電子書籍
確かにうまいとは思いますが、
2022/08/25 22:48
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うみしま - この投稿者のレビュー一覧を見る
初めて読む作家さんですが、読み口はとても軽く感じます。まるで大衆小説のような軽い感じで読み進められます。選評にもあったとおり、視点が移り変わるのに、とてもスムーズに読めるところが、文体として洗練されているのだと思います。
人物造形も巧みだと思います。3人が3人とも、独特の感覚を持ち合わせているところや、人間としての怖さの表現はとてもうまいと思いました。
通り一遍で読むと、こういう職場あるあるみたいな感じですが、その実は、最も弱いものの無意識の暴力的な攻撃性が、とてもうまく表現できていると思いました。そしてそれは、登場人物の誰にも両面を持つことの怖さとなって、人物が立体的に見えるのだと思いました。
ちょっと気になったのが、作者の受賞のことばで、「むかつくことを書き続けたい。」と言っていたことです。そのあたりが、少し違和感を感じるところなのかも知れません。確かにそうなのかも知れませんが、どこか「書かずにはいられない。」という感じが希薄な気がしました。書き続けているのだから、書かずにはいられないのだとは思いますが。
紙の本
生きるために食べるけど、食べる意味には違いがある。
2022/08/04 19:54
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みつる - この投稿者のレビュー一覧を見る
「体が弱いから」という理由で、社内でも
暗黙の了解で優遇されている芦川さん。
その芦川さんが、何となく気に食わなくて、
押尾さんは、同僚の二谷さんに愚痴をこぼし
「いじわるしませんか?」と持ちかける。
しかし、芦川さんは二谷さんの家で晩ごはんを作る関係になる。
それでも、芦川さんの手料理よりも
カップ麺で良いと思い、つい食べてしまう二谷さん。
食べることの意味は、腹に溜まれば良いのか
美味しいものを、栄養のあるものを食べれば良いのか
食べなければ、生きていけない、人間の
食への関わり方と、社内でうずまく人間関係を描いた作品です。
個人的には、私は芦川さんのような人は苦手ですね。
早退したのに、迷惑かけたからお菓子を作ってくる。
それで許されると思ってるなら、
しっかり体力がつくまで休んでてほしいです。
もちろん、芦川さんの、しんどさ。には
理由があって、上の人が理解しているなら
皆にも伝えるべきではないかと思いました。
毎回、お菓子を作ってきたら許される。みたいな風潮が
社内にできていて、すこし、モヤモヤしました。
しかし、いじわるはしませんね。
上司にかけあう。なら私はしそうですが……。
ずっと最後までモヤモヤしっぱなしの話でした。
それでも、いじわるの表現や、食べた時の表現はとても鮮明にわかりやすく、さすが芥川賞といえるものでした。
紙の本
魅力のない人物
2022/09/24 10:30
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nap - この投稿者のレビュー一覧を見る
小説の中は別として、実際にいたら全く魅力を感じない登場人物たちだなあ。
芥川賞って、もっと固いやつなのかと思ってた。
何を評価しているんだろう?
