紙の本
六篇の、「女ふたりの物語」
2010/03/10 11:28
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書には「女ふたり」の物語が六篇収められている。
『ランドセル』
中学卒業以来十何年が経って久々に再会した幼なじみの女性ふたりのロス紀行。
『灰皿』
ある一軒家の貸主である老婦人と借主である『私がう○こを食べるまで』でデビューした27歳の女性小説家の日々。(個人的判断で「○」をひとつ置き換えました。)
『木蓮』
突然預かることになった恋人の子ども(小学生女子)と三十路女の或る一日。
『影』
男関係で会社を辞めざるをえなくなった女と、その女が訪れた島で出会った女の数日間。
『しずく』
恋人同士の同棲で同居しなければならなくなった二匹の雌猫の毎日。
『シャワーキャップ』
いつまでも「可愛らしい」母と、その母に苛立ちながらも羨ましくもある「可愛げのない」娘の久々同居の数日間。
どの短篇も他愛のない日常が描かれている。とびきり悲しくなることもなければこれでもかってほどドラマチックなこともなく淡々と描かれている、ただそれだけの短編集だ。
でも…なんだかなぁ。共感してしまうところが多かった。微妙な違いなのだけれど、共感「した」でも「する」でもなく「してしまう」というのが一番しっくりくる。
―――私たちは、いつも間にか女の子という時期を終え、初めての恋をしたり誰かを裏切ったり、そしていつしか大人になって、大人になったということに気づかないまま時はすぎ、また恋をして、何かに気づいたり、知らないふりをしたり、好きだったはずの男を勘定に入れなかったり、手に入れたものを、あっさりと手放したりする。(『ランドセル』)
―――「子供には分からない」なんてこと、大人しか思っていない。子供は、大人が思っている以上に大人で、そして、大人が思っている以上に幼く、弱いのだ。(『木蓮』)
―――皆は私のことを「田畑さんは本当にサバサバしてるね」などと言い、そう思われていることを痛いほど分かっていた私は、その役目をきちんとこなしていた。――略――でも私は、皆から見られている「私」に、あまりにも忠実だった。太陽が乾かした髪のように、さらさらとして、そして強い女だという「自分」を変えてしまうことよりも、守ることの方が簡単だったのだ。(『影』)
―――少しばかり悲しいことや、辛いことがあっても、それを我慢して「のんちゃんは、賢いね」という言葉をもらえる。それこそが自分のアイデンティティであると、思っていた。
――略――ただ、彼女のように、考える前に口をついて出る、というな、体の真実が欲しかった。「あなたは私のものよ」「それだって私のものにしたいわ」という、女の持つ透明なエゴを、身につけたかった――略――(『シャワーキャップ』)
ほらね、けっこうなエゴの応酬(笑)。だけど不思議なことに、各短編の雰囲気は驚くほど「さらり」としている。一部の女性作家の作品にはジメジメとした、なんともいえない「ぬらり」とした雰囲気が付きまとう作品が多くあるように感じ、最近はそういう作品をめったに読まないわたしだけれど、本書に登場する女たちが抱えるエゴや嫉妬は陰湿ではなく淡々と読み進めることができた。
もう数冊、著者の作品をよんでみようかな。と思う反面、まぁ「また今度気が向いたら」でいいかというわたしがいるのだけれど。
『しずく』収録作品
・ランドセル
・灰皿
・木蓮
・影
・しずく
・シャワーキャップ
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さくらを読んで、
西作品をもっと読んでみたいなと
思ってた矢先に出た、新刊。
何本かのショートで構成された短編集で、
どれも登場人物は女2人。
これと言って泣いた、感動したって話は
特にないんだけど、
「影」って作品の中に出てくる
「本当の自分」と「周りが望んでいる通りに演じている自分」との
葛藤に悩みつつ、あらがえない女の子の話が響いた。
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西加奈子さんの本はこれで「さくら」につづいて二冊目。
正直なことを言うと、あんまり良さがわかりません。
たとえばランドセル。
子どもの頃仲の良かった友だちと、
久しぶりに再会して、一緒に海外旅行に行くという話。
読んでいて、その場にいるような
居心地の悪さがずっと続いていて、
でも、きめのセリフでも、心が晴れないのです。
しずくでもそう。木蓮でも。
「通天閣」は読んどかなきゃって思っていたけど、考え中。
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女二人の物語。
同級生、自分と彼の子ども、大家と住人、猫二匹 etc・・
読めば読むほどの味の出てきそうな作品。
