短篇だから、なおいっそうこわさを感じた短篇集
2009/08/29 21:33
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:サムシングブルー - この投稿者のレビュー一覧を見る
「あたしですか、あたしはこれから人を殺しにいくんです。」で始まる『このバスはどこへ』の作品を読んで、「性善説」と「性悪説」を思い浮かべました。中学の頃、人間は性善か性悪か悩んだものです。人間の本性として捉える「悪」は、空腹感を覚えたり安楽を望もうとしたりする自然な欲望であり「悪」とは異なると筍子は説いています。「殺したい」という欲望は自然な欲望ではありませんが、欲望の一つでありえると思います。
主人公・くり子は32歳。くり子は東京・三鷹に住む幼友達の宏絵に会いに長野・飯田発の高速バスに乗ります。うとうとしていると、背後の座席で話している「あたしはこれから人を殺しにいくんです」の女の声を聞いてしまいます。耳を疑いながらもくり子はその言葉に動揺します。しだいにくり子は主語を自分に置き換えて、自分にとって殺したい人間を考え始めるのです。とっさに思いついたのが夫。実家に帰ることは絶対にないと言っていた約束を反故した夫、その元凶をつくった義母。でも二人はそういうのとは違うと思い返します。夜、宏絵と枕を並べて話しているときに、突然、くり子は憎悪の対象を思い出したのです。それは5・6年生のときの担任でした。元・担任の居所を探し出したくり子は、次の日さっそく横浜の病院に向かいます。くり子が元・担任に投げかけた言葉とは……。そして、くり子は混乱してその場から逃げるように立ち去ります。ラストのなかなか来ないバスを待つ場面がいいです。
短篇の7作品ともどうしようもないこわさを感じました。そのどうしようもなさは自分の身の上にも起こるかもしれないこわさであり「善」が「悪」になるこわさです。
角田光代さんの作品『対岸の彼女』に出てくる小夜子が女社長・葵に自尊心を傷つけられたときに放った言葉といい、言葉で人を殺してしまうほどの小説を書く角田光代さんはすごい作家です。
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「あたしこれから殺人計画をたてる」。我慢をかさね、やっと受かった高校で待っていたのは、元カレ剛太の「抹殺」宣言と執拗な嫌がらせ。すべての友に去られた沙織は、不登校の弟をコーチに復讐の肉体改造を決意するが・・・。
収録されている7編全部に共通して「殺意」が満ち溢れている。誰かをこんなに憎みながら近くに暮らすなんて信じられないことだけれど・・。本当に普通の暮らしの中にある小さな「殺意」。ちょっと見渡してみようかと思う・・・。
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あたしですか、あたしはこれから人を殺しにいくんです。
この書き出しに引かれて買ってみました。
作者は、はじめて読む角田光代。
感想は読後感のよくない1冊、リアルにありそうなことや心情だからこそか、あまり好みではなかったです。
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どれもこれも状況がヌルヌルと落下していき、下げ止まり辺りで話が終わる。読み終わるとヌラ〜ッとしたいや〜な気分。
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全体的にアンニュイ。
というか、ちょっと悲しい。暗く悲しい。
ボーっとした悲しさがある。
そのぼーっとした悲しさってのが、なんとなく角田光代っぽい。
ラロリーって、かわいい。
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角田光代氏の小説である。
帯の言葉が、また強烈なんだ。
『もうあいつは、いなくなれ』
7つの物語、そのどれもが、日常のほんの瞬間に訪れる殺意であったり、恨みといった、「こわい夢」を描いている。
まぁ、くらーい本ですね。
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別にホラーじゃないです。どうしようもない怒りや憎しみを抱えた人って、本当にいる。
でもその怒りは本当は深い心の傷や、寂しさを埋めるものであったりするもので・・・。
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短編集。
とくに心に残るはなしはなかった。だれの心にも存在しうる憎しみのいろんな形・あらわれかた、そんなはなしが多い気がする。
いや、どの話もなかなかおもしろかったかもしれない。
糸電話をしていた姉弟や、浮気をして主夫になった男や、おろした子供と同じ名前を犬につける女や・・・
まぁすぐよめるのでいいとおもう。 さとこ
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7つの短編集です。
様々な理由で殺意を抱く主人公たち。でも、実行はしません。
日常的にありそうな事で、まさに「こわい夢」です。
「いま」を写しだしている短編とも言えるかも知れません。
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タイトルは「おやすみ、こわい夢を見ないように」
帯には「もう、あいつはいなくなれ」
?( ̄□ ̄)
衝撃的!
タイトルと帯に惹かれて購入。笑
生まれて初めての自主的に買った小説かもしれない。
感想は‥
「あたしが日々思ってることが書かれてんじゃん!!
もしかしてこの人、あたしの頭の中覗いた?!」
そんな感じ。
言葉にできない不思議な気持ちを味わった。
物心ついて最初に買った小説がこれでよかった。
最初がこれだったから、
次にいけたんだろうなぁ。
本がなかったら人生の半分、損したようなもの。
角田光代は命の恩人です。
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長編作品かと思っていたんですが、短編集でまずびっくりしました笑
全ての作品を通して言えることはただ「圧巻」。日常に潜んでいる一こまです。
特に「おやすみ、こわい夢をみないように」と「美しい娘」が好きです。
おやすみ〜の方は私が元不登校生だったため、弟の気持ちも、姉の気持ちも分かったからです。
自然と涙がこぼれました。
美しい娘はだれにでもありゆる話だし、誰もが経験しそうな話でした。
昔躍起になっていたころの姉を見ているようで腹立たしかったのですが、それと同じように母の苦労が分かりました。
その気持ちを再確認させてもらえる作品でした。
ただ、どの作品にも言えることは「後味の悪さ」です。
終わる瞬間、え?これで終わり?まだあるんでしょう?何も解決してないじゃない?と考えます。
角田さんの他の作品を読んでないので分かりませんがこれが持ち味なのかな、と思いつつモヤモヤしつつ読ませていただきました。
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読み終わるととても不思議な気持ちになり、フワフワした感じでした。
どのお話も、短編で読みやすくとても面白かったです。
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またいた。私。といつもながら思う。
今回は正体のしれない女を中心にそれにふりまわされる人々。
心の闇はさらに深く感じた。
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ピリリ、と短く携帯電話が鳴る。ベッドに寝転がったまま沙織は受信したメールを確かめる。光からで、「風呂入ってねる。ラロリー」とある。「あたしはもうねてる。ラロリー」沙織はそう打って返信した。ラロリーはまだ残っている数少ない造語で、「おやすみ、こわい夢を見ないように」という意味だ。
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なんだか気持ちがざわざわしてくる。
みんなが隠し持ってる「本音」を薄く切ってプレパラートにして、細部までじっと見つめてる気分。