- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
2 件中 1 件~ 2 件を表示 |
2023/03/30 19:28
投稿元:
挨拶もそこそこに笑顔でがっちり握手してくる奴は大抵詐欺師
1967年生まれ、2021年に本の出版少し前に死去
2020年3月に「声が抜ける」
最初の医師は見落とす
呼吸器科の診断で「耳鼻科に行け」
かかりつけ医の胃カメラで紹介状、ステージ4の食道がん(ここまで2週間)
コロナ禍、オプジーボの使用
ゲイビデオに出演させられる
レンタル→セル、業界の変化
セルはモザイク薄くて本番ありき
DVDになって長時間労働
覚醒剤は勃起力が極端に弱まる
警察ではなくマトリに捕まると大物?
ポール・マッカートニーと同じ椅子で取り調べ
あれこれ赤裸々
2024/07/16 08:38
投稿元:
1287
沢木和也(さわき・かずや)
1967年3月25日、埼玉県生まれ。20代の1988年にAV男優としてデビュー。90年代のアダルトビデオ創成期を支えた。代表作に「沢木和也のナンパ王国」「沢木和也のナンパ帝国」などがある。1994年に結婚、2005年に長男が生まれる。2020年、癌が発覚。現在も治療中。趣味:温泉、テレビドラマ・高校野球を観ること。
伝説のAV男優 沢木和也の「終活」 癌で良かった
by 沢木和也、荒井禎雄
自分が癌になって思い知ったけど、残酷なようだけどこの国は「金があれば生きられる」「金が無くなったら死ぬ」というシステムなんだよね。そういうシステムの中で生きているという自覚を、もっと早く持つべきだったなと少し後悔している。
こんな調子で一匹狼を気取って今までやって来てしまったから、自分にはいざという時に頼れる相手や、何も言わなくても救いの手を差し伸べてくれる相手がいなかったし、今更そんな都合のいい人間が現れてくれるとも思えなかった。そもそも自分が周囲の人間に心を開いていなかったのだから、そうなるのが当たり前なんだよね。 でも 50 歳を過ぎて、身体がこうなって、出来ることより出来ないことの方が増えた今になって、自分の誤りに気付かされたんだ。
自分自身もAV業界人のクセに、AV業界人を全く信用していなかった俺なのに、病状を知るやすぐに無償で動いてくれた人間のほとんどがAV業界人だった。それも全然面識のない人まで加わってくれたんだよ。 例えばAV女優の川上ゆうちゃん。彼女は同じくAV女優の友田真希ちゃんや風間ゆみちゃんとの配信番組の中で「沢木を助けよう!」と治療費を集めてくれた。金額を言うのはいやらしいのでここでは伏せるけれども、オプジーボだったら数回分になるまとまったお金を送ってくれたんだ。
これまで散々女の尻を追いかけて来ただけの自分が、人生の後半になって女に命を助けられている。やっぱり俺の人生は女ありきだったんだなと痛感させられたよ。 それと、女性だけじゃなく男性の中にも親身になって動いてくれる人がいたことが何よりの驚きだったな。 たとえば、後輩のMや、Mが集めてくれた荒井さんや草下さんら『終活プロジェクト』のメンバーは全員男性でしょう。男相手にこんなに弱みを見せるとか、昔じゃ考えられなかったよ。
それに、AV業界内でほとんど付き合いの無かった人が、なぜか一生懸命ボクを支援してくれていたりもするんだ。その代表的な存在がマドンナで活躍している魁さんっていうAV監督。実は彼はMaricaやゆうちゃん達と連携を取りながら、誰よりも早く呼びかけを行ってくれたんだ。
お恥ずかしい話だけど、 20 ~ 30 代のAV男優としてイケイケだった時代には、俺は他人のことなんて気にかけない自分勝手な男だったんだ。金銭面では潤っていたから、困ることなんてほとんど無かったし、仲間の必要性もそこまで感じなかった。
