紙の本
あなたの家も、いつの日か文化財
2021/12/05 16:31
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投稿者:想井兼人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本には多くの歴史的建造物が残っている。
普段使いのまま相続が繰り返された民家がある一方で、行政が保護に取り組んで保護されているものもある。
文化財保護法により保護の在り方は、社会の動きに応じて保護措置を強化されてきた。
ただ、法律の網にかかっていない歴史的建造物も数多い。
さらに、今の新築も将来的には歴史的建造物になることも想像できた。
今文化財指定されていないからといって、悪しざまに扱っていいわけではない。
だからといって、不自由に使うこともない。
日本特有の建造物をいかに継承していくかは、さまざまな考え方があると思う。
莫大な税金を投入し続けることが正しいかどうかも分からない。
それでも、重要な歴史的建造物が今に伝わり、その凄みを享受している身としては、何もかも頭ごなしに否定することもできない。
歴史的建造物とは何なのかを考えるうえで必須の1冊と考える。
紙の本
我が国の国宝級建築における美の発見のプロセスを辿る一冊です!
2021/03/03 10:13
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、建築理論・建築史を専門に研究され、『中国地方の住まい』、『近世寺社境内とその建築』、『カラー版 建築と都市の歴史』、『日本の伝統木造建築 その空間と構法』、『日本木造建築事典』などの興味深い著作を数多く発表されている光井渉氏の作品です。同書の中で筆者は、「法隆寺や姫路城はじめ、日本には世界遺産に指定された歴史的建造物が多い。だが、役割を終えた古い建物でしかなかったそれらに価値や魅力が「発見」されたのは、実は近代以降のことである。保存や復元、再現にあたって問題となるのは、その建造物の<正しい>あり方である」と豪語されています。歴史上何度も改築された法隆寺、コンクリート造りの名古屋城天守閣、東京駅、首里城など、明治時代から現代に至る美の発見のプロセスをたどった建築にご興味のある読者にはたまらない一冊です。
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よくある古い建築物を順に紹介して、それぞれの建築物の良さを説明するような本ではなく、古い建築物が明治以降にどのような時代の要請で保存の対象になり、修復が行われたのかを通史的に解説していく本です。ただの古い建物が保存すべきものに変わるためには制度や意識などが変わる必要が有るし、保存するまでの間の時代に合わせるための改築をどうするのかというのは、確かに難しい問題だなと。どうしたってこれは、1つの解は出ないのでしょうね。
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<目次>
第1章 歴史の発見
第2章 古社寺の保存
第3章 修理と復元~社寺
第4章 保存と再現~城郭
第5章 保存と活用~民家・近代建築
第6章 点から面へ~古都・町並み・都市
終章 日常の存在へ
<内容>
読んでいて気付いた。仏像や絵画などの文化財と建物は違うのだと。仏像や絵画は移動ができるので、破壊から免れることができるが、建物は違う。常に破壊活動と隣り合わせなのだと。しかもその原因が1つではない。自然現象(台風や地震など)、人為的現象(人の使用による、火事、戦争、劣化による建て直しなど)が伴う。特に劣化による建て直しからは逃れようがない。また民家の類は、人が住み続けないとその劣化は激しいが、住み続ける以上、時代の変化で建て直しをしたくなるものなのだ。さらに「町並み」となってしまうと、保存のためには多大な努力が必要となる。人の気持ちは一つではないし、世の中の嗅がれもある。京都や倉敷の成功の裏側で、東京や鎌倉は上手くいっていない。
どうすればいいのかは、結論の見えない問題で、地域ごとに建物ごとに違うのではないか。それを踏まえて我々は建造物(町並みを含めて)を見て行かないといけない。
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光井渉『日本の歴史的建造物』中公新書 読了。歴史的建造物の価値や魅力はどのように発見されてきたか。維持・保存にはその活用が前提となり、少なからず現状変更を伴う。「点から面へ」と町並みを創造する視点に遷移し、「地域の生活に根差した」歴史的建造物を町づくりの核と捉える指摘が興味深い。
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日本の歴史的建造物と聞いて、私の頭にまず頭に浮かぶのは、法隆寺や平等院鳳凰堂などといったら古社寺だったが、本書では、さらに城郭や民家・明治以降の近代建築、そして、古都・町並みまで広く論じている。
歴史的建造物に対して、保存、復元、再現といった取り扱いがあるが、何が正解か難しい問題だと思った。
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タイトルから、有名な建物の紹介本かなと思って読み始めたのですが、実際にはサブタイトルにあるように、建物の保存と活用に関する内容でした。
本書では、明治時代以降、歴史的建造物の価値や魅力がどのように見いだされるようになったのか、過去に施された改変をどう捉え、保存・復元・再現していくのか、という切り口で話が展開します。この中で、建築物の復元・再現は必ずしも原型に忠実であることが最善ではなく、後の時代に加えられた改変など、さまざまな要素を考慮して最適解を見出す必要性が語られており、深く考えさせられものがあります。
