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いろんな方法を駆使して、前に進むことが出来るのは人間という生き物。
時には落ち込み、薬を服用し、そして自身をケアする。
そんな工夫が出来る能力が備わっているはず。
そう信じることが出来るのは人間だから。
この本では、楽観的過ぎる事例や考え方があるかもしれないけれと、この著者のこれからの本も読みたいと思わせてくれた。
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ルドガー・ブレグマン「希望の歴史(下)」読了。抑圧から脱却する為に立場の異なる相手を理解する努力を重ねた南アフリカのネルソン・マンデラの例には胸を打たれた。人の潜在的な力を引き出すピグマリオン効果や遊ぶ事の効能を説いたホモ・ルーデンスも大変興味深かった。希望への機微を感じた。良書。
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まず、この本のメインテーマは、
『人類の性善説を過去の事例により証明する』
です。
これだけ性悪説が信じられている現代に、
「それ本当?証拠は?そのデータは正しいの?性悪説だと言うのなら、この事例はどう説明するの?」
という疑問を持ち、自分の足で取材をして、たくさんの人に会い、話を聞いた筆者が書き上げた本です。
とても興味深く、面白い話がたくさん載っています。
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下巻は、「善人が、悪人になる理由 」からスタートする
ドイツの兵士が、勇敢に戦う理由は、イデオロギーではなく、友情から。戦争の死因は、遠隔なものほどおおく、接近戦ではわずかだ。
権力は、麻薬のようなもので、人を鈍感にする。
文明がもたらした、疾病、戦争、圧政を解決するのは啓蒙主義、すなわち理性である。
「新たなリアリズム」、をはさんで、「もう一方の頬で」で、人間が寛大であるためには、対話であり、接触であり、交流が必要であることが示される。
隣人に、危害を加えることは、普通の人には、難しいのだ。
「エピローグ」で人生の指針とすべき10のルール
が示されて、著者の主張がまとめられる。
勇気をもって自分の本性に、忠実となり、新しい現実主義を始めよう が、希望の歴史の最後のメッセージでした。
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「人間は善為る者である」、この立証を試みるために性悪説の根拠として列挙されていた事例や実験を具に調べ事実を以って反証する姿勢は面白い。そしておそらく我々は善の要素が強いのだろうと思わせられる。但し帰納的証明の赴きが強く、善悪をベースに二軸対立で捉えるのもやや無理があるようだ。例えば「共感」。第二次世界大戦のナチスやルワンダのジェノサイドでは確かに横の連携がそうした逸脱した行為を生み出したであろうが、「共感」は善なるパワーも内包していることもまた事実。善と悪はDNAのように螺旋が織り成す人間の資質であり、人はいずれかに軸足が寄った生き物ではなく行ったり来たりの不安定且つバランスをとりながら生きる生命体なのだろう。
とはいえ本書読了後は人間の本質はやはり善であると思えるし、上巻の問題提起と手法、エピソードは興味深かった。下巻で弱まってしまったため☆3。
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上巻で主張した性善説を前提にした世界を良くするための提案が素晴らしいです。『ティール組織』で書かれたボトムアップ組織など。共感の裏返しである排他性が残された課題ですが、本書では対話の重要性が語られます。しかし言語、宗教、格差をいかに乗り越えて相互理解するのかは疑問が残るところ。
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(上)に続き、「人は基本的に善良である」を証明し続けている。非常に読みやすい。
後天的社会病質者とかピグマリオン効果など、地位や情報で態度が変化してしまう人間の弱さ?ピュアさ?があるんだと理解出来た。
また、(下)でも「コモンズの悲劇」や「割れ窓理論」を反証していて痛快だった。特に「割れ窓理論」で犯罪を取り締まろうとして、ノルマを課したことによって、マイノリティを逮捕するような人種差別が広がった事例は、企業のKPI管理が生む弊害と同じだとの感じた。
ハートフルで人間っていいなって感じたので、現代社会に疲れている知人に勧めたい。
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そもそも人間の本質は「善」であると唱えている。
「性善説」を人類の歴史、集団心理などから切り込んで持論を展開。
人間は善の仮面をつけた悪に誘惑されやすいという。
なぜか。
それは私たちは共感することで寛大さを失い、少数者に対してその他大勢を「敵」と見るからだという。
その心理状態なんとなくわかる。
興味深い実験があった。
