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ある日突然発生した人の姿をした、某(ぼう)
時が経つと性別も年齢も変化させて別人となって
生きる某は、誰にでもなれるけど、誰でもない。
SF的な内容だけど、
変身を繰り返して生きる某たちは
SNSのアカウントを変えて何人もの別人になりきれる
現代人のようにも思えるし、
変身を繰り返す某たちが変身をしなくなるときもまた、
人に重なるものがある。
始終、表紙のような灰色の静かな世界が
淡々と進む感じがとても好きな雰囲気でした。
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文庫でも表紙が変わらないんだ。この人の恋愛感覚とかセックスに対する姿勢とかが私にはなじみやすい。そのあたりは先生の鞄以来かなあ。
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人間のようで人間でない「誰でもない者」の話。
悪口じゃなく、むしろいい意味でよくわからない。
不思議。謎。
だけど、
“どうぞ、あなたの役を楽しんでください”という
とんでもなく魅力的な
導入の一文に引っ張りこまれるように
400ページをほぼ一気読みしてしまった。
突如あらわれた「誰でもない者」は
次々に別の人間へと変化していく。
SFチックな設定なのに
なんだか薄ら寒いくらいリアリティーがあって、
自分を投影せずにいられないのはなぜだろう。
私の自我ってどこからきたの?
なんのために生きてるんだっけ?
自分が自分である必要ってあるんだっけ?
死ぬって何?死んだらどうなるの?
僕は誰だ?
そんなとりとめない、答えのない哲学的な問いを
考えずにはいられない。
SF設定は夢物語を描くためじゃなくて、
現実をより克明に描き出すために
存在してるんだと思った。
「誰でもない者」の人生への執着の薄さ、
自分のことなのに他人事みたいに冷静なとこ、
そうやって生きているうちは
死への恐怖も希薄なこと。
どこか、ゆとりとかさとりとか呼ばれる
我々現代の若者像を、
煮詰めて濃くした生物のように感じた。
ハルカになって春眠になってマリになって……
筆者はなんのためにそうしたのか。
みのりが生まれた理由、ひかりが死んだ理由、
みのりと滅びゆく世界はこれからどうなるのか。
正直テーマもよくわからないし
わからないことばかりが残る読了だけど、
だからこそ何度読んでも感じることが違いそうで、
新しい発見がありそうで、
むしろそのへんは読者に委ねられていそうで、
これはもしや、とんでもなく奥深い本なのでは?
現状初読は、
今はとりあえず自分の役を楽しむことにして、
いつか見つかるかもしれない
死ぬ理由=生きる理由を気ままに探し、
探すために人にも物にも好き勝手たくさん触れて、
なるべく多くのことを感じ取るようにだけ
努力しようと思ってる。
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「多重人格」「サイコパス、ソシオパス」を題材にした小説は幾つか読んだが それらとは似て非なるモノ。
前半(と言っても9割がた)何が主題なのか分からないまま
それでも小気味良い文体で読み進む。
最後になってやっと
'他者との共感とは?'
'他者を愛するとは?'
'何故 生きるのか?'
が語られ(もちろん 結論は分からない)
切ない物語。
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「誰でもないもの」にまつわる物語。
わたしはマリの話が好きだった。
自分が「からっぽな存在」だと自覚したマリ。そしてそのマリと一緒に生きたナオ。
2人の、どこか満たされない悲しさが心に沁みた。
全体を通して、生きることや人間であることの苦しみや喜びを感じさせてくれる物語で、面白かった。
川上弘美さんの持つ、不思議な世界観が好きだなぁと改めて思った。
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何者かに変化できる生命体が主人公。この設定が本当なのか、精神世界のものなのか、それとも本人が錯覚しているだけなのか。それを探りながら読み進めていくので、どんな展開になるんだろうと気になってページが進んだ。なかなかハマったってことだ。
何者にもなれる存在は、何者でもないということ。そんな中途半端な存在の彼らがアイデンティティを確立しようとする話にも思えたし、彼らを通して人間の人生や愛について考えさせる話でもあった。なかなか面白い手法。
意外と驚かされたのが人間社会の変化の描き方。なるほど、そんなミスリードもあるのか。人には勧めづらいが、印象には残った。
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読む前の印象は、もっと怖くて仄暗いお話なのかな~‥と思いましたが、そんな事はなくてちょっぴり不思議なお話でした。
一見、突拍子もない摩訶不思議な話しに思えるけど、この物語を前世の記憶を少しだけ持っている人達の話と置き換えて読んでみると、非常にしっくりくる‥
何度も何度も変化(輪廻転生)を繰り返しながら
生とは?死とは?
