大江戸化物図譜（小学館文庫） みんなのレビュー

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投稿者：凛珠　　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

　「豆腐小僧」、「大頭」、「ろくろ首」、「河童」、「鬼娘」──有名な妖怪もいれば、既に忘れられてしまった妖怪もいる。本書はそうした妖怪たちを、多くの図版で紹介した、非常にユニークな本である。
　
　意図的に行っているのだろうが、作者による妖怪の説明が微妙に的を外れていて、思わず笑い転げてしまいそうになる。型にはまらない面白さは、ゆかいな妖怪の本に相応しい。巻末には、これもゆかいな化け物性格判断も付いており、とにかく楽しい。妖怪の魅力とともに、江戸人の楽天的な心も味わうことが出来る良書である。

　

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投稿者：池内紀　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

　風の便りに聞いていた。バケモノに強いアメリカ人がいて、日本の大学で教えている。名前はアダム・カバット。昨年（1999年）、『江戸化物草紙』、あけて今年、『大江戸化物細見』刊行。なるほど、バケモノみたいな先生である。
　アメリカ人は経済にも強く、人のふところぐあいに敏感だ。大作二つから選りすぐりを文庫にまとめた。お値段は元の二冊の十分の一、ありがたさに涙がこぼれる。
「豆腐小僧」「大頭（おおあたま）」「ろくろ首」「河童」「鬼娘（おにむすめ）」。チミモーリョウのうちのとりわけ愛嬌のある選抜隊だ。いずれも江戸後期の文化と知性が生み出した。おどけていて、シャレけがあり、なんとたのしいイキモノ──いや、失礼──バケモノだろう。彼らの出身から性別、経歴、好み、活躍の場とドジの踏み方。われらの先祖はなんともゆたかな想像力をもち、自在に夢のアイドルを生み出して、日夜、親しくつき合っていたらしいのだ。