紙の本
『人生を豊かにしたい人のための珈琲』
2022/07/31 20:23
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投稿者:百書繚乱 - この投稿者のレビュー一覧を見る
世界をめぐる“コーヒーハンター”による珈琲入門
・コーヒー生産者の実情
・コーヒーがどのようにしてできているか
・どうしたら美味しいコーヒーが飲めるのか
たんなるハウツー本でなく、コーヒーの奥深さを知り、「人生を豊かに」するために
〈美味しいコーヒーとは「冷めても美味しい」こと〉
〈コーヒーはフルーツである。だからこそ酸味と甘味を楽しんでほしい〉
〈コーヒーの味の決め手は、第一に生豆の品質と鮮度、第二に焙煎技術と焙煎豆の鮮度です〉
品種や精選、用語など、SNSで拡散される誤った情報も正しく伝えたい
〈焙煎2週間後が抽出にベストなタイミングだ、いや3週間だとかいう話も耳にしますが、理解に苦しみます。〉
〈選別作業はハンドソーティングと呼ぶ。ハンドピッキングは間違い〉
巻末に用語事典つき
「初心者のため」とうたわれているが、奥が深い一冊、2022年6月刊
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見たことある人の本だな、と手に取ってみた。
あぁ、『コーヒーで読み解くSDG’s』の人だ。Joseという通り名が目を惹く。
前著(https://booklog.jp/users/yaj1102/archives/1/B0912J6LVV)でも、SDG’sの17の目標に絡めてコーヒー産業の全体像を語ってみせてくれたが、主旨はコーヒーは嗜好品であり、安さではなく品質を評価することでサステイナブルが実現できるというものだったと理解。
本書も大意は同じ。コーヒーの価値をいかに高めていくかを、著者が歩んできた経緯と共に、コーヒーの歴史を俯瞰しながら語って聞かせてくれる。
コーヒーを通じて「人生を豊かに」できるか否かはわからないが、とても興味深く読めた。
地政学的に考えていくことも面白い。
やはり、コーヒー生産国が、まだ後進国が多いという点はネックとなる。ワインのように、生産者と消費者が一緒になって産業全体を考えるという一体感が生まれにくいのだろう。また、コーヒーは、生産されてからも生豆で消費国に持ち込まれ、焙煎、抽出という行程を経てはじめて消費者の口に運ばれる。
ワインのように ”「品質のピラミッド」は産地で完結” しない点が、コーヒーの弱みだ。
が、そこを逆手に取って、消費者も(ただ出されたものを飲むだけじゃなく)、焙煎やその豆選び、抽出の工程を担う「品質のピラミッド」の一員という思いを醸成すれば、そこに活路が見いだせるのだろうなとは思う(おそらく、そんな試みは著者もとうに企て、仕掛けているのだろう)。
ワインのように
”「今年はあの産地が当たり年だなあ」と言えたりするような、そういう楽しみを持った文化を作りたいところです。”
という著者の志には、大いに首肯できる。コーヒーを愉しもう!
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コーヒー栽培、輸送などの現場を知らないとホンモノの美味しいには出会えないのだろうな。コーヒーはフルーツだと著者は言う。コーヒーの本当の酸味と甘味を楽しむ。売っているコーヒーのことをもう少し掘り下げて調べたくなった。
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コンビニに寄るとよく「美味しんぼ」がテーマごとに編集されたやつを置いてあるのでついうっかり立ち読みしてしまう。
脳内で山岡士郎や海原雄山が喋りだしてうるさくてたまらないのだが、目的の料理を作り出すために「最高の素材」を訪ね歩く情熱はまあ、すごい。
どこまでも行っちゃうのがまたすごい。
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コーヒーが好きである。
仕事や旅行で行った先では美味しいコーヒー屋さんを探す。
アレンジコーヒーに興味がないのでストレート一択。素敵なお店を見つけると、店主さんに「もう一軒お勧めがあるとしたらどこですか」とか厚かましくも聞いてみたりして次のお店を決めることもある。
最近増えている町の小さなロースタリーさんは店主さんがいろいろ教えてくれたりして、いろんなことを知れてコーヒーの知識が増えるのも楽しい。
本書はそんなコーヒー屋さんの嚆矢である著者による、私のような初心者でもコーヒーのことを学べる良書だ。
日本におけるコーヒーの歴史、基本的なコーヒーの知識、どこからか広がった"コーヒー都市伝説"に対する正しい情報、世にはびこる"焙煎至上主義"とも言える風潮への苦言。全編からコーヒーという生鮮食品への愛情が溢れ出てくるようか一冊である。
コーヒーだけではなくその産地にも思いを馳せること。政情的に難しい地域も多く、私たちが安穏と蘊蓄を垂れながらコーヒーを楽しんでいる最中でも、産地では苦しい生活を強いられる人たちがいる。一杯を大事に飲んだ、からといって何が変わるわけではないのだけれど、著者が言う「コモディティをしっかり作っているからこそ素晴らしいスペシャルティができる」などの事実も心に留めながらいただきたいなと思った。
結局は、素材。それに尽きるのだ。
コーヒーはフルーツであるから、鮮度が大切。
何はなくとも豆の質がなければ話にならない。
これも本書で強調されていることのひとつだ。
素晴らしい焙煎士さんたちがたくさんおられるのは確かだけど、大好きなロースターさんも「結局、豆だよね」と仰っていたし。
コーヒー好きなら読んで損はないと思う。
より深く、楽しくコーヒーを味わえるようになるんじゃないかな。
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本書を読みながら「美味しんぼ」のことを考えていたら、焙煎や抽出について蘊蓄を垂れる人に向かって「わぁっはっはっはっ!愚か者め!生豆の良し悪しもわからぬ者が焙煎や抽出について云々するとは片腹痛いわぁっ!」とかいう雄山の声が脳内で勝手に鳴り響いて困った。
美味しいコーヒーは冷めても美味しいよ。
冷めてから味が変わるのも楽しいよ。
飲みすぎると心臓バクバクして大変だったりするのでお互い気をつけましょう(私はコーヒーフェスで短時間に7〜8杯ほど飲んだ時危なかったです)。