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ろくに仕事もしていない私であるが、最近切実に「仕事」について考える。今の私にぴったりの本であった。
ケインズは1930年に20世紀末には「週15時間労働」になるって予言していたのか。
表紙カバーの紹介文を読むだけで読みたくなる。
難しいかと心配していたがそういうことはなく、とても饒舌で、楽しくてタメになるおしゃべりを聞いているような感じで読めた。
日頃なんとなく思っていたことを言葉にしてもらったような部分もあるし、私にとっては初めての、でもとても納得できる知見もたくさん得られた。
抜き書きしたいところが多すぎる。要点だけではなく、例え話等込みで大量に抜きたくなり…
図書館で借りて読んだのだが、この本もちょっと高いけど買うべき本である(言い訳をするなら、買えば多分積読になる、私の場合。図書館の返却期限があってこそ読める)。
"ひとは、たんにそのプロセスが不条理であるから苦しむだけではない。あらゆる官僚制的儀式と同じで、実質的な作業よりも、それをプレゼンし、評価し、管理し、議論することにはるかに多くの時間を費やさねばならないがゆえに苦しんでいるのである。" 241ページ
"報酬が多く人気もあるが究極的にはブルシットであるようなオフィス仕事" 250ページ
"第一に、仕事をすることで得られる最も重要なものは、(1)生活のためのお金と、(2)世界に積極的な貢献をする機会であるということ、第二に、この二つには倒錯した関係性があるということ。すなわち、その労働が他者の助けとなり他者に便益を提供するものであればあるほど、そしてつくりだされる社会的価値が高ければ高いほど、おそらくそれに与えられる報酬はより少なくなるということ、である。" 271ページ
"ブルシット・ジョブが惨めさを生みだしているのは、世界に影響を与えているという感覚のうちにつねに人間の幸福が織り込まれているがゆえである。この感覚は、仕事について語るさいには、たいてい社会的価値が大きければ大きいほど、受け取る対価は少なくなるだろうということにも、たいていの人が気づいている。そしてアニーのように、多くの人びとが、子どものケアのような有用でありかつ重要な仕事をやるか(他人を助けることで得られる満足感それ自体が見返りであり、それ以上の報酬は期待すべきでないと説教されつつ)、あるいは無意味であり自尊心を傷つけられる仕事を受け入れるか(原因はなんであれ心身ともに破壊するような労働に就かないような人間は生きるに値しないという浸透した感覚以外にとくに理由もなく、心身を破壊されつつ)、選択を迫られている。"
315ページ
"労働のなかにあって、苦行である度合いを低くしたり、むしろ楽しいものにしたり、他者のためになっていることへの満足をおぼえさせたりする、そのような要素はすべて、その労働の価値を下げるものとみなされるということである—そしてその結果、報酬の水準を低くすることが正当化される。(略)
私たちの労働が強化されているのは、わたしたちが奇妙なサドマゾヒズム的弁証法を発明してしまったからなのだ。そ���弁証法のおかげで、私たちはひそやかな消費の快楽を正当化するのはただ職場での苦痛のみであると感じてしまうのである。それと同時に、ますます仕事が睡眠時間以外の生活を侵食するようになっているという事態は、わたしたちが(略)「生活(a life)」という贅沢を持ち合わせていないこと、逆にいえば、時間を割く余裕のあるものといえばひそやかな消費の快楽のみであることと裏腹である。カフェで一日中政治について議論したり、友人の複雑でポリアモリーな恋愛事情のゴシップを報告し合うのには、とても時間がかかる(実際一日丸ごと必要だ)。それとは対照的に、バーベルを上げたり、近所のジムでヨガ教室に参加したり、デリバルーに宅配を頼んだり、『ゲーム・オブ・スローンズ』を観たり、ハンドクリームや家電を買いにいったりといったことは、たとえば仕事のあいまとか休憩時間とか、どれもきっちりた定められた時間枠のなかで実行可能である。これらはどれも「代償的消費主義(compensatory consumerism )」とわたしが呼びたいものの例証である。それでもってわたしたちは、生活の持ち合わせがないという事実、あるいはあるとしてもかぎりなく乏しいという事実を埋め合わせることができるのである。" 319ページ
この後も抜き書きしたいところがいくつもあるのだが、もう無理。
