紙の本
計算という思考の歴史を辿る壮大な人類史
2021/05/07 17:31
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Takeshita - この投稿者のレビュー一覧を見る
養老孟司さんが本書を評して「読後すっかり考え込んでしまった」と言っているが、それだけの力のある力作評論である。さすが小林秀雄賞を受賞した著者だけのことはある。著者は計算するという人間の思考を数学史とデカルト、カント以来の西洋哲学史の流れの中にたどり、直感ではなく純粋に論理の展開だけに基づく人間知性の探究が現代のコンピュータ社会と未来予測を生み出したことを跡づける。しかし地球環境問題、生命の問題はじめ本当に計算知性だけで人類の未来は拓けるのだろうか?そもそも知性は身体性と切り離せるものなのか、人間とは何か、真理とは何なのか、という深い思念に読者を誘う。良書である。
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数学史。
ブルックスの言葉に感動。
『知能は環境や文脈から切り離して考えるべきものではなく、「状況に埋め込まれた」ものとして理解されるべきだ』
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格調高い文体。引用文献の組み立て方。一貫した著者の視点。
一読の価値はあると思うが、前著ほどの衝撃は受けなかった。
知能に果たす身体の重要性など既知だったからかもしれない。
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面白かった。現代の人工知能および数理モデル予測などが生まれた背景を過去の哲学者や数学者の功績と趨勢を追いながら掴んでいく、と言った内容。最後の章では、昨今のコロナ禍に絡めて、思考なき計算に頼りすぎることへの警鐘を鳴らしている。
結局のところ計算と生命は不可分であり、計算機も自律的な思考も総動員して両者のバランスを意識しながら諸問題に取り組んでいくべきなんだと感じた。
色々と考えさせられる内容でした。
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計算とは、ただ規則に従って淡々と数を扱うものではない。
その正しさを疑い、その結果の意味を思考し、複雑な現実をなんとか理解しようという歴史の積み重ねがそれを支えている。
現実を理解するための概念ではなく、現実を/我々の世界の捉え方を拡張する営みとして捉え直す一冊。
ただ論理を積み重ねるだけじゃ人間の知性には到達しない。そこには環境に身を任せ対話しレスポンスする身体性が必要という話。めちゃくちゃ面白かった。
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数学史を元に計算がどう行われてきたかを解説。中盤くらいまではわかり易い話だったが、ヴィントゲンシュタインぐらいから難解な話に。計算も頭だけでなく身体が必要というのは概念的にはわからなくもないが、今ひとつ腑に落ちない。
しかし、全体的には知的好奇心を満たす良書。
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数学と哲学の結びつきを辿って、古代ギリシア幾何学を出発点にデカルト、カント、リーマン、ガウス、フレーゲ、チューリング、ブルックスらの研究成果を丹念に考察しているが、難しかった.人工知能の話は現代のものであり興味深かった.「あとがき」にもあったが、フレーゲの功績を紹介しているのが特筆されるが、この名前は知らなかった.高校までの数学は18世紀以前の段階であり、リーマンもガウスも出てこない由.56年前、大学の教養課程の数学で高木貞治の『解析概論』に苦労したことを思い出した.高校数学は得意だったのだが、大学の数学は18世紀以降の数学なのだ.
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やっと読めた
執筆中に開催されたオンラインの講座での内容を思い出しながら読みました。
そのとき取ったノートも見ながら読んだので余計にわかりやすかったけど、後半、もう少しページを割いてでも丁寧に進めてほしかった?
やや唐突に感じてしまいました。