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2004年亡くなったアメリカ文学界最後の秘密ルシアベルリン短編小説集。祖父、母、叔父、そして本人もアルコール依存症。鉱山技師の父の仕事により全米鉱山とチリで育ち3度の結婚4人の息子をNY、メキシコ、カリフォルニアで教師、掃除婦、電話交換手、ER看護助手などの仕事。救いのない話が淡々と綴られる
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どうすればこの気持ちを言い表せるのか、言葉を探してしまう。とにかく凄かった。この表現、この文章でしか味わえないものがある。これはきっと何度も読み返すことになる本だ。
特に囚人たちの物語『さあ土曜日だ』は内面をぐわんぐわんと揺さぶってくる。
こういう学びや、人間らしく扱われることの方が更生に繋がる気がした。文章のクラスで文章を学んでいるのではなくて、人の心と自分の心を学んでいると思った。言葉が与える力は大きい。
その一方でひとたび教室を出れば人間以下のような扱いを受ける。この落差はかえって苦しいだろうと思う。
授業での課題とこの物語を結びつけるラストは見事だった。
そのほか、妹サリーとの日々を書いた物語も静かに涙を誘った。
自分の人生を振り返り、もしもの空想につなげていく話の締めくくりが恐ろしかった。どこでどう進んだって、私は私にしかなれないだろうと、私も思う。最後にクールな現実を見せてくるところが好みだ。
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様々な年齢、様々な境遇、様々な性格。
カラフルな色彩から色味の全く感じられない灰色まで。次に現れる文章は果たしてどんな色味を放つものなのか。浮き沈みの激しい荒波に、読み手ものみ込まれそうになる。
けれどそれら全てが、同じ一人の女性の人生。
貧乏暮らしから一転して裕福な上流階級へと転身。
性的虐待、依存症、病気などに強いられる苦難の連続。
結婚・離婚を3回繰り返し4人の息子のシングルマザーとなり、教師、掃除婦、電話交換手、看護助手と様々な職業につく。
そんな波乱万丈な継ぎ接ぎだらけの彼女の人生を、一つ一つ丁寧に重ね合わせていった中身の濃い一冊。様々な色合いの文章の端々に覗かせる明るさと知性、潔さに目が離せなくなる。
「後悔はないと言ったけれど、あれは嘘だ。でもあのときはこれっぽっちも後悔しなかった」
どこか他人事のように客観的に綴られた彼女の一度きりの人生。時として一人でストレスを抱え眠れぬ夜を過ごす我々を救う手引き書となり得る。
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著者の実体験を基にしたフィクション。母親や母方の親戚に問題があって(モイハニンの血)、それが自分の人生にも影響し大変な人生を送る女性。父親はちゃんとした人のようだが影は薄い。悲惨と言っていい人生だが、悲壮感や他人への批判は感じない。常に孤独で、たまに築けたよい関係もすぐ終わる。しかし、束の間の時を共に過ごした人への愛や感謝が感じられる。不幸のアピールになっていないから優れた小説として評価されているのだろう。彼女が生活の中で接する人種的マイノリティやアル中の人たちから、アメリカの底辺が垣間見える。文体が独特。語る内容と文体が適合していることが優れたヴォイスなのかな。特に印象に残ったのは、アル中の主人公の心理を描いた「どうにもならない」と、母親と母方の親戚や幼少時代の友人関係を描いた「沈黙」。
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ほとんどが作家自身の人生の経験をもとにして書かれているから、ほとんどが同じ舞台や同じような状況下での話であるんだけど、飽きずに全ての話に引き込まれるのは作家の書き方に魅力が溢れるからこそ。訳者あとがきで指摘がある通り、そもそも作家自身の人生に起伏がありすぎて、どこを切り取るかでかなり味わいが違うっていうのもあるだろうけど。
邦訳第2弾読むのも楽しみ。
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お友達の紹介で読みました。すごい作家がいたのですね。おじいちゃんの歯を抜く話が記憶に残りました。
で、そのお友達の紹介をブログに載せました。読んで見ていただけると嬉しい(笑)
