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母と娘をめぐる長い終わりの物語。
読みながら、骨の芯まで深く静かに染み込んでいくこの感覚はなんだろうか。
淡々と文字が重ねられているが、その奥底にドクドクと脈打つ人間の熱を感じる。
文中に登場する一節に象徴されるように、簡単にわかったという言葉を口にしてはいけない気がした。
鮮やかな色を放つ作品ではない。
だが、より複雑に混じり合った暗く染まった色を感じるのは悪くない。
寧ろ浸っていたくなるような引き込まれる魅力に溢れていると思う。
表現一つ一つが洗練されていて、作者の底知れない奥深さを感じた。
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死が近い母親を、幼い時の記憶を蘇らせながら心情を描いているという、それだけの話かな。
タイトルとどういう関連があるのだろうか?
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言葉にしがたいことがふんだんに書かれていた、と感じた。
この本全体が詩であるかのような読後感だ。
なんて不器用で、孤独で、寂しくて、餓えていて。
そして、その奥にじんわりと温かい気持ちやしたたる涙、不安感が抑え込まれていて。
この母子は似た者同士だ、と思う。
鎧の脱ぎ方を忘れてしまった。そんな人たちのように感じた。
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頭の中で映像としてイメージしやすくて、読みやすかった。親と話ができている時間を大切にしようと思う。
わからないことをわかっちゃだめ。
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図書館にリクエストしてから2ヶ月以上待たされたが、118ページしかない薄い本なので、あっという間に読了した。
シングルマザーに育てられ、新宿でホステスとして働く若い女性のお話……というか、死にゆく母と娘との最後の日々を淡々と綴った作品だった。“毒親”というほどひどくはないと思うが、当事者ではないからわからない。ここには書かれなかった出来事も多々あるのだろう。
著者の経歴から鈴木いづみを思い出したが作風はまったく違った。当たり前か。
第167回芥川賞候補作。
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遅ればせ感想。夜の仕事をしている女性の視点で母の看取りと子供の頃からのトラウマを描いているのだが基本的には心情を綴るというよりは日常をとつとつと過ごしている情景だけが描かれている。体調が悪くなった母が最期は娘と過ごしたいと娘のアパートに転がり込んでくるところから始まり、主人公が母を避けて出来るだけ帰らずに過ごしたり、先日自殺した仲間の事をホストと話したり。そんな中心にずっと引っかかっているトラウマがじくじくと膿んで痛み出してくるような不思議な描写が続く。個人的には読後感がとてもカミュの「異邦人」のようだった。心を直接描くのではないその手法のせいだろう。
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景の描写が的確ですごくうまい。感情の見えないところを見せる表現。すのうまさに映画のようだと思ってしまうが映画のようだというのも不遜で、次回作(すでに出ている)を読みたくなった。
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第167回芥川賞候補作品。
タイトルの「ギフテッド」は、「天賦の才能を持つ人」という最近流行りの意味で使ってはなさそうだ。
「娘にのしかかってくる母の重さ」を皮肉的にギフテッド(贈られた)と言っているのかな。
母の死を通しての「ダメな母Xダメな娘(by吉田修一さん)」の和解を描く。
和解というか許容?そこまで行かないか?
娘は母を受容するくらいまではできたのかもしれない。
いずれにしても少しだけ救いはある。
母が娘に贈ったのかもしれない最後の詩。
この詩が…
深いようなそうでないような。
意味があるようなないような。
ただ、極めて文学的だ。
本作品はこの詩にたどり着くための小説、と言えるのかもしれない。
母と娘の微妙な距離感がもやもやと心に残る。
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美しかった母が最期を迎える
娘の腕には幼い頃の火傷の跡を塗りつぶすための刺青がある
死の匂いを感じながら、最期を見届ける娘にもまた生の熱量はない
扉の軋む音と鍵の回る音のリズムは、歓楽街の不協和音と曖昧な今日を断つ音
命の扉が閉じる音を自分はまだ想像がつかない
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母親から与えられた火傷の跡に娘は刺青を入れ、呪縛から逃げるように家を出る。母親の病をきっかけに娘は母の過去を知ることになり…という話。水商売の話や唐突に自死を選んだ友人の話など、共感ができるポイントは少なかったけど、こんな世界もあるだなと。
鈴木涼美さんご本人に主人公を重ねてしまうのよね
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このところ、底辺小説ばかり読んでいるなあ。それだけ多くの人が生活そのものに困っているということか。
頭がいい人なのかしらね。くどくど説明するのは苦手というか嫌いなんでしょう。回想が突然はさまってくるから、今人物はどこにいるのか、いつのことなのか、読み返さないとはっきりしない部分がたくさんありました。
母に焼かれた腕の傷を刺青で隠し、夜の街で働く女性。病で見る影もなくやつれ衰えた母との生活。ドアの軋む音が効果的に使われている。
なぜ「ギフテッド」なのか。どんな子供も親にとっては「神様の贈り物」ってこと?まさかね。そういう世間の押し付けへの反抗なのかと思いました。いろいろ議論があるところですね。
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読み応えがあるところはある。自暴自棄な感じは痛みが伝わってくる。ただ、肝心の母親との関係はよくわからない。
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以前から読んでみたかった作家のデビュー中編を図書館で借りてみた。夜の街・風俗に身を置く登場人物の物語を読むのが好きで、正直言うとそんな理由から手にした。帯に書かれていた文言を評してみると、『歓楽街でホステスをしている「私」に残る過去の傷跡』というのは、まさにその通りのお話で、しかしその「私」は、だからといって物理的な傷を与えた人物を憎んでいるようには思えず、その対象との距離や抱える思いが全編に綴られている。『若くして命を絶った風俗嬢の友人』の話や『生と死の境界線をつなわたりする女たち』というところにはさほど感情は揺すぶられなかった。もっと言うと、そうかしら?という感じ。でも、直前に作家的な視覚・感覚・感情表現の綴りがまったくないラノベを読んでいたせいか、本作の情景や回想、心の機微の細やかな描写を楽しんで読めた。個人的にはこの表現スタイルは好きだ。ミステリー好きとしてはもう少しでもストーリーに外連味が欲しいところだが、芥川賞を狙う作品はこういう感じなのだろうかと、最近の受賞作に抱いたのと同じような感想に至った。
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芥川賞候補作、異例の経歴を持つ作家に興味を持ち読んでみた。
夜の街で生活し、母も昔似たようなことをしていて、でも詩を書く母。そんな母との最後の時間を描く。
鍵を開ける音、ヒールで歩く廊下の男、一方男の家は、音がしないふかふかの廊下、などと比較が上手い。
読んでいるのに情景が浮かんでくる。
内容的にはなんともいえないが、やはり知的な人の文書なのだろか、途中からは引き込まれて読んでしまった。ただ他の作品を読もうとは思わないかな…
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天才の降臨です。
しびれました。
完全にしびれました。
冒頭の出だしの文章から
完全に天才です。
エンタメ小説ではないので
そういった面白さはありませんが
日本語に、文章に、言葉選びに
心酔できる、日本文学です。
読後感、シンプルに
「すげーな」です。