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著者がみずからの来歴を振り返りながら、現代において失われてしまった道徳の重要性を、著者の理解する日本仏教の立場から説いた論考などを収録しています。「哲学の道」と題された章は、京都新聞に「天眼」というタイトルで連載されているコラムをまとめたもので、2002年10月までに発表されたものは小学館版『梅原猛著作集』の19巻に収録されていますが、本書にはそれ以降の連載も収録されています。
これまでも著者は、一神教と多神教の対比に基づいた文明論を繰り返し語ってきました。それに対してすでに多くの批判が提出されており、著者自身も多少それらの意見に言及することもあるのですが、ほとんどその考えを見なおすことはおこなわれていません。今回本書を読んでみても、やはりそうした西洋と東洋の通俗的な対比に基づく現代文明論が繰り返されているだけで、こちらの興味を引きつけるような刺激に乏しいように感じてしまいました。
そのほか、著者の養母の兄である小栗風葉に関するエッセイや、宮沢賢治と日蓮宗、とりわけ賢治が大きな影響を受けたとされる島地大等からの影響について考察している論考もあり、こちらについては興味深く読むことができました。