紙の本
強烈です。
2022/07/17 21:08
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投稿者:飛行白秋男 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の作品は初めてでした。強烈な衝撃を受けました。
ご自身の病気の内容でした。よくこんなに細かく覚えていられるものと、感心しました。
ケミカルな内容が多かったですね。薬の名称も細かく書かれています。ほとんどは知らない薬名でしたが、知っている薬名が出てくると少しうれしく思いました。
内容にも衝撃を受けましたが、文章の読みやすさにも感激しました。
著者の別の作品も読んでみたいと思いました。
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死に向き合う人の書く文章を読んでみようとしたが、期待した物とは違っていた。著者の最後まで破天荒な生き様と、様々な違法薬物の使用感が説明されている。
読みづらいし、途中までと最後だけ読んで終わりにします。
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間にほかの本をはさむ事でモチベーションを維持してなんとか読み終えた。なんでこの本を読もうと思ったのかすっかり忘れてしまっていて、知っていたら手にしなかっただろう。
ふざけた作家で、とにかく高慢な文面が最初から最後まで続く。芥川賞受賞者ということで、芥川賞の選考がどのようなものなのかは知らないが、分厚いわりに本編から逸脱しているボリュームが相当数あり、また自筆の他の本の内容(しかも詳細に)を紹介されても本編で辟易しているのにほかの作品まで知るかよって苦笑(本編にいやほど出てくる表現)ものだ。
骨髄異形成症候群という初めて聞く病名にどんな闘病生活があったんだろうって興味はあり、本編でもじっくり書かれているのでそこは推しで、それだけでまとめてくれていたらいい本だったと言えたのに、あまりに脱線が多すぎた。そして自業自得過ぎて同情もできない上に、最後はフィクションですって、まーやりたい放題でそんなオチは嫌いじゃない、嫌いじゃないが、他所(他作品)でやってくれ。
本文中骨髄バンクについて書かれているが、自分は一度バンク登録を検討した時期があった。しかしそのリスクはあまりに無償過ぎて軽んじられている感が否めなく、もしもの事故を考えると気軽に受けるようなものではないと決めてやめた。実際本文中にも書かれているが助かる命も大事だが、助かることで受ける受難を思うとそこまでの人生とも思う。長生きだけが人生じゃない。むしろ、現代人は長生きしすぎだ。金持ちも貧乏も等しく死に直面すればいいのにって思う。
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花村萬月の「ドキュメンタリーノベル」。
60歳を過ぎた小説家の<私>は、著しい体力の低下に悩まされるようになる。ふとした弾みに転倒し、骨折をする。浮腫みもひどい。医者嫌いだったが、妻に促されたこともあり、あちこち受診した結果、骨髄異形成症候群とわかる。
ここまではほんの序の口である。
このままでは白血病になると告げられ、骨髄移植を試みることになる。幸いドナーは見つかるが、自身の造血系の細胞と他人のものとを入れ替えるわけで、そう簡単にはことは運ばない。自身の血液系細胞を殺したのち、ドナーの細胞を入れる。だがドナーの細胞は自身を他者と見なし、攻撃を加える(GVHD)。免疫系の入れ替えであるので、その間、感染にも注意が必要だ。健康な時には何でもない常在菌が思わぬ悪さを働くこともある。加えて、治療の過程で大量に使用する薬剤が後で恐ろしい副作用を生じる。
骨髄穿刺、放射線照射、化学療法、骨髄移植、GVHD、ステロイド副作用、間質性肺炎、膀胱炎・前立腺炎・尿道炎のトリプルパンチ、脊椎四ヵ所骨折・・・。
経過は熾烈を極め、<私>は激痛にのたうちまわり、失禁する自分に絶望し、時には自死をさえ思う。
だが、そうは言いながら、<私>は書くのである。
本作を含めて、雑誌にいくつも連載を抱え、痛みに歯を食いしばりながら、次から次へとパソコンで原稿を仕上げていく。入院中も。自宅でも。
読者は、その鬼気迫る様に圧倒されて350ページ余りを読むことになる。
表題「ハイドロサルファイト・コンク」とは何を指しているかと言えば、<私>が若いころ働いていた西陣の織物再生工場で使用していた強力な漂白剤である。黒灰色のネズミを一晩漬けておけば真っ白にしてしまうほどの強い薬品。
冒頭に触れられたこのエピソードが、締めくくりに意外に効いてくる。
むろん、この<私>は作家・花村萬月をモデルにしているわけで、実際、同時期に花村は大病を患い、現在も闘病中である。そして作中でも触れられている別の作品も実際、同時期に書かれ、中には単行本が発行されているものもある。
では本作は作家が苦しさを紛らわすために、愚痴や苦痛を書き散らしているのか、というと、どうもそればかりとも思えない。
実際のエピソードは組み入れつつも、やはりこれは1つの小説で、だからこそ「ドキュメンタリーノベル」と銘打っているのではないかと思えてくるのである。
苦しい・痛い・つらいのオンパレードの中に、自身の過去の薬物体験や、亡母のエピソード、そして医学書やHPからの医学的解説の引用が、時には偏執的なほどしつこくぐいぐいとねじ込まれる。こちらは、医学的・科学的見地から見た病気の概観と言ってよいだろう。
もう1つ、別の大きな柱は、別作品で扱っている多重人格者の女性が病態にかかわってくるといういささかオカルティックな話である。個人的にはこの手の話は信じないのだが、<私>にとっては、それは闘病にかかわる真実であるのだろう。内面も含めた病気のパースペクティブと言おうか。
読んでいるうちに、<私>の中に入り込み、ともに病気を体験しているような気分になってくる。一方で、本作には、実体験を書きつつ、どこか引いて見ているような、ある種、メタな視点があるように思う。
ストーリーを見ても楽しい話とは程遠そうなのだが、意外にぐいぐい読まされてしまうのは、作家(この場合は多分、<私>ではなく花村自身)のサービス精神のせいではないか。どこか明るい、どこか楽観的。自虐的だが卑屈ではない。
下ネタは多めなので、好き嫌いはあると思うが、無頼でありつつ鬱屈した暗さがない雰囲気は、私は割と好きである。
本作は終盤、驚くような展開を見せる。えー、ここまで来て、それはないでしょう、と思うのだが、プロローグに呼応するラストにするには、こうするしかなかったのだろうか。
呆然としていると、その後の謝辞で「種明かし」がされる。そう、つまりこれは虚構含みなのである。
<私>=作家の「業」。真っ白に漂白されてなお書き続ける姿には、強烈な薬品の硫黄臭がよく似合う、のかもしれない。
個人的にはこのラストはいささか力業すぎたように思うが、そこもひっくるめて、作品の「味」というところだろう。
花村萬月で思い出すのは、遠い昔に読んだすばる新人賞の作品。なかなかがつんと来たが、かなり好きだった。その後、別作品を読んだはずなのだが、記憶がない。多分、いささか手に余ったのだろう。
自分にとっては合う合わないの振れ幅が大きい作家なのだろうと思う。
いずれにしろ、その後の経過が順調であることを陰ながらお祈りしたい。