子供たちに赤と青のTシャツの好きな方を選ぶ実験をすると、青のTシャツを多く選んだ子達が、赤のTシャツを選んだ少ない方の子達をいじめるようになる。
人間の心理は既に子供のころに、このような心理になることがわかる。
だが、人間の本質は「悪」ではなかった。
過去の心理状態の実験の数々は真実でなかったことをブレグマンは独自目線で解き明かしていく。
無人島に着いた少年たちが残虐な行為をしていく「蠅の王」では、実は少年達は互いに思いやり、生き延びたこと、「スタンフォード監獄実験」では看守役が囚人を殴るのは役を演じていたことがわかる。
他者に寛容でお互いが良い関係であること、
それは、全ての人が勝者になる。
許すことができれば反感や悪意にエネルギーを浪費しないですむ、
「人生の指針とすべき10のルール」の中で人を人として更生させていく矯正施設ノルウェー刑務所の例を挙げている。
刑務所の所長が言う。「汚物のように扱えば人は汚物となる、人間として扱えば人間らしく振舞う」と。
この刑務所の出所後再犯率の低さは世界最高だという。
更生後の人は社会で働き税金を納め、再び犯罪を犯すことが低くなっている。
これぞウィンウィンの関係になると説く。
そして人は思いやりの心をもち寛容である、弱気者に手をさしのべる、本来そういう生き物であると結論づけている。
それでは地球温暖化や凶悪事件など人類が起こした問題はどのように捉えたらよいのか。
歴史が繰り返した数々の問題があるからこそ、人間の本性の原点に目を向けるよう気づかせてくれたのでは。
私たちにできることは何か。
他人の失敗や発言を非難したり、ダメなところが目についてしまいがちな心に、思いやりを持って接していく、よいところを見る、そういうところから始めてみようと思う。
人は人を許し、受け入れて前を向かって歩いていく、人に対して新しい視点に立ち接していくことを教えてくれた、とても良い本に出会えた。
多くの人に読んで欲しい本です。
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人間の本質は善である。人間の本性のネガティブな見方について心理学研究、メディア、ポピュラーサイエンティストが拡散したのは近年の話である。人間が氷河期を乗り越えられたのは、社交的で模倣を行うからであり、本来は友好的な種族である。
一方で、人間を残酷な種にしているのは「共感する能力」だ。共感は特定の人にスポットライトを当てるものであるが、少数に注視をすると大勢が見えなくなる。少数のネガティブな状況に焦点が当たりすぎる。また、「『人間は本来利己的で強欲だ』と私以外は思っているに違いない」とネガティブな「多元的無知」を行っていることで人間は本質的に悪であると信じ込んでいる。
であれば、「最良な人間」を信じ込むことも可能ではないか。私たちが「大半の人は親切で寛大だ」と考えるようになればすべてが変わるはずだ。そう考えるかは私たち次第だ。
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人の根幹は善である。しかし、本能として見ず知らずの人を嫌う性質も併せ持つ。それを踏まえた上で、異なる者同士が信頼し手を取り合うには、互いに「理解しようとする姿勢」を見せる事が重要である。
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上巻を読み、では解決策はなんだろう?と思い下巻を読み進める。
著者は終始人類に対してポジティブなスタンスを持っており、こういう本を読むだけでプラセボ効果はありそう。一方で結論に結びつくエピソードを多く集めた印象もあり、上巻ほどのインパクトはなかった。
ただ、重ねて書くが著者の問題意識には経緯を評したいし、彼のスタンスについては日本のジャーナリズムも参考にしてほしい。
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"共感はわたしたちの寛大さを損なう。犠牲者に共感するほど、敵をひとまとめに「敵」と見なすようにるからだ。選ばれた少数にスポットライトを当てることで、わたしたちは敵の観点に立つことができなくなる。"
共感より思いやりと説く。
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やっと下巻も手に入れ読みました。
【善悪も人が決める】
― 農耕 ー
農耕を始めたことによるよくないことを下記に示します。
人はもともと筋肉質で無駄な贅肉は無かったが、穀物を食べるようになり体に貯えることができるようになり贅肉がつくようになりました。
また、農耕が始まったのはつい1万年ほど前であり、人類200万年の歴史の0.5%にすぎません。まだまだ農耕に対応できる体になっていないのです。
人は血糖値をあげるホルモンは備えていますが、血糖値を下げるホルモンは備えていません。つまり、人類の長い歴史において血糖値を上げることはあっても下げることはなかったということです。血糖値が上がると肥満につながることはわかっています。そして、血糖値をあげる食べ物が穀物になります。
しかし、人の寿命はここ1万年で長くなったではないか?