でもさ、実際に大きなお金を送ってもらったり、色々な人に励まされている内に、頼れる人間が誰なのか、裏切らないでくれる人間が誰なのか、そして本当に信じられる味方が誰なのかが分かったんだ。 色々と世話してやった記憶のある後輩のAV男優がほとんど何もしてくれないとか、その代わりに魁監督のような人が助けてくれたりとか、今になって人を見る目や価値観が変わったよ。 クラウドファンディングを支援してくれた人達や、noteで金銭サポートしてくれた人達のように、今の自分には顔も知らない命の恩人が大勢いるんだよね。その人達のお陰で今の俺は命を繋ぐことが出来ているんだ。 これに気付けたというのは、変な言い方だけど癌になったお陰だし、人生の最期に金よりも大切な宝物を手に入れられた感じがするな。
AV男優なんて商売はチャラチャラした気楽な仕事だと思われているだろうけど、実はそれなりに危険や破滅と隣合せの商売でもあるんだ。やっぱり性欲でも金でも名誉でも、人間の欲望がダイレクトに絡む業界は危険極まりないということを頭に入れておいてほしいな。
俺の経験談から分かってもらえたと思うけど、騙されて売られて裸の仕事をさせられるのは、何も女性だけではないんだ。この問題で一番大事なのは、男女関係なく相手が望んでもいないのに裸仕事を強要してはいけないって点だよ。
俺はバカだったから、何度も三行広告に騙されて、その度に新宿二丁目に送り込まれてゲイ業界の生贄にされていたけど、 20 歳になって遂に念願叶ってAV業界に入れる時がやって来たんだ。
ちなみにね、この頃の俺を見て学生時代からの友人の鈴木君は非常に驚いたそうだよ。いわく「あそこまで熱心に毎日のように履歴書を書いて営業電話をかけ続けるお前なんか見たことがなかった」って。 他人からすればこうまで必死にAV男優になりたがるヤツなんて笑いの対象かもしれないけど、あの頃の俺は俺なりに真剣に生きていたんだろうね。もしかしたら人生で一番真剣だったのは、あのAV業界入り前夜だったかもしれないよ。
意外かもしれないけど、AV男優にもAV女優と同じように家族や恋人に仕事がバレて辞める人間が大勢いたんだけど、俺からするとそれが信じられないんだ。そんな覚悟もないのにAV業界なんかに入ってくるなよって思う。だってそいつがいなければ、その分俺がイイ女とセックス出来るかもしれないんだから(笑)。 俺は是が非でもAV男優になりたかった。そのためにウリ専バーで国会議員のオッサンにベロキスされたり、騙されてゲイビデオに出演させられもした。そんな経験をしてやっとのことで入り込んだ業界なんだから、世間体も身バレも一切気にしなかったよ。
どういう話かと言うと、日本でそのAVを見たタイ人が、わざわざタイの女性議員に言いつけて、「タイの女は昼飯代程度でヤラせる」という言葉を吹き込んだんだ。そうしたらその議員が「タイ人に対する侮辱だ!」と本気で怒ってしまって、そこからタイの世論にも火がついて、あっちの新聞に俺の顔写真付きで「こいつが日本人ギャングの沢木だ」と、ギャング扱いで報道されてしまったんだ。 最終的には外務省を通して俺のところに直接クレームが来るようになって、これは大変なことになったぞと(笑)。
新聞といえば、タイにいた時に日本の新聞でオウムのサリン事件を知ったんだ。それを読んで呑気に「サリンってなんだ?」なんて言っててさ。そ��したら、その何ヵ月か後に俺も日本の大手新聞にこの一件で実名報道されたんだよ。まさか自分が新聞に載る立場になるなんて思ってもいなかったよね。こっちは抗議は受けたけど事件にもなっていないのに、扱いとしては妙に大きくてさ。「麻原の次は俺かよ」みたいな。
