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魔女とは何なのか
2021/09/05 07:16
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:レイ - この投稿者のレビュー一覧を見る
中世ヨーロッパで魔女狩りが横行していた時代、今で言う精神科医&内科医のような医師だったヨーハン・ヴァイヤー。
彼自身も異端として吊し上げられる危険を持ちながら、この時代では稀有な信仰心と医術のバランス感覚で、魔女を病人として扱った人物のようです。
人狼や魔女への迫害が、集団心理による恐怖の伝染であることを説き、師アグリッパの「知れば怖くなくなる」を実践していきますが、いつ彼自身が宗教裁判にかけられてしまうかとハラハラしながら読んでいました。
主人公は幼年期の体験からトラウマを得るのですが、劇中に起こる色々な人間の不安や恐怖は現代でもいじめやSNS炎上などで起こっている現象であることを感じずにはいられません。
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魔女狩りの時代の「常識」と戦った医者の話
2022/10/24 20:14
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投稿者:KeiM - この投稿者のレビュー一覧を見る
薬草の話を探していた時に行き当たった本。シリアスな内容だったが一気読みした。
実在した人物の話で、史実について調べた方法が興味深い。
魔女狩りという集団ヒステリーにまきこまれなかった医師はひたすらラッキーとしか思えなかった。無残なフィクションなら、もうこの人は悲劇のヒーローに仕立て上げられていただろう。
真実は思うほど悪いものではないらしい。
魔女狩り、薬草、当時の教会や国の仕組み、村社会、また神秘主義に興味がある人におススメです。
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魔女狩りが行われていた時代に、信仰心を持ちながらも迷信に惑わされず、魔女とされる人達は病気であるとして医療の力で救おうとした実在の医師をモデルにした物語なのだそう。
魔女狩り。
魔女と断罪されたが最後、苛烈な拷問により自白を強要され、火炙りなどの残虐な方法で公開処刑されるばかりか、他の魔女の名前を強引に言わされる事で、次々と罪なき女が魔女として告発される悪夢のようなシステム。
現代の私たちから見ればとんでもなく愚かで残虐で、こんな事がヨーロッパ全土で行われていたなんて信じられない!と思うけれど、目に見えない不安をわかりやすい何かのせいにして、噂を真実のように思い込み、ターゲットを見つけて社会から排除する事で安心を得ようとする行為は、実はちょっとバランスを失えば現代社会でも容易に起こり得るように思えます。
そんな魔女狩りに、ある意味抵抗しようとした人がいたんだ、と言う事がまず衝撃でした。
作中では主人公のヨーハンは、幼い頃に仲良くなった女の子が魔女とされ、目の前で処刑されるのを救えなかった罪悪感から、魔女を火あぶりの刑から救った事のあるアグリッパ医師に弟子入りする、と言うことになっています。
「理解のできないものから目を背けるな」と教え、教会の権威を恐れず自らの正義を貫くアグリッパ師匠がとてもカッコいいです。
カッコいいですがこういう人はやたら敵を作るのでこの先心配(´・_・`)
この先の展開が気になります。
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まるでファンタジーのように見えるが、実在した医師、ヨーハン・ヴァイヤーの物語である。
「魔女」というものに対して精神医学の面から切り込んでいこうとする姿が
非常に崇高で尊い。
魔女狩りが横行する時代、それらに反論を唱えることがどれほど恐ろしいことか。
魔女本人だけでなくそれを恐れる周りの人たちみなが、ひとつの巨大な悪夢になり得る。
そしてこの集団心理は当時だけに限った問題ではない。
『敵』になるのは味方であるべき同業者であることもある。
丁寧に時代考証をした上で、「魔法」について美しく恐ろしく描かれてもいて
大変読み応えがある作品。
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ダヴィンチのプラチナ本から。取り上げられていたのは少し前だけど、ようやく入手・読了。これは面白かった。タイトルはファンタジー的で、作者もそういう世界が好きみたいだけど、本作はれっきとした歴史漫画。中世の黒歴史たる魔女狩りを描いた力作。言われてみると当たり前に思えてしまうんだけど、魔女迫害の歴史と精神科のそれが、ここまで関連しあっているとは。確かに、中毒症状を逆手に取れば、いかにも狂人チックに仕立て上げることも可能だろうし、知識として知らなければ、命に関わる大病として恐れられもするだろうな。