紙の本
中国はいつから人口大国なのでしょう
2020/08/22 12:41
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ニッキー - この投稿者のレビュー一覧を見る
中国と言えば、人口14億人で世界第一位です。そんな中国は、いつから人口大国なのでしょう。いつから人口が増えたのだろう。そういう素朴な疑問に応えてくれる一冊です。
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人口に焦点が当てられている本を読むのは初めてかな、誰がどうしたといった血湧き肉躍る系の話は少なく数字の出し方とかの話が多いのでちょっと退屈になりがちだけど、中国史もおさらいできてよかった。人口が歴史の流れに与える影響も大きい。
中国史を合散離集のサイクルとしてとらえ、さらに先史、隋・唐まで、元朝まで、それ以降とステージに分けることで理解しやすくしている。
溺女の風習など知らないこともあったし、それが18世紀の人口急増を説明する仮説の中で大きなキーになってることも。
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人口の動向という観点から中国史を考えたことがなかっただけに非常に新鮮で刺激的だった。考えてみれば国家を運営していくためには税金徴収、調達できる兵力・労働力の計算に当たっては重要な項目であるわけで、秦の時代だけではなく、夏殷周の時代から記録があって当然だったのだ!遼については記録が紛失しているということであるが、人口よりむしろ戸数そして丁数(男の人数)が重要な概念だったということも理解できる。18世紀半ばごろに人口爆発が起こったという理由も中国でかつて行われてきた女乳児の間引き(溺女)が抑制されたこと、また生産力のアップ、戦乱のなかったことなど、面白かった。また周辺の先住民族が取り込まれて行って人口が増えていくという動きも当然大きい。各時代の中国人口が想定以上に多い(例えば後漢後期の140年ADに約5000万人、隋には約6000万人)ことも、「白髪三千丈」という用語が大げさでないことに連想できて面白かった。戦国時代、三国志時代、隋統一までの南北朝時代その他の戦乱の死者の数、食糧不足、産み控えなど人口に大きく影響したことは当然だが、それだけ悲惨な人生が多かったという重い事実でもあるわけだ。康熙帝の名君であることは人口把握に力を入れたということからも窺えた。
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個々の時代の深掘りや人物ベースで歴史を知るのは食傷気味で、千年二千年のレンジで歴史を通観し、そのダイナミズムを感じたい!そんな思いに応えようとする好著です。資本主義以前の国富は版図の大小ではなく、人口の多寡であるという視点で、歴代王朝の租税制度を軸に変遷を論じた前半は中国史の基本をおさらいできて面白かった。中国の人口爆発については18世紀に始まりますが、本編はそのプロローグでした。19世紀以降にみせる等比級数的な人口増加の分析は次巻に乞期待です。
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副題にあるとおり本巻であつかうのは19世紀なかばまでで、それより後は続巻で論じられる。古い時代であっても文書による記録がしっかり残っているあたりはさすが中国で、そうした公式記録を使って分析を進める。もちろん時代が古いほど信頼性には留保がつくし、時の王朝がしっかり支配できていた範囲などにより人口統計の範囲はかんたんに伸び縮みする(その点、あとがきで触れられている、著者の娘さんが提案したタイトル「ゴムゴム中国人口史」は秀逸)。数十年違う時点の統計をくらべるだけで、ありえないような人口の増減があったりするが、それは本当に人が増えたり減ったりしている訳ではなくて、人口統計の範囲に人が出入りしているだけのことなのだ。要は統計にノイズが多いのである。本書の分析も、いきおいどのようなノイズが人口統計に含まれているかを解きほぐすことに終始してしまっている感がある。
それでも清代ともなると統計も多少しっかりしてきて、さらにはそれまでダラダラと増減を繰り返していた中国の人口も爆発的な増加トレンドに乗る。その人口急増の要因につき、新大陸原産の作物(とうもろこし、じゃがいも等)とする説に対して著者は懐疑的である。山間部で漢民族が行ってきた焼き畑式の農法は必ずしもサステイナブルではないから、と言うのである。確かに無理な栽培が土壌流出を引き起こした事例なども挙げられるが、とうもろこしなど今でも中国の主要作物であるし、雲南省の鉱業もとうもろこしなどによる食料供給によりはじめて可能になったのだと言うのだから、素直に考えればやっぱり食料じゃないの、と思う。一方、著者の主張としては女児間引きの風習(溺女)がおさまって人口の再生産力が高まったことなどを要因に挙げるが、それも食糧増産があってこそではないかとも考えられる。まあ、いろいろ考えを巡らす余白があるとは言える。
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「人口」という視点から見る中国史。人口から読み解く簡略な概説・通史にもなっていて良い。戸口統計は国家が把握できた数字で実際の数字ではないという基本を軸にその統計の背後にあるものを読み解いていく。中国史を「合散離集」のサイクルで捉えるのも面白い。本書が最も力を入れているのは18世紀の人口爆発がなぜ起きたのか、という点。従来は地丁銀による人頭税廃止が原因とされていたこの人口爆発について、丁寧に分析しなおして他の背景を探っていく。筆者は20世紀以降についても稿を改めて考察したいとしており、次巻が楽しみである。
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中国の人口を通史的に扱っている。大まかな王朝の推移にも触れているので、人口自体に焦点を当てた箇所が意外に少ない気もした。注意しなければならないのは、過去の人口推計は王朝が把握していた戸数に基づくものなので、大幅な振幅が生じているが実態を反映しているわけではないこと。
清代に人口爆発が起きるが、税制が戸との結びつきを離脱したことで人口が炙り出されたこと、新大陸由来のトウモロコシなどの作物が導入されたことを一因とするも、それだけでは説明できないとする。本書では、女児を対象とした子殺しが減ったことや貨幣経済の浸透で他の農業サイクルに依存しない人が増えたことを資料をもとに説明している。なお、女の嬰児殺しの習慣は漢族のもので、清朝を支配した満州族の皇帝が廃止しようとしたものらしい。