問いかけながら
変わっていく事、変わらない事。
色んな人格になり、色んな人生を経験する事で、自身も知らない間に少しずつ成長していく‥
「愛するって何?」
「相手の為に生きたいって思える事だよ」
死を恐れなかったひかりが、愛する事を知って変化する事を恐れた事も、変化出来なくなった事も、魂の意志、成長を現しているように思えた。
最後の人格が「ひかり」という希望の溢れる名前なのも良かったな‥。
あと、個人的には何度か
途中禅問答のようなやりとりも出てきて、あ〜こういうの好き♡
と思いながら夢中で読み耽りました。
色んな解釈が出来る一冊
私好みのお話で面白かったです。
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珍しい設定。こういう人はいるとおもう。
いろいろなスタンスが淡々と書かれていてよかった、なににせよみんな生きていた。
最後の方の、違うものへの憎悪はこわい。
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ジャゲ買いです。表紙が好きで、そして「某」とう題名が気に入って買いました。私は「なにがし」って読み方の方が好きですが、「ぼう」という読み方にしたのは、単独じゃなくて、添える言葉として表したかったのかなと思いました。
「誰でもない者」それは、人とも限らない者でした。関りの長さ深さによって、執着の度合いも変わってきて、登場人物の変化が面白かったです。たくさん変わり過ぎて、途中ごちゃごちゃしてきましたが。それぞれの生き方というか過ごし方の方向が多様なのが面白かったし、「誰でもない者」は「誰にでもなれる者」なんだなと思いました。
お話の中で、変わっていく風景も面白かったです。良いことも悪いことも、日常の中に、埋没していき、当たり前となっていきました。常に新しいものを取り込んで受け入れていく強さをもっているんだなと思いました。
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限りなく人間に近いが、性的にも未分化で染色体も不安定で、不死の生命体。
彼らはいつだって、何にでもなれる。性別も年齢も職業も。何かになって、人間と一緒に生活する。
章が変わるごとに姿を変える某。
感情があること、考えること、誰かを愛すること、生活をすること、何かを楽しいと思うこと、人の気持ちを理解するということ、自立するということ、子どもを産むということについて、家族というものの存在について。
某という存在は、人間の形を取った人間ではない存在であるが、人間と共に人間社会で生活していくので、人間が生きていく上で大切なことを、某はひとつひとつ、学んでゆく。
生きるって、生きていくって、こういうことだよな。
読みながらそう実感する。
毎日を当たり前のように過ごしていると、さらさらと抜け落ちていってしまう何か。
それらに、一つ一つ丁寧に向き合っていく感触があった。
そして、「生きること」を考えると同時に、「死」についても考えることになる。
P390「何にでもなれ、どこにでも存在できるということは、生きていないのと同じこと」でもあるからだ。
作中では、「死」について考える場面で「安楽死」に触れている部分がある。
解説P429「安楽死が合法化されると、それを選ぶ人はだんだんと減っていったらしい。いつでも死ねるなら今でなくてもいい」
死をのぞむ人って、少なからず存在する。さらに日本は自殺者が多いことで有名である。この国で安楽死が合法化されたとしたらどうなってしまうんだろう、安楽死が合法化されている国と同じ現象が起こるのだろうか、なんてことを考えた。
そして、三島由紀夫(奇しくも「死をのぞんだ人」である)が答えを出せなかった、「誰かを好きになること」と「性欲」がイコールなのか問題と、「一緒にいて落ち着く」イコール「好き」ってことなのか問題。
そういうことにぶち当たって、考える某。
わたしも一緒になって考える。
愛ってなんだ。
家族ってなんだ。
そして、『夏物語』に引き続き、またしても産む産まない問題にぶち当たる。
どうしてわたしは「子どもをほしくない」と思う自分を、欠陥品だと思って責めてしまうんだろう。
そして、倫理観を問われる、なぜと問われると大人が詰まる質問3連発。
①なぜ人を殺してはいけないの?
②なぜ身内とセックスをしてはいけないの?
③なぜ学校へ行かないといけないの?
