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ジュニア向けの美しい珠玉の言葉の数々が優しく語られ、紹介されています。
安房直子の「きつねの窓」など、小学生の国語の授業以来で胸揺さぶられたものもあり、懐かしい気持ちになりました。
10代向けに書かれたものであるせいか、作品を深く読み解いているわけではなく、表面的な解説に終始しているように思えますが、もう忘れてしまっていたかつての読書体験を思い起こすだけでも有意義な気持ちになれます。
ただ、仏文学を学んだ者からすると、「赤と黒」の解説のくだりは、さすがに軽すぎてどうも物足りませんでした。
武者小路実篤の「友情」は、夏目漱石の「それから」に影響を受けたものだということを初めて知りました。
小学生のころに読んで、大宮が杉子への手紙に書いた「子供のころからの写真を全部送れ」というフレーズがなんだかピンと来ずに心に残ったままでしたが、その箇所の解説があり、大人になったからこそ理解できる感情なのだと気付きました。
全編を通じてあたたかい言葉が選ばれており、理知的というよりは情緒的な文章でまとめられているため、作家というよりも、詩人としての視線を感じる一冊でした。
良書紹介の役目も果たしている内容になっています。
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失恋した時に読むと励まされる。中で一番印象に残った言葉は「さよなら」と言って分かれるのだが、人はそこに「はかないのぞみ」を託している。作者は言う『はかないのぞみを託さない「さよなら」はない』。
たとえわずかでも、”ひょっとしたら”の思いにすがり、自分を支える。経験的に逆転劇は無い事も知っている。しかし、”ひょっとしたら”という思いが苦悩を和らげてくれる。そのうちに新たな出会いなどがあって、「さよなら」の未練から解放される。
だから、ぼくは別れる時に「さよなら」を言わない事にする。
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【いちぶん】
それが美
であると意識するまえの
かすかな驚きが好きだ。
風景だろうと
音楽だろうと
はたまた人間の素顔だろうと
清岡卓行「ある眩暈」