紙の本
日本の流通業が面白い。
2003/04/26 12:51
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投稿者:aguni - この投稿者のレビュー一覧を見る
ダイエーの破綻。ウォルマートによる西友の買収。相次ぐブランド基幹店の設営。経済が生産優位から生活者主体の時代へと変化していく中で、これまで過剰な国の保護に守られてきた日本の流通業は破綻し、勝ち組負け組がはっきりしてきている。この「勝ち組企業」にTVでもおなじみ、伊藤先生がインタビューしたものをまとめた一冊である。紹介されている企業は以下の通り。
【デベロッパー】森ビル
【GMS(大型総合スーパー)】イトーヨーカドー
【GMS】イオン
【専門店チェーン】しまむら
【百貨店】伊勢丹
【GMS・専門店】丸井
【食品スーパー】ヤオコー
【外食産業】吉野家
【伝統産業】赤福
【問屋】菱食
これらの企業の経営者の話も面白いが、それに対する伊藤氏の分析と、見え隠れするメッセージを通して、今の日本経済の抱えている問題が見えてくるのがなにより面白い。流通業が良くならないと日本経済は良くならない。そしてそこで必要とされているのはやはり人なのだ、という印象を持った。
「銀行がバブル時代に大量の不良債権をつくり、それが日本経済の停滞につながったことも大きな罪だが、最大の罪は優秀な人材の卵を大量に抱え込みながら、それを十分に生かしていないことであろう。銀行が採用した優秀な人材の一割でも小売業に行っていれば、日本国民の生活はもっともっと豊かになっていたにちがいない」(P162)と伊藤氏は語る。
考えてみればアマゾンのジェフ・ベソスも楽天の三木谷氏も金融関係の仕事から流通関係の仕事に身を移し、その名を広めたのだ。こういう本がもっと読まれ、新しい流通にビジネスチャンスを見出す人材が日本経済と私達の暮らしを良くしてくれることを期待している。現在、流通・小売業にお勤めの方、それから転職・就職をお考えの方にオススメの一冊である。
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身近な知っている企業の事例を元に流通戦略について書かれており、とっつきやすかった。おもしろかったし、勉強になった。
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繊維産業が危機に瀕しているのは、日本の縫製工場でミシンが踏めなくなったためではなく、イタリアのアルマーニやアメリカのラルフ・ローレンのような、国際的な価格競争に負けることのない付加価値の高い商品をつくるデザイナーや企業を育ててこなかったためであろう。すぐに真似のできる付加価値の低い商品が競争力を失うのは、ある意味で当然のことなのだ。(34P)
工場を多くもてば、それぞれの地域に合った弁当を、鮮度を保ったまま各店舗に届けることができる。しかしその反面、商品の品質を一定に管理することが難しくなる。「それでもそれを克服する努力をするほうが、お客さまのためになる。われわれはそういう発想でやっています。」(45P)
「変化に対する適応といいますが、未来から現在が変わるんです。だから常に未来の状況を意識して、そのために現在はどうあるべきかという見方をしなければいけない。それなのに変化を歴史的な流れで捉え、過去の連続性のうえに変化の方向を見極めようとする人が多い。そんなことはできるわけがない」(48P)
小売りが主導権を持つということは、こちらの販売計画などの情報をメーカーが自由に使えるようになるということで、計画的な生産が可能になります。当然、コストも抑えることができますし、メーカー側にもメリットが大きいはずです。(73P)
「しまむら」ではそうした強力なストアブランドをもたないぶん、急速に売り上げを伸ばすことはないが、マーケットの好みに合わせて商品を仕入れていくことができるため、急な失速も起こりにくい。(95P)
これからの高齢者はヤングマインドをもっていますから、いかにもシルバー向けという商品はかえって売れないのではないでしょうか。(142P)
クオリティを高めるためには管理項目というマニュアルで店員の動きを規定しなければなりません。しかし、それは目的を達成するための課題であったのですが、いつしか課題をこなすこと自体が目的となってしまった。そして、そこに安住して一歩も外へ踏み出していかない体質がいつの間にか出来上がってしまった。僕はこのことに大きな危機感を募らせました。だからこそ、値下げを決断したのです。(175P)
おかげ横丁ができたことによって、毎年二〇万人程度だった赤福本店を訪れる人の数が、三〇〇万人以上に急増した。(193P)
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「流通」と「経済」が手軽に学べるかと思って購入。
経済学者の本にもかかわらず、ケーススタディが多く、理論は特になし。
ただ、2003年当時に起きていた流通業の変化について具体的に書かれていたのは良かった。
時間を作って、2011年現在では、そこに述べられた企業はどうなっているのか分析してみるとためになると思う。
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・なぜ読んだか
「経済学」、「文庫」だから
・本の内容
10の企業を実例に出して、流通業界の現在(2003年出版)について述べている。
今後活動に活かせていけそうか?:
ブランド構築や、付加価値の付け方という観点から読めば得られるものはあるかも。
・その他
自分にとっては、経済学が手軽に学べるかなと、思いながら読み出したのでいまいちでした。
(4年 Y.M.)
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[ 内容 ]
IT技術の導入、外資系企業の参入、顧客ニーズの多様化、大手小売店の破綻…大再編が進む流通業界。
成功し続ける企業は何が違うのか。
森ビル、イトーヨーカ堂、イオン、しまむら、伊勢丹、丸井、ヤオコー、吉野家、赤福、菱食―本書では、デベロッパー、百貨店から伝統産業、問屋まで、日本の流通業を盛り上げる10の企業の経営者を取材。
「効率化の徹底」と「付加価値の形成」を実現する各戦略を鋭く分析する。
流通業の動きをみれば経済の流れがわかる!最先端の現場が示す、日本経済・未来の図式。
[ 目次 ]
第1章 デベロッパー―森ビルの戦略モノを売るからモノが売れない
第2章 GMS(大型総合スーパー)―イトーヨーカ堂の消費心理学
第3章 GMS―イオンが挑戦する「グローバル10」
第4章 専門店チェーン―「しまむら」の物流管理システムは日本一
第5章 百貨店―伊勢丹のブランド価値を高める方法
第6章 GMS・専門店―丸井は若者を飽きさせない
第7章 食品スーパー―地域の食卓をまかなうヤオコー
第8章 外食産業―吉野家のワンブランド展開
第9章 伝統産業―地方の大企業、赤福
第10章 問屋―情報機能で“新しい問屋”となった菱食
終章 流通最先端を読む
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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最近少しずつ読んでいる流通関係の本。
当時、調子の良かった企業をピックアップして、
好調の原因を分析した本。
単に流通だけを取り上げるのではなく、
ディベロッパー(森ビル)や卸(菱食、今の三菱食品)まで
取り上げて、幅広く流通業界に関係する会社について
知ることができます。
少しばかり古い本なので、今と異なることも多々ありますが、
それでも参考になる箇所はたくさんありました。
こういう本は毎月少しずつ読んで、
お仕事に役立てようと思います。