紙の本
江戸の情報屋
2021/07/30 01:33
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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸町の「情報屋」が売る噂を巡り繰り広げられる史実に基づいた壮大な歴史小説。周りのキャラが濃く、涙と笑いを誘うシーンが多々あり、堅苦しく思われがちな歴史小説のイメージがマイルドに緩和されていてとても読み易かった
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主人公は江戸末期に情報を種に商売したという実在の人物。
実際にこんな波乱万丈の事件に巻き込まれたのかはわからないが。
主人公が長年綴った「種」は15巻の現代語訳で読めるらしい。。
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著者初読み。結構好みです。キャラクターも良いし。おきちと伊之介大好き。他もクセがあってよいですね。最後は斉昭かぁ。そこまでは予想できませんでした。きっとこのシリーズ続くのでしょう。次もお待ちしています。
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神田の一角で古本を並べ、商売をする由蔵。
彼が売っていたのは古本だけではなく、裏が取れた噂や風聞。
買いに来るのは、情報が欲しい藩の留守居役や奉行所の役人でした。
ある日、そこへ幕府天文方の役人が逃げ込んで来ます。
日本を震撼させたシーボルト事件を背景に、陰謀が渦巻いていきます。
仲間の敵もとるべく、由蔵は真実を暴くため、動き始めます。
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最初の方は面白かった。噂の種を売るというのもいいし、おきちやほかの登場人物も良いキャラクターで続きが読みたい。ただ、学者の嫉妬とかが出てきてからはなんかスッキリしないままで終わってしまった。次作は読後感の良い作品をお願いしたい。
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シーボルト事件の顛末を、市井の男が絡んで解き明かす。禁制の伊能地図持ち出し事件について知らなかったので、学ぶことが多かった。高橋作左衛門と間宮林蔵との確執、彼らとシーボルトとの親交は史実であり、どうやら江戸の長崎商人が記した書からシーボルト事件が露見したという説が検証されているようだ。そこに町人風情の情報屋由蔵を仕立てて踊らせる。いささか大役を負わせ過ぎの感はある。あの商売形態で、個人事業主の彼が得られる情報など知れており、それに頼る幕府でもあるまいに。まあ緩くて地味な主人公の活躍こそが梶作品の醍醐味か。
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文体が読みやすく、はじめから引き込まれた。登場人物のキャラが立ちすぎていないけど、しかとあるのがいい。
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古本屋の傍ら『噂』を必要な人間に売っている由蔵が、あのシーボルト事件に巻き込まれていく。
由蔵の父は養蚕家だったが詐欺にあって病の蚕卵を買い、自身だけでなく集落の蚕まで死なせるという大変な事態を招く。そのせいで父は自害、母は心労死、由蔵は周囲の子どもたちから『うそっこき由蔵』と非難される。
長じても父親のしたことは消えず、江戸に来れば『うそっこき』ではなくなると心機一転働くが、そこでもまた大奥の『嘘』で大切な人が追い込まれ死に至る経験をする。
『噂に惑わされ踊らされ、果ては大勢が信じ込み噂が嘘でなくなっていく』
『嘘で固められた「真実」など、あっちゃいけねえんだ』
力も後ろ楯もない由蔵が、集めた『種』で動く奴がいる、役立てる者がいることが面白いと始めた情報屋。裏取りをした確かな情報しか売らないが、それを使うか生かすかは買った者次第。
序盤の加賀前田藩に輿入れした将軍の娘付き女中頭をギャフンと言わせる話からしてモヤモヤしたのだが、シーボルト事件は更にモヤモヤした。
ここではまたもや由蔵の可愛がっている後輩が殺されてしまう。
自分を責め殺した者に復讐したい由蔵だが相手は一介の町人が太刀打ち出来る相手ではない。
今村翔吾さんなら太刀打ち出来る大物の味方が出てきたり数を力に正面突破したりとんでもない裏技で一泡ふかせたりするところだが、梶さん作品ではそうはならない。
大奥事件では町方同心が代わりに一矢報いてくれたが、この件では翻弄されてばかりだ。
力も後ろ楯もない由蔵には何も出来ないのか。
シーボルト事件の解釈としては興味深い点もあった。間宮林蔵など蝦夷地探検家としてしか知らなかったので意外なキャラクターだった。
いい加減な話に騙された父親を憎みつつも人を完全には遮断出来ない、どこかで信じる気持ちがあるからこうして振り回されるのかも知れない。
代わりに武家に商人に女の子にと様々な人たちに慕われている。
今回の件を糧に、強かな由蔵が生まれるだろうか。噂を自在に操るくらいの器用さがあれば面白いのだが正義感が強い彼には無理か。
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以前、このような仕事をする 小説を読んだ記憶がある。
その主人公は、ご隠居の身分だったが、やはり、このような外で、毎度、筆を持ち、書き記している内容で、事件の探索の出来事や以前のお裁きの内容などをヒントに、事件解決していったと、…
この梶ようこ氏の主人公は、生まれた時は 裕福であったにも関わらず、父親が詐欺の話にひかかり、自らの命を絶ち、祖母に育てられる。
しかし、やはり皆から虐められ、育つ。
何も悪い事をしたわけでもないのに、この理不尽さを胸に刻み込んで、江戸に出て来た主人公。
物語は、軒下の古本屋である 藤岡屋由蔵の所に 加賀前田家の聞番の佐古伊之助が、噂を買いに来る事から始まる。
只の噂でなく、裏の取れたもの、市民の風聞など、自分で見たもの、確かめたものを書き記している由蔵。
最初から、軒下を借りている足袋屋の娘おきちとの会話も面白く、物語に集中してしまう。
しかし、シーボルト事件へと、話が進むにつれて、由蔵が、虐められて育った境遇で、この世の納得出来ない事に、立ち向かって行く姿、一市民なのに、凄い!
間宮林蔵の不審な動きも、お庭番的要素を放ちながら、由蔵の友を殺害した者も言葉の駆け引きで、お縄に!
小説とは言え、昔の史実をも、描き出している。
最後に おきちの無邪気さが、厳しいお裁きの話を和らげてくれていた。