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東京オリンピック2020の直前ということもあって、それを強く意識した感想を書きます。
ヒトラーのオリンピックとも呼ばれる1936年ベルリンオリンピックについて、当オリンピックの傑作記録映画を作成したレニ・リーフェンシュタールへの取材と、当時の日本人選手の証言をもとに書き出した、読むオリンピック。
レニへの取材にそれほど紙幅を割かれているわけではなく、ナチスによる影響を克明に描いているわけでもない。出場選手についても、誰かに焦点を当てているわけではなく、オムニバス形式である。このため、どこかぼやけた印象があることは否めないが、80年以上前のオリンピックを日本人がどのように迎えたのか、その一端を垣間見ることができる、読み物として非常に面白い本だった。
今は2021年6月19日、東京オリンピック2020が開催されることがなし崩し的に決まりつつあり、観客を入れるのか無観客にするのか、等の議論(?)がなされている。この本の著者は、あとがきにおいて「惨めで哀れな大会」(p.418)とこき下ろしており、あとがきだけ読むとこの著者、悪い奴だなと思わなくもない。不朽の名作『深夜特急』を上梓した作家はこんなに性格の悪い奴だったのかと。
ただ、本作を読むと、そういいたくなる気持ちが分かるような気もしてくるのだ。
1936年ベルリンオリンピックは言うまでもなく、ヒトラーがナチスのプロパガンダを盛り込むことを強く意図して計画されたものだ。WWⅡ最大級の悪役(連合国からみたらムッソリーニや昭和天皇とかも一緒だろうが)によって企図されたもの、ということで悪名高いオリンピックとなっているが、政治的な意図でWWⅠ以降数度に亘りドイツが干されていたこと等、歴史を紐解いてみれば、何もオリンピックと政治との切っても切れぬ関係は1936年に限ったことではない。
そして2021年の東京オリンピックに至っては、政治と経済に振り回されるオリンピックとしての側面がどんどん剥き出しになってしまっている。
「あのベルリン大会はさまざまに評価されるオリンピックだったかもしれないが、参加した自分たちにとっては最高の祭りだった」(p.367)
とは、ヨット競技でベルリン五輪オリンピックに参加した藤村紀雄の回想だ。影があれば光もあったベルリンオリンピック。時の指導者に熱狂していた。その熱狂はWWⅡに突き進む道を辿ることになるが、ベルリンオリンピックが国民の圧倒的支持の中で成功裡に終わったことは疑いようがない。
そのコントラストを鮮やかに描き出した著者だからこそ、国民の支持すらないオリンピックに苦い感情を抱いているのだろう。
選手は、国民は、東京オリンピック2020を「最高の祭りだった」と笑顔で振り返ることができるか。コロナウィルスの動向でもなく、経済的効果でもなく、長い歴史の中でのオリンピックの成否は、そこにかかっているのかなと思った。
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大河ドラマいだてんで見たやつやん。と思って手に取った。
1936年ベルリンオリンピックの記録映画を撮影したレニ・リーフェンシュタール女史への取材と、この大会に出場した主に日本選手の大会前~大会後の顛末で構成されている。
前者より後者について書かれた部分の方が多かった。選手や競技結果より、運営側の苦悩みたいなものの方が知りたかったのですこし期待に沿わなかったかな…。オリンピックに対するナチスの影響力どのようなものだったか、とかが気になっていた部分だった。
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著者の根底には、参加者に勝手な思いを押し付ける人々に対する違和感があるのではないだろうか。それほどまでに、オリンピックは、いつの時代も人々を熱狂させるものなのかもしれない。