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やりがいのない仕事、無益な仕事。社会主義ないざしらず、なぜ資本主義でこのような仕事があるのか?問題提起の書。
ブルシット(bullshit)は、でたらめ、たわごという意味。
では、ブルシット・ジョブ(やりがいのない仕事、無意味な仕事)として、友人の企業の顧問弁護士が自分の仕事をそのように評している、としている。
・結局、資本主義社会では仕事はブルシット・ジョブになる側面があるのではないか。
・その一方で、仕事でやりがい、達成感、自己成長さえ得られる場合もある。全く同じ仕事、同じ賃金を得ていても、感じ方は人さまざまであろう。
・これは皮相的には、労働力(能力・時間)と賃金の交換に見えるにしても、賃金以外のものも得ているということであろう。ロボットではなく人間である所以であり、資本主義とは関係ないような気がするし、実は、それが労働(仕事)の本質であると思う。
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期待していたのだが、冒頭の雑誌に投稿されたという文章からあまり進んだ感じもせず。仮説に基づく論旨に納得ができないまま、回りくどい言い回しで似たようなインタビューを何度も読まされる。
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「ブルシット・ジョブ :クソどうでもいい仕事の理論」https://iwanami.co.jp/book/b515760.html 職種と雇用の日米の仕組みが違うので若干ピンとこないけどこれがCOVID前に書かれたのが興味深い。要はエッセンシャルワーカー以外は全員不要、不要な職種ほど高給という歪み。真髄は最後のベーシックインカムの部分(おわり
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めちゃくちゃ面白い。
そもそも2013年の小論以前に「ブルシット・ジョブ」という言葉・概念はなかったにもかかわらず、論文が発表されるや、自分のことだと世界的な爆発的な反響があり、その後の調査を基にこの大著を書き、世界を書き切っているのがすごい。
読んだ後は元のように仕事のことを考えられなくなる。
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くどい。読みづらい、(値段が)高い。
明確な答えを期待して読むと、イライラしてくるかもしれない。
膨大なブルシットジョブな事例紹介があるので、それを100頁くらい延々と読んで自分なりの着想をひり出せるくらいの精神的余裕がある方におすすめ。
本の帯に書いてあったことがまさに疑問に思っていることだったので、以下のような回答を期待して読んだ。
矢印から先がなんとかひり出した自分の回答。
・なぜやりがいを感じずに働く人が多いのか。
⇒類型は以下の通り。
取り巻き、脅し屋、尻拭い、書類穴埋め人、タスクマスター。バックオフィスと中間管理職に当たるような職種に従事する人が増えている。
・なぜ、ムダで無意味な仕事が増えているのか。
⇒原因は多種多様だが、なんとなく以下のように理解した。
①生産性をあげるようなシステムは、近現代になってからいくつも発明されている。
②社会としての生産性は、継続的に上昇しているが、エンドポイントにいる労働者に与えられる褒賞はある時期から上昇していない。
③新たな生産性を上げるようなシステムができあがっても、性悪説的にそのシステムを見ると、いくつも抜け穴が存在する。
例えば、組織の内外からの不正がそうだ。
④これを埋めるために新たな職が作られる。ただしこの職は性悪説に基づくもので、「万が一の事態」「念のため」に備えていることが多く、そのため生産性があるかというと、そうではないことが多い(書類穴埋め人、タスクマスター)。
⑤しかしそれ故にエッセンシャルワーカーのように手法として確立がされていないことから、能力的に担える人材が少ないため、エッセンシャルワーカーよりも高給が与えられる。
①、②は本文中に記載があるが、③〜⑤まではあくまで自分の解釈のため、本書で確かめてほしい。
序章、第一章、第二章で概要をつかめる。
第三章、第四章はエピソードを紹介するものでここがとにかく長い。
B5サイズ本で99頁〜196頁分あるのだが、ここでの事例紹介は斜め読み程度で読み飛ばして第五章に行ってしまうことをおすすめする。
あるいは、訳者の解説から読み始めると読みやすいかも?