だけど、この覚せい剤に関しては最後までシラを切ったんだ。というのも、それは自分で使う物じゃなくて、女が欲しがった時にキメセクするのに持っておいた物だったの。覚せい剤って勃起力が極端に弱まることが多いから、AV男優でそれに手を出すヤツって滅多にいないんだよ。だから尿や毛髪を調べられても絶対に俺からは出ないと自信があったから、知らないの一点張りで押し通したんだ。
俺がデビューして間もない頃の話だけど、ある男優が現場に白い粉を持って来ていたんだ。それは鼻から吸うコカインだったんだけど、それをちょっとヤラせてもらったら楽しくなって、それでハマってしまったの。量はよく覚えていないけど、5万円くらいで買っていた覚えがあるな。 そういうことがあったから、他の業界人にも何となく聞いてみたんだけど、男優も女優も大麻程度なら当たり前に楽しんでいる感じだったんだ。それでみんなもやっているならって、ズルズルとハマって行ってしまったんだよ。俺が手を出した時点で、AV業界では深刻な麻薬汚染が起きていたんだ。
逮捕されて、判決が出て、執行猶予が付いて、それでやっとのことでシャバに戻ってこれたんだけど、この当時の俺は家がなくて車の中で寝泊まりしていたの。逮捕時には初台の家賃 13 万円くらいのマンションに住んでいたんだけど、捕まってる時に親に頼んで家だけ引き払ってもらったんだ。この先どうなるか分からないし、家賃を払い続ける自信もなかったし。だけど車だけは自分の夢だった物だから売らないでくれってお願いして、その結果「月々 24 万円の自動車ローンを抱えるホームレス」になってしまった(笑)。
その頃は、昼間AVの現場で働いて、現場終わりの夕方くらいにジャガーを代々木公園に横付けして、シートに寝転がって毛布にくるまって寝てさ。当時はAV男優仲間と飲食店を経営していたんだけど、その店が午前1時開店だったから、夜遅くなったら起きて新宿三丁目の店に出勤する生活だったんだ。
27 歳の時に女房と結婚して、一大決心をして家族で住むための家を買ったんだ。俺の人生プランとして、 24 歳までに外車に乗って、いつかはクラウンに乗って、 30 歳までに家を買おうと考えていたんだけど、そのプランはクラウンがセルシオになったくらいで、全て実現できたんだよ。
あとこれはAV業界の笑い話なんだけど、この「経費で色々落とせる」という話がAV男優の間で広まった時に、欲をかいて必要以上に経費計上したヤツがいてさ。そいつは税務署に疑われて徹底的に調べ上げられて、結果的に尻の毛までむしり取られたよ。 誰の話か実名を出そうと思えば出せるけど、かわいそうだから黙っておく(笑)。 自分の場合はさっきも言った通り家が欲しかったから、決して無茶はしなかった。あんまり赤字申告し過ぎると住宅ローンが通らなくなるから、ほんのいくばくかの金のために危ない橋は渡りたくなかったんだ。
��V業界なんてまともな社会人を経験していない人間が多かったから、あくどいことばかりやってても、何となくこれでいいやと思ってしまって、誰もブレーキを踏めなかった。今社会問題になってる歌舞伎町なんかのボッタクリよりも数段酷いものね。なんせコソコソしないで堂々と金をふんだくってたから。
昔はあくどいプロダクションも多くて、メーカーからは1現場200万や250万なんてお金が払われている超売れっ子なのに、本人には 20 万程度しか入らないなんて子もいたんだ。 あまりにかわいそうだから、俺はそういう子を見つけるとペラペラ金の話を教えてしまうの(笑)。だからプロダクションからは相当恨まれたと思うよ。 俺はそういう酷い連中を大勢見て来たから、自分が管理している女の子にはちゃんと金になるようにしようと誓ってたんだ。
