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イタリアのブランド「ブルネロ・クチネリ」を経営しているクチネリ氏の人生と経営について。まず翻訳が素晴らしく美しい日本語で、言葉の隅々まで洗練されていることに感動した。
自然と人間と夢への志を尊重することから「正しい労働」=タイトルである「人間主義的資本主義」は実現されていくということ。
かんてんパパの会社、伊那食品工業を彷彿とさせる丁寧で温かで人間らしい哲学だなと感じました。
最も心に残ったのは、彼の幼少期。田舎の農家で、13人家族に囲まれて、電気もテレビも電話も水道もない環境で育ったクチネリ氏の想い出。とっても瑞々しかった。決して裕福ではなかったけれど、家族やコミュニティとの温かな人間関係、自然の恵みを享受する豊かさを肌で感じ、体験から学んだことは非常に重要なことばかりだったとのこと。
・沈黙や日常のシンプルなものごとに見出す価値
・聴く行為の大切さ
・判断でなく観察することの重要性
その後、農家を脱して家族で都心?に住むようになり、経済的物質的豊かさが失ったものについても子供ながらの目線、感覚からはとても学ぶものがあるなぁと思いました。そして、父親がコンクリート製造工場の工員となり雇用主から侮辱を受けていたことに憤りを感じて、人間の価値を尊重し、尊厳を失わない経営者になることを決意したという氏。
高級ブランドだからそのような経営が出来るのか?それも一理あるとは思うけれど、いま広く浸透している手頃な価格のファッションブランドは、関わる人間への興味や尊厳を守ろうとする姿勢、自然との調和、そういったことへの軽視が安価へと繋がっていないかは向き合わなければいけないと自責を込めて。。
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暴走する資本主義の中で、人間的な資本主義の考え方で成功してきた経営者の回顧録が覗ける本。文章の随所から優しさがわかるし、哲学の造形が深く、人の本質を追求していく人なのがわかる。
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新しい経営方針の一つの事例とそれを生み出した経営者の哲学とそれが生まれた背景に迫る本。体系化はされていない。クチネリ氏の半生からいかに考え方が生まれたかという伝記のような本。
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カシミヤ製品をはじめとするイタリアの高級アパレルメーカーであるブルネロクチネリ社の創業者が、自身の生い立ちから会社の創業とこれまでの成長の道程を振返り、「人間のための資本主義」という経営哲学を解説した一冊。
イタリアの田舎にある小作農家で育った幼少期から、一家で移住した都会での生活を通じ、著者は大家族による愛情に溢れたコミュニケーション、自然の美しさや厳しさ、田舎の共同体における規律を重んじる文化や都会で受けた差別経験などから、美と人間性を重んじ、祖先から引き継いだ土地の歴史や文化を適切に保護・管理して後世に残すために資本主義を活用するという、「人間中心の経営」を理念として掲げ、顧客と生産者の双方にとって価値のある手作りの製品を、美しく創造性に富んだ職場環境から生み出すことを目指し、イタリア製のカシミヤニットから事業を世界規模で拡大し、現在ではハイエンドなトータルアパレルブランドとしての地位を確立している。
「倫理、尊厳、道徳と一体化した利益を生み出すこと、利益と贈与の均衡に実体を与えること」という著者の理念は同社の経営を通じて体現され、従業員価値を中心に整備された社屋や生産設備、職業訓練校の設立、さらには周辺地域と一体となった再生プロジェクトの数々など、効率と成長だけを追求する非人間的資本主義から一線を画す営みの背景には、「足るを知る」という著者の人生哲学があるように思える。「高級アパレルだからこそできることではないか」という批判的な見方もあるかもしれないが、市場中心主義では実現できない持続可能な経営手法として、参考にすべき点は多い。
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おしゃれなイタリア人の文章。
てか全然経営のこと書いてないやん!!笑
わかるけど!!!!
翻訳上手いな〜てのが1番の感想。言葉選び。
人間主義の意味はまあ理解できたけど、期待してたものは書かれていなかった。
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本書には、人間主義的経営が書かれたハウツー本ではない。クチネリ氏の回顧録に近い。発する言葉の温かさとメタフォリカルな点は、賢人録を読んでいる気にもなる。
幼少期から形成された伝統的家族観、歴史家や賢人との対話(多くの読書体験)を通じて得た言葉の数々とともに、自身が経営する会社の根幹的な思考について示唆する。
読者に求められるのは、著者の見聞から具体と抽象を往復し、思索することではないだろうか。
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情景描写が美しい本だった。
ブルネロ・クチネリが目指すものは経済と倫理の両面における人間の尊厳。それにつながるものが、美を大切にすること、年輪を重ねた人やものと未来の世代をつなぐこと、愛のある豊かさ、本当に偉大なものは簡素であるという考え方とのこと。
美しい会社であるということは世の中にどんな意味を与えるのでしょうか。その答えの糸口は、やはり、ありとあらゆるものと自分との関係を知るということにあります。
自分を相対化し、自分以外の全てのものに謙虚に向き合う、自分を絶対視しない、独善に陥らない、客観的に距離を置いて自分を観る。こうした行いは知性や教養という概念とほとんど同義でもあり、美しさは、小さな自分を森羅万象の関係の中に置き、それぞれの関係に適切な均衡を創り出すことによって生まれます。(P.264)
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哲学者のような経営者の話。ところどころ出てくる引用が本当に深い。
新自由主義の見直しが議論される今だからこそ読む価値あり。この経営スタイルで株式上場しているのも興味深い。
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<目次>