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日本でも広がるオピオイド処方
処方薬「オキシコンチン」で麻薬汚染が広がったアメリカ
薬剤師のみなさん、こんにちは!続・薬剤師の本棚、第2回は薬のもうひとつの側面、薬物依存について、アメリカの麻薬汚染の現状を「Dope Sick」という本から読み解いてみましょう。麻薬と書いてしまうと別の世界の出来事のようにも感じすし、コロンビアやメキシコ経由でマフィアや麻薬カルテルが暗躍して・・・というのが映画などでの定番でもあります。もちろん、アメリカでも普通の人々にとって麻薬は別の世界の出来事でした、1996年にオキシコンチンが処方薬とした発売されるまでは。
オキシコンチンはアヘン系アルカロイドでまさに麻薬です。ところが、1990年頃から医療界にあった「痛みに対する治療をもっときちんとやろう!」という機運に合わせるように、溶けにくい基材で固めてゆっくりとしか吸収されないという工夫を施したオキシコンチンが鎮痛薬として認可・発売されました。薬を発売した薬品会社、パデュー・ファーマはそれまでも麻薬系の薬剤(MSコンチンは日本でもおなじみです)が得意分野でしたが、がんの末期患者などが主なマーケットで売り上げの上ではたいしたことはありませんでした。そこで徐放錠とすることで依存性をかなり低減(そのデータはかなりいい加減なものであったことは裁判などで明らかに)したということで認可され、麻薬が普通の鎮痛剤として爆発的に処方されるというとんでもないことが1990~2010年代のアメリカで起こったんです。
その結果、オキシコンチンの大量処方で依存症者が激増し過剰摂取で死亡する事件が多発しました。歌手のプリンスや大谷翔平の同僚のピッチャーが急死したのもオキシコンチンの過剰摂取と言われています。日本でもトヨタ初の外国人取締役として赴任してきた女性がオキシコンチンを持ち込もうとして警視庁に逮捕されるという事件がありました。アメリカではオキシコンチンが家庭の常備薬として台所の棚に並んでいるというすごい状況があったのです。
パデュー・ファーマ社はオキシコンチンを処方してくれる医師・歯科医師に接待攻勢をかけ、彼らは処方箋を書きまくる事態になりました。薬剤師も例外ではありません。21世紀の出来事とはとても思えませんが、これがまさに今のアメリカなのかも・・。当然2010年頃から大問題になり大きな裁判がいくつも争われ、多額の和解金・賠償金がニュースになることも増えてきましたが、オキシコンチンであげた収益に比べれば和解金・賠償金は微々たるものらしいです。
アメリカの若者のライフ・スタイルを変えた処方薬
アメリカの「若者たちは、朝一番でアデロール(ADHDの薬で精神刺激作用あり)を飲み、午後にはスポーツによる怪我の痛み用にオピオイド(オキシコンチン)を飲み、夜には眠るのは助けるためにザナックス(ベンゾ系睡眠導入剤)を、何の躊躇もなく服用していた。その多くは医師によって処方された薬だった。」(197ページ)・・どうですか、そんなアメリカの大学生の一日。タイトルのDOPE SICKとは禁断症状のことを言います。こんなことが21世紀になってのアメリカで現実問題として起こっているわけです。
戦争と薬とドラッグの危険な歴史
日本ではドラッグと言えば覚せい剤。芸能人が逮捕されることもまれではありません。この覚せい剤メタアンフェタミン(1893年に日本人長井長義が合成し1919年にこれまた日本人緒方章が結晶化に成功)が太平洋戦争中の特攻隊で使われていたという話はよく聞きます。また、勤労動員の工場などでも眠気を吹き飛ばして作業効率を上げる薬として、ごく一般的に使われていました。
これをさらに徹底的に使ったのがナチス・ドイツでした。あの電撃的なポーランド・ベルギー・フランスへの快刀乱麻ともいうべき進攻のスピードは兵士に大量投与された覚醒剤によるものだった・・・という本が今日の2冊目「ヒトラーとドラッグ」。
兵隊を覚せい剤漬けにする一方で、ヒトラー自身は戦況の悪化とともに主治医モレルに投与されるオピオイド系のオキシコドン依存症になっていきます。軍首脳部もほとんどがジャンキー状態。ヒトラー暗殺未遂事件後にはここにコカインまでも加わります。こうして、上層部はジャンキーの集団となり安全な地下壕みたいとところから無茶苦茶な指示を乱発し、兵士は戦場で覚醒剤漬けにされ独ソ戦の頃にはダメダメな状態になっていきました。最後にベルリンに籠った頃にはヒトラー用のドラッグも底を尽き彼は激しい離脱症状の中で自殺します。あまりにも戦況の変化と薬物乱用がきれいにシンクロするのに驚きます。最高指導者がドラッグ依存だとしたら、だれも彼へのドラッグ投与を拒めない。世界史的な出来事がドラッグで突き動かされ得るという恐怖がそこにありますね。当時の日本の軍中枢にこんなことがあったとは聞きませんが、本土決戦前に証拠が消されたのかもしれませんね。
まとめ
今のアメリカは明日の日本かもしれない。この本を読んで、芸能人の急死のニュースを聞くと「オピオイドの過剰摂取じゃないの」と疑ってみたり。
さて、日本でも徐放性オキシコドンは認可された処方薬でこれまでは「中等度から高度の疼痛を伴う各種癌の鎮痛」となっており、適用外使用として「非オピオイド・弱オピオイドで治療困難な慢性疼痛、中等度から高度の慢性疼痛における鎮痛」となっていましたが。この10月29日この適用外部分が「効能・効果」に変更になったんですね、その続きの文章・・・
それでは、また次回!
