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ブラックな読み心地のミステリ短編集。じわじわ来ます。どれを読んでも嫌ーな感じ。でもこういうの、好き。そもそもどん底に突き落とされてしまう登場人物にも非がないわけじゃないから、ある意味自業自得という気はします。しかしまあそこまでせんでも、ってのも思わないでもないかなあ。
お気に入りは「お蔵入り」。人はどんなことから恨みを買ってしまうことになるのか、これってなかなか気づけないことなのですよね。当事者にとっては重要なことでも、他人にとってはそれこそ他人事で些細なこと。その意識の相違が生み出してしまった悲劇というか、喜劇というか。
「埋め合わせ」も嫌だなあ。そんなこと、とっとと謝ってしまえばよかったものを……馬鹿だなあ、と思いますが。でもどうにかしてごまかそうという思いを自分なら持つことはなかっただろうか、と思えば。断言はできない、かも。
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初・芦沢央でした。短編集,例えば2作目「埋め合わせ」は,過ってプールの水を抜いてしまった小学校教諭が水道料金の請求を恐れてごまかしを図る話で,途轍もなくスリリングな物語に仕上がっています。他作も些細な綻びが徐々に広がっていき破滅に至る様に手に汗握る。脇役の悪意にもヒリヒリする。
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ある日、ふと滲み出て、止められなくなる不安。
読みながらイヤな汗を握っていました。
個人的には、もっと毒が盛られていてもよかったです!
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さすがの芦沢さんいつも通り、気になってどんどん読んでしまい、そして読後は後味が悪すぎる
何作も読んで、とっても才能豊かな先生だと理解した上でだけど、心が全然あたたまる要素がないから、今はしばらく芦沢さんいいかなと思った。
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面白かった。
じわじわと崩れて行く恐怖。
タイトルは最初の小さな綻びの象徴なのだろうか。
ところで「見逃したはずの小さな綻び」って引っかかるなあ。見逃した小さな綻びじゃないのかな?
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平穏に夏休みを終えたい小学校教諭、認知症の妻を傷つけたくない夫。元不倫相手を見返したい料理研究家…始まりは、ささやかな秘密。気付かぬうちにじわりじわりと「お金」の魔の手はやってきて、見逃したはずの小さな綻びは、彼ら自身を絡め取り、蝕んでいく。取り扱い注意!研ぎ澄まされたミステリ5篇。
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「ただ、運が悪かっただけ」 「埋め合わせ」 「忘却」 「お蔵入り」 「ミモザ」
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初めはほんの小さな出来心、保身、思いやり、といった小さなほころびだった。それが、もがけばもがくほど広がり、とうとう修復不可能なところまでいってしまう。その家庭の心象風景や、自身で感じられる周囲の景色の変化が恐ろしくて、興味深い。思わず次の展開を待ち望んで引き込まれてしまう。こんなはずじゃなかったが、これはすべて自分の罪なのだろうか、と自問するとき、人は、本性をさらけ出すのかもしれない。他人事ではない恐ろしさをはらんだ一冊だった。
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読み進めるにつれて少しずつ増大していく不穏な空気と不気味さがクセになる。恐ろしすぎるわけでもなく、かと言って無視することのできない後味の悪さが丁度良い。
私にとってミステリは、苛立ちや不満の感情を消化してくれる魔法のようなものだと気づいた。
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5編収録の短編集。最初の作品「ただ、運が悪かっただけ」を読み終えて(外れかも……)と思ってしまった。残りの4作はそれほど悪くはなかったが、期待していた水準には程遠い。どれもこぢんまりとまとまっていて、本書のタイトルの意味するものが納得されるが、だからなに? と逆に問いかけたくなる。
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本作はイヤミス短編集で「僕の神さま」も面白かったのだが、個人的にはこっちが好みだった。
タイトルが自分に向けて言われているようでドキッとする。確かにトイレ後ジーンズで拭くことありますけど…見られてた?
どれもじくじくと湿度が高く、そこに金銭が絡んでよりリアルに感じられる。読んでいただければ分かるのだが、あの脚立…そしてプールの栓…電気代マジか…薬物で上映が…靴ね…と一つ一つは些細な事柄なのだが、それを塗り固めてしまうと身動きが取れなくなる悪手の連続。嘘が嘘を重ね、焦る主人公たちの感情をひしひしと感じる。嫌な汗かいてるんだろうなぁ
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日常のちょっとしたことが徐々に影響を及ぼしていく。そのじわじわくる感じが不気味。なんとかごまかそう、逃げ延びようと画策することと、打ち明けようという迷いの葛藤。大きな仕掛けがあるわけではないけれど、だからこそ日常に続いているのを感じられ誰の生活にもスッと入り込んでくるような物語。一編一編は短いけれど心になにか残るようなものがどの短編にもあってとても面白い。
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短編集5編
すごい犯罪では無いけれど,ちょっとしたきっかけで起こり得たかもしれないし本当は起こっていた事件.ありふれた日常の見方を変えたその先にある事実にぞっとした.
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誰もが日常に起こりえるヒヤリとした出来事の短編集。どの作品も水にインクを数滴垂らしたような、じわじわと広がる嫌な感情が残り、あと味の悪さが絶妙に描かれている。
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心の中に汚い水槽があって、その汚れた薄緑の水面をそっと両手ですくい上げる感覚。そして水が零れ落ちた掌に残る藍藻やらをまじまじと見つめるような読書体験。
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ささやかなきっかけから、日常の隙間に潜んでいる闇を覗き、あるいは堕ちてしまう人間たちの姿を描いたミステリ短編集です。
気のいい隣人の死と抱えたままの秘密からやがて明らかになる「なんてことのない悪意」を描き出した「忘却」や、映画を世に出したい監督が自ら陥っていく奈落を描いた「お蔵入り」の展開の鋭さ、巧さが印象的でした。
ひときわ後味の悪さが光る「ミモザ」は終盤の静かに畳みかける絶望のひどさが容赦ない。彼女自身がけして悪人でないだけに、余計に残酷だと感じます。
ですがこの短編集はすべて、そういった日常と隣り合わせの悪意や憎悪をさらりと掬い上げている話ばかりで、だからこそより厭らしく怖ろしく後味を残すのでしょう。
楽しく読める本ではないですが、ここまで徹底して「厭らしさ」に尽くしているのも、少し珍しいかもと思いました。
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怖い怖い。心霊的なホラーよりもずっと怖い日常の怖さ。
短編なのにそれぞれの世界に深く入り込んでしまえる。どの作品も思い出せる短編集ってすごい。
「忘却」が好み。でも「お蔵入り」も良かった。
たしかにこの作品は汚れた手「で」じゃなくて「を」ですね。