紙の本
かなわない
2024/02/16 19:40
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投稿者:みみりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
芦川さんのような人がいたら、私もイラつくかもしれない。
でも、彼女は大部分の人に好かれている。
ということは、彼女もうまく立ち回る工夫をちゃんとしているのだ。
到底かなわないと思う。
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「おれは、おいしいものを食べるために生活を選ぶのが嫌いだよ」←めっちゃわかる〜〜
二谷の食事の優先度が低すぎるところと芦川さんの高すぎるところ絶対に合わないふたりなはずなのに二谷は芦川さんとの結婚を考えているという矛盾すぎる感じめちゃくちゃ人生だな…
二谷はきっと今よりもっとしんどい思いをしながら食事に向き合わなきゃならなくなるんだよなそれでもいいか、かわいいなら…みたいな妥協、もらったお菓子を踏んでぐちゃぐちゃにしてしまうくせにそれを芦川さんの机の上に置いて嫌がらせする人間なのに…
こんなに食べるという行為が生活から遠い人間の話なのに「おいしいご飯が食べられますように」のタイトルは皮肉すぎる?と思ったけど二谷がいつか心から“美味しい”と思って食事ができるように という祈りでもあるかもしれないと思った。
芦川さんタイプ個人的に好みじゃないから絶対イライラすると思う。できる人とできない人がいてできない人の分をできる人がやる。“できない”のラインは個人で違うけど我慢して“できる人”になっている人もいる。わたしは多分できてしまう側の人間だからバランスを取らさせる方だと思う。でもそんなのでき損じゃん……お菓子作ったからって全て許されると思うな!!!!!ってブチギレちゃうよ…
押尾さん好きな人の前で嘘をついてしまうところ自制心があるところ人の前ではっきり意見を言えるところ自分の気持ちに正直なところ好きだった。
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押尾さんの「おいしいおいしいってなんで言い合わなきゃいけないんだ?」っていうところわかるなあ。
美味しいって思うだけじゃダメなんだ?めんどくさいなぁって思う側なので。
二谷さんみたいに食べること自体が苦痛っていうのは全然違うしその思考はわかんないけど。
芦川さんはそういう人なんだ、って時間をかければ折り合えるだろうけれど二谷はムカつきました。
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もったりした。これは何?
こんなにも生クリームに重みのある本は読んだことがない。
スポンジというやわらかでおぼつかない舞台の上に、ボタッと落とされた生クリーム。
それは、そうするのが当たり前のように表面をならされて、余分を垂れ落とすように側面をも覆う。
パレットナイフを真っ直ぐ垂直に当てがい、回転台は一方方向に回りながら、スポンジを守るように優しくに塗られ、余分は削り取られる。
ナッペというのは、塗りたくるようでいて、実は削る作業だ。甘くコーティングされたスイーツから、削り取られる生クリーム。
甘いクリームがホイップされて、立ったツノが可愛くおじきをする。そんな幸せの象徴みたいな生クリームは、全ての人に笑みをもたらすものではない。
べっとりととぐろを巻いてる姿に胃の中までまとわりつくようなそれを、誰もが好きと思うなよと言わんばかりに、頭からツノが立ってくるように疎ましく思う人もいる。
綺麗にデコレーションされたケーキは、どこにもぶつかって潰れたりしないように、箱に入れて丁寧に扱われる。そっと優しく、壊れないように。
それを愛おしく大切に思う人もいれば、煩わしく重荷に思う人もいる。
食に興味がなく、食べること自体が面倒な人にとっては、誰もが喜ぶとされ喜んでもらえるという前提であるおやつの存在は、迷惑にのしかかる。
違和感や、わだかまり。
納得のいかないもの、いかないまま諦めてること。
吐き出したいものを飲み込む毎日の中で、それでも生きてく為に食べ物は口にしなくちゃならない。
鍋にスープを拵えても、スープが煮詰まるほどに、自分は薄まっていく。
スープに映った自分の姿は、まるで沈まり溺れているかのように、ゆらゆら揺らぐ。
おいしいごはんって、なんなんだろう。
それはきっと、人それぞれなんだろうけど、読む前には単純明快だったその答えは、今や消え失せてしまった。
ごはんを食べる度に考える。
ひと口、ふた口と口に食べ物を運びながら、ずっと考えている。
心がざわつく読書が好きな人にオススメ。
勿論、私も大好物。
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初めからモヤっというかザワっというか
とにかくいったい何を読まされているんだ
っという今まであまり自分が持っていない
感覚だった。人間関係なんかはそつなく
こなすが食べることに嫌悪感すら持つ二谷。
仕事はできないがなぜか周りから守られる
存在の芦川。仕事はできるが集団行動が
あまり得意ではない押尾の3人の仕事と
食事と恋愛の話なんだろうけど、
ちょっと私には合わなかったかな・・・
二谷の行動に理解ができなかった。
食べ物の嫌悪感をここまで表現した作品を
読んで食べることに対してそういった考えを
持っている人がいるってことがわかったこと
が凄く新鮮で反省もする発見だった。
色んな人がいて会社という小さな社会が
成り立っているってこともこの作品で
改めて気づかされました。
結局のところ本のタイトルにもなっている
「おいしいごはんが食べられますように」が
誰に対して向けられた事なのかが自分にはよく
わからなかった。もう少し掘り下げて
読まなければならなかったのかな?