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やや著者の偏った思想が見え隠れするが
AI、NFTなどの技術革新が進む今後、ベーシックインカムについて改めて考えさせられる良著だった。
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その仕事って、本当は存在する必要がない、ブルシット・ジョブなのでは? ブルシットな仕事ってこんなだよ。という事が豊富な事例とともに解説される。読後、自分の周辺だけ見回してもブルシット・ジョブに溢れかえっているということに気づき、愕然とする。著者がいうところの ダミージョブ や仕事をするフリを延々と続けている人物に心当たりがあり過ぎる。自分自身の仕事でさえ怪しいもんだ。
この問題は絶対に解決しないと感じた。だって生きるためには収入が必要で、魂が傷つくような不毛な仕事だとしても、楽に稼げ家族を養えるなら手放さない人が大半だろう。それにしても全てのブルシット・ジョブに支払われている給料をまとめたら、どんな凄まじい金額になるのか。南半球全ての国の国家予算を軽く超えるんじゃなかろうか。
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ブルシット・ジョブという着眼点は面白いし、一部の資本家や経営者の満足のためだけに存在するような社会的に無意味な仕事ほど報酬が高いという実態もある。
コロナ禍でクローズアップされたエッセンシャルワークと対比すると明確だろう。
ただこの本、とにかく冗長で第2章以降は読むのが苦しくなってくる。分厚くて高いので序章だけサラッと立ち読みするのがよいかもしれない。
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『ブルシット・ジョブ ー クソどうでもいい仕事の理論』デヴィッド・グレーバー
酒井隆史 芳賀達彦 森田和樹・訳 岩波書店
『官僚制のユートピア』で官僚組織が想像力が一部の人間にもたらすユートピアと、そこから疎外される人々を描いた。
現代の社会は官僚機構そのものであって、そこで生み出される不条理は構造的な要因だった。
その後に書かれた本書では、そんな不条理な仕事について分析し、まずはその実態をそして精神的な影響を、最後には人々はなぜそれに従事してしまうのかを著している。
「シット・ジョブ」と「ブルシット・ジョブ」がある。
前者は、はその仕事の内容に見合った報酬や待遇の得られない仕事で、介護や医療などエッセンシャルワーカーと言われる人々の多くもそうが含まれる。
後者は、本来重要な仕事をシットジョブにおとしめたり、新たなブルシット・ジョブを生み出す仕事になる。以下の通り。
■ブルシット・ジョブの主要5類型
1. 取り巻き・・・だれかを偉そうにみせたり、偉そうな気分を味わわせたりするためだけに存在している仕事
2. 脅し屋・・・雇用主のために他人を脅したり欺いたりする要素をもち、そのことに意味が感じられない仕事
3. 尻ぬぐい・・・組織のなかの存在してはならない血管を取り繕うためにだけ存在している仕事
4. 書類穴埋め人・・・組織が実際にはやっていないことを、やっていると主張するために存在している仕事
5. タスクマスター・・・他人に仕事を割り当てるためだけに存在し、ブルシット・ジョブをつくりだす仕事
なぜブルシット・ジョブが増殖しているのかといえば、誰もが薄々と感じているの通り。
この仕事にどんな意味があるのだろう?ということを問い続けてみると自ずと見えてくる。管理のための管理や、売れにくいものを売ったり、中間マージンを得るための仕事だったりそんな実質的に何も生産されない、誰のためにもならない仕事ばかりが増殖しているからだ。稼ぎたい、稼がなければならないということにしか意義はない仕事に溢れてしまっている。
第六章はその根本の問題を解いていた。こんなクソ仕事を生み出す価値観はなんなのか、人類学者グレーバーらしい分析が展開されている。われわれの価値や生産についてのそもそもへと遡っていく。
職業と報酬とそれらが社会的価値にもたらすものを箇条書きにしている。銀行家が年収約500万ポンドで1ポンド稼ぐごとに7ポンドの社会的価値を破壊、一方で年収11500ポンドの保育士は1ポンド受け取るごとに推定7ポンドの社会的価値を算出している。なんでこんなことが起きるのか。