https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202301200000/
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ごく個人的な、自分のためだけに書いた小説という雰囲気がある。それがとてもよい。そして、いい夢かな?と思ってたら悪夢だし、悪夢はやっぱり悪夢のまま。そして、悪夢なのにゲラゲラ声をあげて笑ってしまって、その自分の声に驚いて目覚めるみたいな感じ。あぁ夢でよかった、みたいな悪夢感。
訳者のインタビューを聞いて購入後、何度も開いて、読み始めてみるけど、全然頭に入ってこない。合わないのかな?と思ったけど、ひとつひとつは短いので、順不同に何度も読み返すうちに、物語というか、作者のことが好きになってきて、好きな人の話しは、聞こうとするというか、貴方を知りたい。という気持ちに変わった。そしたら、映像になって、夢みてるみたいになった。またいける。
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これは…各界で話題を呼ぶわけだよ。
炭坑夫と娘としての極貧、父の成功に伴う海外での裕福な生活、幾度かの結婚、アルコール依存症、国語教師としての体験、子育て…人生のさまざまな時期をランダムにきりとって仕立てられた小品は、痛みと痛みと痛みと、思わぬところに潜む美しさに満ちている。そして著者のこの美貌。
伝記映画が企画されたら、女優たちは彼女の役を熱望するだろう。
ルシアを見つけ、神経を張りめぐせた訳で日本に知らしめた岸本佐知子さんの偉大さよ。
「まだ濡れてるときはキャビアそっくりで、踏むとガラスのかけらみたいな、だれかが氷をかじってるみたいな音がする」
『マカダム』の冒頭。うっとり。
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講談社文庫の新刊で、書店で平積みされているのを見て、まず表紙に惹かれ、裏表紙の解説をを読んだが、講談社文庫は最近新刊にビニール袋をかけてしまって、中身の拾い読みが出来ないので、暫く購入しなかった。
僕は購入した本には、必ずカバーをかけてもらう。
一度、講談社文庫がビニール掛けになってから新刊を買い、レジでカバーをかけてもらったが、ラップのように本体に密着しているので、華奢な文庫本が粗雑に扱われているようで、嫌な気分になったので、それ以来、ビニールが外れて、棚に並ぶまで待つことにしたのだ。
多岐にわたる短編集で、もちろん全てが好みというわけではない。
おじいさんの歯を全部入れ歯にする話が、一番好みだろうか。
人生の経験値が、高過ぎて本当に一人の人生なのかと感じてしまうが、それは時折僕の陥る悪い癖。
作者と作品の語り手を、同一視してしまう。
フィクションなのに、全て作者の人生だと感じてしまう。
この多くを経験しているとしたら、苦しみは多いが、豊かな人生だったと思う。
多くを創作したのだとしたら、それは素晴らしい想像力だと思う。
どちらにしても、凄いのだ。
こちらの読む状況や状態によって、印象に残る作品はその都度変わるだろう。
たまに、読み返すのが良いかもしれない。
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この本を手にとった人は、まず、2つのことに強く興味を惹かれる。1つは、表紙写真のルシア・ベルリンの美貌に。もう1つは、帯に書かれた彼女の人生の波乱万丈ぶりに。
1936年アラスカ生まれ。父の仕事の関係で、北米の鉱山町やチリで育つ。3度の結婚と離婚を経て、シングルマザーとして4人の息子を育てる。学校教師、掃除婦、電話交換手、看護助手として働く一方、アルコール依存症に苦しむ。2004年逝去。
2015年、彼女の全作品の中から43編を選んだ作品集”A Manual for Cleaning Women”が米国で発売され、評判となった。本書はその中から24編を選んで翻訳されたものである。小説は、ほぼすべてが彼女の経験をベースにしている。
本書を実際に読んだ人は、更に2つのことに驚く。1つは、彼女の人生が想像以上に波乱万丈であったことに。さらには、それを客観的な、時にユーモラスな語り口で物語に仕立てる彼女の作家としての腕前に。
