紙の本
人間味あふれる偉人達
2022/04/18 18:16
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投稿者:よし美由 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「近代日本医学の父」とも「細菌学の父」とも云われる北里柴三郎。
「明治の文豪」森鴎外。
この小説では陸軍軍医である森林太郎が鴎外名で文を書いている。
名誉欲に権力欲、なんとも人間味あふれる二人が描かれている。
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【明治時代、感染症と戦った北里柴三郎と、森外の知られざる物語】明治期の日本でコレラ等と戦った北里と外。「感染症学」を通じて、国民の命を守ることに奔走した二人は、なぜ道を違えたのか。
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北里柴三郎と森林太郎(鴎外)の一生と日本の明治時期の医学の創始の出来事がこの二人に焦点を当て語られている。文部省と内務省の軋轢、そこに陸軍、海軍軍医部が絡む非常にややこやしい関係でそこに生きた北里と森。部門のバックを得ながら、二人は頂点を極めていくが、本当のところは誰が一番笑ったか?
ただどちらにしてもこの明治時期の偉人たちはやはりみんなよくやっている。本としては二人の語りで語られているが、まあ、よく分かりやすく書かれているので、素人でもよく分かることでよかった。コレラ、結核、ジフテリア、スペイン風邪、脚気、ペストなど明治時期から流行った病のワクチンなどを発見しているところはやはりそれなりに読み応えがある。ただ政治活動的なところは読むのは面白いが内容はちょっとね。
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医学、細菌の歴史。
明治以降の日本の医療に関して学べる。
政治、医療、軍隊。
羨望と妬み。
ワクチンと思惑。
過去から学ぶことは多くある。
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コロナ黙示録は読んでいてつまらなかったが、これは興味深く読めた。人の命の現場に置いて、政治的な理由で物事が曲げられてしまう状況への海堂さんの怒りは、この作品を読めば理解できると思う。ただ怒りに任せて作品を書いても、その怒りに同調しない限り不快感が増すだけだ。この作品は上手くそれを回避しているから読めた。
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分厚くて読み進められるか不安だったが、ややこしい時代背景を、北里については客観的視点から、鴎外については、''ぼく"という一人称で、主観的視点からよく描いている。2人は同じ時代に生きたものの、文献上絡みはあまり残っていないとのことだが、おそらく実際こうだったのでは?と素直に思えた。育った環境も大いにあると思うが、立身出世のために他の犠牲を厭わず自己中な鴎外に対し、未来を見据え、国民の健康のために医学はあるべきという信念と広い視野で物事を捉えられる北里。
北里柴三郎について、あまりよく知らなかった分、とても勉強になった。
そして、作者のあとがきにもあるが、日清日露において戦死者よりも死人が多く出た脚気の事実に対する政府の隠蔽体質は今のコロナ問題に相通じている。日本はやはり、資本主義の仮面を被った社会主義だ。
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常連のおばあちゃんが「海堂さんが本当に書きたかったのはこういうのなのよ!」と熱弁を振るっていったので、興味が湧いて読んでみた。
正直、あまり楽しめなかったけれど、それは自分の知識不足のためだと思う。
北里と森の脚気論争があったことは知っていたけれど、政治的な時代背景はわからない。
でも、詳しく知りたいという興味は出てきた。
奥付に書いてあるちくまプリマ―新書を読んでみようかな。
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歴史上の人物。特に近代史となってくるとキャラとして描かれていることが少ない、戦国時代やらとなると山ほどあるが。なもので、結構自身の中で白紙に近い状態で、北里柴三郎と森鴎外の生涯を追うことができた。史実として各論文やら名の残っている部分をベースに著者が感情の部分を肉付けしているのだが、医療関係のバックグランドとしてバッチシな厚みを見せてくれます。今の時代からするととか、この時代になるととか、教科書なんかで出てくる字面だけの出来事が生の感じを満載で描かれていました。
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ほんの断片しか知らない医学界の雄の北里柴三郎と森林太郎(鴎外)の2人に焦点をあてた作品。
熊本の片田舎から飛び立った武骨な大鷲 北里と山口県津和野から舞い立った繊細な胡蝶 森、タイプが対照的な2人は衛生学で国を支えようとの思いは同じだが事あるごとにすれ違ったり反発したりで、ついに並び立つことが無かった生涯が描かれている。
さすがに疫学面の情報は正確に豊富に書かれているようで日独の情勢と併せて分かり易かったし人間模様も興味深い。
2人を取り巻く環境がやっぱり学問外の胡散臭い政争や打算や思惑が渦巻いていて、当時も今のコロナ禍対応も残念ながら大同小異だと思えてしまう。
似て非なる2人はそれぞれ名を成したけれど共鳴すること無く、各自が奏鳴しました と言う話です♪
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北里柴三郎と森鴎外の二人に焦点を当てそのライバル心からの確執や周りの人々の友情駆け引きを描き,明治から大正の激動の医学と公共衛生の成り立ち発展を詳細に語っている.医師としての技量より研究者や政治家的な才能が問題となって,自分の利益のためには民衆の犠牲はどうでもいいとした森鴎外の勝手さには呆れてしまった.
