紙の本
ねたばれしないように
2023/04/09 08:42
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投稿者:とらとら - この投稿者のレビュー一覧を見る
おもしろかったです。
裕と香織の会話や関係は、上巻にひきつづき楽しくていい感じです。登場人物の中できになったのは、あと桐生朗。女性の言語学者で、おもしろい性格設定されていて、今回の謎解きでも重要な役割。ちょっとしか登場しないんだけど、印象にのこりました。著者のインタビュー記事かなんかでは、この桐生さんを登場人物にした作品シリーズの構想があり執筆中とのこと。なるほど、と思いました。
ねたばれしないように、内容にはあまりふれませんが、最後までよみがいのあるお話です。
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投稿者:ミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
大学生の青年が、地元の同級生少年とともに自分の母のルーツの謎を追って展開するミステリー。作品構成としては秀逸だが、古文書の読み下しや解釈、地域の伝統や風習などがそこかしこにちりばめられ、民俗学などに興味のない人にとっては苦痛を感じるのではないかと思う。幸い自分は民俗学に興味があるのでなんとか読み進めることができたのだが、途中でかなりの量が出てくる古文書の解説にうんざりするようなこともあった。だが、作品としては最後の一文ですべての謎が解き明かされ、これまでの青年の様子や、出来事がすとんと腑に落ちるのだが。ちなみに、物語を読み進めずに最後の一文だけを見ても、意味が全くわからないだろう。
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タイトルの意味がわかったときには背中がぞっとした。
だけど、やっぱり言葉の一つ一つが難しく、物語が佳境に入り読み手を一気に惹きつけるであろう場面も、説明がやたら小難しく長いせいで、トーンダウンしてしまった。
作者が「言葉」をとても大事にしてるのは理解できるんだけど、ちょっと辛かったなぁ。
閉塞した村人の狂気も怖いんだけど、なぜそこに至ったのかも不十分だったし、ちょっと中途半端に感じた。
裕の母親のことは、何もわからないままなので次作があるのかも。
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〜上からの続き〜
調べれば調べるほど混乱していく裕。
同級生の香織と一緒に少しずつ確信に迫る…
一方、地元の小学生の淳は知りたいことへ突っ込んでく。
そして、この3人が揃ったとき…
裕は真実に辿り着けるか?
いや〜面白かった!…が、寝落ちの確率がとにかく高い(笑)←まぁ、読んでみれば分かると思います。
とにかく、小難しいことだけでなく、香織との恋の予感も淳の猪突猛進ぶりも見どころ。
とても楽しかったです♪
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日本語学をかじっている私は種明かしの前に「まほり」の意味を理解してしまったため、衝撃度は低くなってしまったことが残念。
それよりもストーリー展開がどこかで読んだことがあるように思えてしまうことの方が残念かも。
大好きな「図書館の魔女」ほどの心の震えには至らず。それがそもそも残念。
「図書館の魔女」は私の心の中の金字塔だったので、高田さんの次作に期待し過ぎたかもしれない。
かなり現実に寄せた物語であり、多くの配慮が働いていたように思う。それは…まるで自己規制。表現の無限の自由を奪いかねないような。
ファンタジーのほうが自由に表現を羽ばたかせられるのではないでしょうか。それができなかった不自由さのようなものを感じました。
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半分からは続きが気になってドキドキしながら読み終わりました。出てくる単語や専門用語が少し難しくて読む人を選ぶかもしれないですが、テーマは非常に興味深く登場人物を含めた『場』の雰囲気を描くのがすごく巧い作家さんだなと思いました。
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もう、何を言ってもネタバレそう・・・
閉ざされた村の歴史と、今も行われる儀式とは。
ホラー調だけど、呪いとか霊とかは出ない。
そして言葉が難しい。世の中には私の知らない言葉がこんなにあるとは。
語源とか、候文とか、知らないことがいっぱい。
難しいので躓きつつではあるが、最後の一章は途中で止められません。
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上巻に続き、前半は幾つかの謎の核心に迫る文献資料を追う長い道のりにペースダウン。