色々なトラブルに巻き込まれてくたびれたのもあるけど、当時島田紳助の騒動があった時期でさ、それを見て「世の中の流れはこうなんだな」と痛感したんだよ。それでお世話になった人もいたけど、ヤクザとの縁は全部切らせてもらったの。 それに、もう騙されるのが嫌だから、人に誘われて何かをすることもなくなったね。仕事は自分の手で作って、地道にお金にするのが一番だと悟ったよ。
こんな具合に、 30 代の約 10 年間は踏んだり蹴ったりの連続だった。AVの仕事が無いから妙な連中とばかり付き合ってたのも災いしたよ。気付いたら特攻服を着せられて街宣活動に参加させられたりしてたもの(笑)。
当時、ある学校の出身者と仲が良かったんだ。そこは歴史的に国粋主義者が多くて、なおかつ武闘派暴走族を排出してきた学校なんだけど、そこのOBが風俗業界にいて付き合いが深かったの。AVのプロダクションからは「風俗で良い女の子を見付けたらあげてきて」と言われてたし、自分が女の子を風俗に入れることも多かったし、付き合って損はない相手だったんだ。
そうしたら、いつの間にか風俗とは関係ない右翼活動にも参加するハメになって、 30 過ぎのAV男優が日がな一日池袋の街中にボケ~っと突っ立ってることになってしまった(笑)。その他にもお付き合いで武道の道場にも通わされてね、「俺は何で必死に空手の練習をしているんだろう」と考えたら惨めで悲しくなってきたよ。
全ては 20 代のブイブイ言わせてた時期に、全然蓄えをしていなかったのが致命的だった。あれだけ収入があったんだから、調子に乗らずに少しでも残しておけば、その後のどん底時代も耐えられたかもしれないのに。
仲間意識といえば、大昔の平本さんやマグナム北斗さんらの時代に、AV男優のグループがいくつかあったの。「あいつは誰々派」みたいに派閥化されていて。 ところが、AV男優なんて結局は個人の仕事だから、絶対に人間関係が上手くいかなくなるんだ。それで、そういう男優グループは一時期なくなったんだけど、最近になってまたグループとして固まりたがる人間が増えたように思う。それだけAV男優やAVという仕事が不安定になっているのかもしれないね。みんなで肩を寄せ合っていないと生きていけない業界になっちゃったんだよ。
そうこうしている内に 30 代も最後になって、 39 歳の時に���子が産まれたんだ。高齢出産だったけど健康に育ってくれて、彼は俺にとって幸運の象徴みたいな存在なんだよ。
これは女性に言って理解されるか分からないけど、セックスに対して男の方が感情とか欲望が大事なんだよね。「この女とヤルぞ」っていう原動力がないと、勃つものも勃たなくて話にならない。 ところが子作りするとなると、女性って自分の身体のことだから、生理周期とかをとてもドライに考えて、「この日の何時から何時くらいの間に中で出してください」みたいなことを真顔で言ってくるじゃない。それでもうイヤになっちゃて、心が折れてしまって、女房の身体に触れることすらなくなってしまったんだ。
この本を読んでいる妊活中の女性がいるかどうか分からないけど、もし旦那と本気で子作りしたいなら、必要なのは妊娠しやすい周期を男に教え込んでセックスを強制することじゃなくて、自然と男をその気にさせる技術だと思うよ。俺が言うのも妙だけど、男の性欲ってそれくらい神経質なものだから、そっちを考えた方が絶対に話が早いんだ。
これを良いことだと言う人もいるけれど、俺は現時点ではそれは有り得ないと考えているんだ。そういう風潮を全く理解できないし、変に話を分かったように接するのって、裸仕事をする人間のためにもならないと思うんだよ。 俺は頭が固いのかもしれないけど、世間の人が「AVなんて恥ずかしい仕事だ」と思うのは当たり前だし、むしろそうじゃないといけないとすら思っている。