アルコール依存症時代、夜中にどうしてもお酒を飲まずにいられなくなり、夜明けを待って、4ドルを握りしめて酒屋に45分かけて歩いて行く。お酒を飲み落ち着きを取り戻し、帰宅し洗濯を始めたところに2人の息子が起き出してくる。学校に出かける2人を送り出したあと、彼女は自宅近くの角の酒屋に向かう。「どうにもならない」という題名の短編に書かれたこのような強烈なエピソードが続く。彼女の人生は、想像を超える波乱万丈ぶりなのだ。
そういった物語を語る語り口にも強い印象を受ける。貧困や死やアルコール依存症といった悲惨な話を題材にしている短編が多いが、そこに愚痴っぽさや、後悔が全く感じられない。「楽しい思い出を語っているかのように」とは言い過ぎになるが、そのような独特な語り口は、彼女の物語にリアリティと活気を与えている。
「まるで小説のような人生」ではなく、人生を語っていたら自然に小説になっていた。そんな印象の短編集だった。
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育し、生活歴、病歴、職歴とカラフルかつ多様な匂いと温度を持った人生を生き抜けた。
同じ経験をしたからと言って、称される「アメリカ文学界最後の秘密」の名を冠されるとは言えない稀有な才能の女性、ルシア。
見開きで終わる超短編から、数頁迄多岐。
エッセー風のもあれば吐露する痛みを伴っているもの 回想に愉しさすら漂うもの、種々。
文学界の常として、一時はもてはやされつつも、ディープなフアンの中で生きていく形になる感はある。
もっとも、さほどにボリュームのある本を他作していないわけで仕方ないかもしれない。
アラスカで生まれて転々と土地を渡ってきている彼女、全体からするとインディアン、南米の体臭が強く伝わって来た。
アルコール依存症にも苦しんだとあるせいか そういった方々独特の「魂をぐぃっと掴む」センテンスが散りばめられている感じ。
題名からして「家政婦は見た」的な先見を持ったことは大間違い・・・50歳過ぎから サンフランシスコ郡刑務所で創作を指導開始し コロラド大学准教授になった経歴から、光る「文才」は客観的に認識されていたと思う・・この作品を読んでも随所で感じられた。
残念乍ら、大ファンというR/ディヴィスや岸本さんほどは入れ込めなかった。
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想像を超える展開と言葉に満ちていて、すごく新鮮な読書体験だった。好きか嫌いかは分かれそうだと思ったけど。
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カラフルで不恰好な磨かれていない石が無秩序に組み合わさった結果できた、唯一無二の輝きを放つ宝石。
想像を超えるさまざまな経験のひとつひとつは、
辛かったり苦しかったりするかもしれないけど、
その人が生きることと対峙し、自分の人生を広義で謳歌し、そして自信と人生に魅力的な味を持たせる。
本屋さんでこの本を見かけた時、彩りと奥行きのある人生にする秘訣を少しばかり期待して手に取ったのだけれど、実際は期待値をはるかに上回った。
秘伝のスパイスはそんなにないのに、めちゃめちゃ美味しいスパイスカレーを食べさせられたような感覚。
人生に疲れた人やよりよく変えたいけどなぁとか、その類いの悩みを多少なりとも抱えている人におススメ
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文庫本で読みました。
実は半信半疑で読み始めましたが、良かったし面白かった。
最初は丁寧に書き始めて、途中からテンポ速くなり、急に終わるところが面白いです。
最初は、素人の私が言うのも失礼ですが、女性版ブコウスキーだと感じましたが、
ブコウスキーよりはちゃんとしてます。
思いがあります。言いたい事があります。
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本当に良かった。
ほぼ全ての話が彼女の実体験を元にしているという不思議な物語達。ルシア・ベルリンの乾いていながら豊かという不思議な感性を通して見える、彼女の鮮やかな人生がものすごく刺さる。
どれも本当に良かったけど、個人的には「掃除婦のための手引き書」「喪の仕事」「ソーロング」「ママ」「あとちょっとだけ」......いや全部良かったな。
最後の一文まで読むと、話の印象ががらりと変わったりして、びっくりします。読み手の感情を、そうと分からせない微細なニュアンスで操作するのが本当に上手い。最後の一文まで読んだ時、ルシアはこれが言いたかったのか、ここに連れてきたかったのかと思って総毛立つ。久々の体験でした。楽しかったです。