紙の本
厳しい現実だが
2022/01/16 14:53
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
シングルマザーは身近にも多くて、その大変さはある程度理解しているつもりだったが、元々足りていない「福祉」のセーフティーネットから外れる、「子どもが18歳以降」が大変であることまでは、考えが至っていなかった。
シングルマザーも多様だ。
仕事も能力もあり、夫がいない方がかえってストレスがないと言っている人もいる(ワンオペのワーキングマザーの方が気の毒なケースもある)。だが、ひとり親世帯の貧困率(特に母子家庭)を見れば、多くの人がどういう状況に置かれているかは想像できる。
シングルになる理由もさまざまで、死別もあれば離別もあり、離別の場合はモラハラ含む夫のDVなど、本当に、本人の力ではどうしようもないケースもたくさん見受けられる。ただ、そうしたケースが「自己責任」として片付けられてしまうのが現状だ。
本書は、当事者たちのインタビュー、専門家のインタビュー、フランス、韓国などの事例などで構成され、それらから、日本の女性施策、ひとり親支援の問題点を、指摘している。厳しい実情、理不尽さは想像以上だ。
しかし、狙いはよく分かるのだが、読んで何だか不快な気持ちになる。
当事者たちの元夫たちがあまりにもひどすぎる事例ばかりだからなのかもしれないが、著者の書き方が、終始、糾弾調で、少々荒っぽいからかもしれない。
インタビュー部分はもっと客観的であるべきだと思うが、かなり著者の思い(男への恨み?女性も分断され、共感してもらえないことへの怒り?)が出ていて、肝心な当事者本人の自然な言葉が聞けない。
せっかくインタビューしているのに、社会に批判的に事実関係を語らせるのみで心情などが伝わらず、共感が半分になってしまう。登場したシングルマザーの口調が、すべて同じようだ。本当はそれぞれ顔が違うように、事情も、醸し出す雰囲気も違うのではないだろうか。著者が言いたいことのために、集められた言葉のようで、実際にはもっと個々に言葉があるはずなのに、それが伝わらず、
厳しい実情や、女性・シングルマザーをめぐる構造的な暴力はよく分かったのだが、著者自身の当事者としての感情があちこちに顔を出し、せっかくの企画の良さを損なっている気がした。残念だ。
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パラパラと目次をめくる段階で、すでに胸が痛くなる。
著者の黒川祥子さん自身もシングルマザーである。その実体験を『はじめに』で
『虚空にたった一人、苦しさで胸をかきむしりながら、のたうち回る。』と、語っている。
・シングルマザーのリアルな経験談とコロナ禍の現在の実情
・「女性の貧困元年」とは?
・「日本型福祉社会」
・80年代の"幻想"のツケとは
・先進国で最低、日本の女子教育
・フランスと韓国の場合
・なぜ日本のシングルマザーは貧困なのか
・どうすれば貧困の連作を止めることができるのか
等々、
こんなに厳しい現状だったのか・・・本当に・・・知らなかった、知りたくなかった、と想う内容だった。
この日本で、シングルで、仕事・子育て・自分自身のケア・老後の備えまで、できるはずがない。
それでも、生きて行かなければ!
『生きる糧としていた「憎悪」を手放したのも、、その頃だ。自分が被害者でいる限り、わたし自身の人生を歩めない。むしろ毎月、きちんと養育費を入れてくれることに感謝して生きていこうと決めた。』(後に、養育費は途絶えるのだが。)
これは、著者自身の体験の一文。
シングルマザーにまつわる法的なこと、現状や問題点など様々、学ぶことは多かった・・・しかし、一番心に残ったのはこの文章だった。
今、わたしはコロナ禍でお困りの子育てママさんに小さな小さなボランティアをしている。
読んで、改めて、微力だけど出来ることはある、喜んでやっていこうと想った。
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はじめに
シングルマザーとしての「はじまり」
女性の貧困元年
社会の子ども
第一章 子育ての後に、待っていたもの
なぜに、私が多重俯務者に……
進学とともに暗転した生活
母子家庭の子どもは大学へ行くな
家計崩壊
人生の「落伍者」となった日
子どもを育てていただけなのに……
モラルハラスメント
新たな一歩を踏み出す
父親との面会交流
必死に働いてきた母親が見捨てられる
シングルマザーという、当事者性を武器に
新生児を抱えて野宿の日々
最低ランクの干し家庭
重度のうつ
派遣労働に異議を唱える
第二章 一九八五年──女性の貧困元年
男女雇用機会均等法
私の一九八五年
男女雇用機会均等法の陰で
夫に扶養される妻への優遇策
男女雇用機会均等法と労働者派遣法
児童扶養手当の減額
遺族年金の創設
私の一九八六年
インタビュー 一九八〇年代以降の無策がシングルマザーを苦しめている
第三章 老後などない
貧困の述鎖は断ちきったけれど
夫に抱いた嫌悪感
クレジットカードの罠
貧困の連鎖を断ちきる
ウルトラCの奇跡
身体だけが資本
インタビュー 福祉は恵んであげるもの、という誤解
第四章 世界はシングルマザーをどう見ているのか──フランスと韓国の場合
フランス
〈社会の子ども〉という考え方
女性の社会的地位の高さ
投育費立て替え制度の重要さ
福祉に「自立」は存在しない
教育にお金がかからない
自分の人生を楽しむための支援
親へのソーシャルワーク
韓国
ひとり親家族の日
当事者が明るく、元気になる支援
未婚母への手厚い支援
扶養費問題
起業支援を柱とする、就労支援
インタビュー 日本のシングルマザーはなぜ、ワーキングプア状態に陥るのか
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2022/09/26 読了
全体的に「シングルマザー“は”辛い」という論調で書かれており、他の辛いことで苦しんでいる人はモヤモヤするかもしれない。
もちろん「シングルマザー“も”辛い」ことは否定しない。
ただ、それ以外にも、犯罪によって家族を失った人や災害によって全てを失った人など、辛い経験を持つ人はいるだろう。
そう言った幅広い視点はなく「シングルマザー=辛い」という視点で書かれている。
特に、前向きに現実に適応しながら楽しそうに生きている方へも悲観的な見方をしているように感じる部分もあり…。
今、シングルマザーとして辛さを感じている人たちには、寄り添ってくれるため、良本となるとは思う。
ただ、他の辛いことで苦しんでいる人たちにとっては、読まないほうがいいかも?と思った。
要は特定の読書に向けて書かれた本、ということですね。
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シングルマザーの現実や未来について考えるきっかけにはなるが、全体を通して事実と感情が整理されずに書かれており、読みにくさを感じた。一旦、感情は抑制して、事実をまとめた方が読者の幅が広がったと思う。
また、日本のシングルマザーを支える制度の貧弱さを批判する発言が何度も出てくるのだが、同一労働同一賃金が実現していないことや女性の教育水準の低さ(女に学歴はいらないという思い込みetc)などが根本的な日本の課題であり、これらについてはシングルマザーだけが被害者ではないとも感じた。結果的にシングルマザーにしわ寄せがいっているのは一定の事実なのだが、「シングルマザーは大変、辛い」という主張が全面に来すぎていて、逆に男性の非正規労働者や独身女性などへの想像力を欠いているように感じた。
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第1章 子育ての後に、待っていたもの
第2章 一九八五年―女性の貧困元年
第3章 老後などない
第4章 世界はシングルマザーをどう見ているのか―フランスと韓国の場合