なぜなら、AV業界では昔から世間様に誇れない恥ずかしいことばかり起きていたし、俺も自分のダメさを自覚しているけど、そんなありさまで市民権を得たって、すぐに剥奪されてより酷い目に遭うのが関の山なんだ。
「人前でセックスする恥ずかしい仕事だから差別や迫害を受けやすい。その代わり普通に働くよりも金がもらえる」 こういうリスクとメリットがセットになった状態が一番良かったはずだよ。 それをリスクの部分を無くしてしまったら、世間で真っ当に生きている人や、人生が上手くいかない持たざる人間達に妬まれて、今以上に陰湿で絶対に表面化しない、酷い迫害を受けることになるでしょう。
無責任に「AVだって立派な仕事だ」なんて言ってる人は、そういう状況になった場合に被害を受ける立場のセックスワーカーを守る算段があるのかな。俺にはとてもそうは思えないよ。
もっと詳しく説明すると、最初は姉から「娘の結婚が決まったから式に出席してほしい」と言われていたんだ。でも俺は「自分の商売が理由で迷惑がかかるから」と断っていたんだけど、それでもいいと食い下がられたの。
俺はそれ以外の選択肢がないという覚悟でAV男優を始めたわけで、あの姉の言動は自分の人生を全否定されたも同じなんだよね。それでどうにも許せなくて絶縁。
そう言っている俺だって、もしも自分の息子が同じことになったら、正直に言えば辛いと感じると思う。ただ、俺の場合は自分がAV男優だし、子供が考え抜いた末に選んだ道だというなら、どんな仕事に就こうが許す。最終的には、子供が元気に生きてくれさえすれば、親として他に言うことなんてないもの。 でも、世の中はこういう考えの人間ばかりじゃないから、万が一の時のために覚悟を持っておかないといけないよ。
今は職業差別だなんだとうるさいから誰もが本音を隠しているだけで、心の底にある職業蔑視の感情は大して変わっていないはず。そういう風当たりの強さを自覚せずにAV業界に飛び込むのは自殺行為だよ。
理想論を唱えて「職業に貴賎はない」と言うのは簡単だし、手軽に正義の人ぶれるけど、それって単なるオナニーなんだ。君がそう思っていたって世間はそうは考えないし、裸商売の人間に対する風当たりの強さは何も変わってないだろって。
1つ事実を挙げるとすれば、部屋が借りられないという話がある。いまだにAVや風俗なんて、どれだけ金があっても、安定して稼げても、職業をそのまま伝えたらマンションも借りられないんだ。こういう業界の人間が部屋を借りる時は、職業を偽ったり、もっと厳しい証明が必要な場合はアングラなルートで企業の在籍確認をでっち上げたり、そんなことをしてようやく不動産屋が話をしてくれるようになるの。 この状況のどこが「職業差別がない」んだか。当事者としては、現実として今もここにあるじゃないかとしか思えないよ。
納得いかないというなら、コロナの給付金を考えてごらんよ。休業手当を出すとか、フリーランスに100万円配る持続化給付金とか色々とあったけど、あれっていまだに風俗店やストリップ劇場のスタッフは対象外だからね。これが差別じゃなくて何なの。 具体例を挙げたらキリがないほど世間では今も職業蔑視の対象とされているのに、そういう現実を見ないで「AVはまともな仕事だ」なんて考えていたら、辛い目にあって世間の冷たさを知って、首でも吊るしかないような状況に追い込まれるよ。特にセックスワークの女の子には極端にメンタルの弱い子が多いんだから。
どんな社会的な障害があろうとも、好きでその仕事をするというなら何をしても自由だよ。仮に俺の息子がAV男優をやると言い出しても、絶対に反対はしない。だけど恥ずかしげもなく人前で大っぴらに言うなよとは思う。