飢饉や間引きといった悲惨を予感させるワードから覚悟はしていたものの、“まほり”という言葉に隠された陰惨な因習に寒気を覚えずにはいられなかった。
多くが語られないままの裕の母の形見がもたらす終わりもこれ以上ないインパクト。彼女が何を感じて生き、どういう経緯を辿って裕の父と出会ったか知りたい気持ちは山々だが、母親を苦しめていたであろう辛い過去の鎖を息子が時を越えて断ち切ったことに救われた思いがして、痛ましさと共に胸が熱くなる。
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上巻に引き続き文献との格闘がかなり読み気をなえさせますが、この作品にこの件は必要不可欠なんだろうと感じます。
後半物語が動き出すことによりカタルシスへ誘われます。
主人公の母親についてのあることがら、途中から予想はつくのですが最後に明かされることで、まだ語られぬ物語に想像が膨らみます。
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話の流れとしては(特に最後の方)、どこかで読んだ話かな…と思う。
しかし、民族学の手法や思考法、言語学的な古語の紐解き方など…ストーリーに付随した知識量が豊富で、個人的には非常に面白かった。もっとこういうマニアックな小説が読みたい。興味のない人にとっては苦痛かも分からないが。
また、古語で書かれた石碑や文献の描写がリアル、かつ微妙にそのまま理解できてしまうのが「知りたくないのに分かってしまう嫌さ」として付き纏う、というのが新鮮な読書体験だった。
「差別的かつ暴力的」な噂話は特に伝播しやすいという意見、身につまされる。
自分が差別的な意識を持っていないと思いながら「ある言葉」を使う人々を最近たくさん見かける。
その人のことをよく知りもせず「ある言葉」でカテゴライズして馬鹿にして蔑む…こういう所から都市伝説は出発するのだろうか。人の営みは常に地続きだ。
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という訳で、”まほり”の本当の意味を知っても、評価はひっくり返らず。古文書の部分とか、結構読み飛ばしたから、そのくせに批判するのもな、とは思うんだけど、いかんせん、ベースの物語の魅力のなさが致命的か、と。とりあえずの結論は知りたくて通読はしたけど、何度、途中で止めようと思ったことか。
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難しかった……けど面白かった……けど難しかった……!;;
裕と古賀さんの古文書読解から幕を開けて、白文など読めようはずもない読者の心を折りに来るこの下巻、上巻以上に苦戦させられました。が、古文書部分は読み飛ばし、会話中のポイントとなる要素だけでも拾っていけばストーリーは追っていけると見てからは、だいぶ気が楽になりました。これ、読める人が読めば非常に面白いのでしょうけど、その「読める人」って現代日本人の中に何パーセント存在するのやら……(汗)
とはいえ、相変わらずのこの、多岐ジャンルを深く掘り下げた上で、物語の重要な要素として複合的に取り入れてくる手腕、もはや神業です。膨大な文献や資料を単に借りてきているわけではなく、完全に筆者のものとして落とし込んで生かしているのが伝わってくるのがすごい……!
難解さを増していく上に長大な古文書の読み解きに苦戦しつつ、淳の「ひと夏の冒険」と呼ぶには少々デンジャラスすぎる果敢な行動や、裕と香織のほほえましい関係性を心の支えに読み進めていったさき、「まほり」の意味が明らかになる鳥肌ものの瞬間からが物語の本番。突如知らしめされるタイムリミットに一挙緊迫した展開となり、話にのめり込んで一気に読み進めました。
ここまで古文書と格闘し続けていながら、最後の最後はまさか、児童福祉法(ハッタリ含)を武器に渡り合うことになろうとは……咄嗟にここまでの弁が立ってしまう裕がちょっと出来過ぎとは思いつつ、いやはや、格好良かった……! 頭脳と舌先だけで戦っていながら、迫力ある圧巻のエンターテインメントとして成立しており、つくづく舌を巻きました。
ラスト一行にまで心を持っていかれる、本自体は薄くとも抜群の読み応えの一作で、読後の達成感もたっぷりです。
余談ですが、ここで唐突に登場する妙にキャラが浮いた桐生先生。専門が対照言語学ということで「おや?」と引っかかったら、なるほど、筆者自身の専門分野だったのですね。どうりでイキイキするわけだ(笑)
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まほりという文言で,どんでん返しを使うことでミステリィとしてのエンターテインメント性を表現するが,軸足は日本に古来より根付く民俗学的恐怖を背景とした学問としての面白さの発露を物語に託した点にある.万人受けする面白さではないが,確かに他の追従を許さない独自性のある世界を確かに構築している.次回作,果たして出ましょうか….