私生活では問題の多い北里だが,医療の軍隊を作るという大義の前に邁進するバイタリティーには恐れ入る.そして何より長く生きた者勝ちと放言した石黒忠悳の腹黒さには感服した.
とにかく現在につながる医師の世界のごたごたも,またコロナにまつわる政策も,そもそもの最初からの業なのだろう.
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官僚は国家の歯車との例えがあるが、近代国家の体をなす前の明治期に、巨大な歯車となって近代国家の体裁を整えていった俊英たちの物語。コロナ禍の今読むと、二人が志したことの重要性がよくわかる。同じ道を目指しながら、軍務と恋に翻弄され、行政官として権威にこだわるあまり、真実から遠ざかり、文学者にならざるを得なかった鴎外と、細菌学者としての生涯を全うした北里柴三郎の二人の人生の対比がおもしろい。彼らの功績だけではなく、彼らの犯した過ちや直面した困難とその時代背景もよく描かれていた。漱石に比べてとっつきにくい感じのあった森鴎外の人間的にだめな部分が、ことに興味深かった。
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森鴎外と北里柴三郎の物語。医学の歴史のようでもあり、医学史の人物を題材にした小説のようでもあり。しかし小説にしてはエンターテイメントにかけるような気もして、読んで楽しい本ではなかった。衛生学にこのように貢献をしてきた人がいるということも分かったし、誤った解釈や余計なプライドや競争心などが、衛生学に悪影響を及ぼすということも分かった。コロナ時代に人々にとっても警鐘になるのだろう。
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北里柴三郎と森林太郎(鴎外)を対比させた歴史小説。
著者の日本の歴史小説は初めてだと思います。
(海外の歴史小説ではゲバラ系がありましたが)
コロナ二部作はイマイチでしたが、本作は力作、習作と思います。
物語としては柴里パーツと森パーツに分かれている構成です。
柴里パーツは史伝的な叙述なのに対し森パーツは森の一人称で文学的な叙述となっていると思います。
森の黒歴史である脚気問題は知っていましたが、柴里も結核に対してツベルクリンに拘泥していたとは知りませんでした。
プロローグとエピローグに石黒を持ってきているのもうまいです。
いずれにしても、明治から大正の衛生学/公衆衛生/予防衛生の黎明期を物語として昇華させていて見事でした。
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チームバティスタシリーズを書いた海堂尊が、北里柴三郎と森鴎外を題材して書いた、ということで歴史エンタメと思ったが、2人を取り巻く明治から大正時代の医学関係の権力闘争を描いた歴史書、450頁近くになる中身の濃いズッシリ思い作品を愉しむにはその時代の歴史的背景や世界情勢の知識まで必要とする。
その時代を生き抜いた権力者達が何を思い、何を目指していたのか、北里と森の因縁や軍隊と政治家の闘争、確執、駆引きなど見所満載だが、自分の読む側としての知識不足が否めなかったのがちょっと残念。