紙の本
台湾に想を得た9編の傑作を集めた佐藤春夫氏の作品集です!
2020/12/07 09:53
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『田園の憂鬱』、『お絹とその兄弟』、『美しき町』などの代表作で知られる佐藤春夫氏の作品です。佐藤氏といえば、台湾に想を得た作品が有名ですが、同書はその中でも特にすぐれた作品です。実は、100年前、「田園の憂鬱」で一躍文壇に躍り出ながら、極度の神経衰弱に陥った作者は台湾へと旅立ちます。そこで目にしたもの、感じたものは、作家の創造力を大いに刺激しました。台湾でブームを呼ぶ表題作など、台湾旅行に想を得た、今こそ新しい9篇が収録されています。ミステリーあり、童話ありで、異国情緒のなかに植民地への公平なまなざしと罪の意識がにじむ作品ばかりです。収録作品は、「女誡扇綺譚」、「鷹爪花」、「蝗の大旅行」、「旅びと」、 「霧社」、 「殖民地の旅」、 「魔鳥」、 「奇談」、 「かの一夏の記」です。ぜひ、佐藤春夫氏の世界を楽しんでください。
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佐藤春夫が1920年夏に数ヶ月かけて旅行した台湾。その旅行の体験を元に描かれた小説・随筆9篇収録。
ただ「台湾ネタの作品集めました」な編集ではなく、冒頭に春夫の旅程とそれに対応する作品を地図上にマッピング、各作品のトビラには当時の写真などを使用するなど、作品の収録順含めてとても丁寧な編集(おそらく作品の収録順は、旅程の日程にあわせた流れにしてあると。なので、雑誌初出順ではない)。
また、編者がこの分野に詳しい河野先生なので、巻末の解説がとても充実。この春夫と台湾の関係について興味を持たれた方は、編者が2019年に出された本『佐藤春夫と大正日本の感性―「物語」を超えて』を読まれると、より詳細な事がわかるかと思います。
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台湾生まれの師匠に長年読めと言われていた佐藤春夫のこの短編をやっと読めることができて嬉しい。春夫が旅して書いた100年前の台湾。それは急激な都市化が進む台北ではなく、当時は港町であった台南、霧社事件発生前の霧社、嘉義や日月潭などの田舎町であり、本島人、原住民、そして日本人が入り混じった生々しい人間模様に満ちており、自分も旅した場所で春夫が見てきたり感じたことがその土地の記憶と共に現れてくるようだ。往来が再開したら、この本を手に台南へまた行きたい。
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廃墟に響く幽霊の声「なぜもっと早くいらっしゃらない?」。台湾でブームを呼ぶ表題作等百年前の台湾旅行に想を得た今こそ新しい九篇。文庫オリジナル。
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詩人・作家の佐藤春夫が1920年に訪れた台湾に着想を得た小説集。小説というよりも紀行文に近い。読みながら実際の足跡を辿るのも良し。阿罩霧で訪ねた林家は実在する霧峰林家のこと。邸宅は今でも保存されている。また後に台湾映画映画セデック・バレの舞台になる霧社も訪れている。
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ここで描かれているのは100年以上前の台湾なんだけれど、当時の光景が目の前に浮かんでくるようで、当時とはまた趣を変えているに違いないが、また台湾に遊びに行きたくなった。