序文
第1章ソロメオ、精神の宿る村
第2章幼年時代
第3章私の心の大学
第4章カシミアの彩り
第5章世界へ
第6章親愛なる匠たち
第7章輝く未来
第8章創造物との対話
第9章心の中のゆるぎないもの
第10章日々の印象
訳者あとがき
p97人間の価値を尊重し、人間の価値を信じる
P146西洋人は自分の信じる宗教への信仰の深さで
敬虔さを判断する。日本人の宗教観は受容の精神の
あらわれであり、多少の違いがあれ多くの東洋人が
同じような宗教観を持っているのに対し、西洋人は
排他的である
P156中国人の基礎には家族や伝統というルーツがあり、
中国人の特徴は常に未来を見続ける点にある
読みはじめは、この散文的な、詩的な文章がつらかった
が、読み進むにすつれ多少の具体的記述も増え、
受け入れしやすくなった
会社を経営することは哲学なのか、
宗教も、哲学も、会社という組織を発明したのは
欧州人だから、そうなるのか。。。
加えて、訳者の人の経歴ももっと知りたい。。。
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人間主義的経営とは、過去から受け継いだ資産を未来に継承すること。
贈与。サステナブル。
矛盾を超える。
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ソロメオ村でクチネリ社は「利益」と「贈与」の循環を実現している。現在の「今だけ、金だけ、自分だけ」の経営とはまさに対極。このような会社で働く人々は本当に幸せだろう。
創業当初のエピソードがあまりなく、理想を実現した「初めの一歩」が良く分からなかった点は残念。
ただ、この本にノウハウ的なことを求めるのは間違いかな、とも思う。
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【印象に残ったところ】
私がこの世に生まれたのは、裁くためではなく、ましてや非難するためでもない。
私がこの世に生まれたのは、知るためである
Byスピノザ
→そう、自分はそれでいいんだ。誰に何を言われようと。経営も世界を知ることの近道だからだ。人との関わり、商業、お金(経験)
90
私は読書に没頭し始め、時には、文章のスタイルの美しさが、本の主題そのものを超えるように感じられることもありました。
→自分も似た感覚を持つ。
109
誠実さ、素直さ、善意を持つことが最もコスパの良いことかもしれない。
111
成功を収めるには裏表がないことが重要です。意志の強さに加え、誠実であることは私の構想を実現するためには不可欠でした。
【感想】
ブルネロ・クチネリを普段着として着れるようになりたいと思った。ファッションの行き着く先は、今回クチネリのようにストーリーを纏うということになると思う。この本は、捉え方によっては、壮大なパンフレットとなっている。
自分の人生を通して、ソロメオ村のような自分の理念を体現した、自分の美意識に即した村を自分と仲間で創りたいと思った。
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ブルネロクチネリの自伝的な本。
ドキドキワクワクとかは無いが、美しい本だな、と思った。
ブランドの成り立ちだけでなく、彼自身の人生が綴られ(哲学関連の技術がとても多い!)、ブランドの根幹にある「人間の尊厳」に対する強い意志が理解できる。
帯にあった楠木建氏の推薦文がすべてを表している。
「思想を紡いで服をつくる。服に託して哲学を売る。完璧なスタイルがここにある。」
ブルネロクチネリは、服ではなく、思想・哲学を売っている、ということが良くわかったし、ショップから感じられる空気感の理由が分かった気がする。(高くてとても手が出せないブランドではあるが、、、)
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●本の内容
高級カシミアセーターの創業者、ブルネロ・クチネリが自身の経営哲学について書いた著書。売上770億円、世界137店舗に広がる会社であるが、人間のための資本主義「人間や自然を傷つけ攻撃せずに利益を生む資本主義」を貫き、事業目的を、倫理的にも経済的にも人間の尊厳を追及することとし、現代の資本主義からは一線を引いた上で正当な成長を続けている。
これらの考え方は、クチネリが農村で自然と家族の中で育ってきた経験と、書籍(特に哲学)からの学びを基に構築されており、イタリアのソロメオ村で、城の中に本社や職業学校、劇場、公園を作り実践している。
著者の夢は過去の美しさと未来の美しさをつなぎ合わせること。簡単ではないかもしれないが、現在のソロメオ村の姿がそれが決してユートピアではないことを示しているとしている。
●印象に残った点
会社を正しく発展させるには、合理性と伝統と自然の価値をそれぞれ適切に融合させることが大事だと説く。労働は人間の精神を高みに導くとしつつも、人間は身体の疲れ以上に精神まで疲れさせる必要はないとし、理想の教科書のような経営を説いている。ここまでは誰もがそうであって欲しいと考えることだが、それを信じぬき実践し成功し証明しているところにすごさを感じる。
●本の内容を自分はどう解釈したか
この資本主義の世界においても、クチネリのような人間主義的経営で発展できることを感じた。クチネリという会社がある以上、これは理想論ではなく、やれば出来ること、夢ではなく目標ということだと解釈した。
●本を読み終えて考えたこと(自分の場合はどうなのか?)
自分は、クチネリのように正しいことを正しくすることが大事だと信じ抜いて実践できるかを考えさせられた。
そして、本の最初にクチネリが娘たちにあてた言葉がとても素敵だった「夢を描こう。その夢は、きみたちの時代だけでなく、未来のすべての人々の幸福のための夢でなければならない」
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人間主義的経営、人間主義的資本主義を体現する経営者の自伝の書。幼少期や学生の頃に体験を素直に解釈し、それが行動の指針になっている。沈黙や日常のシンプルな出来事からの価値、判断ではなく観察することの重要性。「子供が10歳になるまでは良き教師であれ、20歳になるまでは良き父であれ、そして生涯を通じて良き友人であれ。」「あなたの家の前が綺麗なら、あなたの街は綺麗になる。」など、これらの言葉はそのまま経営や人付き合いにも大切な考え方となる。良い本でした。