「生きていくためにはこうしないと」「こうするしかない」と思って、せかせかと生活しているうちに忘れ去られ、しかし答えが出せていない「なぜ」。つまり、この作品は、レビューの冒頭で書かせてもらった「毎日を当たり前のように過ごしていると、さらさらと抜け落ちていく何か」について、優しく問いかけてくれる作品なのである。
P179「『家族は、変わってゆくから、つかまえておくのは、難しい』。家族、という言葉の意味が、みんな違うのだなと、私は思った」
P205「優しい声は、優しい気持ちとは無関係に出すことができる。私はたしかに、何かに対して怒りを感じていたのだ。香��さんに対してではない。では、何に?」
P225「『うん、生きるのは、苦しいことなんだよ』」
P241「『愛してるって、どんな感じ?』『一緒に年とって…やがては死んでいってもいいような感じ…かなあ』」
P264「『体を使役することは、けっこう楽しかった。でも、体の表面と体の中のつながりが、うまくわかってないみたい、あたしいまだに』」
P347「生きることは、日々刻々と変わってゆくこと」
自分の中にある倫理観を揺さぶられ、掘り下げられた作品として、かなり印象に残った作品。
平野啓一郎さんの『空白を満たしなさい』を彷彿とさせる。真正面からではなく、少し違った角度から、「生きる」ということに向き合わせてくれる。
そして実は、川上弘美さん初読みでした…!
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アイデンティティとはなんぞや、魂とはなんぞや、人間とは、自分とはなんぞや、生きるとはなんぞや、自己愛とは?自己犠牲とは?誰かのために生きたいと思うって、なんぞや?
川上弘美さんらしい、とっても不思議ワールドな小説です。
タイトル通り、某とした、「何者でもない者」たちが主人公。突然この世にあらわれて、いろいろなアイデンティティを持ちながら人間として生きていくのだが、人間ではない。人間ではないだけに、人間とは何か?と考えさせられる。年もとらないし、死ぬこともない。彼らも自分が何者なのかわからない。よくわからないけど、その時々に得た人格を演じて生きる。何かの拍子にカップル的なものもできるけど、愛しあうとか、相手のために尽くすとか、理屈ではわかるけどそういうことはできない。
別れを悲しむとかも、よくわからない。
でも、最初「ハルカ」として生き、最後は嬰児から生きることをやり直した「某」は、ともに成長したみのりを愛することによって、それまで知らなかったいろいろな感情をもつ。もう全く別物の何者かに変化したりもしない。変わったのだ。もしくは、何かを失い、何かを得たのだ。
ちょっと、「100万回いきたねこ」みたいな話だな、と思った。
とても不思議で、少し悲しくて、荒唐無稽で非現実的だけど、でも魂というのはこういうものかも、と腑に落ちたりもする。前世の魂の記憶がないだけで、こういうものなのかも。
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読むと自分も某になった感じ。
突然物語の中にほっぽり出されて、
終わりも突然に迎える。
思えば中学や高校に入学する度、新しいコミュニティに入る度、「変化」をしてきたなぁと思う。
だから、彼らの気持ちがわからないわけでもない。
「成長」するようになるまで、物事に関して、良いも悪いも好き嫌いもなく、淡々と事が進んでいく。
でも、やっぱりわからない。共感できない部分もたくさん。ええそれどんな感じ?もっと教えてくれ!と思う。
アイデンティティ以外にも、家族とか、愛とか、生きるとか死ぬとか、たくさんたくさん考えたいワードが出てきた。
面白かった!
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全体的にふわふわとして、掴みどころのない話でした。相手のために生きたいと思うこと、犠牲を払うこと、そのとき誰でもないものは、誰かになる。誰になってどうやって生きるかというのは、自分で選ぶことなのだ、とひかりを見ておもった。
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忽然と病院に現れた女性。名前も性別も年もわからず記憶も持たない彼女は、「誰でもない者」(「医学界の都市伝説みたいなもの」と思われていた「人間に限りなく近い生物」)だった。主治医の蔵医師の指示でアイデンティティーを確立すべく、治療を開始し、まず丹羽ハルカという女子高生になる。治療の過程で次々と別人(性別も変わる)になるが、それにより人格も変化する。さまざまな人間としての経験を重ねながら、仲間に出会い、感情を獲得していく。
それぞれの話はそういうものとして読めば、とても面白い。これはSFでもミステリでもないので、それでいいのだ。
なんでそんな存在なのかは自分にもわからないし仲間たちも知らない。家族もなく、どこか欠落したものを感じながら「人間」のように生きる彼らの自由さには不穏さがつきまとう。人は一人で生きるしかないからこそ、他人を求めるのかもしれない。
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naonaonao16gさんの本棚で見つけ図書館予約
脳の腐りかけた婆さんにはついていけなかった
naonaonao16gさん、ごめんね
ヒトって何だろうと思うけど
最初はよかったのですが、だんだん本から取り残されてしまったんです
川上弘美ワールドは、モワッとして境界線がなくて
それが魅力だけど 私には難しいのでした
≪ 年、性も 飛び越えていく 某の生 ≫