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連帯主義は福祉国家へと続く道筋をつくった主義でもあるとのことです。もともとフランスでは、持てる者から持たない者への「慈善」があり、知り合い同士の絆でできあがっている「友愛」がでてきて、それらが発展するように、「慈善」を内包しながら、かつ、知らない誰かまで含めたような「友愛」以上の絆として、「連帯」の考え方ができてくるのです。そういった性質のものですから、のちに福祉へと繋がっていくんです。しかし、なんでもやるというような福祉国家となると、国家自体が大きくなる。まかりまちがえば、権力が集中していき、官僚主義が強まり、専制国家になってしまう可能性が高まります。もともとの連帯主義は、自由主義と社会主義の中間なので、たとえば社会保障についても、国でやろうというのではなくて、そこは自由主義的に、国に頼らず組合的な組織でやろうとする。つまりは、社会主義の福祉国家のように、国家自体を大きくしない方針をとる。当時のフランスでは、社会保障を任意にしようか義務にしようか、と議論していたようですが、連帯主義の立場では、義務でやろうということになるのだそうです。現代のような分業制度下で、まるで違ったことをしている人たち、つまり、なかなか結びつかないような人たちすら結びつける紐帯としての機能を、社会保障の義務化でもってやろうとしたんです。しかし、そううまく事は運ばなかったようですが。本書は、なかなか散見的な書かれ方をしています。言いかたを変えれば、まとまりを欠いている。いや、まとまらない種類のものごとにチャレンジしているがため、といったほうがいいかもしれません。なんていいますか、「ごつごつした路面を駆け足で走り抜けるような読書体験」になりました。読みごたえはありますが、読み下すのに力が要りますね。それでも、「連帯」について知見を深めることができましたから、好い読書でした。