電子書籍
不思議な世界
2022/01/05 20:54
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
一応、ファンタジーの分野に振り分けられそうな小説です。しかし、現実に、男性優位の国に住んでいる自分としては、これは、現代の日本の社会を裏から描いているようにも思えました。作者は、外国出身の方とか……。納得です
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作品に出てくる言語がなんと、
「ニホン語」「女語」「ヒノモトコトバ」の3言語もあるという時点で、難解と思われるのだけれど、
コレがしっくり読めてしまう感覚が楽しいし、
作者の作り込み、その技法が凄いな‼︎って思いました。
これも台湾出身の作家さんの為せる技なのかなぁと。
ノロが統治する島。
ノロは女性しかなれない。
女だけが話すことが許される、男が学ぶことすらできない「女語」(じょご)で、島の歴史は語り継がられてゆく。
その島に、記憶を失くしたまま漂流したどり着いたひとりの少女と、ノロを目指す同じくらいの女の子。
そして、ノロになりたい、島の歴史を知りたいと、こっそり女語を学ぶ男の子。
李さんが表現したいこと、伝えたいことが繰り広げられいるこの世界観がすごくて、設定に引き込まれました。
物語の後半に明かされることをネタバレしたくないので言い方が曖昧になってしまうけど、
分け隔てなく、信じて、新たな世界を生み出そうとする、これは希望の物語だと思いました。
もしかしたら、冒頭から言語の表現の特殊さに怯むかもしれませんが、慣れてしまえば問題ないし、
島の歴史などの謎に突き動かされ、どんどん物語に引き込まれていく作品です。
第165回芥川賞受賞作。
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沖縄と日本を混ぜたような島(というより沖縄寄り?)が舞台。
少年と少女の成長物語でした。
人は人である限り「なにか」を恐れるのだな、と思いました。
それでも人はすべてを知りたがる。
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【その島では〈ニホン語〉と〈女語〉が話されていた】記憶を失くした少女が流れ着いたのは、ノロが統治し、男女が違う言葉を学ぶ島だった――。不思議な世界、読む愉楽に満ちた中編小説。
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2021年6月
言葉の難しさ、母語ではない言葉で、コミュニケーションが取れているようで取れていない微妙な感じとかは、著者が台湾籍で日中翻訳者であるからこその視点だと思った。
そして、美しい国ニッポン批判が思っていた以上にあからさまで小心者のわたしは震え上がった。この本を世に出した人の勇気がすごい。素晴らしい。
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言葉が少し分かりにくくて、読みにくかったので星は3つ。
でもストーリーは星5つに相当すると思います。
本当に著者は台湾人なのかと疑うくらいに、日本語への理解が深いと感じました。
ラストの種明かしでは驚くばかりで、この話を通して今の社会の問題点をいくつも突きつけられてる、そんな感じがしました。
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沖縄に似た小さな島を舞台に、少女達の成長してゆく姿が爽やかに描かれていた。
少年少女の視点で描かれているが、大人達がしっかりしなければならないと、戒められている気がした。
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日本語はキレイだと改めて思った
作中に3つの日本語が出てくる
訛りのようで微妙に通じない〈ニホン語〉と
〈女語〉、〈ひのもとことば〉
島は女性が統治していて、死んだら皆
ニライカナイに行くと信じられている
こんな島があったら住んでみたい
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郷に入れば郷に従え、それが表現された本だった。奇跡的に流れ着いた場所で自分らしく生きるのではなく、その島のルールに従い生きていた。ルールを変えるのも必要だが、歴史を伝承することも大事だと感じた。
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何の情報もなく読みはじめたので、内容が衝撃だった。タイトルと装丁から自然が美しい島のキレイな話を想像してた。何とも言えない島の言葉は好きだなあ。
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芥川賞受賞作で、こんなに読みやすい本は初めてでした。
日本語が日本語じゃないのに読みやすいなんて、そこが練りに練られて書かれたんだったら恐れおののきますが、とにかく、異例の芥川賞作品でした。
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記憶を失った少女が島に流れ着いた。島の住民である游娜(よな)が彼岸花の中に発見。宇実(うみ)と名付けた。島にはノロと呼ばれる神事を執り行う女性たちがいる。ノロは島の歴史を伝承する役割があり、男には歴史を知らせないしきたりがある。なぜノロは女しかなれないのか、なぜ歴史を伝承するのは女だけなのか。大ノロから伝えられた歴史は游娜や宇実には衝撃的だった。本作品では、男女の役割や家族のあり方、過去に世界中で繰り返された歴史の苦しみなど、重いテーマを扱う。島のしきたりは一つの答えでもあるだろう。彼岸花の真の役割が明らかになった時、より良い生活を実現するための闇を感じた。だが、薬は毒にもなるし、生きていくための業(ごう)なのかもしれない。
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島に流れ着いた記憶を失っている少女と、それを助けた少女や島に住む住人との生活が、その島の独特の風習の中で描かれる。お互いに似ている言葉を話すので、どこか共通点がありそうだが、少女は過去が思い出せない。優しい住人たちの中でのどかな生活を送っていたが、やがて真実を知るときがくる!
歴史的な背景や男女の上下関係の考え方、突飛な親子感など、複雑な事情を抱えていたとは驚かされた。作中何度も登場する彼岸花が、様々な意味と持ってとても印象的に描かれていた。
芥川賞受賞作。受賞情報でた直後に本屋に行き、最後の1冊をゲットしました。現在品切れでまだ読めない人が多い中、読破した優越感笑
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多くのテーマを扱い、文章も綺麗で読みやすい。
数年ぶりに芥川賞ですごい作家が出てきたと思った。
次回作にも期待。
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彼岸花の咲く島で話されてる、中国語と日本語が混ざったクレオール語が癖になって面白い。中国語を勉強してるので、どういう中国語の文とどういう日本語の文が混ざってそういう台詞になってるのか薄らわかる気がする…当たってるかわからないけど、考察するだけでも面白い。
台湾の中国語を第一言語、日本語を第二言語としている作者なだけある。というか母国語以外で文学を書くのって相当難しいのに、この素晴らしい文章…感嘆。
南西諸島の巫女というのはユタしか知らなかったが、ノロというのも本当にあるみたい。
奄美大島に旅行に行ったとき、意識して気にしてたら、博物館で、ノロを束ねる役をしている人は大ノロと呼ばれる…と説明されているのに気づいた。これもこの小説と同じだね。ノロはユタと違い、琉球王国から任命される神職で、国家公務員ともいえるような巫女。結婚したり子供をもったりしてた。ノロ祭祀が制度として導入され、シマ(集落)の統治に利用されてたとのこと。
彼岸花の輸出で生計を立てている島、というのは、百合をヨーロッパに輸出してかなりの富を得ていた沖永良部島の歴史をモチーフにしているのかも?
といいつつ、この小説の舞台は与那国島をモチーフにしてるみたいだけど…。琉球王国支配の歴史が色濃く残る島だから似てるとこがある。
排他主義とナショナリズムが高まった果てに、漢語を排し、異物を排除し「美しい国」を作り上げたディストピア日本。女性が政治的主導力を持ったユートピア的な島。政治状況と照らし合わせると面白い…けどコロナでますます各国の排他主義とナショナリズムが高まってる今は深く考えるとちょっと辛いかも。
彼岸花の咲く島で、女性のみが社会的な権力を持ち続けるようにするために、女性にしか歴史を教えない…っていうのは、歴史教育の重要性と、歴史修正主義者たちが教育の場において歴史をどう語るのかを主戦場にしてる今の社会の状況とよく噛み合ってる。