と反論があると思いますが、寿命が延びた要因が穀物であるというよりも、医療、栄養状態の改善により、乳幼児の死亡率が劇的に改善されたことによる影響が大きいと感じます。
穀物は物理的に保存できることにより、私有という概念が生まれました。基本的に狩猟採取では保存が効かないため、私有という概念はなく、共有という概念しかありませんでした。
穀物だけが悪いわけではないでしょうが、肥満、私有財産による富の差は穀物に要因があると考えます。
富の差が発生することにより、ヒエラルキーも養生されてきたと考えます。
さらに恐ろしいのは、穀物は即効性の毒というより、タバコやお酒よりさらにスパンが長く、じわじわと心身をむしばむ恐ろしく遅効性な毒という言い方もできます。
ー 人の善悪 ー
199万年間、人は争わずに生活をしてきました。共有という概念しかなかったからです。根本的には「善」しかないのです。
農耕が始まり、悪も蔓延るようになりましたが、199万年の歳月をそう簡単に覆すことができず、根っこは善のままなのです。
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めちゃくちゃいい本でした。
「人類の性質は、悪なのか、善なのか」という永遠の問題について、歴史や様々な研究から、丁寧に考察した本で、現代の「希望の書」だと思いました。
ぜひぜひ読んでみて下さい❕
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性善説・性悪説。人類の見方は歴史的に様々な見方をされてきたが、どちらかというと性悪説を元にした見方が多かった。ホッブズの「万人の万人に対する闘争」など、過去の様々な事象はことごとく人間の邪悪な心理によってなされてきたと描かれてきた。しかし、本当にそうだったのだろうかとブレグマンは考える。そして、多くの事象を掘り返していくとことごとく真実は逆で、人々は優しく、協力的で、善人であったことを示す。ネアンデルタール人は邪悪なホモ・サピエンスにより虐殺されたという見方は、単にホモ・サピエンスがよりコミュニケーション能力に長けており、生き延びるための知恵をより多くの個体で共有できたことによってではないかと考える。また、スタンフォード監獄実験の結果は実験者による意図的なシナリオによって狂乱が生み出されていたことが暴かれた。BBCでの再現実験では囚人と看守は協力的な関係を築き、共に和やかに過ごしていた。(番組としては何も起こらないつまらないものとなった)さらに、戦争においては人々が本当は銃を撃ちたくない、戦いたくないと感じており。実際の発砲率が低かったことも示している。クリスマスには休戦し、共に歌を歌い、友情を育んでいたことも示している。本当に多くの事例を挙げてブレグマンは何を示したかったのか。それは現在の社会システムは「性悪説」を前提に人は利己的であるがためにそれを制する目的で設計されているが、そうするよりも「性善説」に依拠した協力と信頼を取り戻すことによって本来あるべき社会システムを目指そうということではないか。狩猟採集時代、人類は常に移動することで様々なグループと出会い、共に生き延びてきた。あるとき、「豊饒の地」を見つけた人々は定住を開始し、農業を始めた。ここから自分の領地であると線を引き出す人が現れ、私有財産が生まれ、闘争が起こり、首長が必要とされた。そしてそれが人種・国境という区切りとなり、よそ者に対する偏見と嫌悪にあふれた世界ができあがった。本当はみんな「普通の人」なのに交流・コミュニケーションがないために相手を知らないだけなのだ。みな、固定観念や幻想に取り憑かれて、多元的無知な状態にあるだけなのだ。だからこそ国境を取り払い、人々が縦横無尽に交流する社会を築き、共に協力・共有して真の「豊饒の地」を目指していくべきだとブレグマンは示したのだと思う。そしてそれを成し遂げることは「性悪説」をはびこらせた人間が少数だったことから、我々が少しずつでも変わることができれば成し遂げられ得るのだと締める。
この本でも多くの事例をこれでもかと示した上で、「本当は何が真実で、何を目指すべきなのか」をブレグマンは書いている。遠目から眺めているだけでは気が付けないことは多くあり、やはり現地現物をリアリスティックに観察することでしか気が付けないことは往々にしてある。現実を直視して見つめ直すこと、「思いやり」を持って物事に接することを重視して世界と対峙していくことで真に必要なことを掴めるようになりたい。