投稿元:
レビューを見る
え? まさか、ヨーナ――――――!
読者皆が悲鳴をあげたのは、2020年12月のことだった。
前作『つけ狙う者』から10ヶ月、ヨーナ・リンナにとっては2年間、読者はひたすら気を揉んでいたが、彼は、制限のある生活の中で、ひたすら体を鍛えていた。
再会したヨーナ・リンナは、元気だった。よかった。
ヨーナ・リンナ・シリーズ6作目である。
フィンランド語なまりのスウェーデン語を話す男、ヨーナ・リンナは、優秀な犯罪捜査官だ。
外務大臣が殺され、テロの疑いが濃厚とのことで、ヨーナ・リンナにお声がかかった。
事件の分析をし、核心を探る能力に優れた彼は、頭脳派と思われがちだが、実は優れた武闘家でもある。
リーヌス・アドフォカート中尉による接近戦の訓練を受けたことがあるのだ。
この銃の構え方は一般的ではない。むしろ――などの知識も豊富にある。
今回の話は、かなりアクションシーンが多かった。
ヨーナの接近戦はもちろん、銃撃戦、爆発、炎上といった派手なものさえある。
無自覚な美貌の公安警察警部補、サーガ・バウエルも今回は活躍する。
バイクを走らせ、容疑者を捕らえ、丁寧にあるいは高圧的に話を聞き、上司にたんかをきり、時にはピンチにも陥り、ヨーナに協力する。
サーガファンの期待を裏切らないだろう。
ヨーナ・リンナが生きているか、元気なのか、健康なのかと、シリーズを追ううちに、ヨーナの身内のような気になってきた。
新しい一冊を読むのは、ヨーナの生存と幸福を確認する気持ちである。
一旦途切れてしまった刊行を復活させて、確実に出してくれる扶桑社には感謝してもしきれないが、しかし、ここでまた「つづく」とは!
え? ヨーナ――――!
読者の悲鳴再びである。
このまま、また一年近く待つことになるのだろうか?
ヨーナの健康と幸福を祈りつつ、次の刊行を心待ちにしている。
できればシリーズ1巻目から読むのがおすすめだが、3巻目までは手に入れにくい状況だ。
せめて、4巻目『砂男』から読んでいただければ、
なぜ読者たちが、ここまでヨーナを気遣うのか、おわかりいただけると思う。
タイトルで薄々お気づきだろうが、ウサギ好きの人は要注意。
投稿元:
レビューを見る
ストックホルムの高級住宅街。売春婦の目の前で客が撃ち殺された。公安警察警部サーガが緊急出動するが、犯人はシリアのテロ集団と関わりのある男の名前を口にして、現場を立ち去ったあとだった。唯一の目撃者を尋問すると、犯人の頬には長い髪の束のようなものが垂れ、被害者に童謡をきかせ、ゆっくりと時間をかけて止めを刺したという。4年の刑で服役中の元国家警察警部ヨーナの元に、意外な人物が訪れる。ヨーナは国を揺るがす凶悪犯を追跡するために、復帰する。
シリーズ第6作。相変わらず先が見えない、でもグイグイ読ませる作品です。下巻に続く。
投稿元:
レビューを見る
ラーシュ・ケプレルは、迷路のような小説を書く。一匹狼の警部ヨーナ・リンナは、前作で獄舎に囚われてしまったが、それは本書への周到な伏線だったのだ。そう本作はシリーズ第6作。全部で8作を予定していたシリーズは10作まで計画そのものも膨張したらしく、世界での人気が伺われる。
覆面作家として登場したラーシュ・ケプレルは、翻訳時点で既に、普通小説の夫婦作家の共作ペンネームであることが明かされているが、よほどケプレル作品の性格や方向性までお二人の息が合うらしく、相当の生きの合わせ方が伺われる。事件のサイコ性、不気味なまでの残虐性、スピーディな展開、ヨーナのスーパーな捜査能力と対になった一匹狼的野性&知性、などなど。
本書は捜査側の各行政機構、警察、軍その他の混乱まで呼び込み、陸海空に及ぶ派手なアクションや戦闘シーンなども散りばめられるなど、娯楽小説が大好きな愛読者をさらに倍増させそうだが、そのサービス精神が、最近の北欧ミステリー全体に蔓延する病原体のようで、食傷気味になっているというところがぼくの個人的な本音である。
アルネ・ダール、ベルナール・ミニエ、などどの作家もページターナーで読みやすく、一匹狼の刑事と相棒の女性捜査官、サイコな敵と残虐で劇場的な殺人風景、などなど、劇画チックなもの、スリラー映画を想起させるものが増えているように思う。
刑事バランダー・シリーズのような、かつての北欧ミステリーが見せた地道な刑事人生や孤独、単純な地方の殺人事件や風光明媚な国土などはあまり見当たらなくなっているように危惧する。
本書も殺戮のディテールが吐き気を催すほど血なまぐさい。最初は国家的政治的陰謀が関わる事件と思わせながら、どうも個人的な怨嗟が基になっているかと思われるいつもの連続殺人のようでもある。
本書の残酷性は、犠牲者に19分間苦しませた上で死に至るような細工である。連続殺人の原因となったらしい少女の集団強姦事件。狙われる犠牲者たち。心が乾燥した土地の冷たい人間模様ばかりが浮き彫りになって、鳥肌立つ思い。生理的な不快感に満ちている。
主人公のヨーナ・リンナはそれらの不快のすべてを直線的に解決してくれる一種の天才捜査官であるのと、孤独さと弱さも持つ人間的な刑事でありながら、どこか厭世的な負の影を持つために、人気を呈している。このシリーズの最後まで読みたい気持ちと、犯罪の残忍さが安易に増幅する物語への嫌悪感とが擦れ合うような読書体験を本書はぼくにもたらし。素直に人に勧められるかどうか自信を失いつつある複雑な心境の作品であります。
投稿元:
レビューを見る
嫌いではないけれど、次々と連続して読む気にはなれないヨーナ・リンナシリーズ。
前回作品で収監されて実刑を受けていた彼、国を揺るがす事件、猟奇的、被害者の重要性・・色めく。
しかも直々に捜査を担当する様に指名が。
サーガと共同であるような内容な、変わった操作方法。急速すると刑務所へ戻って行き、独房行だと迄言われる???
スピーディーな展開の中身は迷路の様。
殺害現場の目撃者が視た片頬に垂れ下がる毛❓飾り物❓何だろう・・
イスラム原理主義の関与が・・
何時も寂しそうなヨーナ、高校時代のかつての恋人との行方が下巻でどうなるかも気になる。
あと一歩という所で身を引くヴァレリアとハッピ―に進めばいいのだが。