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映画がきっかけで原作を読んでみた。
前半は主人公の一人語りが多く、その語りの内容も深いというか、「にんげん」「こころ」「存在」といったすぐに答えられないような事柄の「意味」をこれでもかというくらい掘り下げつつ、時に四方八方に寄り道していくので(まるで誰かの脳内を覗き見ているよう!)、読み進むのに時間がかかってしまった。
そのせいか、後半に進むにつれてページを繰るのが早くなっていったのだが、そんな自分の行為がまるで、単純に答えを出そうとして浅はかな選択をしたと感じる「さとくん」と重なるようで、我ながら恐かった。
簡単に答えが出せないこと、分からないことを、自分の中に抱えながら生きていくことの難しさ、落ち着かなさ、考え続けることの苛立ち…などを何度も経験することで、少しずつ自分の血肉になっていき、その繰り返しが他者への想像力にもつながるのではないか?
読み終わった直後だけ偉そうに考えている自分に、「こちら」と「あちら」の境界線との向き合い方をおも~く問いかけてくる。
実際には事を起こさないが、後半のさとくんの独白の一部に、自分も含め、ある種の近しい思いを感じているひとが多々いるのではないだろうか…そう思わせる文章の迫力!!
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ただ、そこに存在している。思考をしているかしていないかは私たちには到底分からない。なぜなら言葉を発せないから。ただ、そこに存在しているだけだから。
人は生まれながら人になれるわけではないのか、こころとはどこにあるのか。何が善くて何が悪いのか、根本が捻れる。
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映画とは異なっていた。映画は、施設で働く職員側(またその家族)からの視点で描かれていたが、原作の小説は施設に住む方からの視点で描かれている。
重度の障害を抱える方が、どのようなことを実際に感じているか思っているかはわからないが、この小説で書かれてるような詩情的ではないにせよ、それに近いことを感じてるかもしれないなと思った。
特に痛みの記載については、行動障害を抱える方の抱える痛みに近いものがあるとしたらと思うと、何とも言えない気持ちが湧き上がってきた。
この本を読んで、障害を抱える方への支援について偉そうなことを思ってきたかもしれないと、反省させられた。
何か結論やヒントが分かるわけではないが、思考や考えが変わるような、一読すべき良書と思った。