「労働に対するわたしたちの神学的起源について」というパートで、働くことに対して受け入れざるを得ないと感じていることを解体している。ひとつは仕事が苦難であることと、もうひとつは仕事は仕事以上の何かを達成するため、という定義めいたもののことだ。彼は、その何かを創造する、生産するということは家父長的な秩序が生み出した神学的なものにすぎないという。
本来の生産は女性が子供を産み命を引き継いでいくことなののに対して、男性はそれに劣等感を抱いたのか、同等の立場を得ようと外部での生産に力を入れた。そこに資本主義的な価値観が重なっていく。動機がそれなのなら、その行く末は当然今の社会になっていく。ひとがひとを助けたり、育てることは仕事とみなされなくなる。
「究極的に人間を動機づける要素は富、権力、安逸、快楽の追求であったし、そうでなければならないという信念は自己犠牲としての仕事、すなわちまさに惨めさとサディズム、空虚さ、絶望の場所であるがゆえにこそ価値あるものである仕事という教義によってつねに補完されてきたし、つねに補完されねばなかった。」
具体的な政策を提案することがない彼には珍しくベーシックインカムを推奨していた。金や権力の価値体型を少しでも変化させるには、適当な方法だと思う。
グレーバーはインタビューを多数掲載しながら論を進めている。その量でだいぶ頁も増していて、論の部分だけを抜き出したら半分近くにはなるのではないだろうか。
でも彼がそうしたのは、そのブルシットさを伝えるには必要だと思ったのかもしれない。
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『「誰かの労働」が重なり合って織りなす人間社会』を、時にズームアウトして遠くから概観し、そしてまたズームインして近くから観察して丁寧に論じている。
承認欲求に駆られた人々が権威や名誉などどんなに情緒的に飾り立てても、グレーバーさんが巧みに抽象化してブルシット・ジョブに分類していく。その流れが実に見事で思わずシニカルな笑いがこみ上げてくる。ブルシット・ジョブには以下の主要5類型がある。
1.取り巻き(flunkies):誰かを偉そうに見せたり、偉そうな気分を味わわせたりするためだけに存在している仕事
2. 脅し屋(goons):雇用主のために他人を脅したり欺いたりする要素をもち、そのことに意味が感じられない仕事
3. 尻ぬぐい(duct tapers):組織のなかの存在してはならない欠陥を取り繕うためだけに存在している仕事
4. 書類穴埋め人(box tickers):組織が実際にはやっていないことを、やっていると主張するために存在している仕事
5.タスクマスター(taskmasters):他人に仕事を割り当てるためだけに存在し、ブルシット・ジョブをつくりだす仕事
本書は社会学であり、歴史書であり、喜劇であり、救いがたい悲劇である。一日も早くユニバーサル・ベーシック・インカムでこれらの儀式(苦行?)から開放される人々が増えることを願わずにいられない。
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<ブルシット・ジョブ>とは
⇒「被雇用者本人さえ、その存在を正当化しがたい、無意味で、不必要で、有害でもある雇用の形態」
「社会的貢献度の高い労働が搾取され、ブルシット・ジョブが高い報酬を得るのはなぜか?」
「自動化が進んでも、ケインズが予測した週十五時間労働はなぜ達成されないのはなぜか?」
「仕事のブルシット部門がより膨張し、実質ある仕事のブルシット化も進むのはなぜか?」
資本主義の原理によって効率化されるはずの民間企業でもダミーのホワイトカラーの仕事が無数につくりだされるおびただしい事例や、アンケートや聞き取りをもとに、ブルシット・ジョブに就く多くの被雇用者自身が社会に貢献していないと感じている現状を提示し、現代社会に上記のような問題が存在することを示したうえで、その原因を探る試みです。
著者はその理由としていくつかのポイントを挙げます。
・経済ではなく政治によって分配がなされる、認識自体が難しい経営封建制の成立
