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本書は、2021月1~2月に放映されたNHKスペシャル・シリーズ「2030 未来への分岐点 SeasonⅠ」(第1~3回)に続いて、6~7月に放映された「同 SeasonⅡ」の以下の2つの番組を書籍化したものである。いずれのテーマも、取材成果に基づいた現状、キーパーソンへのインタビュー、未来への展望の3部構成となっている。
第4回「“神の領域”への挑戦 ゲノムテクノロジーの光と影」(6月6日)/インタビュー:島薗進(宗教学者)、ジョージ・チャーチ(ハーバード大学医学部教授、マサチューセッツ工科大学教授)、エルヴェ・シュネイヴェス(ユネスコ国際生命倫理委員会議長)
第5回「AI戦争 果てなき恐怖」(7月11日)/インタビュー:ウィル・ローパー(元 米空軍調達・技術・補給担当次官補)、ニック・ボストロム(オックスフォード大学マーティン・スクール哲学科教授、同大学「人類の未来研究所」所長)、中満泉(国連軍縮担当事務次長・上級代表)
SeasonⅠでは、気候変動、食料危機、プラスチック汚染の3つのテーマが取り上げられ、それらが、人類・地球に目に見える影響を及ぼしつつある今、適切な対応を取ることが不可欠であることが説かれているのだが、それらの問題は我々にも実感でき、イメージしやすい。
他方、SeasonⅡの本書のテーマであるゲノムテクノロジーとAI(戦争)は、一般人にとっては、実生活からかけ離れていてイメージが掴みにくいテーマである。しかし、いずれのテクノロジーにも正の面と負の面があり、負の側面としては、ゲノムテクノロジーには、遺伝子操作によって未知のウイルスが作り出されて人類の脅威となるリスクや、ヒトの受精卵を操作して子供に望む特徴をもたせるデザイナーベビーの問題、また、AIには、自律型致死兵器システム、軍の指揮統制システムへのAIの利用、サイバー空間を介するグレーゾーン戦争など、使い方を間違えば取り返しのつかない事態を招く問題を孕んでいる。そして、本書では踏み込んではいないが、想像をたくましくすれば、AIが自律的に全人類に対して戦争を起こしたり、AIが自律的にゲノムテクノロジーを使って人類を操作し、支配するというような、SFまがいの事態も考えられないことではないのだ。そういう意味では、SeasonⅠの3テーマよりも更に重いと言わざるを得ない。
専門家は以下のような言葉を残している。
(ゲノムテクノロジーについて、マッキンゼー・グローバル研究所所長マイケル・チュイ氏)「このテクノロジーは、光と影が混在する“パンドラの箱”です。使い方を誤れば、人間の命に関わります。どこかで倫理の“線引き”をする必要があるのです。私たちは次の10年、よりよい選択をするためにこの問題に向き合わなければなりません」
(AIについて、故スティーヴン・ホーキング博士)「AIの登場は人類の歴史の中で最大のインパクトになるでしょう。しかし、リスクを回避する方法を学ばない限り、それは“人類の終わり”を意味することになる。(略)私が恐れているのは、AIが人間を凌駕して進化していくことです。AIは自らデザインを変えて、拡散していくでしょう」
ここまでテクノロジーが進歩した今、我々にとって大事なのは、テクノロジーが神から悪魔になってしま���ないよう、人間にとって大切なことは何なのかを改めて考え、それに基づいた自制的な行動を取ることに尽きると思う。
(2021年12月了)
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テクノロジーは神か悪魔か
この問いは人間は神か悪魔かに置き換えられる
しかしその人間とは種としてのまとまりとして神か悪魔かという問いとなる
個の信条や価値観でなく種としての信条や価値観の総体となるどちらか
生き残ることの本能的な判断としてどう機能するのか考えた時、神として行動、判断することを選ぶのではないだろうか
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この本は、NHKスペシャルの内容と、テレビで放送出来なかった内容をまとめた物であり、その中でゲノムテクノロジーとAIについてがピックアップされている物だった。
どのような過程で世界がテクノロジーを評価し、利用しているのかを知る事ができた。
どちらにも共通して言えることは、慎重に判断すること、テクノロジーを単に否定しないこと、の二つであると考えた。
テクノロジーは神にも悪魔にもなる。
必要なのは人類が同じ価値観に収束し、ルールを決めることである。が、地球温暖化問題において、世界は収束していない。つまり、今の国際関係では解決できないと言うことである。これを考えると、テクノロジーを上手く利用することは今の人類では実現不可能では無いかと考えた。