特に明治以降の近代建築は、使い続けられるために、現代水準で求められる安全性、快適性を確保するための改造はどこまで許容されるのか、といった単純な保存を越えた課題に対しての取り組みが必要となります。
一見、建築物の持つ意匠・雰囲気にあわない興が覚めるような改変も、実は建築物を使い続け、保存していくためにはやむを得ないものであることに気づかされます。
本書が対象とする歴史的建造物は、社寺・城郭から民家、近代建築、そして街並みや都市まで幅広く、それぞれについて多くの事例を引きながら、その保存・復元・再現の取り組みの長所・短所を指摘し、読者に客観的な広い視座を与えてくれます。
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京の町屋が好きだ。犬矢来とか虫籠窓とか、鍾馗さんがいるとなお良い。いつかは町屋をリノベーションして自分の店を持ちたい。本屋と雑貨少しと奥の間には簡単な舞台や教室などなど。なんていうのが、20代半ばからの夢だった。さて、本書では日本全国の建造物保存について詳述されている。中京郵便局のように外観のみを残すこと(ファサード保存)には何となく違和感があった。でもまあ、まったくなくなってしまうよりかはましかとも思える。清水寺が新しくなって、きれいになり過ぎて、なんだかなあと思うこともあった。姫路城は二度訪れたが、まだ新しくなってからは近くで見ていない。一方で、伊勢神宮や出雲大社のように何年かに1回完全に建て直すというものもある。20年ならともかく、60年とかになると前回のことを覚えている人はほとんどおらず、よく続いていくものと思える。だいたい、1年に1回の作業とかでも完全に忘れているのだから。まあしかし、昔の雰囲気が残っている町は好きだ。高山や妻籠、馬籠などには若いころ訪れたことがある。萩は中学生の修学旅行だ。倉敷は結婚してすぐ、アイビースクエアに宿泊した。石見銀山のある大森は妻の実家に近い。昨年はヴォーリズ建築が見たくて近江八幡にも行った。お城は国宝五城すべて訪れた。どれも、最上階まで急な階段を上っていくと息が切れる。しかし、そこからの眺望はすばらしい。特に犬山城から見下ろす木曽川、絶景である。小さな子どもたちを連れてよく上ったものだ。それに比べると大阪城のエレベーター。まあそうでもしないと上まであがれない人もいるだろうし、全く否定するわけにはいかないか。古い建造物をどのような形で残していくのかというのは、そこにかかわる人たちのいろいろな思いがあり、一筋縄ではいかないのだろう。それぞれの場で、納得いくまで議論されて、民主的に解決されていければいいと思う。一部の人間だけの利益になるのではなく。そういえば、産寧坂だったかで、貼り紙がしてあったことがある。市からの要請と個人の思いが一致しなかったのだろうなあ。本書を読むことで、いろいろな事情が見え隠れする。
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法隆寺や姫路城はじめ日本各地に残る世界遺産。「役割を終えた古い建物」の価値や魅力はいかに発見されたのか。新しい楽しみ方を伝授
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復元とか修復って今まで大した違いを意識したことなかったけど全然違うモノなんだと思った。
しかも、ただ建物を昔の外見にしたり、頑丈にするだけだと思っていた。でもそれをするために建物の歴史などをしっかりと研究してどの時代の外見にするべきか、どのように組み立てるのかなど想像以上にやることが多いんだと思った。
日本の歴史的建造物巡りしたい!
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保存方法のいろいろや歴史がわかって面白い。もう少し新しいところ(東京駅周辺のビル群とか)も詳しく書いてほしかったけれど、生々しくて書けないんでしょうね。
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内容
・古建築の修理方針
・古建築の価値と活用
>>>
〜古建築の修理方針〜
初対面で、30歳くらいだろうなと思った人が、
20歳だと驚くし、40歳でも驚きます。
ただ、古寺に詣っても、築300年と築400年。
100も歳が違うのに、玄人でなければ分かりません。
その理由は、
何度も、手が入っているから。
100年から200年に1度、根本解体、石などの基礎も含めて全てを是正する解体修理がされているそうです。
その修理の時に大事にされるのが、その耐震性もですが、
「修理においては、潜在的な情報を秘めた古材を保護することが何よりも重視されるようになり」(p103)
とあるように、「古材の保護」塗りものをして保護したり、埋め木や接ぎ木などをして、なるべく古材を再用することが重要になっています。
また、以前は写真も正確な記録もなく、
解体されたものが、全く違う形に戻されることもあったそう。
そうなると、これから改修するのは、
例えば、鎌倉時代と室町時代と江戸時代と、どの時代の形に戻すのが「正しい」改修なのか。
正解はない話だそうです。。
〜古建築の価値と活用〜
今は国宝になっている島根県の松江城ですが、
明治初期の廃城令の時にはたったの180円(今の360万円)だったそうです。
その時代の情勢や、社会の価値観によって、古建築の価値は変わっていきます。
戦争の時は、貴重な金属を得るためにお寺の鐘が集められたり、
明治初期の廃仏毀釈によって、多くのお寺が壊されました。
現代においても、
近代建築は開発圧力に晒されています。
自然豊かな有名社寺の周辺で宅地開発反対運動がおき、
歴史的価値もある被曝建物が取り壊される計画もありました。
修理費を集めるためにクラファンをやっている社寺もあります。
価値を示さないと、残されない中で、
歴史的建造物の価値は何か、どう活用していくのか。
それぞれの特徴によって活用の仕方も違うので、
建物を巡るときはそんな視点も一緒に見てみてください◎