さというのは自分が認識しているよりももっと問題なのではないかとも思った。