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紙の本
大人全開
2012/02/16 00:52
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投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
仙石老人が樹木と会話し、前作「緋の鯱」では時を遡る術まで得てしまって、他の三人は畏敬せざるを得ない。その感化を受けて、サロベツ原野に住む天星清八もまた、羆の王国の王、チェルネンコ書記長と思念で会話するまでになっている。さらに十樹吾一も山に籠り、子ダヌキと思念での交流ができるまでとなる。そんな折り、ヨーロッパでは「ザ・デス」と名乗る大規模なテロ組織が暗躍する。ザ・デスの軍団はお約束通り、仙石一味を狙って日本に潜入するが、手始めにチェルネンコ書記長の出迎えを受ける羽目になる。それから十樹吾一が「赤い鯱」以来ソ連から分捕った美女10数名を飼っている黒島にも攻撃を仕掛ける。そんなこんなの挙げ句に、日本政府はソ連との交渉で北方領土の返還を果たす。
ザ・デスの次の目標は南アフリカだ。政変によってソ連寄りの政府を作らんとする。当時のアパルトヘイト政策に嫌悪感を抱く仙石一味も引っ張りだされるが、ソ連の思い通りにはしたくないが、かといって現政府に加担したくもない。解放勢力はとみれば、バンツー族の神であるブチハイエナが乗り移ったという少女が、民衆に白人への復讐を煽っている。実に盛りだくさんで、どこから手を付ければ解決になるのか分からない。
各地で暴動が火の手を挙げて軍と対決の様相となる。ソ連とNATOの艦隊が喜望峰沖で対峙して、一触即発の緊張を迎える。超能力を得た少女は、ホッホホ、ホッホというブチハイエナの不気味な笑い声とともに神出鬼没、政府要人を次々と襲い、仙石達と対決することになる。まだアパルトヘイトが廃止されていなかった1988年の作品。制度の終わりを予感していたとしても驚くほどでもないが、当たるを幸いとにかく言いたいことを存分に言ってしまっているところが痛快。仙石一味も影で暗躍するのはこれまでと同じながら、名も知れぬ小国ではなく、堂々たる大国の体制にまで影響を及ぼすようになってしまった。その強みをフルに活かしてではあるが、とにかく表舞台で本音を言えるのはいいことだ。建前だけのファッショは行き止まりの道だ。大人は大人の話がしたいのだ。
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