AVにしろ風俗にしろ、裸商売の世界は誰もが入っていい場所じゃなくて、どうしても他に道がない人間だけがこっそりやるべき仕事なんだよ。昔は入り口が狭くて同業者が少ないからこそ、リスクと天秤にかけた時に満足できるくらいの収入を得られていたんだから。
ソープなどの性風俗店もAVと同じ状況なんだけれど、突き詰めたら商売の土台が違法行為なんだ。だから警察や国がその気になったら、明日どうなるかも分からない職業なんだよ。 なぜそういう商売が潰されないかといえば売春防止法の歴史に行き着いてしまうけど、簡単に言うと単に国や警察の都合で見逃してもらっているだけなの。そういうあやふやな事情で生かされているだけだから、何か事情があって国が本気になったら問答無用で潰されるだろうね。 裸の仕事って、そのほとんどが何らかの法律に引っ掛かっているんだ。プロダクションがAV女優を派遣する行為は労働者派遣法(有害業務)や職業安定法が関わってくるし、撮影行為もよくよく注意しないとすぐに公然わいせつだと難癖つけられる。
出来上がったテープはモザイクを入れる前の段階ではわいせつ物だし、もし変な現場の組み方をしたら売春防止法違反だと突っ込まれる可能性もある。だからエキストラを入れる現場では、必ず出演契約書にサインをさせて、 10 円でもいいから全員にギャラを払うんだ。そうしないと「不特定多数に見せた」と 看做されて公然わいせつになったり、金を取って撮影に参加させるような馬鹿な真似をすれば売防法でやられると思う。
現にAV出演強要問題の時に逮捕者が続出したから分かったと思うけど、AVなんて細かい法律でがんじがらめだから、いつでも逮捕・摘発できる状態にされているんだ。法律の面からいえば、AV業界人はいわば犯罪者予備軍なんだよ。 もしもAVや風俗を「恥ずかしい仕事じゃない」と言いたいなら、まずは法律を変えないとダメなんだ。売春でもない、猥褻でもない、有害業務でもない、そういう安全な状況が実現して、そこで初めて「AVは恥ずかしい仕事ではない」と言えるんだよ。本気でセックスワーカーを大切に思うなら、最低でもこの考え方を理解してほしいんだ。
AV出演強要問題によって、AV業界はルールでガチガチの契約社会になり、だいぶクリーンになったけど、そのせいで失ったものもある。少なくとも、AV業界はこれまでのようなアウトローの流儀では動けなくなったから、世間と同じように法律を絶対のルールとして動いていかなきゃならない。 ということは、もうAV業界は「法律やルールを守れずこぼれ落ちてしまう人間」を匿い、食わせてやれる世界ではないということなんだ。じゃあそこから漏れてしまった人間は、今後はどこへ逃げて行けばいいんだろうね。別の受け皿なんか誰も作っちゃいないけれども。 こういう急ぎ過ぎな変化は、本当に良いことだったのか、それとも悪いことだったのか。俺は何かとんでもない弊害があるんじゃないかと思うけど、きっと時間が経てば嫌でも明らかになって行くだろうね。不幸な目に遭う人間が現れないことを祈るよ。
他にもTVメディアなどにも取り上げられて「女性と接するコツ」だの「セックス技術」だのを説いて回ってるのに、実際にはDVが酷くてAV女優から共演NGにされ、メーカーからは出入り禁止にされまくっている業界ウケ最悪な男優もいる。
あとは、とにかく金に汚くて周りに金をたかって逃げちゃうヤツとか、業界内でマルチ商法を展開するバカなんてのもいたよ(笑)。
俺が特に許せないのは、自分が酷いことをしたから業界のコワモテに怒られているのに、自分ではケツを拭かずに警察に飛び込んで被害者面をするようなクズ。何の話か分かる人には分かってしまうだろうけど、そんなとてつもないクズが俗に言う一流男優として仕事をしているのがAV業界なんだ。 方々で問題を起こしている男優を使うメーカーもどうかしてると俺は思う。同じクズでも、少なくとも俺は自分の責任からは逃げなかったから、その点は一緒にされたくはないな。 自分を棚に上げて言うけど、AV男優なんて「女とセックスする仕事がしたい」と思って飛び込んで来た人間ばかりなんだから、そりゃクズの割合が大きくても当たり前なんだ。