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上巻から引き続き、中盤までは裕とメシヤマの甘い物語だが、中盤以降は急転直下、緊迫感のある展開になる。
最後のお守りを開くシーンはドキリとする。
ただのエピローグに終わらず、"タネ明かし"のようなものを仕込んでくるのはさすがだと思った。
上巻の後半以降、毛利宮に関する調べ物が長く「いくらなんでも冗長なのでは?」と思っていたが、最後のページでその意図が分かり、執拗に由来を調べていた描写が無意味ではなかったのがわかる。
"宮司"らとの対決も上手くいきすぎている(ご都合主義過ぎる)感があり、また、裕のまほり(目掘り)の儀式への疑いも現場で対峙するまでは妄想がすぎる(これもたまたま予想通りだっただけで論理展開の強引なご都合主義だ)と思ったので、
「2作目は図書館の魔女のようにはいかないか・・」と嘆いたが、これも最後のページで全てが腑に落ち、不満も霧消した。
最後の数ページを香織の目で見、心証で表現しているのも良かった。表現が上手いのでその様子が目に浮かぶようである。
終わり方は衝撃だったが、一方でこの物語は続かないなとは思う。
恋は成就したし、市は魔力が解けて普通の童女に戻り、おそらくまほりの儀式は二度と行われない。
裕と父親との和解をプロローグに、父親による母の奪回物語をスピンオフとして作ることはできるが、バッドエンドであるのは確定しているし、タネも割れているので今作を超えられないだろう。
裕(と香織)を主人公にした作品では裕の執念が乗らず今作のような迫力に欠ける。
帯にある「まほりの意味は明かさないでください」は過剰ではないかと思った。
言葉の意味が分かっても困ることは無い。
儀式の中身まで含めると面白さが薄れてしまうような気がするが。
また、まほりから毛利への変遷については言語学者の知識が遺憾なく発揮されている。
「○○先生がそう言っているだけ(で言語学的にはありえない変化)」のくだりは文系の研究にはいかにもありそうな話で面白い。
前半の歴史資料の分析といい、本作では作者の研究経験がベースになっている部分が多く出ているのではないかと思われる。天才に対して努力で追いすがろうとする秀才は作者本人のことなのではないだろうか。
一点、気になるのは、
作者は物語の展開と天候(あるいは周囲の自然)がリンクしている書き方を好むような印象がある(本作で物語が急展開するのは大雨が降って落雷が続く場面。図書館の魔女でも天気が崩れるときは良くないことがあった印象)ので、
どの作品でも部分的に展開が似てくるような感触が少しある。この感触が続くなら、10作くらい読むと飽きてしまうのではないかと危惧している。
もっとも、作者は研究が本業で、筆も遅いので10作も出るか不明だし、そのクセを逆手にとったフェイクを入れてくるかもしれないのでまだわからないことではあるが・・。
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話がグッと進み始めた後半。やっとテンポが良くなった。
まほり、というタイトルが実はどのような意味を持っていたか。そこが判明するまで、主人公と一緒に大変な史料の点検をしてきた感じ。ある意味すごい臨場感。もちろん実際の研究はもっとじっくり文書を読み込むはずだから、読者側の私は楽をさせてもらったと思う。
伝奇ミステリという分野が昔流行った。似ているが、口伝より史料から謎を読み解く感じが、新しかった。
作中の古文書の文章は、実在のものなのか、創作なのか。どちらにしてもすごい。普段から作者さんはこういう文書に触れているのだろうと思った。楽しそう…
準主役の少年淳の出会った着物の少女と、裕のルーツ、両方がスッキリする。
古い因習による凄惨な過去を明らかにする話、かなり好物なので、楽しめた。