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一つ一つの作品を読んだ後、なんか幸せな気分になりました。
特に木蓮。最後にバケツに溜まった毒を全部ぶちまけてしまうような展開が良かったです。何も知らない子供にとっては知りたいことがたくさんなのに、大人になってしまうとそれが人目につくのを憚るのは何故なんだろう。
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西さんの話にしては、なんだかくさい感じがしてあまり好きではなかったかな。
『木蓮』が一番好きだった。
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西加奈子の色数が増えた短編集だったなぁ、と思う。
作風のよさを生かして色々な手法に挑戦していて、
いい意味で試行錯誤しているのかな、と感じた。
読み飽きない。
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あっと言う間に読んでしもうた。
でも、あんまりココロに響くっていう感じは残念ながらなかった。
シャワーキャップが、心にひっかかるくらい。。
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ひさびさのどろっと感のあまりない、西加奈子節。
シャワーキャップと、せきしろの解説がよかったす。
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心が温かくなる、女二人の物語が六作。
「シャワーキャップ」が好き。母は偉大なり。それでいて母は自分と同じ一人の女なのだと、最近ふと思ったりする。
あと、せきしろさんの解説も面白いです。
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西加奈子初めて読みました。すごく良かった。
読後感が、そうそうそうと思える。日常私が思っていいるようなことを代弁してくれたという気持ちになった。
上手だなぁ。すごく上手だよ。
しずくの、2匹の掛け合いがすごく好きです。
西加奈子これからも読んでいきます。
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女性2人を主人公とした短編が6話収められた小説。
心温まるストーリーばかりです。
是非、ご一読あれ。
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「私の大好きな、あの子がいたわ 」
短編6編
表紙の猫にひかれて購入
さまざまな女二人のさまざまな友情の形
短編6編ともみんなそれぞれ友情の形が違うのですが
でもどこか同じ雰囲気です
べったりではなく、さらっとした友情
「木蓮」と「しずく」がお気に入りです
特に「しずく」の猫同士の掛け合いの面白さと
ラストのちょっぴりの切なさが好きです
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文庫本はせきしろさんが解説を書かれているということで、今回はそこだけ読みました!
「お気に入りなんですか?」と訊かれたことは幸運にもまだ、ない。
どう答えよかなー。
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『しずく』西加奈子
はじめに言っておく。
西加奈子は上手だ。
文を作るのも、一言で言い表せないふわ~とした人間関係を表すのも、気持ちを伝えるのも。
現代の小説家だったら、それも女流作家だったら、僕はこのひとが今一番好きだ。
此の人の作品が好きだ。
大阪弁が好きだ。
どうしようもない人間の、それでも素敵なとこ、みたいのを描いている。だから好きだ。
でもだからだろうか。
西加奈子は短編作家ではない。
どちらかというと長編。
それも、ちょっとずつちょっとずつ関係が修復されていくような感じの。
なんかおこがましいことを書いている気がするwwwww
でも、どれも綺麗すぎて、もっと読みたい!
もっと深く、えぐく、そっと、この人は長編で書けるのではないか?
と、そんなことを思った。
特に、そうだな
「ランドセル」
「影」
なんかはそう思った。
まあでも、ああ、短編らしいというものもあって、数ならそっちのほうが多いか。
「灰皿」
「木蓮」
「しずく」
「シャワーキャップ」
なんかは短編でちょうど綺麗だった。
なかでも「しずく」は表題作であるだけにちょうどいい、きれいに纏まった作品だ。
短編集の表題作らしい、物語。
素敵。
でも好きだったのは圧倒的に「ランドセル」と「影」。
あとは「木蓮」。
いずれにせよもうちょっとボリュームあった方が、僕は好き。
解説が秀逸。
せきしろさん
失礼ながらこの人がどんな人か知らなかった!
文章読んでせきしろって誰だ!!!
と思った。
おもしろいなあ