AV業界の中には本当に酷いクズがいてさ、AV女優と深い仲になるだけなら良かったのに、欲を出して女を所属事務所から引き抜いて、自分がマネージャーになって、個人事務所のようなノリでメーカーに営業かけて回るとか、信じられないような問題を起こす奴が何人も現れたんだ。性欲と金銭欲を1人の女で同時に満たそうっていうね。 それ以外でも、付き合ったはいいけど本気でAV女優に惚れてしまって、嫉妬して「俺以外の男に抱かれるな!」と、AVを辞めさせちゃうなんて事例もあった。ただこれは女の人生に責任持とうというだけマシなんだけど。 そういうことが積もり積もって、プロダクションのAV女優のプライベートに関する態度がどんどん固くなってしまって、気付いたら「仕事以外の男女関係はタブー」となってしまったんだよ。
AV女優ってメンタルの弱い子が多いから、そんな目に遭ったら一発で病んで潰れちゃうからね。
AVのプロダクションなんて、昔は完全にヤクザしかいないような業種だったけど、「そういう連中だからコワモテで怖い」というんじゃなくて、引き抜きを含めて無茶苦茶するAV業界人が多すぎて「女の子を守るために硬化した」というのが正確だと思う。
昔のAV業界は性病検査なんてマジメにやっていなかったけど、それでも性病をもらうことは滅多になかった。自分はこれだけ男優を続けているのに、全盛期でも性病にかかった経験がほとんどないんだ。
ところが、今は検査で引っかかる子が出て現場が飛んだなんて話をよく聞くようになった。これは昔と違って定期的に検査をしているからというのもあるけど、それ以外にもAV女優が多くなり過ぎて事務所がタレントのプライベートを管理し切れなくなったとか、撮影での生中出しが当たり前になってしまったとか、要因が多すぎて「これが犯人!」とは言い辛い。
ちょっと前にはHIV陽性の子が出たなんてこともあったんだけど、そういう時に業界が情報を隠蔽してしまうのが本当に良くないなと思う。昔の話だと、あるAV女優がB型肝炎に罹ってしまったんだけど、本人もプロダクションもそれを隠して平然と仕事をしていたなんて最悪な話があったくらいなんだ。
どうしても裸仕事の世界に飛び込みたいと思うなら、まずは普通に就職して世間の荒波に揉まれるのが一番いいだろうね。そうやって色々な社会を知った上でAVに流れ着くなら、まだマシだと思う。 一番ヤバイのは、初めての就職という段階でこんな業界を選んでしまうことだよ。そうなると世間の厳しさを知らないまま、AVみたいなふざけた業界が当たり前だと思い込んでしまうでしょう。それは社会人として取り返しがつかなくなってしまうよ。
AV業界人が自分の仕事に自信を持つのは構わないんだけれども、AV業界に籍を置くならば、何より自制心を持っておかないと恐ろしいことになる。金と性欲といった欲望が渦巻く業界だから、基本的にロクな人間がいないし、いつどんなトラブルに巻き込まれるか分かったもんじゃない。だからこういう厳しい見方が命綱として必要になるんだ。事実として、俺に近づいてきた人間なんか、反社や詐欺師ばかりだったんだから。
ここ何年かの話をすると、男優 30 周年を機に男優ギャラを下げたんだ。もう5~6万円なんてギャラで仕事がもらえる時代じゃないし、そこまでハードなカラミは出来ないから、そんな男優を使ってもメーカーからしたらコスパが悪すぎると思ったんだよ。 それでギャラの設定を3万円程度まで減らしたんだけど、思ったよりも仕事は増えなかった。直近の話に限ると、病気を抜きにしてもここ3年は仕事の数が減って、金額も落としちゃって、どうにもならない状況だったな。