・「仕事は罰であり、仕事をしないことは悪」とする、宗教由来の潜在的な価値観
・「ケアリング労働」のような数量化しえないものを、数量化しようとする欲望の帰結
2011年のウォール街占拠運動にも携わったことでも知られる著者は、具体的な業界としては金融業(次に情報産業など)を最も多く俎上にあげており、経済の金融化がブルシット・ジョブの増大に大きく関与しているとしています。ホワイトカラーの増大が効率性とはなんの関係もない例としては、ユニリーバに買い上げられた工場に関する実例(P235)が象徴的な事例となっています。また、「ケアリング労働」に関する言及も多く、仕事の本質は搾取の対象となりやすい「ケアリング労働」にあり、今後は自動化が進むことによって益々その割合が増大するという指摘も重点です。
終章では、「本書は、特定の解決策を提示するものではなく、ほとんどの人々がその存在に気付きさえしなかった本」だとしながらも、具体的な対策について述べています。読み終えて、現在、自分自身が生きる社会そのものがフィクションのように感じられました。
以下は参考までに、各章ごとのメモの一部を残します。
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【序章 ブルシット・ジョブ現象について】
本書の原型となる2013年寄稿の試論とそれへの反響。
【1.ブルシット・ジョブとはなにか?】
「ブルシット・ジョブ」の定義。殺し屋や王などの特殊な例から境界を考察する。
資本主義下において社会主義体制にあったようなダミー仕事が増殖する現状。
【2.どんな種類のブルシット・ジョブがあるのか?】
ブルシット・ジョブの五分類
→取り巻き/脅し屋/尻ぬぐい/書類穴埋め人/タスクマスター(不要な上司/不要な仕事生成)
【3.なぜ、ブルシット・ジョブをしている人間は、きまって自分が不幸だと述べるのか?】
人間とは本質的に社会的な存在であることについて。
産業革命以降の「時は金なり」という新しい価値観。
【4.ブルシット・ジョブに就いているとはどのようなことか?】
人���の時間が他人の所有物になりうるという発想の社会的・知的起源。
ソーシャル・メディアの台頭の理由。
【5.なぜブルシット・ジョブが増殖しているのか?】
近年、急速に増加するブルシット・ジョブの仕事の割合。
ホワイトカラーの増大が効率性と関係がない例と、増殖する不要な管理者とその業務。
経済の金融化と情報産業の発展、そしてブルシット・ジョブの増殖のあいだにある、内在的な関係。
【6.なぜ、ひとつの社会としてのわたしたちは、無意味な雇用の増大に反対しないのか?】
政府や企業のトップが不在でも支障がなく、ごみ収集事業者がストを行っただけで街が居住不能になった例。
自己目的化した労働の道徳性。
仕事の定義と宗教的な価値観について。
経営封建制の特異な性質。
【7.ブルシット・ジョブの政治的影響とはどのようなものか、そしてこの状況に対してなにをなしうるのか?】ブルシット・ジョブの増殖を駆動している経済的諸力。
「価値」と「諸価値」について。現在進んでいるのは、諸価値を価値の論理に包摂せんとする企て。
ケアリング労働と数量化しえない仕事の重要性。
現状に対応するための政策について。
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騙す、取り繕うといった無意味と感じる仕事の共通点や、
無意味な仕事を生み出した背景に、
忙しいふりを強制される仕事観、仕事=苦行という宗教観が浸透していることを挙げています。
特に面白かったのは、
金融ビジネスの拡大によりモノや金を管理して配分する雇用の拡大が、無駄な仕事を増やしたという考察でした。
考察自体はとても面白いですが、
主張の根拠がバラバラにでてくるので、一度読んだだけでは腹落ちしにくい構成でした。
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どういうわけか,何もしてないようなヘンな仕事のほうが給料が高くてエラい,という現実に慣れてしまった今日,その理由を説明しようとする本。
日本だけじゃなかったんだ!と妙に安心する面もあるが,根が深い問題なんだな,と納得することが多い。