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投稿者:休暇旅行 - この投稿者のレビュー一覧を見る
短編集。題名や表紙から想像していたようなタイプの幻想小説ではありませんでした。どちらかというと実現可能な妄想や狂気を書いている印象の作品が多い。また、スタイル重視で、雰囲気に沈みたかったわたしの期待とは方向性が違ったみたいです。
巧いのですが、合いませんでした
と、そう思っていたのですが……。
ふと手にとってぱらぱら読んでみても、飽きない。スタイルがきっちりしているだけあって、わたしのように没頭できない読者でも、強くつかまれることはなくともするすると、何度でも読めます。
というわけで、星三つ「わりと好き」。
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いわゆる幻想文学。耽美。
短編の連作なのだが、話同士が入れ子入れ子になっていて、もうほんと巧いなぁと思わせてくれる。文体も過剰ではないけど格調高く洗練されていて、すてき。
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日常から唐突に非日常につきおとされる、
幻に想いに狂う人々の姿と謎を集めた短編集
独立している短編小説のようで、
帰結する先が"流薔園"という名の精神病院、
隠されたリンクが繋がるミステリの巧さ。
特に「黒闇天女」や「蘇るオルフェウス」などは、
刻々と真実に迫っていく構成がお見事。
かと思えば「チャペンデールの寝台」では、
ブラックユーモアの様なおかしみのあるオチさえ見せる。
「実は語り手が狂ってた」ような末路が多いがそれぞれ切り口は個性的、
さらに多次元的な繋がりに気づけば、読めば読むほど面白くなっていく。
日常から狂気への幻惑される描写も丹精で、
プロットの技巧と同じほどに文学性も高い。
まぁ、妻手=手品、とか無知な私は恥ずかしながら
辞書片手に読ませて頂きましたが…(笑)
ノスタルジーな言葉選びも素敵。
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ぞっとする瞬間がたくさんある。一人称の幻想の世界に入り込んだところで、ふいに客観的な視点まで引いてしまうような。壮快なだけではないどんでん返し。
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登場人物の誰が正気で、誰が狂っているのか、不安になる。不気味で美しい世界。「黒闇天女」や「チッペンデールの寝台」が良かった。笑うには不謹慎だけど、滑稽さがたまらない。
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美しさと気持ち悪さって紙一重・・・。火星植物園のおかげで薔薇が怖くなりました。願わくば、自分もこんな風に美しく狂っていきたいものです。
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「虚無への供物」が好きなので、作品の中の薔薇、風呂場、洗濯機、ガスなどの言葉ににやりとしてしまう。 思いのほか読みやすく、あっという間に本の世界に引きずり込まれた。 とても印象に残る作品ばかりで、この本を読むことができてよかった。
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虚無への供物の人らしい
知らずに読んでた
一個一個の話が単独であるけど
各話を読み進んでいくと、前の話が反転する…
そして最後のどんでん返し
ところどころ理解できない話があったけど楽しめました
ついでに、読み終わったあと『カリガリ博士のキャビネット』というドイツのサイレント映画を見ました
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こんな美文で彼岸に達してしまった人達を書かれたら参らないわけにはいかない。本人にその意思が無くても、最後の最後まできちんとまとまっている磐石の幻想短編集。根への偏愛を書く「火星植物園」(若干乱歩風味)、今では定番となってしまったバスの乗客それぞれの心情「大望ある乗客」、忌まわしき三つの贈物「黒闇天女」(個人的ベスト。毒々しいのに最後は格好良いと思ってしまった)、妖しき降霊会「地下街」(短編集中珍しく読後感が切ない)、書簡で過去の事件の真実をあぶる「蘇るオルフェウス」、毒に魅せられた子供「公園にて」と雰囲気は同じなのによくこれだけ味わいの異なる様々な作品を書けるなと驚嘆した。
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テンキョウインだとか、精神病とか
当時そういう言葉が出たときのアレな誤解があるのですが
その人らの創造した世界を「幻想的」というのは
なんともナンセンスではないかなあ、と思う。
だけど、現実→虚構→現実→虚構と
エンドレスで続くような、先の見えない、真っ暗な
地獄絵図的描写は、収束するまで読み手を迷子にさせます。
これを読破した夜は、悪夢を見ました。
それほどまでに 表現の過激な作品です。
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うーん、正直期待外れでした。
猟奇系のもっと毒のある話を期待してたんだけど、夢野久作や江戸川乱歩のような強烈な作品を読んだ後だとその辺で物足りなく思えてくる。
文章に癖がなさすぎるのか、途中装飾過多な表現も多々見られたけどもテンポを悪くさせているだけというか。
流薔園の話や、車椅子の男の話、「牧神の春」「邪眼」辺りは他と違ってテンポよく話が進んで気持ちがよかった。
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とある精神病院の少し変わった患者をめぐる短編集。
最初は少しインパクトにかけるなと思っていたが、それぞれの話がリンクしてて最後にはやっぱりうまいなと思ってしまう。
読んでいる間、日常を忘れて異常な世界に浸れます。
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とらんぷ譚のⅠ(スペード13枚)。
伝染しかねない陰鬱な狂気に心が折れそうになり、毒を味わい尽くすようには読めなかった。異常者が読者のすぐ隣にいるというようなありがちな結末に落ち着かず、狂気が闇の内に完結し、日常世界に住む者には見えない人外境が蔓延っている恐ろしさ。患者の語る物語は、現実と幻想が入れ子になり眩暈がする。
好きな作品は、流薔園の薔薇が匂う「火星植物園」「薔薇の夜を旅するとき」、唯一明るいニュアンスで白昼夢のような「牧神の春」。
ところで、Ⅰ(※マット紙)とⅢ(※コート紙)で表紙の用紙が異なるのは違和感がある。
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再読。52枚のトランプと2枚のジョーカーに模せられた幻想的な連作短編集です。さらに各スーツごとにひとつながりの大きな物語にもなっているというこだわり方で、質の高さといい構想の妙と言い、日本文学が生んだ短編集の白眉と言えると思います。
「幻想博物館」は第1集にあたりますが、個々の作品の質の高さは随一で、どれひとつとっても反世界的な情念とセンスオブワンダーに満ちていて、捨て曲ならぬ捨て作品はひとつもないという驚くべき質の高さになっています。
個人的に特に好きなのは「火星植物園」「大望ある乗客」「黒闇天女」「蘇るオルフェウス」の4作品です。三島由紀夫が自害した日にかかれたと言う「蘇るオルフェウス」などはそのまま長編にしても通じそうなほどの密度の濃さです。
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『虚無への供物』と並ぶ、中井英夫の代表作。
『とらんぷ譚』シリーズの第1巻。
日本幻想文学の最高峰短編集。