さっきは色々なビジネスに手を出してイマイチだった、失敗した、惨めだったなんて話をしたけど、それだったらまだマシな方で、中には単に俺から金を騙し取っただけの詐欺師もいたんだ。 そういう輩の共通項は、会っていきなり握手をして来るところ。アメリカ人気取りみたいな感じで、挨拶もそこそこに笑顔でガッチリ握手してくるヤツがいるでしょ。俺の経験則から言って、それをやってくるヤツはまず詐欺師だと疑った方がいいね。そういうタイプにはマトモなヤツが1人もいなかった。
最初に仕掛けられた詐欺は、新宿三丁目でうどん屋兼居酒屋を始めようって話だった。二丁目のゲイバーやホモビデオといい、AV男優スナックといい、どうも俺はあの辺りに縁があるんだけど、この話は中学生の頃の同級生が誘ってきた話だったから、つい信じて乗っかってしまったんだ。
少し時系列が飛ぶけど、次に詐欺師に出会ったのはAV男優としてバリバリ働いていた 20 代の頃だった。AV業界の人間から「一緒に制作会社を作ろう」っていう話を持ち掛けられて、ついつい話を聞いてしまったんだ。 というのも、そいつは元々飯島愛ちゃんの事務所の人間で、それが円満退社して独立するってことだったから、身元がしっかりしてると思って信じちゃったんだよ。そいつこそ会っていきなり握手してくるタイプの人間で、口が上手くて、「将来のことを考えたらAV男優だけじゃ食えないぞ」とか、色々と言ってくるの。
いきなり握手系でいうと、ほんの何年か前にモザイク編集前の素材をFC2で売り捌こうとしてAV業界を騒がせたAV監督の 南 波 王 ってヤツがいたんだけど、そいつも挨拶より先に握手って男だったな。 彼は有名メーカーの出身者だったはずだけど、そういう業界歴の長い会社から出たとは思えないくらいやることが無茶苦茶で、スタッフはおろかAV男優に対しても未払いばかりだったんだ。AV女優はプロダクションがあるから優先して金を払っていたはずだけど、それがないフリーの技術スタッフとか、AV男優とかは、あの手この手でツケにしてて、さらにあっちこっちの業界人から金を摘んで、最終的に飛んじゃった。
俺の中でAV業界人ってそういうことを仕掛けてくるクズばかりって印象があって、業界歴が長くなるにつれて業界人不信も強くなっていったんだ。金が絡む話ではAV業界の人間なんか頭から疑って掛かってた。
だからこそ、今こうして癌になって金が必要になった時に、まりかちゃんや、友田真希ちゃん、川上ゆうちゃんらがチャリティー企画を立ち上げて、集まった多額のお金を丸ごと送ってくれて、心の底から感激したんだよ。
こうやって損得を抜きにして親身になってくれるAV業界人だっているんだと気付けたのは、全て癌のお陰だよね。よく「自分が困った時に助けてくれる人は誰か」なんて話を聞くけど、あれは本���だよ。羽振りが良い時は人間なんかいくらでもすり寄って来るもの。でも、その中に信頼の置ける人間なんかいやしないんだ。
俺はこういう性格だから、何かと言うと女房に当たり散らしたし、夫婦の会話の中に離婚って単語が出たこともあった。だけど彼女は俺のせいで親と縁切りまでしているし、実際に別れるという選択肢はなかったね。 過去に2~3回、俺がキレて怒鳴って泣かせたなんてことはあったけど、女房も俺も一晩寝たら忘れちゃう、感情が長続きしないタイプなんだ。それで今まで上手くやってこれたんだと思うな。
今の俺なんか、悪く言えば人の金に頼っちゃってるし、こういう病気になって貯金もないとなると、せっかく少し時間が与えられているのに、金がないって理由で生きることが無理になるから。これだけは言い残しておきたい。
2 件中 1 件~ 2 件を表示 |