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お家騒動につながる筆頭家老争いに黛家の存続と三兄弟の絆の深さを格調高く描いている.文脈の切り替えが見事で陰謀渦巻く藩の政治にはらはらし,本当の愛と信頼を強く感じさせ読み応え十分の物語だった.
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・一気読み。ものすごく面白かった。
・ほんの数ページで主要登場人物のキャラが鮮やかに立っている。
・品格の高さが漂ってる。
・折々の季節の描写が美しい。
・丁寧に物語が進んでいくが、アドレナリンが沸騰するような立ち回りがあったりする。
・第2部になった途端、主人公の変節に落胆するが…
・物語の展開が読めない。あっと驚く結末。
・伏線の改修も鮮やか。最後にそれを持ってくる!?
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どっしり構えた時代物。
うまい感想が思い浮かばないけれど、読み終えてほっと一息、深く吐き出すような気持ちになった。
文章がとても美しく感じられる。
好きです。
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砂原さんの、草花や鳥や虫のちりばめ方が好きです。
黒田の舅の死にざまに心が引かれます。
義父がすでに生への執着を手放しているからだろう。庭の花がある時はらりと散るごとく
すでに役目は終えたとでも言いたげな静けさが全身を覆っていた。
自分の時は、こうありたいなぁ~
兄弟の死、それぞれの家族のありよう。
妬み。
妬み。
持って生まれた人と持たずに生まれた人。
持って生まれてさらに精進する人。
持って生まれても、ままならない人。
家を存続させて、なお、敵を倒すには?
どんな仕舞い方があるの?
もう、ラストはドキドキものでした!
読み終えて、表紙を見て、また涙がボロボロでした。
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待ってました。「高瀬庄左衛門御留書」に続く神山藩シリーズ第2弾。神山藩が舞台とはいえ、時代も登場人物も全く違うが通底するエッセンスは寸分たがわぬもので、続編の宿命ともいえる「続編は1作目を超えられず」の法則を嘲笑うかのような至極の出来上がりに時間の経つのも忘れて一気に読破させてもらった。時代小説のもつ面白さをすべて兼ね備え、更にミステリー要素も加わったプロットも見事。前作でも感じたが、章や節の区切りの出だしが名人芸の域。こんな面白い本を読まないなら人生損します。中学校の教科書に掲載して読書の面白さを実感してほしいほどの作品。
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若く未熟な前半、大人の権力者となった後半に分かれた構成。テンポのよい展開、伏線の数々、明かされる本心。ふとした台詞がまた後々にしみる。
「どこかで袂を分かったとしても、それまでのすべてが嘘になるわけではない」
舅が新三郎に言ったことは、圭蔵にも内記との関係にも通じるのだなぁ。
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黛家三男、17歳の新三郎のお話。黛家が漆原家との政争に巻き込まれ、家を守ろうと非情な決断に誰もが達する中、新三郎だけは若く、青く、気持ちだけで行動していた。逆に言うとその精神は新三郎しか持っていなかった。気持ちだけでは何もできないことを痛感した新三郎、強くなることを誓う。どんな大人に成長していくのか、そして漆原家との因縁はどのように絡んでいくのか...
黛家の三兄弟の絆の描き方、ストーリーに挟まれる風景もめちゃ丁寧に描かれていて解像度の高い文章。逆に言うと読み手に相応の知識が求められるので「その鳥は何?、その花は何色?どんな形?」と僕は知識が無いためその都度止まらないといけなかった。
語彙も豊富で出会ったことのない単語がたくさん。これも読み手の知識を問われる感じ。僕みたいな読者もいると思うのでせめてルビは丁寧にふってほしかった...。
と個人的な課題は残ったものの、語彙に限らず文章が今まで出会ったことのないタッチで新鮮だった。一番近い表現は綺麗...かな。うーん、上手く言えません。自分の語彙力の無さに悲しくなりますが「おや、これは色々読み散らかしてる中でも一味違うぞ!?」と襟を正したくなるような印象でした。
自分の気持ちや哲学に沿って生きていくのはそう簡単ではない。時に楽な方へ流れたり、大人の事情とやらで折れることを余儀なくされることもある。そんな中で自分に誇りを持ち、生き方を貫く新三郎はかっこいいし、美学があるなーと思いました。
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生まれ持ったもの、どうしょうもないこと、汚いこと、欲がでてしまうこと、きれいなこと、精一杯なこと。
色んなものが入り混じった中で、人は生きるんやな。
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時代小説の新潮流「神山藩シリーズ」第二弾。山本周五郎賞、「高瀬庄左衛門御留書」の感動から一転、この作品は17歳の武士が主人公。静謐さはそのままに、乱刃あり、青春あり、躍動感あふれる時代小説。
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「高瀬庄左衛門御留書」に続く、神山藩を舞台にした第2作。と言っても、登場人物も年代も異なる全く別の話。時系列的には、本作の方が、前作より前か。前作は、下級武士の話だったが、本作の黛家は、代々筆頭家老の家柄。主人公、黛家の三男、新三郎は、大目付の黒沢家に、17歳で婿養子入りしたが、そこで、ある事件が起こる。そして13年後、義父を継ぎ、目付の職にある新三郎は、どう立ち回るのか・・・。神山藩を舞台にしたシリーズは、まだ続くよう。藤沢周平の海坂藩のように、神山藩の話がいろいろできていくのだとしたら、それは楽しみ。
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若かりし頃昆虫採取や毎月植物採集や囮を使った野鳥捕獲をしたり野原を駆け回った、本著書ではそれらが、蝉の声鳥の鳴き声花の時節で各時節で出てきて楽しく読了江戸時代藩政において内紛ではこんなことはあったのかな?
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とても良く出来た面白い話です。
砂原さんお得意の神山藩を舞台に、筆頭家老・黛家と次席家老・漆原家の戦いが描かれます。
面従腹背が重なり合った複雑なストーリーで、そうなると普通どこかに矛盾を起こすことが多いのですが、この話はよく出来ていて簡単には破綻を感じさせません。もっとも、出来過ぎ感はどうしても残ってしまいますが。
単純な勧善懲悪では無いのが特徴ですね。主人公の黛家を追いやった次席家老もそこそこ善政を敷き、悪ではない。作中にもかかれていますが筆頭家老職をめぐる家同士の私闘の物語。主人公が白で敵役が黒というのではなく、どちらもグレー。ただ、より権勢欲が強い次席家老家の方が少し黒っぽい位の差です。
どんでん返し的なストーリーの面白さが際立ってしまい、その分藤沢さん的な叙情にはやや欠けるか気もします。でも、映像化、それも軽いTVドラマではなく重厚な映画化に向いているような気がします。
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新三郎は17歳。
大目付を務める黒沢家に婿入り。
そこから黛家の行く末は大きく変わっていく。
P159
〈われらは黛家の兄弟〉
この言葉の重みは読了したとき、しみじみと、そして深く染みてくる。
全てはお家のため。
理不尽な!と思うことも口にすること許されず。
折々の花の美しい描写が少しの慰めとなる。
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今村さんが剛なら砂原さんは静。今作も抑制された筆致ながら、鳥や草花が天然色の情景と音を添える。静かに雪が降り積もるように物語が流れていく心地よさ。やっぱり藤沢2世だ。「正だの義だのを求めるには、いろいろなものを見過ぎた」
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必ずしも清廉潔白ではない主人公。現実の世界ってこんなもんかな。一部を読み終わって高揚感でうわぁーって盛り上がったけど、二部でグレーに塗りつぶされた感じ。女性も男性も長所だけではなく短所も描かれたうえで魅力的な人物が多数出てきて楽しかった。