紙の本
菅原道真はなぜ祀られたか
2022/04/16 15:43
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
人間の生きる力を強く凝縮して感じる、日本中世期の市井の人々を描いている。死後しばらくして祀られることになった菅原道真を主神とするひとつの宗教が、どのように蠢き勃興したが、ひとりの色巫女の情念をまき散らしながら描かれている。ある意味、エネエルギッシュであり、近付く兵乱の足音を響かせているようだ。
投稿元:
レビューを見る
幕末よりもっと昔の平安時代とかの歴史小説の方が好きかも
まぁこの小説はピカレスクロマン(ダークヒーローもの)だったからかもしれないけど。
とにかく読みやすくて面白かった。
登場人物が全員クズなんだけど(唯一康明だけは光だったかな)
女の人怖いよ〜
投稿元:
レビューを見る
一口で言えば「平安時代を背景とする“時代モノ”の小説」ということになるのであろうが、その“一口”に収まり切らない魅力が詰まった物語に仕上がっている。
各地に多く在る“天神様”こと「天満宮」は「菅原道真」を祭神とする神社である。それらの総本社が、古くは<北野社>と呼ばれた京都の<北野天満宮>とされている。その「<北野社>が起こって行くような頃」の出来事に題材を求めた小説と聞き及び、作品に関心を抱いた。が、本作を紐解いてドンドン引き込まれる中、「有名な神社の起こり」というようなモノでは済まない「人間?!」を掘り下げるような熱い作品で、少し魅せられてしまった。夢中で読み進めて、素早く読了に至ったのだ。
「平安時代を背景とする“時代モノ”」である以上、当然ながら現代と様子は異なる。が、“平安時代”という現代の人々にとっては「ファンタジーの世界」も同然な舞台の中に“現代”を仮託しているかのような感さえ抱く。
「御霊を祀る」というのは、本作の舞台として設定されている時代には既に在った。が、世の好くないことを「祟り…」と恐れて何とかしようというような感覚は、或いは衣食足りている人達のモノであって、庶民には関係が無いかもしれない。逆に言えば、自身の繁栄や安寧を護る縁のような何かは、特定の階層が独占して、他の人達が近寄り悪いようにされてしまっているかもしれない。
というような作中世界の様子が、何処となく「“階層化”が進んでしまっている?!」という現代を暗示しているような感が、本作を読み進めて行く中で沸き起こった。
また「阿鳥が言うから…」と「嫌々ながら仕方なく巻き込まれた…が、色々なことが判っているのでも何でもない…」という「綾児」が「変貌して行く様」が非常に興味深い。
「一寸した“力”」というモノのつまらなさというのか、恐ろしさというのか、この「綾児」の変貌を複雑な想いで見詰めながら本作を紐解いて行くこととなった。
そして綾児や阿鳥の前に現れた「菅原道真の孫」という男も、作中で「変貌して行く様」が描かれるのだが、これも何か考えさせられる。
「不遇」というモノが在る。そういうのは「運」なのか、「実力」なのか、「誰かの妨害」なのか?色々と在ろう。そして或る時、「不遇」が「厚遇」に不意に切り替わったら如何なるであろうか?何か「人生との向き合い方」を少し考えないでもなかった。
「有名な神社の起こり」に関しては、もしかすると本作で描かれている出来事に似たような色々なことが在るのかもしれないとも思ったが、それは余計なことだ。結局、人々の想いの拠所として神社が成立し、永く受継がれた代表的なモノに現代を生きる我々が出くわすことが叶うというだけのことだ…
魅力溢れる、引き込まれて行く作品に出会えたことが非常に好かった。
投稿元:
レビューを見る
北野天神の始まりを描いた物語.神社の始まりとは得てしてこういう私利利欲にかられたものだったのかもしれない.二人の似非巫女の菅原家を巻き込んでの神社創立のあれよこれよの手練手管,そのたくましさに唖然としました.
投稿元:
レビューを見る
右京七条二坊。種々雑多な人々が住む界隈に住む綾校門は巫覡を生業としていた。しかしその実は性を売る似非巫女だ。下賤には稀な美貌を頼みに生きてきたが、寄る年波に先々の不安を抱えていた。
そこへ近所に住む同業の阿鳥が金儲けの計画を持ちかける。菅原道真公を祀る社を作らないかというのだ‥。
道真の御霊を巡って次々と起こる波乱。一体誰が正しくて誰が味方なのか、最後には誰が勝つのか。目まぐるしく変化する情勢と女たちのパワーに圧倒される。どこにも誰にも同情する要素がないのに目が離せないのが不思議だ。
平安時代の市井の人々の息遣いも興味深い。