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NHKの芥川賞特集で著者の高瀬隼子さんが「みんなでおいしいごはんは食べられないと思う」という話をされていてその訳がこの作品には滲み出ているなあと考えたりしました。やっぱり押尾さん派だなあ、二谷のような人間が大体を占めているから芦川さんは守られるんだよなあ
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登場人物の誰も好きになれないお話って久しぶり。
頭が痛いからと早退しておきながら、お菓子を作ってくる女なんてなんで守られる存在なのかがまったくわからん。
先が気になって一気読みしたものの、終わり方も???でモヤモヤが止まらない。
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おいしい食べ物と恋愛を描いているのに、こんなにも気持ち悪くなる小説、初めて読んだ気がする。
なんだろこれ、このうすらさむい感覚はなんなんだろ、と眉間にしわを寄せながら読み続ける。
得体の知れない、不気味で理解不能な人って、いるんだなあ。
何が正解だったのだろう。二谷と芦川と押尾の、それぞれの思惑は全く重ならないまま、かといって平行線でもない。
あぁ、そうか。このうすら寒さは恐怖なのだな。どこまで行っても分かり合えないという恐怖。
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おいしいごはん
すれ違う社内の人間関係をそれぞれの「おいしいごはん」の価値観の違いを通して描く。
一人で食べるコンビニ弁当、体にやさしい食事、おしゃれな手作りお菓子、大勢で食べる豪華で楽しそうな食事、食べるとは、美味しいとは一体なんなんだろう。
細かくも感情を捉えた機微で秀逸な描写が印象に残った。
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どこにでもありそうな会社の小さな営業所の毎日の光景。こんな人いるいる〜、こんなことあるあるだわ、とか思いながらサラサラ読めるんだけど、途中から息苦しくなってくる。
弱々しくて周りに守られている存在の芦川。仕事でそのとばっちりをくらう主人公・二谷と同僚の押尾が居酒屋で芦川の悪口を言い合うシーン。その部分を読んで同調する人と、反発する人に分かれそう。
芦川のような人はどこの会社にもいるだろうし、それはそれで迷惑なんだけど、片方で嫌悪しながら芦川と付き合っている二谷は屈折してるな〜と思う。その屈折の根はかなり深そうなことだけは伺える。
物語のクライマックス、弱者vs強者の戦い。これは怖い。そして弱者が勝利し強者が去る。。。このあたりは実に今の時代を象徴しているな〜と思う。
職場の同僚からすれば、どちらも迷惑でしかないんだけどね。
押尾が最後に言った言葉、
「わたしたちは助け合う能力をなくしていってると思うんですよね。その方が生きやすいから。成長として」
いや、それは成長なんかじゃないよと思う。
わたしたちは自ら楽を求めて面倒をどんどん手放した結果、今になってどうしようもない孤独に苛まれているんじゃないのかな。
心に刺さる言葉が随所にあって、読みながらも、読後も、あれこれと思いを巡らせる作品でした。
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1人称が入れ替わって語られけど誰も語り尽くしていないのでストレス。そこが作者の狙いかもしれませんが。誰にも共感できませんでした。
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不穏なカンジははじめからある。
芦川さんみたいな人は本当にいるんだな。
なんか狡い人。守られている人。
同じ職場で同じ給料なのに、ヘビーな作業はこっちにばかりやってくる。
「あの人はこの作業が苦手だから」とか「あなたの方が早いから」って、育てろよ!
怒りを持続するのも疲れるから、何も感じないフリして働いてます。
天罰よ下れ!
ラストはなんかモヤモヤす。